院長の健康情報コラム
お子さんのめまい・ふらつき・立ちくらみ
お子さんのめまい・ふらつきは成人に較べ非常に少なく、耳からのめまいは成人の1/100程度と考えられています。疾患が少ないため、医師の経験不足も認められる領域です。
お子さんは成長過程のため、小学高学年頃から思春期にかけて成長過程の症状でもある起立性調節障害によるめまい・ふらつき・立ちくらみが増えてきます。男性にも認めますが、特に女性は成人同様の貧血によるふらつきもこの頃からから多くなります。小さいお子さんの場合は、自分のことをご両親に伝えることが苦手のため診断を難しくしています。
今までの日本からの報告では、子供のめまい・ふらつきの原因で多いのは起立性調節障害(OD)と考えられていました。海外の子供のめまい報告では、片頭痛関連めまい(VM)や良性発作性めまい(BPV)が多く報告されています(両疾患で約40%程度)。以前、日本では疾患概念として良性発作性めまい(BPV)や片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛:VM))は医師の中でもなじみが薄い疾患でした。最近、この疾患概念が普及してきて日本でもVMやBPVが小児のめまいの原因として報告されるようになってきています。VMは反復する難聴や音過敏もあり耳からのめまいとの鑑別を必要とします。起立性調節障害も頭痛が出現することも多く片頭痛との鑑別を難しくします。海外の統計では頭部外傷によるめまいは3番目に多く、心因性めまい、前庭神経炎も比較的多く認めます。稀ですが、小児のめまいの特徴として脳腫瘍、側頭葉てんかん、内耳奇形、ムンプスなどの感染によるものも認められます。原因不明が30%程度認めるようです。
ポイント!!
お子さんのめまい・ふらつきの原因は成長過程の貧血や起床時の低血圧・起立性調節障害(OD)だけではなく、将来片頭痛に移行することもある幼児期に多い良性発作性めまい(BPV)や、学童期以降に多い片頭痛関連めまい(VM)が多いことがわかってきました。ODと片頭痛は併存する傾向があります。小児の片頭痛は成人と違い、後述の小児周期性症候群として現れることがあります。BPVとVMは今まで日本では医師の間でもなじみが薄い疾患概念です。
追記:片頭痛は子供に多いアレルギー性鼻炎と併存することも多く頭痛の原因が鼻からか片頭痛からか治療経過で見分けることも必要になります。
海外学童の有病率は、2.6%と高く、日本での報告少ない疾患です。疾患概念が医師に浸透していない可能性があり、最近、日本でも報告が増加しています。小児に特有な片頭痛の一つと考えられています。海外の報告では子供のめまいの約20%が、この良性発作性めまいによるものです。ぐるぐる回るような感覚や、回って倒れるような感覚を感じるめまいで、2〜4歳頃に発症することが多く、通常は成長とともに症状が消えます。原因はよくわかっていませんが、めまいの多くは数秒から数分しか続かず数時間持続は稀、めまいが起きていない間は特に異常は見られません。なお、良性発作性めまい患者の半分は家族に片頭痛持ちがおり、患者の一部は将来片頭痛を発症しています。
◆良性発作性めまいの診断基準( Benign Paroxysmal Vertigo:BPV)
➊前触れなく生じ,発現時の症状が最強で,意識 消失を伴うことなく数分~数時間で自然寛快する回転性めまい発作
❷下記の随伴症状・徴候のうち少なくとも1 項 目を満たす
- 眼振, 運動失調,3. 嘔吐,4. 顔面蒼白, 5. 恐怖
➊および❷を満たす発作が5回以上
❸発作が無いときは正常
回転性めまいを持つ年少児が,ぐるぐる回る 症状を説明することは難しいかも知れません。 発作的な落ち着きのなさが親によって観察される場合,これが年少児の回転性めまい発作を説明しうることがあります。
今まで、めまい患者さんが、頭痛を訴えても、脳卒中や脳腫瘍以外では、関連を疑うことは今まではあまりありませんでした。最近では、頭痛外来の片頭痛患者の半数以上に何らかのめまい症状があり、片頭痛とメニエール病の共存率も高いと知られています。前庭性片頭痛という疾患単位として診断基準が確立されたのは近年(ICDHβ3 2013年)のことです。片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)は、今まであまり知られていなかったため、難治性や原因不明のめまいの患者さんの中にかなりの割合で含まれていると考えられています。
学童以降、最近では子供のめまいの約20%がこの病気によって起きていると考えられてきました。発症しやすいのは12歳頃です。発症すると片頭痛とともに、日常生活に支障をきたすほどの回転するようなめまいや、ふらつきなどが現れます。前庭性片頭痛は特に前触れもなく症状が出ることもあれば、頭を動かしたり、目の疲れ、心理的なストレスなどがきっかけとなって症状が出ることもあります。めまいの持続時間は、短いと数分、長いと数日続くこともあり、場合によりまちまちです。
◆診断(成人)
*過去も含め片頭痛症状がある
*めまい前後に頭痛がある
*めまい症状は、自発性めまいや視覚刺激・頭部運動で誘発されるめまいや浮動感(回転性めまいが多いが、一部に浮動感あり)
*少なくとも5回のめまい発作で、5分~72時間持続
*めまい発作の少なくとも50%に1つ以上の片頭痛兆候(頭痛、光・音過敏、前兆)がある
*めまい発作時は、高度難聴はなく、耳鳴・耳閉感のあることは多い
◆生活で注意点と対策(成人)
*強い光、騒音、人混みを避ける
*寝過ぎ寝不足を避け、休日も普段通り
*ストレス回避
*ワイン、チーズ、アルコール、チョコは避ける
*赤系サングラスを選ぶ
*片頭痛発作時は、静かな暗い場所で安静または睡眠、冷たいタオルで痛む箇所を冷やします。
◆お子さんの場合、家族特に母親の片頭痛歴や乗り物酔いのしやすさは片頭痛の診断の助けになります。治療は成人と同様の薬が使えないことが多くあります。
国際頭痛分類第2版では,小児に特有な片頭痛として「 小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)」が加えられています.小児周期性症候群には下記のものが含まれます.頭痛がなくとも,周期的に吐いたり,腹痛やめまいを起こす場合も片頭痛の仲間に入れられています.
*周期性嘔吐症(CV) 海外・国内共に報告が多い
過去1年に3回以上のエピソード、発作時以外は健康 嘔吐は1時間から数日持続。ストレス、感染、疲労、食事(チーズ・チョコなど)、生理などが誘因となります。夜間・早朝に発症、片頭痛の治療薬が効果を認めることが多くあります。小児5歳、成人35歳が発症の平均値で、成人にも発症します。軽症は2~5年で自然軽快します。
*腹部片頭痛(AM) 海外有病率1~4% 日本での報告少ない
CVと違い嘔吐は少なく、腹痛が主の症状です。発症は3~15歳で8歳が平均値です。大部分の小児は、将来片頭痛に移行します。1~72時間持続する腹痛(臍周囲、正中部または局在に乏しい)。発作時は悪心・嘔吐・食欲不振・顔面蒼白などあり。
*小児良性発作性めまい(BPV) 海外学童の有病率2.6% 日本での報告少ない、詳細は前述。
子供のめまいは起立性調節障害によって起きることもあります。この障害は自律神経の異常や水分の摂取不足などによって起き、めまい以外に朝起きにくくなったり、吐き気や倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などを感じることがあります。10〜16歳頃に発症しやすく、小学生では約5%、中学生では約10%以上の子供が発症しています。起立性調節障害の症状は、思春期には健常な子どもでも自覚することがしばしばあります。すべてを疾患として扱う必要はありませんが、生活に支障をきたしている場合は疾患として扱い、診察を受ける必要があります。
*起立直後性低血圧:起立直後に強い血圧低下および血圧回復の遅延を認める。ODの20%程度あり最も多く認めます。起立直後のめまい・ふらつき・立ちくらみ・頭痛が主な症状。
*体位性頻脈症候群:起立直後性低血圧の次に多い病態です。起立性低血圧をきたさずに頻脈だけが生ずることになります。頭痛・倦怠感が強くなるタイプです。起立3分以後 心拍数増加≧35/分または、心拍数≧115/分。
*遷延性起立性低血圧:起立3~10分経過して収縮期血圧15%以上または20mmHg以上低下。
*神経調節性失神:起立中突然の意識低下
起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神の詳細な診断には、ヘッドアップティルト試験が必要です。
◆鹿児島医療センター循環器内科(ヘッドアップティルト試験:サイト)
◆ヘッドアップティルト試験(youtube)動画で詳細な解説あり
ODについては、次のサイトで確認して下さい。
◆起立性調節障害(日本小児心身医学会:サイト)
◆よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛(当院コラム:サイト)
*良性発作性頭位性めまい:成人では最も多い耳からのめまいです。小児では耳石の変性は少なく稀、外傷が関連することがあります。
*メニエール病とは、めまいと吐き気の発作が繰り返し起こる病気で、耳鳴りや難聴を伴うことも多くあります。30〜50歳頃にかかりやすいとされていますが、子供でも小学生ごろから発症することがありますが稀です。
*前庭神経炎:突然めまい症状が出現しめまいは数ヶ月に及ぶこともあります。耳鳴り難聴はありません。男性にやや多く,発症年齢は50 歳代に多い。上気道感染の先行する症例が多く、前庭神経節に潜伏感染している単純ヘルペスウイルス1型の再活性化により前庭神経炎が発症するとの説も提唱されていますが、抗ウイルス薬は前庭神経炎に対して効果がありません。海外の子供のめまいの報告では、BPV,VM,頭部外傷の次、4番目の多さとなっています。日本では子供の発症は稀です。
*乳幼児期:出生時に蓄えていた鉄は6ヶ月頃までに低くなり、鉄分の補給が必要、離乳食を開始し、鉄分を補給します。特に未熟児で生まれると鉄分の蓄えが少ないため、貧血はより強く出ます。離乳食がうまく進まなかったり、食べている食品中に含まれる鉄の量が少なかったりすると、鉄分の摂取が不足します。また、急激な発育・成長によって、今まで以上に鉄分が必要となることで鉄分が不足することがあります。加えて、過度の牛乳摂取による貧血が生じることもあります。
*思春期:体の急激な成長によって多くの鉄分が必要となりますが、このときの鉄分は通常の食事では賄いきれない場合が少なくありません。女子では生理によって血液が失われるため貧血を起こすことがあります。特に女子では過度のダイエットによる鉄分の摂取不足も貧血の原因になります。このほか、激しい運動によるスポーツ貧血(緩衝材入りの靴を履き予防)が起こることもあります。
参考資料
小児めまいの取り扱い:堀井 新 小児耳 2016; 37(3): 300‐304
小児のめまい:五島 史行 小児耳 2011; 32(3): 305‐309
子供のめまい:OD 田中 秀高 Equilibrium Res Vol.71(2) 53~60,2012
子供のめまい:五島 史行 脳と発達 2017;49 237‐42
インフル・新型コロナに解熱鎮痛剤は大丈夫?
新型コロナのパンデミックが、中国から欧米・米国・イランなどへ移行しています。フランス保健相が新型コロナ感染時にイブプロフェンの使用で悪化させるとSNSに書き込みアセトアミノフェンの使用を推奨、2020年3月17日にWHOが新型コロナ疑いの患者にイブプロフェンの使用について注意喚起が行われ、死亡リスクを高めるかは調査中となっています。世界的雑誌ランセットでイブプロフェンやその他の解熱鎮痛剤(NSAIDs)が、新型コロナの重症のリスクを高める仮説が記載されたのがきっかけです。実際は根拠がなく不明というのが今の現状です。
自宅で熱が出ると風邪薬や解熱剤を使用して様子をみるのは誰も行うことです。冬から春にかけての発熱・風邪症状の初期はインフルエンザの初期症状と自分では区別つかないことがほとんどです。
インフルエンザでの解熱剤(イブ・ロキソニンなど:NSAIDs)の使用で問題となるのが
日本で小児に報告が多い❶インフルエンザ脳症と、稀な❷ライ症候群です。
❸NSAIDsの妊婦の方への使用について、先天奇形、動脈管収縮が報告されているので、原則使用しません。
NSAIDsは、広義にはステロイドではない抗炎症薬すべての総称です。シクロキシゲナーゼを阻害する作用を持っています。皆さんに馴染みのバファリン、イブ、ロキソニン、アスピリン、ポンタール、ボルタレン、インドメタシン、セレコックス、アセトアミノフェン、ピリン系など多数の種類があり、多くの風邪薬の中にも使われ、PLのサリチルアミド(サリチル酸系)・アセトアミノフェン、ノーシン・新セデス・ナロンエースなどのエテンザミド(サリチル酸系)、セデスハイ・サリドンA・リングルAPなどイソプロピルアンチピリン(ピリン系)など市販薬に多数含まれています。湿布薬にも含まれています。
ポイント!!
インフルと感冒が増える時期の解熱鎮痛剤は、小児から成人・妊婦の方まで、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)がお勧めです。
2022年12月現在 実際の臨床現場では、コロナ感染者に対して、禁忌でなければイブ、ロキソニンは頻回に使用されています。
➊インフルエンザ脳症
インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症です。死亡することもあり、後遺症が残ることも多くあるため危険な病気です。発熱後2日以内に発症することが多く、症状は嘔吐やけいれん、意識障害、異常行動などが報告されています。インフルエンザからインフルエンザ脳症にかかる頻度は多くはありませんが、特に子供ではインフルエンザ発症時のリスクとして注意する必要があります。発熱に何らかの神経症状が伴う場合、インフルエンザ脳症が疑われます。初期の異常行動は一過性の場合と脳症の初期症状の区別が難しいことがあります。脳症ではないと判断された後、3~5日後にけいれんや意識障害が出現するといった事例も報告されています。
子供の発症が多くみられますが、成人・高齢者も認めるためすべての人が注意すべき病気です。
2001年厚労省:医薬品等安全対策部会(サイト)
インフルへの解熱剤投与について
解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、因果関係はまだはっきりしていませんが、インフルエンザ脳炎・脳症に対してジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)は禁忌。メフェナム酸(ポンタール)の小児への使用は行わないとなっています。
日本小児科学会では(2000年)、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンが適切であり、一部の非ステロイド系消炎剤はインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子ではないが、その合併に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際しては非ステロイド系消炎剤(NSAIDs:ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、アスピリンなど)の使用は慎重にすべきである旨の見解を公表しています。
結論:インフルエンザ脳症にはNSAIDs(ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、アスピリンなど)は慎重。ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)は禁忌。メフェナム酸(ポンタール)は小児に禁忌。欧米では小児のインフルの解熱剤にイブが使用されることがありますが、日本での使用は慎重となっています。アセトアミノフェンが適切です。
❷ライ症候群
ライ症候群はインフルエンザ脳症と同じものではありません。先行するウイルス感染から5~7日ごろ発症します。インフルエンザや水ぼうそうなどに罹った時、解熱剤(特にアスピリン:サリチル酸系薬剤)を服用している小児(18歳未満)が、急性脳症や、肝臓の脂肪浸潤を引き起こして、命にかかわる重症な病気になる事があります。これをライ症候群といいます。サリチル酸系薬剤の使用で35倍発生リスクが上昇します。米国では1980年代からサリチル酸系薬剤の使用の減少で、現在稀な疾患になっています。ライ症候群:MSDマニュアル(サイト)
また診断技術の進歩で、本当の原因が判明して以前アスピリンが原因と考えられていたライ症候群が減少しているとも考えられています。現在の診断技術によって過去のライ症候群の分析をすると、感染症、代謝疾患、中毒などの疾患がかなり混在していることが指摘されています。アスピリンが原因で生じるライ症候群は従来からいわれているよりもずっと少な いであろうと考えられています。
➡日本での対応:小児ライ症候群(厚労省:サイト)
日本では、解熱鎮痛剤とライ症候群との明確な因果関係は確認されていません。厚労省は、1998年に、アスピリン等のサリチル酸系医薬品について、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に対する投与を原則禁忌とする措置を行っています。サリチル酸系ではないジクロフェナクナトリウム(ボルタレン、アデフロニック)もサリチル酸系医薬品と同様に、小児のウイルス性疾患(水痘、インフルエンザ等)の患者への投与を原則禁忌とすることが適当と判断されました。 アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)、メフェナム酸(ポンタール)、イブプロフェン(イブ)は評価困難、さらに注視となっています。
結論:ライ症候群を予防するため、インフル・水ぼうそうの18歳未満(日本では15歳未満)への使用はジクロフェナクナトリウム(ボルタレン、アデフロニック)やサリチル酸系医薬品は禁忌。現在では、アスピリンが原因で生じるライ症候群は従来からいわれているよりもずっと少な いと考えられています。
*サリチル酸系医薬品含有市販薬とは:PL(サリチルアミド含有),ノーシン・新セデス・ナロンエースなど(エテンザミド含有医薬品)
❸妊婦の方への使用
イブ・ロキソニンなどの解熱鎮痛薬(NSAIDs)は使用せず、アセトアミノフェンを使用します。妊娠初期の発熱は、先天奇形との関連が報告されていますのでアセトアミノフェンを使います。ボルタレン、ロキソニン、イブなどは胎児毒性として、動脈管収縮の報告があります。プロスタグランジン合成阻害しない塩基性のソランタールは使用できることもあります。唯一のアセトアミノフェンの問題は、ADHD,多動、自閉症が言われていますが結論は出ていません。低用量アスピリンだけは、抗リン脂質抗体症候群、妊娠高血圧症候群の予防で使用されます。尿路結石など激しい痛みにはペンタゾシンを屯用で使います。トラマドールは使いません。
妊婦&授乳と薬:飲んで大丈夫?(当院コラム)
花粉症に新たな治療薬(ゾレア)
今シーズンの花粉症に新たな治療薬が登場しました。Webニュース(サイト)では、『ノバルティスファーマの抗IgE抗体「ゾレア」(一般名・オマリズマブ)で、2019年12月に「季節性アレルギー性鼻炎」への適応拡大の承認を取得。すでに気管支喘息や慢性蕁麻疹の治療に使われている薬剤ですが、既存の治療で効果不十分な重症・最重症の花粉症にも使えるようになりました。花粉症に対する抗体医薬は世界でも初めてです』という内容です。
日本医科大耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大久保公裕教授によると、ゾレアの効果は「従来の薬はほぼやめられるほど」「ゾレアを投与すればアレルギー症状としては花粉症シーズン前とほぼ変わらない状態になるだろう」といっています。
👉 問題点として高薬価であること。
ゾレアをめぐっては、抗体医薬であるがゆえの薬価の高さと、花粉症に適応が広がることによる保険財政への懸念する声があります。
ゾレアの薬価は75mgで2万3625円、150mgで4万6490円。患者の体重と血中IgE濃度に応じて1回75~600mgを2週または4週に1回投与しますが、600mgを投与すると1回あたり18万5960円の薬剤費がかかることになります(患者の自己負担は3割負担で5万5788円)。2週毎に注射すると薬剤費だけで一ヶ月に37万円程度(3割負担で約11万円)かかります。その他に診療費やその他の薬剤費がこの薬価に加算された支払いが必要になります。このゾレアは、ヒスタミンH₁受容体拮抗薬と併用して使用するとなっています。高額療養費制度については、保険加入先にお問合せ下さい。
高額な上、花粉症治療薬としては新規の作用機序を持つため、厚生労働省はゾレアの投与が最も適した患者に限って使用されるよう、「最適使用推進ガイドライン」を策定。これによると、ゾレアの投与対象は季節性アレルギー性鼻炎の中でもスギ花粉症の患者に限られ、鼻噴霧用ステロイド薬とケミカルメディエーター受容体拮抗薬(通常のアレルギー薬)による治療を受けてもコントロール不十分な鼻症状(重症・最重症)が1週間以上続くことを確認してからでないと使うことができません。
➡初回投与前に採血が必要になります。
スギ花粉抗原がクラス3以上であることと血清中総IgE濃度の確認が必要になります。添付文書では、季節性アレルギー性鼻炎が効能になっていますが、厚労省の最適使用推進ガイドラインでは、スギ花粉症のみになっています。
➡投与前に1週間以上1日の鼻かみとくしゃみの回数と1日の鼻閉の状態の毎日の記録が必要です。
鼻閉の評価は以下から選びます。
①なし②鼻閉あり、口呼吸なし③鼻閉強い、口呼吸時々④鼻閉非常に強い、口呼吸かなりの時間⑤一日中完全に鼻閉
➡12歳以上であることが必要です。
➡一回600mg皮下注射するには別々の場所に4か所注射が必要です(1回の皮下注射は150mgまでです)。
➡本剤投与中にめまい、疲労、失神、傾眠があらわれること があるため、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事す る場合には十分に注意します。
➡このゾレア治療は対症療法であることを理解して下さい。
従来の薬物療法やレーザー治療と同じ対症療法(効果は一時的)です。
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)のように長期に改善を期待できる治療ではありません。
*舌下免疫療法(スギ・ダニ)(当院お知らせ)を参照して下さい、長期に効果が期待できます。
*オマリズマブ 最適使用推進ガイドライン2019年12月(厚労省 )
*重症花粉症ドットコム(ノバルティス)
👉 少なくはないアナフィラキシー発症のリスク
ゾレアの添付文書のその他の注意の項目に
『国内臨床試験において、アナフィラキシーは報告されていないが、気管支喘息患者を対象とした海外臨床試験に おいて報告されており、発現頻度は成人で0.1%(7例/5,367 例)、小児で0.2%(1例/624例であった。また、海外市販後の自発報告において、アナフィラキシー及びアナフィラキ シーの可能性のある過敏症反応の発現頻度は、少なくとも 0.2%と推定され、そのうち約30%は本剤投与2時間以降に発現していた』と記載があります。
季節性アレルギー性鼻炎の国内第三相試験161名では、アナフィラキシーは認めてないようですが、もっと多い前述の海外臨床試験で、アナフィラキシーが喘息の5000例で0.1%、小児600例では0.2%は、見過ごせない数値です。海外市販後も0.2%(500人に1人)のアナフィラキシー及び、その可能性の報告があり、その30%は投与後2時間以降の発現のため自宅や夜間に生じる可能性があります。長期間の定期的投与後にお いても発現することもあります。
【ポイント!!】
スギ花粉症は、死亡する病気ではありません。
喘息は、稀に死亡することもあります。
ゾレアの効果は優れているようですが、重症の花粉症かを判断の上で、治療基準に一致しているかの確認作業が必要です。希望者すべてにできる治療ではありません。
通常の治療1週間と検査を行ってからの治療となるため、通院後1~2週間以降でしかゾレアの皮下注射は出来ません。効果が注射後数日中に出る方もいれば、1週間以上かかって効果を感じる方もいます。鹿児島県の場合、通常2月中旬から3月中旬ごろまできつい時期で、3月末には典型的なスギ花粉症症状は改善していきますので、ゾレアの治療を開始して効果を感じるころにはスギ花粉が減少することになります。
鹿児島でのゾレアの使用は、本当に重症な方や、受験などのためベストな状態を保ちたい方、出張で本州方面に頻回に出かける方などが適応になると思われます。
ゾレアの高薬価の問題とアナフィラキシーのリスク(0.1~0.2%)の点で、死亡する病気でないスギ花粉症への使用に関して、慎重にあるべきと思われます。
2023年2月現在 当院ではゾレア治療は行っていません。
当院のよくある質問集
【受付編】
*クレジットカード・電子マネーは使えますか?
*車いすは大丈夫ですか?
*おむつ交換はできますか?
*予防接種はできますか?
*親御さんが診察時、子供(乳幼児)の面倒はみてもらえますか?
*保険証が無くても受診できますか?
*妊婦ですが大丈夫でしょうか?
*病院嫌いの子供ですが、大丈夫でしょうか?
【診察編】
*赤ちゃんをみてもらえますか?
*頻回な通院が必要ですか?
*鼓膜切開は、すぐにするのでしょうか?
*中耳炎でプールはいつからできますか?
*耳垢除去だけで受診できますか?
*咳がひどいのですが、みてもらえますか?
*補聴器の購入は可能でしょうか?
*耳鳴りは治るものでしょうか?
*めまい・ふらつきは耳鼻咽喉科でみてもらえますか?
*いびき・睡眠の無呼吸は耳鼻咽喉科でみてもらえますか?
*喘息はみてもらえますか?
*食物負荷テストはできますか?
*アトピー性皮膚炎はみてもらえますか?
*アレルギーの体質改善はできますか?
*嚥下障害の検査はできますか?
*西洋薬より漢方薬の治療を希望していますができますか?
【受付編】
できます。順番予約(WebではLINEにも対応)となります。朝は8:45~11:30昼は14:45~17:30にWeb順番予約をしています。
詳細は
➡チェックオン(当院サイト)で確認してください。
早朝から来院順番予約は、クリニック風除室(平日8:00 土曜6:30頃開きます)の記載簿に書けるようにしています。詳細は当院HPで確認下さい。
➡ご来院の皆様・アクセス(当院HP)開院が8時頃、診療は8:30開始です。
今のところ使用できません。
大丈夫です。バリアフリーで一階のみの診療フロアです。土足のまま入室できます。
当院にも車いすの準備はしていますので、必要な場合は前もって電話連絡お願いいたします。
女子トイレ室におむつ交換テーブルがあります。便やおむつは、感染の原因にもなりますので持ち帰りをお願いしています。袋が必要な方は受付にお尋ねください。
できます。次のサイトで確認して下さい。
➡定期予防接種(原則5歳以上)(当院疾患予防)
➡無料成人男性風疹検査・ワクチン接種(当院疾患予防)
➡妊娠を希望する女性その家族の無料風疹抗体検査、高齢者肺炎球菌予防接種助成(当院疾患予防)
インフルエンザワクチン(10月~1月中旬)やおたふくワクチンは1歳以上で行っています。5歳未満の定期予防接種は小児科でお願いしています。小児科のような予防接種の時間枠はありませんが、通常診療時間内に行っています。前もって電話での予約をお願いいたします。
*親御さんが診察時、子供(乳幼児)の面倒はみてもらえますか?
混雑時以外であれば当院スタッフが対応いたします。
*保険証が無くても受診できますか?
できますが自費診療となります。保険証作成後、保険診療分の返金ができることもあります。詳細は受付でご確認お願いいたします。
問題ありません。
➡妊婦&授乳と薬:飲んで大丈夫?(当院コラム)も参考にしてください。
*病院嫌いの子供ですが、大丈夫でしょうか?
子供さんが嫌がることを確認して、できる範囲で対応いたします。前もって情報提供をお願いいたします。
【診察編】
問題ありません。風邪症状は、通常は鼻水、鼻閉、咽頭痛、発熱、悪寒、頭痛が先行して、食欲低下、咳、痰などが持続します。乳幼児は耳痛や、ゼーゼーが持続することもあります。お腹の風邪では、嘔吐、発熱、下痢が出現することが通常です。
当院では、耳、鼻、上咽頭、口腔、扁桃、喉頭の上気道と頸部に加え、下気道、肺も含めを、診察を行っています。耳・上咽頭・喉頭やのどの奥は内科や小児科で対応が難しい領域です。お腹のかぜも初期対応はおこなっています。
➡かぜ症候群(当院HP)
➡咳(当院HP)
➡のどの違和感・咽頭痛・頸部の腫れ(当院HP)
➡風邪・インフル予防の基本!!(当院コラム)
➡風邪対応と色々な感染症(当院疾患案内)
を参考にしてください。
問題ありません。生後数週間から、鼻閉、鼻汁、外耳や中耳、のどのトラブル、耳垢などご相談下さい。発熱、咳の3ヶ月未満の赤ちゃんは小児科専門医受診も同時にお願いします。
赤ちゃんは、口呼吸がうまくできず鼻呼吸に頼っています。鼻がつまるとミルクや母乳が息苦しくて飲めず、うまく呼吸が出来ず機嫌がわるくなります。お母さんにとっては一大事です!!
小児科に相談して薬や自宅鼻吸い指導を受けてもうまくいかないことが多くあります。生後5~6ヶ月頃から鼻炎に伴い中耳炎も起こしやすくなります。自宅鼻吸いしても鼻の奥の上咽頭の炎症や多量の鼻汁まで改善しません。上咽頭に炎症・感染がおきると耳管咽頭口を通って中耳炎をおこしてしまいます。上咽頭(鼻の奥)を含めた鼻汁、鼻閉、中耳炎の対応をできるのは耳鼻咽喉科になります。
➡鼻と子供の中耳炎(当院コラム)
➡急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)
も参考にしてください。
*頻回な通院が必要ですか?
各個人で違います。耳鼻咽喉科は頻回な通院のイメージがあります。当院では急性期や重度の方は頻回な通院をお願いすることがあります。鼻かみが出来ない赤ちゃんやお子さんは鼻処置を含め、まめな通院が必要なことがあります。当院では通院が少なくなるように、ご自宅での点鼻や鼻洗などの在宅治療も指導しています。
H27年の全国の1件当たりの月の全科の外来受診日数の平均は1.58日、14歳以下は1.47日、75歳以上は1.84日のようです。耳鼻咽喉科1.6日、整形外科2.8日、小児科1.51日、内科1.47日、整形外科が突出しています(中医協)。当院は、月に平均1.35日程度ですので、通院が少ないクリニックになります。
すぐに行うことはありません。最近は、ワクチン効果による軽症化や多様な抗生剤のおかげで鼓膜切開をする回数は激減しています。鼓膜切開は、お子さんにとってストレスにもなり、必要な場合は説明と了解の上で行います。
➡急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)を参考にして下さい。
問題ありません。耳垢栓塞症として保険診療で、対応できます。耳垢除去の必要性をまず説明の上ですすめていきます。
耳掃除の必要性について次のコラムを参考にしてください。
➡耳掃除は必要か?外耳炎・かび・事故(当院コラム)
急性中耳炎(耳痛、発熱、鼓膜発赤などあり)は、急性期と耳漏が多量の場合は禁止です。最低1~2週間は禁止になることが多いと思います。
詳細は
➡プールに入ってよいですか?耳・鼻の病気(当院コラム)を参考にしてください。
問題ありません。お子さんから高齢者まで対応しています。鼻・のど・気管支・肺からなのか感染症・アレルギー・嚥下機能低下・心不全・胃食道逆流症などの関係はないかなど確認しながら対応していきます。
➡かぜ症候群(当院HP)
➡咳(当院HP)
➡増え続ける咳の患者さんたち(当院コラム)
➡鼻と秋の喘息(当院コラム)
➡胃酸の逆流と耳・鼻・のど・呼吸器(当院コラム)
➡自宅でできる誤嚥性肺炎予防(当院コラム)
を参考にしてください。
肺癌・結核・肺線維症・心不全を疑う場合や、ぐったり感が強いお子さん、高度な低酸素・重度の喘息・肺炎・COPDが考えられるときは総合病院や呼吸器内科、稀に循環器内科紹介となります。精査に胸部・頸部のCT・MRIが必要な場合も病院紹介となります。
購入可能です。当院の院長は補聴器相談医(日本耳鼻咽喉科学会)を取得していて、認定補聴器専門店(サイト)の補聴器認定技能者の専門の方と当院で補聴器外来を行っています。まずは受診の上での、予約制となります。少しお時間をいただきますが、各種身障など書類作成も問題ありません。
➡補聴器外来(当院HP)で確認して下さい。
イエスandノーです。
急性期の耳鳴りは、中耳炎、突発性難聴など治療で改善の可能性がありますので耳鼻咽喉科受診を早めにしましょう。慢性期(3ヶ月以上)の耳鳴りは、加齢変化や内耳疾患の後遺症、稀な聴神経腫瘍など改善は難しく、今の医学では特効薬的な効果的な薬は無いと考えらえていますが、医学的加療で耳鳴りをやわらげ日常生活に支障を及ぼさないことは可能です。ネットや新聞では、ビジネス先行のサプリなど過大な効果をうたっている情報の氾濫がみられます。
慢性期の耳鳴りの場合、耳鳴りに対する正しい知識と考え方を学ぶことから始めてください。次の当院コラム・HPやサイトが参考になります。
➡自宅でできる耳鳴り対策(当院コラム)
➡耳鳴り音響療法(TRT)のHP(マキチエ)
➡補聴器・耳鳴り音響外来(当院HP)
すぐに治る薬に固執する方や、不眠・心因的に悩みが強い方は、改善が悪くなる傾向があります。
めまい・ふらつき全般に対応しています。
当院院長はめまい相談医(日本めまい平衡医学会)を取得していて以下の要領で行いますので、ご確認お願いいたします。
➡めまい・ふらつき(当院HP)
➡めまい・ふらつきでお悩みの方へ(当院疾患案内)
脳や心疾患の可能性が高いときや高度の貧血の場合は、内科や脳外科紹介となります。
問題ありません。いびき・無呼吸の原因は子供さん場合、鼻疾患・アデノイド肥大・扁桃肥大です。大人の場合は、鼻疾患、肥満、舌根肥大、上中咽頭が狭いことが一般的な原因となります。また顎が小さい方も起こしやすくなります。
これらの原因精査を奥まで観察して行うのは耳鼻咽喉科です。当院の無呼吸検査では、簡易アプノモニター(大きいお子さんと成人)を行っています。
詳細は次のサイトで確認して下さい。
➡睡眠時無呼吸症(OSAS)(当院HP)
➡睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?(当院コラム)
➡睡眠時無呼吸症のマスク(CPAP)(当院コラム)
➡睡眠時無呼吸症と間違いやすい睡眠障害(当院コラム)
問題ありません。当院院長はアレルギー専門医(日本アレルギー学会)を取得しています。肺から耳・鼻・のどを含めた『one airway one disease』として対応しています。
次のサイトで確認お願いします。
➡当院のアレルギー対応(当院HP)
➡運動・アスリートと喘息・鼻炎(当院コラム)
➡肥満と喘息:ダイエットで喘息が治る?(当院コラム)
➡鼻と秋の喘息(当院コラム)
➡アレルギーマーチの予防と対策(当院コラム)
➡あなたの喘息は何タイプ?成人編(当院コラム)
➡お子さんは喘鳴(ぜんめい)は何タイプ?(当院コラム)
当院では行っていません。
➡鹿児島県の食物経口負荷試験実施医療機関(鹿児島県医師会サイト)で確認して下さい。
当院のアレルギー対応については次のサイトで確認して下さい。
➡当院のアレルギー対応(当院HP)
対応可能です。鼻炎・喘息の原因となるダニや食物アレルギーの原因となる物質は幼少時期からの皮膚感作が大きく関与しています。鼻炎・喘息は気道感作も関与してきます。
幼少時からの湿疹・アトピー性皮膚炎の治療およびスキンケアは、アレルギーの領域では一丁目一番地です。重度のアトピー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患単独の場合は皮膚科または幼少時のお子さんは小児科を勧めています。
次のサイトを参考にしてください。
➡当院のアレルギー対応(当院HP)
➡アレルギーマーチの予防と対策(当院コラム)
➡汗とアトピー、そして漢方(当院コラム)
➡よくわかる子供の漢方:アトピー・蕁麻疹・よだれ皮膚炎・水いぼ(当院コラム)
*アレルギーの体質改善はできますか?
イエスand ノーです。以下の体質改善とアレルギー体質を作らない(未病)ように対応しています。
身体には、外部から侵入してきた異物を体外へ排出して、身体を守るための免疫機能があり、通常は身体に害を与えることは少ないとされています。体質によっては免疫機能が特定の物質に過剰な反応を見せてしまうことがあり、さまざまな弊害を受けてしまうことをアレルギーと呼んでいます。
西洋医学的には、内服・外用・吸入などで、この免疫反応と症状を一時的にコントロールする治療(対症療法)を行います。免疫機能に働きかけて改善する免疫療法(体質改善)は約100年前から行われてきましたが、頻回な通院注射や副作用(アナフィラキシーなど)の問題もあり、あまり普及してきませんでした(皮下免疫療法)。最近、副作用が少なく注射せず自宅加療で、月1回程度クリニックで経過を確認する治療の舌下免疫療法が普及してきています。数年以上治療行いスギ・ダニのアレルギー性鼻炎への効果は70~80%程度で、喘息の一部にも効果があります。しかし、個人差があり全員に効果があるわけではありません。
➡舌下免疫療法(スギ・ダニ)(当院お知らせ)で確認して下さい。
➡自分で行うスギ花粉・鼻炎結膜炎の対策(黄砂・PM2.5を含む)(当院コラム)
幼少時からのアレルギーマーチを防ぎアレルギー体質を作らないため、
- 幼少時期からの皮膚のスキンケアと治療、
- 離乳食を遅らせない、
- 食物除去をし過ぎない
ことにより食物アレルギー予防が試みられています。
➡子供の食物アレルギー(当院HP)で確認できます。
- 不要な抗菌薬の使用を控える(腸内細菌を整える)
- ダニ対策
もアレルギー疾患対策に重要です。
- 幼児期から家畜と触れ合うことも
花粉症、アレルギー性鼻炎、喘息の予防に効果あることが報告されています(衛生仮説)。
➡アレルギーマーチの予防と対策(当院コラム)
➡実践ダニ対策(当院コラム)を参考にしてください。
食生活を整え、腸内細菌を整えることも重要です。
漢方による体質改善は、直接免疫機能に働きかける治療ではありません。
漢方薬や運動・食養生などで冷え、おなかの不調、ストレス、お血、水分代謝、慢性炎症を改善させ、体の偏移を中庸にもどすことを目的とします。未病(検査では異常なく病気が予測される状態)を改善させるため、食養生・生活習慣の改善も行い、漢方薬と併用していきます。腸内細菌もよい方に向かいます。間接的に免疫の過剰を抑えることもあるかもしれませんが、不確実です。
具体的な食養生の例として、脂もの、甘い物を控える。加工食品を避ける。旬なものをできるだけ丸ごと食べる。冷え性の方は、根菜類を食べ、生もの(果物・野菜)や冷たいもの酢の物を控えます。
➡漢方処方(当院HP)
➡漢方処方を希望される方へ(当院疾患案内)
検査はできます。
まず受診の上で、必要な方は検査予約をしていただきます。当院はバリアフリー、一階のみですので車いす・ストレッチャーで診察室入室可能です。
往診での嚥下機能検査は今のところ行っていません。高齢者嚥下障害は、脳疾患後遺症や加齢変化と関係するため画期的に改善させることは難しく、今ある能力を最大限にいかして、リハビリで、できるだけ進行を遅らせることになります。在宅医、歯科医、栄養士、言語聴覚士さんなどパラメディカルの方も含めたチーム医療が原則となります。
➡自宅でできる誤嚥性肺炎予防(当院コラム)
➡ドライマウス・窒息・誤嚥性肺炎(当院疾患案内)
を参考にしてください。
問題ありません。
当院院長は、漢方専門医を取得しています(日本東洋医学会)。当院の方針については次のサイトでご確認お願いします。
➡漢方処方(当院HP)
➡漢方処方を希望される方へ(当院疾患案内)
風邪・インフル予防の基本!!
今年は暖冬ですが、インフルエンザの流行は早く、夏の後半から持続しています。当院でもインフルエンザは早くから認めましたが、例年より風邪にかかる方が少ないように感じていました。2019年12月16日の英国からの報告では、すでに風邪を引いている場合、インフルエンザにはかかりにくく、逆に、インフルエンザにかかっているときは風邪を引きにくいことが、英グラスゴー大学英国医学研究会議ウイルス研究センターが行った大規模研究で明らかにされました。今年は、インフル対応をまず第一に考えなければなりません。
インフルエンザの感染経路として
- 接触(手やドアノブなどから)や
- 飛沫(くしゃみ・鼻水・咳・唾液)周囲2m以内・
- 飛沫核(くしゃみ等で飛び散ったウイルスを含んで分泌物が、乾燥して微粒子として空気に浮遊)感染が考えられてきました。
最近の研究では、息をするだけで感染する報告や手のアルコール消毒だけでは防げない粘液中ウイルスの報告があります。今年は夏ごろからインフル感染が認められ湿度を高くしても防ぎきれない可能性が出てきました。
その他の感染症での空気感染では、結核、麻疹、水ぼうそうが有名で、特に麻疹・水ぼうそうは、すぐうつりますが、結核は相当長時間空間共有しないとうつりません。ノロウイルス嘔吐物からの空気粉塵感染もあります。
マスク・手洗い・ワクチン・換気が基本ですが、押さえておきたいポイントや知識が必要です。当たり前のことですが、睡眠・栄養・休養、冬は乾燥しやすく、こまめに水または白湯を飲むことも大事です。手で鼻・口・目を触らないようにします。
近年外来・街中で、首にかける感染予防グッズをかけた患者さんも時々みかけます。効果はあるのでしょうか?感染予防対策の中には、ビジネス先行のネット情報もあふれているように思われます。
👉ご家庭ではどうすれば、インフルエンザや風邪ウイルスをどうすれば防ぐことが出来るのか?押さえておきたいポイントを学び、以下の風邪やインフル予防の基本を整理してみましょう。
➊うがいで風邪・インフルエンザを予防できるか?
水、イソジン、お茶で、効果が期待できるものは?
❷マスクで風邪・インフルエンザを予防できるか?
どんなマスクが良いのか?
❸手洗いで風邪・感染性胃腸炎・インフルエンザを予防できるか?
どんな石鹸を使うのか?手洗いの仕方は?
インフルとノロ食中毒対策の手洗い・消毒は同じでよいのか?
近年、手のアルコール消毒だけでは防げない粘液中ウイルスの報告があります
❹部屋の換気は重要か?
最近の研究では、息をするだけで感染する報告もあります。我々は、今後どう対応したらよいのでしょうか?
❺インフルワクチンの効果はどの程度か?
新しい鼻からのワクチンは効果あるのか?
➡冬に多いインフルとノロウイルスで、まずは、厚労省のインフル予防やノロウイルスの食中毒対策は何が記載されているか確認しましょう。
『厚労省のインフルエンザ感染予防の三つ』
令和元年インフル総合対策(サイト)
*咳エチケット:感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです
*予防接種:発症をある程度抑える効果や、重症化を予防する効果があり、特に高齢者や基礎疾患のある方など、罹患すると重症化する可能性が高い方には効果が高いと考えられます。
*高齢者入所施設対策:施設内にインフルエンザウイルスが持ち込まれないようにすること
『厚労省のノロウイルス食中毒対策(サイト)』
予防対策まとめリーフレット(サイト)
手洗いまとめ図(サイト)
液体石鹸を使い、流水で手を洗います。ペーパータオルまたは自分用タオルで拭きます。最後にアルコール消毒を行います。
手洗い教育動画(サイトyoutube)
まとめると以下のようになります。
*食品取扱者は、作業前の手洗い、調理者の健康管理、調理器具の消毒を行うこと。
*ノロウイルスの感染経路として
⇒ご家庭や学校での飛沫・接触感染
⇒感染者の吐物・糞便からの二次感染
⇒二枚貝(カキ、アサリ)などを加熱調理しないで食べた場合
⇒感染食品取扱者からの汚染食品を食べての感染
乳幼児や高齢者は特に注意が必要です。
ノロウイルスの検査は、3歳未満と65歳以上に保険で認められた糞便からの迅速キット検査があります。
手洗いは、調理を行う前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後には必ず行いましょう。石けんを十分泡立て、手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又は ペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
消毒は、一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム、オスバン)が用いられる ことがありますが効果は低く、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター、ミルトン)や加熱・熱湯(85度以上1分以上) による処理があります。 調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200pp m)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。粉塵感染予防のため、嘔吐物を素早く、乾燥させないで、床を消毒(次亜塩素酸:ミルトン)して処理します。
➊うがいで風邪・インフルエンザを予防できるか?
前述の厚労省のインフルとノロ食中毒対策にうがいのことは記載されていません(2008年から削除)。今まで、うがいによる予防効果の検証はほとんど行われていません。
ある報告(1日3回、1回は15秒で2回うがい)では、風邪には、水うがいで、40%の予防効果、イソジンうがいでは、12%の効果のようです。イソジンが、のど粘膜細胞や細菌叢に影響を与えることが原因と推測されています。またビタミンDとうがいの予防効果の比較では、うがいの効果は認めていません。うがいの予防効果については未だに議論があります。インフルエンザには、20分以内に鼻・のどの粘膜から侵入するため、通常のうがい効果はありません。
うがい薬の種類
*イソジン(ヨウ素)うがい:殺菌作用は強いが粘膜障害や菌交代現象あり、実際のかぜ予防効果は高くないようです。しかし、フルーティ味などが販売されネットでは販売上位ランクになっています。喉の感染が強い時や衛生状態が悪い高齢者の口腔ケアで一時的に使用するなど限定される使い方が望ましいと思われますし、使用後の水うがいでイソジンを洗い流すことも大事です。菌交代現象とは、口腔細菌叢に影響を与え長期的には善玉菌が減少して口腔細菌のバランスが乱れ感染しやすくなることです。
のどヌールスプレーもヨウ素が入っていますの注意して下さい。
*アズノール(アズレン)うがい:粘膜再生効果ありますが殺菌作用はありませんので、粘膜障害や菌交代現象を気にせず使用できます。
*水:一部の報告ですが、風邪予防に水だけでもかなりの効果があるようです。
*お茶:カテキンによる抗菌作用認めます。
*塩水:水500mlに塩小さじ程度(0.9%)で浸透圧による抗菌作用を認めます。塩が多いと粘膜障害となります。
いずれもブクブク➡ガラガラうがいを行います。
*鼻うがい:温度(体温程度)と前述の塩水で浸透圧(0.9%程度)を守れば鼻腔・上咽頭の粘液繊毛系などへの効果はあるようです。冷水は粘膜障害を生じます。
*保育所での、1日1回以上のうがいの発熱予防の試みでは、緑茶<食塩水<水道水の順に発熱者の割合が増えています。緑茶>食塩水>水道水の順に効果が高いと言えます。
❷マスクでインフルエンザを予防できるか?
マスクの性能に依存します。不織布マスクは、保温、保湿効果で喉の保護効果があります。マスクはくしゃみ・咳による飛散予防効果(咳エチケット)がありますが、マスクによるウイルスの侵入予防は限られます(飛沫の侵入予防が主)。マスクは鼻から口まで覆うこと、ティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。手のひらで口をおさえると手から感染を広げることになります。市販マスクには、花粉・風邪・PM2.5対策など記載がありますが、花粉は防げても風邪ウイルスやPM2.5を防ぐには、N95マスクなど特殊な医療用マスクが必要になります。
咳エチケット(厚労省サイト)
マスクの種類
*ガーゼマスク(織布マスク)
ガーゼを重ねて作られているマスクです。保湿・保温性に優れていて、洗濯することで何回も使用可能です。しかし網目が粗いため、インフルエンザウイルスを含んだ飛沫の侵入を十分に防ぐことはできません。
*不織布(ふしょくふ)マスク(表に下向きプリーツあり)
繊維に科学的な処置を施して接着し、薄いシート状にした使い捨てのマスクです。
ガーゼマスクに比べて網目が小さく、コロナウイルスやインフルエンザウイルスを含んだ飛沫の侵入をある程度防ぐことが可能です。ガーゼマスクほどではないですが保湿性もあります。
また、医療関係者が使うサージカルマスクと呼ばれるものは、医療用の不織布マスクで、3層、98%以上の細菌ろ過率、アメリカの医療用マスクの規格に基づいて作られています。家庭用の不織布マスクは1層~3層など性能により価格に反映されています。花粉用マスクは2層程度でつくられていることがあります。市販マスクにかぜウイルス・PM2.5対策など記載がありますが、風邪ウイルスやPM2.5への効果には疑問です。ウイルス0.1µmやPM2.5の大半0.1~0.3µmの大きさのため、非常に小さく通常のマスクでは防げません。風邪ウイルスやPM2.5を防ぐには、N95マスクを使い、装着をしっかり行い顔へのフィットを確認します。
*エバーマスク
スポンジ製で、歯科医院でよく使われているようです。防塵効果が高い。呼吸がしやすく口元と耳掛けが一体です。
濡れマスクも保湿効果もあるようですが、市販されているマスクは立体マスクなど色々なタイプがあります。各国での好みや考え方も違い、国民性や個人の好みもありますので、自分に合ったもの考えましょう。
*N95マスク
「N95」とはN95規格という米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が定めた基準をクリアしたマスクです。0.3µm以上の微粒子を95%以上捕集することができる性能があるマスクのことを指します。もともと、結核などの空気感染の可能性が非常に高い場所での使用を想定されたマスクで、密閉性が高く、隙間がほぼできないように設計されています。そのため、呼吸がしにくく、日常的に使うのは不向きといえます。日本規格ではDS2マスクとなります。これらのマスクは、医療用で高価でもあり、薬局で見かけることはあまりありません。カップ式、二つ折り、三つ折りなど形式があります。新型肺炎の中国からの報道では、カップ式をよく見かけます。
医療用の通常使うサージカルマスクでもコロナウイルスやインフルエンザウイルスの侵入を十分に防ぐことは出来ません。N95やDS2マスクが必要になります。N95マスクを使う場合、装着をしっかり行い顔へのフィットを確認します。
資料:粒子比較:花粉20~40µm、黄砂4µm、大腸菌・ブドウ球菌1µm程度、結核菌0.3~0.6µm、PM2.5 2.5µm以下0.1~0.3μmが多い、インフルウイルス0.1µm程度、コロナウイルス0.12~0.16µm、ノロウイルス0.03µm
❸手洗いでインフルエンザを予防できるか?
手洗いは、接触感染予防の基本です。
石鹸と流水での手洗いによる物理的除去はすべてのウイルスに効果を認めます。インフルウイルスは、消毒用エタノールで効果を認めますが、ノロ・ロタウイルスには効果はありません。
*液体石鹸を使用しましょう。液体石けんの中身を詰め替える際は、残った石けんを使 い切り、容器をよく洗い乾燥させてから、新しい石けん液を詰めます。
*固形石鹸は、共用はしない事 細菌が繁殖することあります。固形石けんは、1回ずつ個別に使用できる液体石けんと比較して、保管時に不潔になり やすいことに注意します。
通常の液体・固形石鹸は、殺菌効果はあまりありませんが、泡立ち効果が高く、手洗いでのウイルスや細菌除去に優れます。
*逆性石鹸(オスバン、塩化ベンザルコニウム)は殺菌効果が高く、細菌、後述のエンベロープを持つウイルス対策に効果を認めます。緑膿菌、芽胞、結核菌は効果無く、真菌には高濃度長時間処理が必要です。泡立ち効果は高くありません。柔軟剤、リンスとしても使用されます。
【薬用石鹸の問題(米国と日本)】
2016年9月米国のFDA(米国食品医薬品局)は、殺菌剤(トリクロサン、トリクロカルバンなど19種類)入り抗菌せっけんの販売を禁止すると発表しました。日本では薬用石鹸と呼ばれています。2015年にはヨーロッパでは、トリクロサンの衛生用品の使用を禁止しています。特に、トリクロサンは、環境ホルモンで経口・皮膚を経由して簡単に体内に浸透する性質があるようです。
FDAは、販売禁止にする理由を、「消費者は、抗菌成分を含む石けんが細菌の繁殖を防ぐと思っているかもしれません。しかし、その成分が一般的な石けんを使った手洗い洗浄よりも、感染予防に優れているという科学的証拠をわれわれは持っていません」となっています。抗菌剤は新たな耐性菌を生み出す危険性があります。
厚労省 トリクロサンなど含有薬用石鹸の切り替えを促す通知(サイト)2016年9月30日
【茶のしずく石鹸と食物アレルギーの問題】
添加物が多い石鹸は、添加物による経皮感さが生じて、食物アレルギーのリスクが増加する可能性があります。小麦アレルギーの原因となった茶のしずく石鹸は裁判にもなりました。特に、アトピーや肌荒れ・手荒れでお悩みの方は注意しましょう。
悠香(ゆうか)ウイキペディア(サイト)で確認して下さい。
【アルコール消毒の選択】
*通常の消毒用エタノール(街中や公共施設に置かれているもの)
エンベロープウイルス(インフル、RSV,麻疹、風疹、おたふく、ヘルペス、エイズ、B型肝炎ウイルスなど)には効果を認めます。
ノンエンベロープウイルス(主に夏風邪と感染性胃腸炎:ノロ、ロタのウイルスと鼻かぜのライノウイルス、A型肝炎ウイルスなど)には効果ありません。
*酸性にした消毒エタノール:ウイルステラVHサラヤなど
エンベロープやノンエンベロープの両方のウイルスに効果を認めます。
【アルコール消毒に頼るインフル対策の問題点】
最近、手指に付着した感染粘液のもとでは、完全に乾燥するまでは消毒エタノールの効果は大幅に低下することが報告されています。報告では、流水による手洗いだけでもウイルスに対して十分な効果を認めています。鼻水などが付着した粘液中のインフルウイルスに対して、擦りこみ式手指消毒の効果を過信せず、こまめに手洗いを行うことでより高い消毒効果が得られる可能性があります。
❹部屋の換気は重要か?
部屋の換気は、飛沫核(空気)感染予防の基本です。
インフルエンザは、密閉、低温、乾燥の条件がそろうと、部屋にいるだけで感染します。くしゃみ・咳で飛び散った分泌物は、いったん付近のものに付着した後、乾燥して水分を含まない微粒子(直径5/1000mm)の感染を飛沫核感染と言います。2µ以下の飛沫核は長時間空中をただよう事ができるため、同じ部屋に一緒にいるだけでも感染します。部屋の換気は重要です
【息をするだけで感染(エアロゾル)】
2018年の報告では、咳やくしゃみをしなくても、インフルエンザ患者が呼吸するだけで周囲の空気にウイルスが放出されることが分かってきました。冬に外にて息をはくと白く見える範囲の空気感染は、もっと多いと考えた方が良いようです。したがって、報告では、「インフルエンザに感染した人が職場に現れた場合には、周囲への感染を防ぐため職場にとどまらせず、すぐに帰宅してもらうべきだ」と強調されています。1~2時間に1回の部屋の換気はますます重要と考えられます。
❺ワクチン効果はどの程度か?
結論は、インフルワクチン効果は、重症化予防に効果があり、ウイルス侵入防御はなく、発病阻止効果は低いと考えられます。
高齢者(65 歳以上)を対象に、インフルエンザワクチンの発病阻止効果は34〜55%、インフルエンザを契機 とした死亡阻止効果は82%と報告されています。乳幼児のインフエルエンザワクチンの有効性に関しては、報告によって多少幅がありますが、概ね20~60%の発病防止効果があったと報告されています。
現在のワクチン皮下注射では、分泌型IgAは誘導せず、血清IgG抗体を上昇させます。血清IgG抗体は、分泌型IgAのような鼻・口腔・気管での侵入を防ぐ効果や交差防御効果はありませんが、生体内でのウイルス活性を弱める効果がありますので感染後の症状発現予防や重症化予防は期待できます。
ワクチン製造に使用されたウイルス株と異なるウイルス株が流行すると、現在の不活化ワクチンの効果は期待できません。その年の流行インフルウイルスが製造ワクチンのウイルス株とすこし異なると、ワクチンを打っても効果があまり期待できない年があるのはそのためです。現在のインフルワクチンは重症化予防に効果が高いと考えて下さい。
【今後のワクチン:経鼻で痛くなく効果が注射より高い予測】
*フルミスト:
毒性を弱めた経鼻生ワクチンが米国(2003年)とヨーロッパで承認されていますが、日本では未承認のため輸入で行う施設もありますが、副反応が生じた場合には日本での救済制度が利用できず自己責任になります。2歳以上50歳未満が適応で、接種後の鼻水、咳、発熱が高確率で認めます。生ワクチンのため、妊婦さんは出来ません。高い発症予防効果と予想流行タイプと異なるウイルスに対しても軽症化させる効果があるようですが、米国では、2016~2017年は効果が疑問視され一時推奨されない時期がありました。
*国産経鼻ワクチン:
阪大微生物病研究会が開発した国産の不活化経鼻ワクチンが日本で承認申請される方針のようです。このワクチンは、不活化のため副作用が少なく、高い発症予防効果と予想流行タイプと異なるウイルスに対しても軽症化させる効果があると期待されています(2019年11月の記事)。
❻首から下げるタイプの除菌用品(二酸化塩素など)
*宮崎県薬剤師会(サイト)
ネームプレートのように首から提げて使用する二酸化塩素による除菌商品の問題点が説明されています。
二酸化塩素の成分は、細菌・ウイルスを殺す効果(水道水、プールなど使用)はありますが、今のところ、二酸化塩素の商品(除菌グッズ)で、細菌やウイルスの感染予防に効果があるとして医薬品や医薬部外品として認められているものはありません。現在CMでも見かけるスプレー、置きタイプ、ペンタイプなどの二酸化塩素除菌用品は、衛生管理製品という表現がなされていますが、医薬品や医薬部外品ではありません。つまり効能や効果は表示できない雑貨に分類されます。二酸化塩素には毒性があり、吸入による呼吸器毒性、目への毒性、生殖毒性、授乳中の子に害を及ぼすおそれが認められます(職場の安全サイト:厚労省から)。除菌用品から二酸化塩素を吸入することもあり、乳幼児やぜんそく・気管支の弱い方などは充分注意が必要です。
*職場の安全サイト(厚労省サイト)二酸化塩素の健康への有害性について
平成26年3月27日、消費者庁から、「二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ販売業者17社に対する景品表示法に基づく措置命令について」という発表があったようです。
*国民生活センター:2019年9月更新(サイト)
部屋等で使う据え置きタイプの二酸化塩素の商品に関する報告の問題点が記載されています。
*国民生活センター:2019年4月更新(サイト)
首から下げるタイプの除菌用品で、次亜塩素酸ナトリウムの化学やけどの刺激性の報告が記載されています。
参考資料
保育所における感染症対策ガイドライン 2018年
« Older Entries Newer Entries »