吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

女性とめまい・ふらつき・頭痛

2019-08-04

今まで経験したことがない突然の頭痛や、はじめての頭痛でめまい・ふらつきがあれば、脳腫瘍、脳卒中や前兆をまずは心配になります。生命と関係しますので、まずは脳神経外科や神経内科を受診してみましょう。

慢性的に反復するときは、基礎疾患の無い頭痛として一次性頭痛(頭痛持ちの頭痛)と呼ばれ、代表例は緊張型頭痛(22.4%:有病率)、片頭痛(8.4%)、稀に群発頭痛となります。緊張型頭痛女性が1.5倍、片頭痛は約3.6男性より多く認めます。頭痛は、誰でも訴えることが多い症状で、女性は特に対応が求められます。頭痛にめまい・ふらつきが併存することも多く、特に女性に多い傾向があります。

28年度国民生活基礎調査で確認すると、女性の頭痛とめまい男性の約2.5多く、ふらつきの併存もある肩こり症は女性が男性の2.2倍多く認めています。頭痛・めまいの併存も多いうつ病やその他心の病気でも、女性は男性の1.4倍多く認めます。子供から大人への過程では、思春期の頭痛・腹痛・立ちくらみ・ふらつきで問題となる起立性調節障害女性が男性より1.5~2倍多く認め、有病率では、軽症を含め、小学生の約5%、中学生の約10%程度になります

 これらの疾患の中で、女性ホルモン(エストロゲン)の変動と最も関係が深いのは片頭痛です。30代の女性では5人に1人の割合になるようです。

 以下に示す、の病態は、頻度も多く、女性と関連した頭痛とめまい・ふらつきや立ちくらみが併存することが多い疾患と考えられます

 以前の当院コラムの女性とめまい・ふらつき・転サイト)の中で、女性ホルモンと関連するめまい・ふらつき・高齢者の転倒については解説していますので、確認してみてください

 ☞☞ 今回は、女性に多く、命には直接関係しないが、長引く反復する頭痛と併存することが多いふらつき・めまいについての解説です

 この領域は、脳外科、神経内科、耳鼻咽喉科、産婦人科、心療内科と幅広い領域にわたりもつれた糸を丁寧に解きほぐす作業が必要なこともあります。以下に示す頭痛・めまい頭痛ダイアリー頭痛日数や程度性状・前ぶれ、誘発因子(光・音・匂い)・随伴症状・めまいの持続時間・月経との関連・服薬状況・睡眠・心身状態・気候も書き込み整理してみましょう。

症状を整理することで治療の参考となり、片頭痛と緊張型頭痛の鑑別や薬剤乱用頭痛・めまいと頭痛が起きる前庭性片頭痛・月経関連片頭痛の診断にも役立ちます。

薬物乱用頭痛とは、本来片頭痛や緊張性頭痛があり、頭痛が15日以上/月、痛み止めやトリプタンを月10日以上の服用が3ヶ月以上持続する状態です。

日本頭痛学会 頭痛ダイアリーサイト

日本耳鼻咽喉科心身医学研究会 めまいと頭痛ダイアリー:五島(サイト

 

片頭痛関連めまい・ふらつき(前庭性片頭痛)病態:血管拡張

月経前症候群:めまい・ふらつき・頭痛・イライラ病態:女性ホルモンの変化

更年期障害と頭痛・めまい・ふらつき病態:女性ホルモンの減少と自律神経症状

緊張性頭痛(肩こり頭痛)とふらつき 病態:コリ

起立性調節障害とたちくらみ・頭痛・ふらつき病態:循環動態の変化

心因性めまい・ふらつきと頭痛 病態:心理的ストレ』付記:頭痛などを含む多種疾患後の長引くふらつきPPPD:新しい機能性めまい

上記疾患は、末梢性めまいのメニエール病や前庭神経炎などで処方されるアデホス、メリスロンなどを内服しても効果はなく、それぞれの病態に応じた対応や服用を考える必要があります。

 

上記病態の解説

前庭性片頭痛:

片頭痛の基礎知識は

日本頭痛学会:片頭痛サイト

NHK健康チャンネル:片頭痛サイト)で確認して下さい。健康チャンネルでは片頭痛では、頭痛ダイアリーの書き方の説明もあります。

 

片頭痛は4~72時間持続、日本では約840万人と推計、ほとんどは30歳までに発症し、6割程度は生理中に悪化、妊娠中は改善、更年期初期に悪化し年齢とともに罹患率は低下します。20台から50台の女性に多く、エストロゲンの関係が考えられています。

めまい患者さんが、頭痛を訴えても、脳卒中や脳腫瘍以外では関連を疑うことは今まではあまりありませんでした。最近では、頭痛外来の片頭痛患者の半数以上に何らかのめまい症状があり、片頭痛とメニエール病の共存率も高いと知られるようになってきています。前庭性片頭痛という疾患単位として診断基準が確立されたのは近年のことです

片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)は、今まであまり知られていなかったため、難治性や原因不明のめまいの患者さんの中にかなりの割合で含まれていると考えられています。外国の耳鼻咽喉科外来の高齢者のめまいの原因で13%の報告があります。

診断

過去も含め片頭痛症状がある

めまい前後に頭痛がある

めまい症状は、自発性めまいや視覚刺激・頭部運動で誘発されるめまいや浮動感(回転性めまいが多いが、一部に浮動感あり)

少なくとも5回のめまい発作で、5分~72時間持続

めまい発作の少なくとも50%に1つ以上の片頭痛兆候(頭痛、光・音過敏、前兆)がある

めまい発作時は、高度難聴はなく、耳鳴・耳閉感のあることは多い

治療

めまい発作時は、トラベルミン、セファドール、ナウゼリンなど

トリプタンのめまい効果は認めないようです。トリプタンは、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、重度高血圧、重度肝臓病では使えません。

片頭痛の予防治療が発作の予防に有効

ミグシス、トリプタノール、インデラル、デパケンなど

めまいのリハビリ(片頭痛症状も改善することが報告あり)

生活で注意点と対策

強い光、騒音、人混みを避ける

ぎ寝不足を避け、休日も普段通り

ストレス回避

ワイン、チーズ、アルコール、チョコは避ける

赤系サングラスを選ぶ

片頭痛発作時は、静かな暗い場所で安静または睡眠、冷たいタオルで痛む箇所を冷やします。

 

月経前症候群(PMS)& 月経関連片頭痛 

付記①:月経困難症のふらつき

付記②:妊娠中のふらつき

付記①、②は頭痛が主の症状ではありません。

PMS

基本的なことは本産婦人科学会:月経前症候群サイト)で確認して下さい。

月経前の3~10日に起こる精神・身体の多彩な症状です。その中で頭痛、めまいも認められます。月経のある女性の70~80%に、月経前には何らかの症状があり、生活に困難を感じるPMSは5.4%のようです。

月経3~10日ほど前からの頭痛・ふらつき・めまいで生理がきたら消失するときはPMSによる頭痛を疑います。この時期に、卵巣からのステロイドホルモンの黄体ホルモン(プロゲステロン)が排出されます。このホルモンは水を体内にためる傾向があるため、漢方では水毒のふらつき・めまいとして対応することもあります。黄体ホルモンは低血糖を起こしやすくするため、ふらつきが出ることもあります。本来、貧血があれば、ふらつきや立ちくらみが出現します。PMSのめまい患者のカロリックテストの結果から、末梢性・中枢性めまいの可能性の報告や月経困難症では月経前にめまい検査異常が多い報告があり、内耳の関与しためまい・ふらつきも考えられます。

対応:

仕事の負担を減らしリラックス 前述の頭痛日記などを利用して症状を把握すること。PMSの時期のみと分かれば、軽度な場合は様子を見る選択肢もあります。

低用量ピル、利尿剤、痛み止め、抗うつ薬(SSRI)、鉄剤、漢方の利水剤、駆お血剤、理気剤、抑肝散など。

月経関連片頭痛

月経まえ2~3日から月経後3日での頭痛は月経関連片頭痛が疑われます。月経関連片頭痛は持続時間が長く治療抵抗性が多く、片頭痛に準じる対応となります。月経1~2週間まえから月経終了まで予防薬を服用することもあります。前兆(閃輝暗点、視野欠損など)のある片頭痛でのピルは禁止(脳卒中を起こしやすくなります)前兆の無い片頭痛でも慎重投与となっています。

この時期の頭痛とめまいの対応は前述の前庭性片頭痛日本頭痛学会医:片頭痛サイト)を参考にしてください。

付記①:月経困難症のふらつき

月経困難症は生理痛のことで下腹部痛や腰痛が多く3日以内に改善します。貧血や血行不良にによるふらつき・めまいも多く認めます。婦人科での器質的病変(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など)を確認してもらいます。貧血の治療を優先させ、睡眠をとりストレスを回避して自律神経を整えます。有酸素運動も効果的です。西洋薬では、ピルや鎮痛薬で対応します。

付記②妊娠中のふらつき

妊娠中はめまい・ふらつきは多く30~50%程度あるようです。めまいはつわりの症状の一つして認めます。原因は嘔吐による脱水やホルモンバランスの変化による自律神経症状と考えられます。無理せずゆっくり横になるなど行い対症療法になります。妊娠後期では高血圧症(頭痛・めまいなど)、循環血液量は妊娠前の1.5倍程度になりますので、水分不足によるめまいや鉄不足による貧血、葉酸不足による疲れふらつきなど考えられます。

更年期障害と頭痛・めまい・ふらつき

基本的なことは日本産婦人科学会:更年期障害サイト)で確認して下さい。

更年期障害の簡単チェックは次のサイトでチェックを

SMI(簡略更年期指数)

更年期症状は

血管運動神経症状冷えのぼせ、発汗、動悸

不眠、不安、イライラ、抑うつ気分、情緒不安定

腰痛、関節痛、しびれ、むくみ

まい浮遊感、肩こり、頭痛、疲労感 などの

更年期のめまい・ふらつきは自律神経や血圧変動の関与が報告されています。自律神経、精神、運動器、皮膚、泌尿生殖器、消化器領域に及ぶ多彩な症状を認めます。ホルモンの低下だけでなく、環境の変化による心理社会的変化が複雑に関与して表現されると考えられています日本人は、ホットフラッシュより腰痛、肩こりの方が多いと言われています。ホットフラッシュや発汗・動悸の方にめまい・ふらつきが多いと報告があります。

治療:

ホルモン補充療法(HRT)

血管運動神経症状(冷えのぼせ、発汗、動悸)の第一選となります。この治療は血栓・乳がんのリスクもあるため次のサイトで確認して下さい。

ホルモン補充療法の実際(日本産婦人科医会)

漢方療法:

当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など証を見極めた治療。副作用が少ない漢方療法は、更年期の不定愁訴に汎用されています。HRTは、めまいへの効果は乏しいといわれています。漢方療法は、特に、めまい、心悸亢進、咽頭症状に効果が高いと報告されているようです。

向精神薬療法

不安・不眠・抑うつに対して、抗うつ薬(SSRIなど)使用、心療内科と相談

環境の変化による心理社会的変化を考慮した、心因・家庭・職場の問題を確認しながら傾聴

 

緊張性頭痛(肩こり頭痛)とふらつき

緊張型頭痛の約6割にふわふわしためまい感を伴う報告があります。

緊張型頭痛は、側頭筋や後頚筋群、僧帽筋などの頭から首、背中にかけての筋肉のコリや張りによって、痛みを感じる神経が刺激されることで、痛みが起こると考えられており、その原因の多くは、次の生活習慣が関係しています。頭痛の持続は30分~7日程度です。

長時間同じ姿勢(デスクワークやうつむいた運転姿勢)

仕事の終わりごろ頭痛が起こり易い

不適切な枕

ストレス

運動不足

頭痛のチェックで診断

頭の両側発症

圧迫・締め付けるような痛み

我慢ができる・仕事などがこなせる

頭痛あるが嘔気・嘔吐はない

動いても痛みが悪化しない

光や音が気になってもどちらか一つ

片頭痛との合併することがあります

によって片頭痛と緊張型頭痛がおこるタイプ

日常は片頭痛でたまに緊張型頭痛のタイプ

変容性片頭痛は、慢性緊張型頭痛(月に15日以上)と同じ症状で過去に片頭痛の既往で判断するタイプ(片頭痛として対応)

薬物治療

筋弛緩薬、抗うつ、抗不安薬(一時的)

日常の対応

頭痛体操(youtube)  NHK健康チャンネル頭痛体操サイト日本頭痛学会:頭痛体操サイト

にならない正しい姿勢

作業中のこまめな休憩

首肩を冷やさない

ぬるめの風呂でゆっくり

自分に合った枕

常の運動

 

起立性調節障害とたちくらみ・頭痛・ふらつき

起立時や体動時のめまい・ふらつきは起立性低血圧を疑います。こどもから大人まで原因は多彩です。

思春期に多い循環調節不全を起立性調節障害といい、頭痛、ふらつき、立ちくらみ、乗り物酔い、臍疝痛など訴えます。成長期の問題です。詳細は日本小児心身医学会:起立性調節障害サイト)で確認して下さい当院コラムよくわかる子供の漢方:起立性障害;ふらつき、頭痛、腹痛サイト)では漢方療法や生活習慣の改善について述べています。

 

心因性めまい・ふらつきと頭痛

心因性めまいはめまい患者の約20~80%程度と高率にみとめらます。

精神疾患によるめまい 併存する精神疾患がめまいの病気(内耳性めまい)を悪化させている場合の2タイプあります。

ふらつきやめまいが併存することもある片頭痛や緊張型頭痛は、心理的ストレスが大きく関与します。両疾患共にうつ病やパニック障害が随伴しやすいとされています。片頭痛と精神疾患との共通因子としてセロトニンの代謝異常が推測されています。これらの疾患には、心身医学的対応と併存する片頭痛・緊張型頭痛・内耳性めまいへの両方の対応が求められます。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)は2017年にバラニー学会が診断基準を定めた、3ヶ月以上持続する新しい心因が関与する機能性めまいです。

PPPD(日本めまい平衡医学会:サイト)で確認して下さい。

めまいの原因となる前庭、精神、内科疾患が先行して3か月以上ほとんど毎日持続するふらつきで他の前庭疾患と併存することもあります。治療はSSRI(抗うつ薬)、前庭リハ、認知行動療法が有効とされています。

PPPDを発症させる頻度が高い急性発作性病態

末梢や中枢性の前庭疾患(25~30%)

庭性片頭痛(15~20%)

浮動感を示すパニック発作や不安(30%)

脳震盪やむち打ち(10~15%)

律神経障害(7%)

 

心因性めまいの診断の補助

心因性まめいの診断は難しく次の問診を参考にします。

HADS(サイト 耳鼻心)不安と抑うつ

DHI(サイト 耳鼻心)46点以上は重症のめまいで不安と抑うつが高率

SDS(うつ問診)

 

参考資料

日本頭痛学会HP

めまいの検査;改定3版:診断と治療社

めまいと頭痛;五島 金原出版

EQUILIBRIUM RESEARCH Vol.78 June 2019

メディカル・ビューポイント 2019年3月10日 特集めまい診療

女性めまい患者の年齢期別臨床検討;大谷ら EQUILIBRIUM RESEARCH Vol.67 130-140 2008

プールに入ってよいですか?耳・鼻の病気

2019-07-18

習い事ランキングの一番は、スイミングのようです。
今年は、涼しい梅雨と梅雨明けが遅れる中、学校のプール授業が行われました。
鹿児島では、大雨警報のため行事の中止や学校の休校もあり、
本格的な夏のプールや海水浴は夏休みに入ってからになりそうです。

風邪をひきやすく、耳・鼻の問題が多いお子さんがいるご家庭では、プールや水遊びを行ってよいのか心配になります

耳・鼻の病気で通院中のお子さんの場合、
担当医師によって、プールの可否に対して対応が違うこともあります。
岐阜県医師会:プール水泳許可基準
目安になりますので参考にしてください。

耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、心電図異常について記載されています。
耳鼻咽喉科医は一律に事務的に水泳を禁止するのでなく、その時点での生徒や児童の症状を把握し、
教育的観点からできるだけ許可するように指導することが適切である
とコメントされています。

岐阜県医師会の指針、他の耳鼻咽喉科医などHP、一般医療情報などからまとめると
以下のようになると思います。

耳鼻咽喉科領域では
急性の発熱、疼痛時などの急性炎症の時は禁止

外耳炎:
急性期(耳漏、耳痛、強い搔痒感)禁止中耳炎
耳の中を触らない事。
普段からの耳いじりのし過ぎが原因となります。

中耳炎:
急性期と耳漏が多量の場合禁止

穿孔や鼓膜チューブ挿入の場合は

耳栓・水泳帽を使用し潜水や飛び込みは控える

急性中耳炎(耳痛と発熱などあり)では
最低1~2週間禁止

膿性鼻漏を認めるときは再発のリスクが高いと認識することです

滲出性中耳炎はプールは可能。

滲出性中耳炎の鼓膜チューブ挿入の場合の別の考え

2015年滲出性中耳炎ガイドラインでは、
付記として湖・海での水泳や潜水をしなければ耳栓なしでプール可能耳漏・耳痛反復すれば耳栓使用となっています。鼓膜チューブの内径は小さく耳栓なしでも表面張力で中耳まで水が入り難いと考えられています。これは、岐阜県医師会の指針と異なっています

滲出性中耳炎鼓膜チューブ留置中の場合、上記二つの意見があり担当医と相談しましょう。

鼻・副鼻腔炎
急性副鼻腔炎:疼痛や発熱時禁止
多量な鼻汁や鼻出血が頻回な時禁止
多量な鼻汁はプールの水の汚染になります。
鼻汁が減少し、水泳の前に鼻をかみプール可能。

アレルギー性鼻炎:
プールの消毒用塩素や浸透圧の影響で悪化の場合がありますが禁止ではありません。
症状に応じて、
鼻かみや必要な方は薬の服用・点鼻でコントロールしてプール可能。

実際の現場では、
鼓膜切開や鼓膜チューブ留置直後の対応。

鼻が悪いお子さん(鼻炎や鼻・副鼻腔炎)が、
反復する急性中耳炎や滲出性中耳炎を起こしやすくなる事実

限られた期間で行う学校プールの可否の判断を迷う時は、
お子さんのプールへの意欲や、ご両親の考え方。

などを考慮する必要性があります。

プールの判断は単純ではなく、担当医と相談して決めることになります。

 

👉 以下のことを理解してもらえば
プールや水遊びの判断がしやすくなります。

 外耳炎と中耳炎は原因が異なります。
外耳炎は、普段からの耳掃除や耳いじりのし過ぎで、外耳道の防御機能が低下しているところに、高温多湿やプールなどの水が外耳内に入ることがきっかけで起こしてきます。耳いじりをし過ぎなければ、予防可能となります。

次の当院院長コラムを参考にしてください。
 耳掃除は必要か?外耳炎・カビ・事故当院コラム

中耳炎は鼻炎や鼻・副鼻腔炎の炎症や菌・ウイルスが耳管を介して中耳内へ波及したり耳管機能不全で中耳内の浸出液の排出が悪くなることで生じます。

鼻の奥にある中耳とつながった、耳抜きを行う耳管機能の役割が重要です。
乳幼児までは、この耳管構造の未熟性のため中耳炎を起こしやすくなります。

また風邪を予防する免疫グロブリン(IgG)は2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人同様になるため、2~3歳ごろまでは頻回にかぜをひき急性中耳炎を反復します。おむつが取れる3歳ごろまでは、中耳炎の発症の点ではプールは望ましくありません。

最近は、プール用おむつをして、親子のスキンシップを目的としたベビースイミングもあるようですので、上記のことを参考に担当医と相談しましょう。

中耳炎の予防は風邪をひかない、鼻炎を悪くしない事です
 鼻と子供の中耳炎当院コラ)も参考にしてください。

 

 プールや川・海の水質の問題
最近は、自宅で鼻洗を行う方も増えています。
この鼻洗水が望ましい水と考えて下さい。
望ましい鼻洗水は

人肌に温めたもの

生体の浸透圧に調節したもの

0.9%程度の生理食塩水

を使用します。

塩分能度は、海水:約3% 身体:0.9% 淡水:0%
となり海水と川やプールでは浸透圧による影響がでてきます

鼻の粘膜の防御機能である粘液繊毛機能は体温に近い温度で活発となり低いと機能が低下します
川の水は冷たく、海水も冷たいことがあります。
学校の屋外プールでも23℃以上ですので、水温による影響が出ます

プールの水は細菌やウイルスの消毒目的に
淡水に消毒用塩素が水道水より多く使用され、pHが調節されています。
消毒用塩素の濃度が濃くなると鼻への影響が出てきます。

海水・川・プールの水は、水温と浸透圧の点で
理想の鼻洗水とはかけ離れたものになっていますので、
鼻や外耳に影響を与えます。

海水や川では汚染の問題や雑菌が多数入っています

参考図書

JOHNS 2010 Sep. Vol.26 No9 お母さんへの回答マニュアル

岐阜県医師会HP:プール水泳許可基準

子供のかぜウイルスと季節性:その対策

2019-07-06

今年は、夏かぜの手足口病が例年以上に流行しています。子どもさんは、大人より風邪を引き易く、子どもさんから両親や祖父母までうつることはよく経験します。小児科外来受診の約7割が感染症で、その半数以上が呼吸器感染症です。かぜの90%は、ウイルスによる感染で、3日前後で改善しはじめ7~10日で改善し自然治癒する疾患です。咳だけは、1週間までにピークを迎え、2~3週間かかることもあります。

日本人の成人の年間かぜの回数は、年間男性2回 女性2.5回程度のようです4日以上持続する発熱や、一度解熱して5~7日で再度発熱するときは、細菌感染(中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、扁桃炎など)の併発を疑います。

ウイルス性感冒のウイルス数は200種類以上あり、インフルエンザ、ヘルペス以外、薬はありません。抗生物質は細菌を退治する薬のため、ほとんどがウイルス感染のかぜを治す薬はありません。西洋薬では、対症療法の薬のみです!!漢方薬を考慮することもあります。症状に対してつらいときは西洋薬を服用して、免疫を落とさないようにしながら自然治癒を待ちます。漢方薬では、自然治癒力をサポートします。

ウイルスではない細菌性感染では、溶連菌感染の扁桃炎、重い中耳炎、細菌性肺炎には抗生剤をしっかり内服することは重要です。安易な抗生剤の使用は腹痛、下痢、アレルギー症状を発症させ、腸内・口腔などの細菌の乱れを招き、社会的に問題な薬剤耐性菌の出現を助長します

学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説:登校登園基準(2020年5月)日本小児科学会サイト

このサイト登校(園)基準、感染経路・期間・症状などまとまっていますのでその都度確認して下さい

👉 今回は、何百種類もあるウイルス性感冒の特徴を知り、普段からできることを考えてみましょう。時間が無い方は、最後の対策のまとめで確認を。

 

不安定なRNAウイルス不十分なインフルエンザワクチン効果

不安定なRNAウイル

ウイルスはDNAウイルスとRNAウイルスがあり、天然痘ウイルスなどのDNAウイルスは遺伝子が安定で、変異は遅く、ワクチンで撲滅できました。

RNAウイルスは遺伝子構造が不安定で、変異スピードは速い特徴があります。変異スピードが速いとヒトの免疫応答が追い付けなくなります。アデノウイルス以外、インフルエンザなどの風邪ウイルスのほとんどは、RNAウイルスです。インフルエンザワクチンを接種しても、罹患することが多くなる理由もRNAウイルスであることが問題の背景にあります。

不十分なインフルワクチン効果高齢者(65 歳以上)を対象に、インフルエンザワクチンの発病阻止効果は34〜55%、インフルエンザを契機 とした死亡阻止効果は82%と報告されています。現在のワクチン皮下注射では、分泌型IgAは誘導せず、血清IgG抗体を上昇させます。血清IgG抗体は、鼻・口腔・気管での侵入を防ぐ効果や交差防御効果はありませんが、生体内でのウイルス活性を弱める効果がありますので感染後の症状発現予防や重症化予防は期待できます

ワクチン製造に使用されたウイルス株と異なるウイルス株が流行すると、現在の不活化ワクチンの効果は期待できません。その年の流行インフルウイルスが製造ワクチンのウイルス株とすこし異なると、ワクチンを打っても効果があまり期待できない年があるのはそのためです。現在のインフルワクチンは重症化予防に効果が高いと考えて下さい。発病阻止効果を高めるため、経鼻弱毒生粘膜ワクチンが試みられていますが、まだ十分な効果とは言えないようです。

エンベロープ(外側を覆う膜)が無いウイルスとあるウイルスの違い

脂質・タンパク質・糖タンパク質でできたエンベロープという膜で覆われていないウイルスは、夏風邪ウイルス、プール熱、ノロ・ロタウイルス、鼻かぜ(ライノ)などです。消毒用エタノール・石鹸では効果が弱く予防しないと防ぎにくいウイルスです。

新型コロナ・インフルエンザ・ヒトメタニューモウイルス・RSVなどエンベロープを持つウイルスは、消毒用エタノール・石鹸でエンベロープを壊すと失活します。感染力は強くても消毒に弱いウイルスです

エンベロープウイルス

種類:新型コロナ・インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、麻疹・風しんウイルス、エイズウイルス、B型肝炎ウイルスなど

対策:ワクチン(インフル、水痘、麻疹、風疹、B型肝炎)石鹸で手洗い 消毒用エタノール10~20分に一回水を飲む

咽頭のインフルエンザウイルスは20分以内に体内に侵入しますので、10~20分に一回水を飲み、胃酸に弱いので死滅します。最近、粘性が強い分泌物の中では、インフルエンザウイルスも腸管内で感染力を保つことがわかってきました。腸管内で、すべてのインフルウイルスが死滅するわけではないようです。

ノンエンベロープウイルス

種類:ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスエンテロ(腸)ウイルス(エコー・ポリオ・コクサッキー、ライノウイルスの総称)ライノウイルス(100種以上血清型)A型肝炎ウイルスなど

夏風邪の代表例手足口病(コクサッキーA16,エンテロ71)ヘルパンギーナ(コクサッキーA群:2,3,4,5,6,10型)アデノウイルス:51種類以上の血清型あり

アデノウイルスは咽頭結膜炎は主に3型、流行性角結膜炎(8,19,37型)、肺炎(3,7型)、胃腸炎(30,40,41型)、出血性膀胱炎、肝炎、膵炎、乳幼児咽頭炎(1,2,5型)など多彩7型は乳幼児・老人で重篤になることあり。

 ノンエンベロープウイルスは主に夏風邪と感染性胃腸炎のウイルスと鼻かぜのライノウイルスです。

対策:手洗いが重要です。ヒトーヒト感染では、手、嘔吐物、便からです。ワクチンはロタウイルス、A型肝炎にあります。

普通せっけんと流水による手洗いで物理的除去を行います。消毒用エタノール・石鹸だけでは弱く、医療機関ではウイルステラVHサラヤ(酸性にしたエタノールでは効果あり)で対応するところもあり。プールでの感染を拡散させないように、プールの塩素濃度を適正維持。タオルを共有しない、ペーパータオルなど使用。夏風邪のエンテロウイルス(ヘルパンギーナ、手足口病)は、おしめ替えで手をよく洗います。

感染性胃腸炎の粉塵感染予防のため:嘔吐物を素早く、乾燥させないで、床を消毒(次亜塩素酸:ミルトン)して処理します。食中毒では、カキ・アサリは十分に加熱、野菜を流水で洗うなど調理に注意が必要です。逆性石鹸(オスバン)は、ウイルスには効果ありません。

 

ありふれた風邪ウイルスの特徴と季節性を学びましょう。

夏のウイルス』 夏風邪(ヘルパンギーナ、手足口)のエンテロ(腸)ウイルスは、鼻水、咳少なく、咽頭・腸で増殖し便で拡散します。

ヘルパンギーナ(咽頭炎 稀に心筋炎、髄膜炎)

足口病(咽頭炎 重症化で髄膜炎、脳炎)

プール熱のアデノウイルス3型(プール以外の感染も多く一年中発生)

流行性角結膜炎:アデノウイルス8型(はやり目:プール以外の感染も多く 一年中発生)

パラインフルエンザ3型(喘息、気管支炎:初夏)

エンテロD68ウイルス(咳 発熱 筋肉痛 喘息 重症化では麻痺:飛沫・接触感染2015年夏流行

 

秋のウイルス

ライノウイルス喘息 鼻かぜ アレルギー性鼻炎悪化)

パラインフルエンザ1、2型(クループ)

 

冬のウイルス

ンフルエンザワクチンあり

コロナウイルス(鼻かぜ 胃腸炎 重症ではSARS、MERS)鼻かぜのコロナウイルスは、ヒト・動物で感染をおこし、MERS, SARSの原因ウイルスです。ヒトのかぜの10%程度で認めます。症状は上気道症状が主で下痢もあり、糞便で感染することもあります。

ロウイルス(食中毒二枚貝 食事とヒトーヒト感染 胃腸炎 老人で重症)

ロタウイルス食事とヒトーヒト感染 胃腸炎 2~3月に多く、乳幼児で重症の可能性あり5歳まで100%感染します。 乳児にワクチンあり:任意 

 

春のウイルス

イノウイルス喘息 鼻かぜ、中耳炎、アレルギー性鼻炎悪化)ウイルス排泄は通常は10日程度

ヒトメタニューモウイルス(3~7月 主に1~3歳に多い)(咳 肺炎)小児の5~10%、成人の2~4%の呼吸器感染で認め高齢者では重症化あり反復感染で免疫獲得できるようになり、軽くて済みます。生後6ヶ月頃から10歳までにほぼ全員が感染します。熱は4~5咳は7日程度持続します。発熱4日以上は細菌感染も疑います。ウイルス排泄は1~2週間持続します。

 

1年中のウイルス

RSウイルス(鼻かぜ、中耳炎、咳 細気管支炎 肺炎:2歳までに全員感染)生後一か月では無呼吸あり、2~5か月齢で入院が多く、約7割は数日で改善することもあります。成人までに、複数回感染で軽くて済むようになっていきます。乳幼児の感染期間は3~4週間持続することあり。

ノウイルス 51種以上あり 咽頭結膜炎(プール熱)3型、 流行性角結膜炎 8,19,37、重症肺炎 7型胃腸炎31,40,41型(3歳以下)、気管支炎、出血性膀胱炎、肝炎、膵炎など多彩。プール熱は39前後の発熱と咽頭痛が3~5日持続、目の充血や目ヤニあり。流行性角結膜炎は、耳前リンパ節や結膜充血あり、感染力強くプールで感染。眼科で診断。

サポウイルス(食中毒二枚貝 胃腸炎 主に乳幼児、集団感染あり)

新型コロナ

 

ウイルス感染迅速検査の役割

かぜウイルスの中で、クリニックですぐできる迅速検査があるのは

インフルエンザ(発症2日以内保険適応)

RSウイルス(1歳未満で保険適応)

ヒトメタニューモウイルス(6歳未満 聴診で肺炎疑う例で保険適応)

アデノウイルス感染(プール熱 流行性角結膜炎 感染性胃腸炎)

ロタウイルス(2~3月で多い 乳幼児重症あり)

ノロウイルス(3歳未満、65歳以上保険適応 冬に、老人で重症あり)

上記検査で、薬があるのはインフルエンザのみです。他の疾患は、治療法が特に変わることなく対症療法だけになります。ロタウイルスは乳幼児の重症化の可能性が高く、ワクチンがあります。疾患がわかれば、病気の経過を推測した対応を行います。ウイルス感染とわかれば、初期は抗生剤を使わない対応を行い、耳・鼻・呼吸器感染で、発熱など持続すれば二次感染を疑い抗生剤の追加を検討します。ウイルス感染で重要なのは、自宅、幼稚園、保育園、学校などでの予防です。

 

対策のまとめ

学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説:登校登園基準(2020年5月)日本小児科学会 (サイト)

このサイトは登校(園)基準、感染経路・期間・症状などまとまっていますのでその都度確認して下さい

 

うがいの予防効果

風邪には、水うがいで、40%の予防効果が報告され、イソジンうがいでは、10%程度のようです。イソジンが、のど粘膜細胞や細菌叢に影響を与えることが原因と推測されています。インフルエンザは、20分以内に鼻・のどの粘膜から侵入するため、うがい効果はありませんうがいの風邪の予防効果に関しては未だに議論があります少しの水をこまめに飲み胃酸に弱いので死滅を期待します。粘度が高い分泌物中では、腸管内でも生存するようです。

マスクの効果 飛沫感染予防

マスクの性能に依存します。不織布マスクは、保温、保湿効果で増殖予防とのどの保護効果あり。くしゃみ・咳による飛散予防咳エチケット)マスクによるウイルスの侵入予防は限られます

手洗い 接触感染予防

石鹸と流水での手洗いによる物理的除去はすべてのウイルスに効果を認めます。接触感染予防の基本です。鼻かぜ(ライノウイルス)・夏風邪や感染性腸炎ウイルスには、消毒用エタノールや石鹸だけでは効果は減弱します。

部屋の換気 飛沫核(空気)感染予防

インフルエンザは、密閉、低温、乾燥の条件がそろうと、部屋にいるだけで感染します。いったん付近のものに付着した後、乾燥して水分を含まない微粒子(直径5/1000mm)の感染を飛沫核感染と言います。2µ以下の飛沫核は長時間空中をただよう事ができるため、同じ部屋に一緒にいるだけでも感染します。

部屋の換気は重要です。➡ かぜウイルスではありませんが、結核、水ぼうそう、麻疹空気感染の代表例です。

 

『 冬の嘔吐下痢(ウイルス性感染性胃腸炎)冬将軍

頻度が高く問題になるのはノロ・ロタウイルスです。

厚労省 ノロウイルスサイト

東京都福祉保健局 ノロウイルス対策:詳細サイト

厚労省 ロタウイルス:Q&Aサイトで確認しましょう。

ノロ・ロタウイルスは、経口・接触・飛沫感染で急性期は最も感染力が強く、便中に3週間以上排泄されることもある。消毒用エタノールの効果は弱く石鹸による流水に手洗いが重要です。

 粉塵感染予防

感染性胃腸炎の粉塵感染予防のため:嘔吐物を素早く、乾燥させないで、床を消毒(次亜塩素酸:ミルトン ハイター)して処理します。

👉 お子さんへの実際の対応

吐き気の症状が強いときは、吐き気止めの坐薬をいれます(抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 では、嘔吐に対する制吐薬、下痢に対する止痢薬は科学的根拠に乏しく推 奨されていません)。薬の効果が出るまで1~2時間かかりますので、飲水は我慢してもらい口をしめらせる程度にください。早く飲ませると飲んでは嘔吐を繰り返すことになります。吐き気が治まれば、スプーン1杯程度を数分おきに少量頻回に、10~15分毎与えます。経口補水液(OS-1 アクアライトORS)が望ましい。スポーツドリンクは、Naが少なく、糖質と浸透圧が高く、水中毒や下痢を助長しかねません。軽度脱水では、点滴より経口補水液が効果的で有用性が見直されています。一回量を増やして4時間程度で脱水を補います。脱水補正後は、バナナ、すりおろしリンゴ、お粥、軟らかいうどんなど食べさせましょう。それでも水分が取れない、半日おしっこが出ない、ぐったり感が強い、腹痛が強い場合は医療機関を受診しましょう。小児の体重5%以上の脱水(体重減少)は点滴療法となります。

ご両親の看護が大事です

 

冬のインフルエンザ対策

広く啓発活動が、行われています。以下のHPで確認下さい。

厚労省HP (サイト)

鹿児島市インフルエンザHP (サイト)公共施設の入り口のどこにでもある消毒用エタノールで効果認めます

 

ライノウイルスと春と秋の喘息対策

ライノウイルスは、小児から大人のかぜの3~5割をしめています。33℃でしか増殖しないとされ、上気道に限定した症状(頭痛、咽頭痛、鼻水、鼻閉など)を呈し、水様鼻汁から濃い緑色鼻水に変化し、発熱は軽微で咳は2週間ほど持続します。ライノウイルスは、付着した器具で、数時間程度生存できるようですので、接触感染が主です。消毒用エタノールの効果は弱く、石鹸による流水による手洗いが重要です。100種以上あるのでワクチンは期待できません。

学童における喘息発作の80%以上、成人の約半数が気道ウイルス感染に起因する報告があります。

ライノウイルスは春と秋に多くなり、喘息や鼻炎の悪化をもたらします。喘息の悪化と最も関連するウイルスと考えられています。春と秋は喘息やアレルギー性鼻炎をお持ちの方は前もって気道過敏性を安定させるためステロイドの吸入や点鼻、抗ロイコトリエン薬などを用います

 

子供の夏風邪対策:主に1~6歳 成人にも感染

以下の手足口病・ヘルパンギーナはエンテロ()ウイルスのため、ウイルスは、咳・鼻汁から1~2週間便から数週~数ヶ月排泄します。アデノウイルスの排泄は、初期数日が最も多く、その後数ヶ月排泄が続くことがあります。(接触、飛沫、プール感染、糞口感染

夏風邪の症状の特徴、咽頭痛、発熱はあるが、咳・鼻汁はほとんどないことと、一ヶ月以上の排泄と糞口感染です

手足口病は、感染力が強く、38以下の発熱、下痢もあり、1週間で自然治癒。手・足の裏、口、肘、膝、おしりの水泡皮疹。まれに脳炎、髄膜炎を合併。

ヘルパンギーナは、咽頭奥の水泡、咽頭痛と発熱3日で解熱し1週間で回復、稀に心筋炎、髄膜炎を合併することがあります。

プール熱アデノウイルス主に3型 39℃前後の発熱が3日~5日、腹痛、下痢あり、1週間で回復、目が充血

流行性角結膜炎アデノウイルス主に8型(プール感染あり) 耳前リンパ節や結膜充血あり、眼科で診断します。感染力は強い。

手足口病とヘルパンギーナはエンテロウイルスで、腸管で増殖。アデノウイルスと同様に、ノンエンベロープウイルスのため消毒用エタノールでは弱く普通せっけんと流水による手洗いで物理的除去が重要です。ウイルスの排泄が長く、おしめ替えでうつりますので、手洗いを行いましょうタオルを共有しない、ペーパータオルなど使用。

参考資料

こどもの感染症の診かた MEIJI

耳掃除は必要か?外耳炎・カビ・事故

2019-06-24

 

6月に入って梅雨になり、高温多湿と紫外線が強くなると最も多くなる診療科はどこでしょうか?

それは皮膚科です。

耳鼻咽喉科でも、耳の皮膚疾患であ外耳炎、外耳湿疹、外耳道真菌症(カビ)の患者さんが多くなりました。例年涼しくなる10月頃までこの傾向が続きます。このような病気になり易い方は日頃から耳掃除をまめに行っている方です。

耳の衛生を保つためや気持ち良いからやっている耳掃除が、耳垢栓塞の原因となること、外耳炎、外耳湿疹、外耳のかびを生じさせてしまうことをご存知でしょうか?耳掃除による事故も多く、救急車を呼ぶこともあるようです。米国の耳掃除ガイドラインでは、一部の人は除き、症状が無い耳垢は掃除はせず放置してよいとなっていますが、日本のネットではよく月1~2回程度の耳掃除の回数が記載されています。どちらが正しいのか?

👉今回、耳掃除に対しての正しい考えや弊害を学んで,必要性を考えてみましょう!!

耳の掃除は本当に必要なの?静岡県学校保健委員会(youtube)耳に中のおもしろい教育動画です

耳垢には外耳での重要な役割があり、

外耳道には自浄作用と

その皮膚には保護作用があります

耳あかの役割

その酸性やタンパク分解酵素で抗菌作用を有する
脂肪が含まれ外耳道を保護しています。
外耳道への昆虫の侵入を防いでくれます。

外耳道の自浄作用

耳あかの正体は、古くなった表面皮膚の剥脱、ほこり、汗腺の一種で耳垢腺や皮脂腺の分泌物があわさったものです。耳垢腺や皮脂腺は外耳の外側1/3(軟骨部外耳道)に存在し、その奥(内側2/3骨部外耳道)にはありません。耳の穴の皮膚は常に新陳代謝を繰り返し、少しずつ外側へ向かい、顔やあごの動きや咀嚼・あくびに合わせ耳垢も自然に外に排出されます。鼓膜と外耳道の表皮の移動速度は、1日に約1mmと言われています。

外耳道は3cmほどあり、耳垢は外から耳垢腺・皮脂腺がある1cmまでしかできず、それ以上奥にあるものは綿棒などで押し込んだものが殆どです。つまり耳あかは外耳道のなかで必要なもので、通常は自然排泄し除去する必要はありません

外耳皮膚の保護作用

皮膚の表皮はケラチンというタンパク質が主体となって、角質層を形成して外部から物理的・化学的な作用に対する保護作用をしています。皮膚の表面は酸性を示す皮脂膜が形成されていて、このため細菌の繁殖が抑制され、その毒性が減弱されています。耳・外耳をいじり過ぎると、皮膚が傷つけられ皮膚のバリア機能が低下して、痒み、痛み、浸出液の原因となり、細菌や真菌の感染を助長します。

酸性である耳垢は、細菌や真菌の発育を抑制しています。除去すると保護作用が低下して、耳いじりによる浸出液や高温多湿で湿気が増えると、外耳道入り口から耳介の表皮の浸出液は培地となり、皮膚の㏗は5から7へとアルカリ化に伴い組織内への細菌の侵入を容易になってきます。

 

耳掃除による事故

国民生活センターから平成28年に

油断しないで!耳掃除サイト

で発表されていますので確認して下さい。具体的事例が多く記載されていますので見てみましょう。身近なことだと理解できます。

 耳かき棒と綿棒も同等に事故が生じています

アドバイスとして以下のことが記載されています。

耳掃除をするときは

周囲の状況(子供やペット)に注意し、安定した姿勢・場所で行いましょう。また、耳かき棒や綿棒を奥に入れ過ぎないようにしましょう

耳かき棒や綿棒を乳幼児の手が届く場所に放置しないようにしましょう

子どもに耳掃除をするときは、動いたらけがをするおそれがあることを理解させましょう。動いてしまう可能性があるときは、無理に耳掃除を行わない方が良いでしょう

耳掃除中のけがにより後遺症が残ることもあります。けがをした場合は直ちに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

耳の中に綿棒の綿体や耳かき棒の一部が残って取り出せなくなった場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

東京消防庁 耳かき中の事故に注意サイト

☞ 平成21年から5年間に380件に耳かき関連救急搬送があり、その中で0~4歳のお子さんが150名と約半分に相当する報告があります。

 

米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から出た耳垢栓塞診療手順ガイドラインサイト

(2017年 生後6ヶ月以上の方に適応)

ネットのコメントの中で、日本の耳鼻咽喉科医師を含めた多くの医療関係者が参考にしている指針です。

重要な部分を抜粋しました。

Your body makes earwax to protect your ear canal skin and kill germs.

Know that earwax is normal.

Earwax that does not cause symptoms or block the ear canal should be left alone.

Among those who may be helped are the elderly, people with hearing aid, and those with a history of too much earwax.

Most people do not need a regular schedule for preventing earwax buildup.

There is no standard course of action for preventing earwax buildup.

Most people do not have to do anything unless too much earwax develops.

Do not over-clean your ears.

Too much cleaning may bother your ear canal, cause infection, and may even increase the chances of earwax impaction.

Cotton swab can remove some wax, but they often just push the wax deeper into the ear and may worsen an impaction or injure the ear canal.

要点は上記以外の内容も追加記載

耳垢は、正常なもの(不要な老廃物ではない)で外耳道の保護や抗菌作用を有する。

症状を起こさない耳垢はこのまま放置してよい。

耳閉感、難聴、耳漏、耳痛、痒み、臭い、耳鳴り、咳などあれば専門医で治療。外耳道の上皮の動きと、咀嚼やあくびの際の顎の動きなどによって、耳垢は開口部に向かって徐々に移動していきます。

ほとんどの人は、耳垢予防を定期的に行う必要はない

耳垢予防の標準的なやり方は存在しない。

耳掃除はしすぎる

耳掃除のしすぎは、外耳道に負担をかけ感染を生じさせ、耳垢栓塞の原因となることもある

より奥に耳垢をおしこむと自浄作用が働かなくなり症状が出てくる。

綿棒は一部の耳垢を取り除くが、耳垢を深く押し込み耳垢栓塞を悪化させ外耳の損傷を生じさせることもある。

耳掃除が必要な人たちは、高齢者、補聴器使用者、耳垢が充満して症状があった方たちのみ

このような方たちは、年に1~2回専門医で予防的耳掃除を勧める

👉 耳垢には乾型とアメ状の湿型が存在

日本人の湿型は、報告の平均では16.3%となっています。一方、白人、黒人は湿型耳垢が多く、9割程度のようです。アメ状耳垢のほうが、乾型より耳垢は自然に排泄しにくい傾向にあります。アメ状耳垢が多い米国の指針で上記の内容ですので、乾型耳垢が多い日本人の耳掃除のし過ぎはご理解いただけるかと思います

アメ状耳垢が多い米国や欧米の家庭では、イヤーシリンジ(大型のスポイト)での耳洗で耳の衛生を保つ方法があります。日本では一般的ではありません。家庭医も同様の方法で耳垢除去を行うようです。

MSDマニュアル(世界的オンライン医学事典)耳垢除去(耳洗) 動画

 

耳掃除が起こす病気(弊害)

耳垢栓塞症

耳垢除去のつもりで綿棒など奥に入れていると、外耳道の奥に押し込み自浄作用は働かない耳垢栓塞が生じ、難聴、耳閉感が出現します。

外耳炎

日本では、夏季に急増するのが急性外耳道炎です。原因のほとんどは、耳かき棒や爪による外部刺激による感染で、外耳前方の一部が腫れたものは外耳せつと呼ばれ、耳の中にできたおできと考えてください。自然に自壊して改善に向かうこともあります。黄色ブドウ球菌が主な原因菌です。外耳の奥の骨部外耳道まで及ぶと急性びまん性外耳道炎となります。耳痛あるいは灼熱感が強く、漿液性の耳漏流出を認めます。黄色ブドウ球菌や緑膿菌が主な原因菌です。外耳炎が反復するときは、糖尿病などの基礎疾患の確認が必要です。

外耳道・耳介湿疹

やはり耳の機械的刺激が誘因として多いのですが、外耳の奥手前の湿疹で分けて考えます。

外耳の奥の湿疹は、中耳炎や鼓膜炎が背景にあり、浸出液によるカサブタや耳漏が関係します。綿棒を耳の奥に入れると刺激になり起こしてやすくなります。外耳の手前から耳介にかけての湿疹は綿棒を奥に入れなくても外耳の手前だけでの耳掃除だけでも起こしてきます。アトピー性皮膚炎、乾癬、ピアスかぶれなどの関与や、シャンプー・毛染めによる接触性皮膚炎も原因となることがあります。

特に乳幼児は皮膚が弱く、夏になるとよく汗をかきます。いつも同じ向きで寝かせていると、外耳から耳介にかけてかぶれて湿疹が悪化してきます。冷房の使用や寝かせ方の工夫が必要です。

外耳道真菌症

外耳道の中にカビ(真菌)が生える現象です。自宅でも、換気が悪く高温多湿の空間では、風呂や畳にカビが生えることはよく経験します。真菌の培養条件に適した温度は35~36℃です。ヒトの深部体温37℃台ですので外界に近く換気が悪い外耳道の中で好発します。健常な外耳道にも、常在菌として約3%真菌をみとめますが、悪さはせず繁殖に適した条件が必要です。

原因は、頻回な耳掃除で、皮膚のバリア機能の低下が生じ、かきすぎで知覚鈍麻がおこりさらに感染防御機能を低下させます。その結果、外界からの浮遊真菌が外耳の奥の炎症を起こした骨部外耳道から鼓膜に寄生します。アスペルギルスやカンジダが主な原因菌種となります。外耳道の奥を強く掻く竹製の耳かきは、真菌が付着しやすく生じやすいと言われています。外耳炎や外耳湿疹の治療で使用するステロイド軟膏や、抗生剤の点耳や内服も原因となることもあります。難治な場合は、糖尿病などの全身疾患の関与も考えます。

 

耳掃除の在り方のまとめ

耳鼻咽喉科での耳掃除が必要な方

高齢者

特に在宅や施設で活動が低下した高齢者や認知症の方は、外耳の自浄作用の低下があり蓄積しやすくなります。

補聴器使用者

自分の耳の訴えが十分にできない乳幼児・学童

風邪をひき易い乳幼児は中耳炎の確認が必要です。鼓膜の確認のため、必要な方は耳掃除を行います。耳垢が心配であれば受診し、耳垢除去が必要な時は保険適応で耳垢栓塞症として耳垢除去も認められています。

乳幼児の場合外耳道が狭く、動くため、耳垢除去は難しく、人数と労力を必要とします

、耳垢充満があった方

外耳炎や外耳道湿疹・真菌などの治療後

耳閉感、難聴、耳漏、耳痛、痒み、臭い、耳鳴りなどある方

メ状湿型耳垢で、耳閉感をくりかえす方

耳掃除の回数

日本のネットの記事では家庭では月に1~2回程度の耳掃除がよく記載されています。前述の米国のガイドラインでは通常の人の耳垢は症状が無ければ放置してよいとなっています。これは米国と日本の医療事情の違いも考慮する必要があります。

耳垢形成には、個人差が多く、乾型、湿型の違いでも異なります。年少では皮膚の新陳代謝が高く、高齢者は自浄機能低下のため耳垢が蓄積しやすくなります。自宅で対応できるのか、耳鼻科受診で除去が望ましいのか、年に何回程度か、担当医と相談して決めるのが望ましいと思われます。

家庭での道具

綿棒、先を細くした布、固くこよりにしたティッシュなどは安全です。耳かき棒は耳掃除事故が心配です。綿棒も耳掃除事故の可能性がありますので、奥に入れません。ネットでは、内視鏡付き画像対応、LED付きなど売られているようです。アメ状耳垢が多い海外では、イヤーシリンジ(耳洗)が使われるようです。

道具より、まずは耳掃除の必要性と安全性を考えましょう。イヤーキャンドルは禁止です。

自宅ではどのように行うか?

外耳道の自浄作用により、外耳道の外まで運ばれてきた耳垢を取るだけにします。外耳道入口部から1cm以内の見える範囲の清掃にとどめますそれより奥にたまった耳垢は、耳鼻咽喉科で取ってもらうことを勧めます。湿型耳垢は家庭で取るのは難しいことも多く、耳鼻咽喉科での除去も考えましょう。綿棒や布等で、皮膚を擦ったりしないで、そっと拭き取る程度としましょう。乾型耳垢は、綿棒にベビーオイルやワセリンを付けるとくっつき易くなります。

綿棒を外耳の奥にいれると、耳垢栓塞を作り耳垢が外へでてこなくなります。また、外耳損傷や鼓膜外傷の事故の可能性が出てきます。耳掃除事故の報告では、耳かき棒と綿棒は同等の事故発生数が報告されています。

参考資料

Johns 1998 No.8外耳道をめぐって

外耳道真菌症の診断と治療 日耳鼻会報2019.5 796-798

女性とめまい・ふらつき・転倒

2019-06-12

鹿児島市は6月に入り、梅雨にはいりました。

めまいは気象病の一つでもあり、最近は女性のめまい・ふらつき・耳閉感を訴える方が多くなりました。当院の待合室は、風邪や中耳炎の子さんを連れたお母さんと共に、めまい・ふらつき・耳閉感長引く咳女性外来のようになっています。

 

エストロゲンの変化と性差医療の普及

女性は、思春期、成熟期、更年期(45~55歳)、老年期の人生の過程があり、エストロゲンの変化が生活に大きく影響を与えます。思春期は、エストゲンが急に増加し、日本人の平均閉経50.5歳で、40代半ばごろから急にエストロゲン低下します。60歳を過ぎると、女性のエストロゲンは男性より低下していきます。

エストロゲンには、心筋血管保護、骨量維持、糖脂質代謝、脳細胞の保護など重要な役割を持っています。

急なホルモンの変化も女性の体調に影響しています。

日本ではここ20年間に性差医療が普及してきました。初めて2001年に鹿児島大学に女性外来ができ、心疾患領域から、乳腺、泌尿器など急速に広がりを見せています。

性差医療情報ネットワークのサイト

 

28年度の国民生活基礎調査(厚労省)の自覚症状の報告貧血や全身状態を把握するため

耳鼻咽喉科領域では、耳鳴りと難聴は男女ほぼ同率ですが、めまいは女性が男性の約2.5倍高くみられます。男女ともめまい症状は、加齢変化のため、70代で増加しています。めまいについて、女性は、10歳代から増加し30~50歳代が多く70歳から再度増加してきます。

加齢女性ホルモン(エストロゲン)の影響および社会・心理的背景の関与が考えられます。

 

福岡県の久山町研究では、中枢性めまいの原因になる脳梗塞は男性が女性の270歳以上になると性差が縮小します。60歳代までの女性のめまいは、中枢性以外のめまいが多く、内耳性、自律神経性、貧血、立ちくらみ、肩こり関連めまい、片頭痛関連めまい、心因性めまいなど多彩な原因が考えられます。男性のめまいと70歳以上の女性のめまいは、中枢性の脳からのめまいの可能性が高くなります。

 

👉 思春期と立ちくらみ

一般的には、女性が男性より1.5~2倍多く認めます。受診する科でバイアス(偏り)がるため、当院では男性中学生が多い印象です。起立性調節障害としての詳細は日本心身医学会HPサイトで確認して下さい。

思春期のふらつき・立ちくらみの対応で、漢方療法や生活習慣の改善について、

よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛当院コラム)を参照して下さい。

 

👉 更年期症状とめまい

更年期症状は

血管運動神経症状冷えのぼせ、発汗、動悸

不眠、不安、イライラ、抑うつ気分、情緒不安定

腰痛、関節痛、しびれ、むくみ

めまい浮遊感、肩こり、頭痛、疲労感 などの

自律神経、精神、運動器、皮膚、泌尿生殖器、消化器領域に及ぶ多彩な症状を認めます。

更年期のめまい症状には、血圧変動と自律神経の関与が報告されています。更年期症状には、ホルモンの低下だけでなく、環境の変化による心理社会的変化が複雑に関与して表現されると考えられています。

治療:

ルモン補充療法

漢方療法:

当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など証を見極めた治療

向精神薬療法

不安・不眠・抑うつに対して、SSRIなど使用、心療内科と相談

環境の変化による心理社会的変化を考慮した、心因・家庭・職場の問題を確認しながら傾聴

 

ホルモン補充療法(HRT)は

血管運動神経症状(冷えのぼせ、発汗、動悸)の第一選となります。

この治療は血栓・乳がんのリスクもあるため次のサイトで確認して下さい。

ホルモン補充療法の実際(日本産婦人科医会)

更年期障害の基本事項(日本産婦人科学会)

更年期障害の簡単チェックは次のサイトでチェックを

SMI(簡略更年期指数)

 

副作用が少ない漢方療法は、更年期の不定愁訴に汎用されています。漢方漢方療法は、HRTと同等の効果がある報告あります。HRTは、めまいへの効果は乏しいといわれています。漢方療法は、特に、めまい、心悸亢進、咽頭症状に効果が高いと報告されているようです。

 

 

👉 耳鼻咽喉科でのめまい関連疾患と性差

施設により、めまいの原因疾患の統計はかなり違います。

徳島大学病耳鼻咽喉科の統計(2005年)では

末梢前庭性(内耳)65%

BPPV(良性発作性頭位めまい症) 32%

メニエール病 12%

突発性めまい、前庭神経炎、突発性難聴など21%

原因不明めまい症 21%

中枢性めまい 7%

血圧異常 4%

心因性 1%

院長紹介

 

開業の一般耳鼻咽喉科クリニックでは、

大学耳鼻咽喉科よりBPPVがもっと多く、メニエール病と中枢性は少ないと思われます

開業医では、ふらつき・立ちくらみの訴えの患者さんは多く、

原因疾患は様々で、感冒、自律神経性、起立性調節障害、心因性、筋緊張性・肩こり、片頭痛関連めまい、貧血、低血糖、食事摂取不良、脱水症、低血圧、熱中症など多彩です。高齢化に伴い、平衡機能低下や筋力低下・関節障害(フレイル・ロコモ)などの加齢によるふらつきの患者さんは増加しています。

BPPV,メニエール病、自律神経障害、片頭痛関連めまい、筋緊張性・肩こり、貧血は男性より女性に多い疾患です。メニエール病は、男女差もありますが、ストレス、睡眠不足、几帳面との関与が大きい病気です。更年期障害の方にメニエール病が多い報告があります。メニエール病の誘発因子に月経があげられ1.5倍となっています。

 

BPPV良性発作性頭位めまい症

(男性より3倍女性に多く外来で最も多い回転性めまい)

回転性めまいの内耳疾患で、めまいの1/3以上から半分程度を占めるBPPVは、中高年の女性に多い疾です。

内耳の耳石が何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで半規管を刺激してめまいが起こります。運動不足、長期臥床、外傷後に起こり易くなります。長期間寝たきりになっていると、半器官へ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症してきます。また耳石もカルシウムであるため、閉経後の女性に多い骨粗しょう症との関連も考えられています。更年期障害とBPPVが併存することも多くあります。

BPPVは、サッカーの澤穂希が罹患した病気です。外傷が原因と言われています。

 

治療:

浮遊耳石置換法自宅でのめまい体操です。発症機序から、薬で治す病気ではありません

2~3週間で自然治癒することも多い疾患です。上半身挙上枕を高くすると起こしにくくなると言われています。対症療法として嘔気、めまいに対しての薬物療法は一時的に行う程度です。更年期障害や心因性など併存疾患への薬物療法は行われます。(但し、薬物療法は担当医により対応が異なることがあります)

再発率も高いため普段から運動を心がけ、動くことを意識する必要があります。朝のラジオ体操、NHK教育テレビの体操など生活習慣の一つに取り入れてみましょう。

 NHKガッテン20191023放送サイト上半身挙上の仕方が説明されています。

BPPVの基本事項は次のサイトを見てください

メディカルノート BPPV

(新潟大学耳鼻咽喉科 堀井教授 監修)

MSDマニュアル(世界的オンライン医学サイト) BPPV

 

 NHK健康チャンネルの動画を参考にめまい体操にチャレンジしましょう。

半器官結石(右、左)BPPVのめまい体操(Epley)

BPPV全般の寝返り体操 BPPV全般のめまい体操

(特に外側半規管結石)

平衡感覚を鍛えてめまいを解消

 

動画、BPPVだけでなく、内耳性めまい(前庭神経炎、メニエール病)の急性期後のリハビリとしてのめまい体操や加齢変化による平衡機能の低下予防にも応用できます。

 

👉 フレイル・ロコモを意識した高齢女性のふらつき・転倒への対応

女性は閉経後、急速に骨粗鬆症が進行します。脊椎圧迫骨折の亀背は女性に多く、高齢になれば、転倒のリスクが急に高まります。女性は男性の約2骨粗鬆症が多く2倍弱転倒の危険性が高いと言われています。

睡眠薬や安定剤の服用者は、転倒の危険がさらに増えます。骨密度は20歳ごろがピークと言われ、若いときの過剰なダイエットや痩せすぎは、閉経後の骨粗鬆症の悪化が予測され、骨折予備軍と考えられています。

フレイルとは、海外の老年医学で使用されているです。

生活機能障害と心身の脆弱性の意味で用いられ、

期発見、早期介入で生活機能の向上を図ります

以下の3項目以上該当するとフレイル

1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します

  • 体重減少: 6か月間2~3kg以上の(意図しない体重減少
  • 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
  • 歩行速度の低下:1m/秒未満の場合
  • 握力の低下:利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満の場合
  • 身体活動量の低下:1週間に運動や農作業を何もしない

フレイルの簡易チェックは、ふくらはぎの指輪っかテストで隙間ができることで判断します

➡ ふくらはぎの指輪っかテスのサイト

原因は、筋肉量の低下(サルコペニア)と低栄養です。

ロコモティブシンドローム

2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、

運動器機能の障害で移動機能が低下をきたした状態を意味します。

以下の事項が原因となり、変形性関節症・脊椎症の進行や骨折を起こし重症化していき寝たきりの原因となります。

  • 運動不足・肥満による腰・膝への負担または痩せすぎ
  • 骨粗鬆症
  • サルコペニア(筋肉減弱)
  • 外出回数や活動量の低下
  • 無理な姿勢や使い過ぎによる障害

 ふらつき・転倒へ予防のため、耳鼻咽喉科整形外科老年内科での総合的対応が必要

めまい・平衡障害があると転倒骨折のリスクは2.9倍高まる報告があります。

老人性平衡障害とフレイル・ロコモが重なり転倒・骨折の可能性がさらに高くなります。

対策➊食事、運動、生活

ロコモ体操:兵庫県立尼崎総合医療センター(youtube)

運動はスクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行い、食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンDをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。

ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。

対策❷小脳・前庭機能

耳鼻咽喉科・めまい平衡医学領域からは、小脳・前庭機能の平衡感覚を鍛えるめまい運動

目で指の左右追い、振り返り、継足し歩行

前述のNHK健康チャンネルの動画を可能な範囲で行うとよいでしょう。

継足し歩行は、歩行器やシルバーカーの使用を勧めます。歩行が無理なら、両足を前後一直線上にそろえ立ちます。手を壁にあて支えてかまいません。

日常生活での注意点

急な立ち上がりや急に振り向くことを避ける

階段の降りる時は手すりを使い慎重に

両手フリーで歩行、荷物は背中に背負うか手押し車に入れる

戸外では杖や手押し車を使用

室内の障害物の整理、バリアフリー、トイレや廊下を明るく

参考資料

加齢によるめまい・ふらつきは自分で治そう!五島 杏林医会誌 291~293 2018年12月

更年期女性のめまい症状に対する検討 日耳鼻 115:534-539 2012

更年期障害の診断と治療 沖縄医報 Vol42, No2 2011

 

« Older Entries Newer Entries »