かぜ症候群
『風邪をひいた』とよく言いますが、
『風邪』と言う診断名としての病気があるわけではありません。
初期の段階で、私たちが風邪と呼ぶのは、
鼻水や咳、咽頭痛、発熱、腹痛、下痢、倦怠感などの風邪症状を指しています。
長引く咳に移行するマイコプラズマ、百日咳、咳喘息、結核
抗生剤が必要になる溶連菌感染、細菌性肺炎、窒息の恐れがある急性喉頭蓋炎、
不眠や生活の乱れによる倦怠感など様々な背後の病気が隠れています。
発症直後の受診時点では、風邪の判断は難しく、1週間ほど過ぎ、経過が良ければ、普通感冒(いわゆる風邪)と判断できます。
初診時点では、様々な病態を除外せず、風邪症状(かぜ症候群)としてとらえ注意深い診察と経過観察が重要になります。
医者の間では、『後医は名医』と言われます。
第一線の開業医の場合、症状・所見がまだ十分発現していない初期の段階では、採血などせず、身体診察のみで判断することが多く、その段階で判断するのは難しく、その後、改善しないため、
次のクリニックや大きな病院で経過を確認し、検査をしてから適切に判断できる後医は名医となると言う意味です。
かぜと抗生剤について:
普通感冒は、自然治癒するウイルスによる風邪で、通常3日前後で自然に改善し始め7~10で回復します。
4日以上続く熱には注意が必要です。
風邪を治す薬はないといわれる理由は、風邪はウイルス感染で、インフルエンザやヘルペスを除いて、
薬の効果が期待できるウイルスは存在しないからです。
抗生物質は細菌を退治する薬なので、風邪のウイルスには効果なく、風邪は抗生物質では治りません。
安易な抗生剤の使用は、腹痛・下痢・アレルギー症状を発症させることも多く、腸内細菌を乱し免疫や体調に影響が出てきます。
また、社会的に問題となる耐性菌の出現を助長していきます。
当院の方針:
自然治癒力を引き出す
発熱、鼻汁、咳嗽は生体の防御反応で、抑え込まず利用することが重要です。実際、風邪薬の使い過ぎにより気道粘膜の防御反応を抑え過ぎ、こじらせる場合が多くみられます。
鼻洗・鼻処置・鼓膜切開・のどや喘息の吸入など内服以外の治療も積極的に行います。
東洋医学の発想で、食養生、生活指導、漢方薬にて生体バランスを整え対応することもあります。
アレルギー疾患との鑑別
アレルギー性鼻炎、咳喘息、喘息の悪化には、アレルゲン、気象の変化、感染症などを伴うことが多く、ウイルスなどの感染症による症状との鑑別が難しくなります。
みみ・はな・のどの視覚的説明
必要な場合は、硬性耳鼻鏡、鼻咽頭喉頭ファイバーを上手に利用し、
鼓膜、外耳道、鼻内、喉頭や口を開けるだけで見えない鼻やのどの奥を録画し、患者さんと画像を見ながら説明し理解を深めてもらいます。
家庭環境、生活背景、服用状態を考慮した対応
風邪症状の出現は、疲れ、ストレス、寝不足、過労や職場家族関係と密接です。
生活背景に配慮した対応が感染の広がりや反復を抑えることになります。
当たり前のことですが、十分な休養と睡眠は最も重要なことです。
持病との関係やその服用薬に配慮した治療を心掛けています。
チーム医療に中で、かぜ症状に対応
医療の発展高度化に伴い一人の町医者ができることは、限られてきています。高度医療機関や他科との医療連携そしてパラメディカルスタッフとの連携(チーム医療)の必要性がますます重要となっています。
当クリニックの近くの開業医の先生や病院の専門医の先生との病診連携の中で、風邪症状に隠れた背後の耳鼻咽喉科重症疾患や肝臓、腎臓、肺、消化器、脳などの疾患への対応も重要視しています。
インフルエンザ、肺炎、喘息、結核、肺癌、薬剤性の症状、髄膜炎、菌血症、急性喉頭蓋炎など
風邪から似て非なる疾患:
亜急性甲状腺炎、胃食道逆流、心不全、心疾患の関連痛、肝炎、腎盂炎
当院の院内検査:
迅速キット検査
インフルエンザ検査
RSウイルス検査(1歳未満)
ヒトメタニューモウィルス検査(6歳未満)
マイコプラズマ検査
溶連菌検査
アデノウイルス検査
院内検尿 など
迅速血液CRP院内検査
(肝腎機能や詳細検査は後日、検査センターからの報告待ちになります)
胸部、顔面、耳X線検査
鼻咽頭喉頭ファイバー
超音波エコー検査(頸部)
気道好酸球炎症検査(eNO)
スパイロメトリー
など・・・