咳
わが国では、一般人口の10%程度が咳嗽の症状を有し、2%程度が8週以上の慢性咳嗽を認めます。
咳はきわめて一般的な症状であり、
不眠や仕事勉強の能率低下をもたらし、生活の質に大変影響をあたえます。
自然治癒傾向の1~2週間で改善する普通感冒による咳から、遷延性および慢性咳嗽になると、様々疾患が背景にあり、耳鼻咽喉科、小児科、呼吸器科、消化器科、循環器科領域の幅広い知識、手技と経験が必要とされます。
当院の方針
身体診察、理学所見、咳の時間経過を参考に、臨床検査や病歴から治療前診断をつけ、その疾患の特異的治療薬の効果で診断(治療後診断)
を行います。
咳は生態防御反応であり、中枢性鎮咳薬は誤飲のリスクを高め、必要な咳を抑制するので、必要最小限の咳止めの使用をアドバイスします。
2017年、小児12歳未満には、風邪薬の医療用や一般用のコデイン使用制限が厚労省から公表され、2019年から禁忌となります。小児では呼吸抑制や稀に死亡例の報告があります。
乳児、幼児、学童、成人、老人まで、その各年齢に則した治療法を選択、必要によっては他科専門医と連携いたします。
東洋医学的視点から、各年齢、咳の経過に合わせた漢方薬の導入。原因を特定できない場合にも漢方的な証に合わせた対応を行います。
3週間以内の急性咳嗽: 普通感冒、上気道炎後の咳だけ残る感染後咳嗽
3~8週間の遷延性咳嗽:感染後咳嗽など
8週以上の慢性咳嗽:
アレルギー機序:
喘息/咳喘息 アトピー咳嗽(中枢気道の蕁麻疹と同様の病態)
非アレルギー機序:慢性副鼻腔炎/副鼻腔気管支症候群 胃食道逆流症(GERD)心不全 慢性閉塞性肺疾患(COPD)肺癌 肺炎 間質性肺炎 肺結核 中枢気道病変(気管/気管支結核、気道異物、気管腫瘍など)
薬剤性:高血圧治療薬のACE阻害薬による咳
*治療初期の段階では、上記すべてを想定して、診療を進めるので診断治療が難しくなります。
我が国の小児の場合は、4週以上持続する咳は4%程度のため、
小児の場合:2週以内を急性、2~4週を遷延性、4週以上を慢性とする
考えもあります。
各年代での特徴:乳幼児・学童・高齢者
乳児:
鼻炎による後鼻漏の咳は多く鼻処置のみで軽快することもあります。
哺乳時や嘔吐時の胃食道逆流による咳も多く認めます。
乳児早期の吸気性喘鳴は先天性疾患疑います。
生後6か月以内の百日咳は無呼吸と咳のこともあり注意は必要です。
RSウイルス感染は6か月未満でも感染してきます。
幼児:
乳幼児までは、聴診による呼吸音、喘鳴(吸気、呼気、)病歴、随伴症状、家族歴、採血による診断になります。
反復感染による遷延性咳嗽は非常に多くなってきます。
喘息が次第に多くなってくる時期ですが、成人と同等の検査ができないこともあり、早期喘息の診断は難しく、反復性喘鳴とすることがあります。
さらに咳喘息の診断はもっと難しくなります。
鼻・副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による後鼻漏の咳が増えてきます。
4~6歳以上は、マイコプラズマ感染になりやすくなります。
クループ症候群や気管異物(ピーナッツなど)も注意は必要です。
学童:
学童期以降は、胸部XP、採血、Ⅰ型アレルギー検査、呼気eNO、呼吸機能検査が行えるようになり、聴診や局所所見だけでなく、検査併用で診断を進めていきます。
日中に激しく、睡眠中や遊びに熱中しているときは消失する乾性咳嗽を特徴とする心因性咳嗽が増えてきます。
アトピーや鼻・副鼻腔炎の関与の割合が大きくなり、肥満児では成人同様の胃食道逆流の関与も増加してきます。
マイコプラズマ、クラジミア、百日咳はいつも注意が必要です。
高齢者:
嚥下障害による、誤飲が関与した咳、痰が多くなります。
中枢性咳止めは原則禁止です。
加齢による口腔乾燥や薬剤が関与した咽喉頭症状が増加し、同時に咳の 訴えも多くなります。
5種類以上を内服するポリファーマシー(薬の飲み過ぎによる影響)
との関係をいつも心掛ける必要があります。
当院の検査:
胸部・副鼻腔XP
各種採血(学童以降)
呼吸機能検査
呼気一酸化窒素(eNO)(好酸球性気道炎症)
咽喉頭ファイバー
胸部CTは病院紹介