院長の健康情報コラム
感染対策を整理すると、基本は三つ:重要なのは手洗いと免疫!!
感染対策を整理すると、基本は三つ:重要なのは手洗いと免疫!!
①空気環境対策:
一つは コロナ感染対策で注目された 3密(密閉、密集、密接)を回避する、対面で食事しない、まめな室内換気などウイルスへの空間環境対策
②進入路対策;
加湿器、マスク、手洗い、うがい、まめな飲水など、粘膜の乾燥を抑制して人へのウイルスの侵入を防ぐ対策 最も重要なのは手洗い
③免疫の維持;
体内へのウイルスと接触しても体内への感染させない対策(ワクチン、十分な睡眠、適度な運動、腸内細菌を整える)
☞ 医師はどうやって感染を防ぐか?
最近 昼のワイドショーでは、医師はどう感染対策しているかの特集が組まれています。
具体的な話では、
*まめな手洗い、
*ワクチン接種
*腸活(食物繊維、海藻、キノコなど食べる)
*ブクブクうがい、カテキンお茶うがい
*まめな飲水
*睡眠
*適度な運動、水泳など
皆さんと同様に、医師も一般的なことを心掛けているだけのようです。
家族がみんなインフルになっても、ワクチンを接種していなくても、その中にかからない人いるわけです。
どういうことでしょうか?
最終的には、本来からある自然免疫が強いか、後天的な獲得免疫をもっているかによると思われます。
2024年12月の今までにないインフルの感染爆発も、コロナ禍では、通常の感染症が流行せず、インフルなど感染症に対しての集団免疫の低下が原因と考えられています。
乳幼児は別として、大人になれば、ある程度の様々な免疫を備えています。ワクチンで免疫を強化し、獲得することも大事ですが、
常日ごろからの免疫を落とさない生活習慣や食生活も大変重要です。
感染対策の基本①
空気感染対策 コロナ禍の時には、感染拡大を目的に3密(密室、密集、密接)を回避する行動が求められていました。現在は、コロナ禍と違い、飲食店のお客さんは多く、3密を回避するのは難しいでしょう。ここで室内換気が重要になってきます。寒くなると、自宅での窓換気は、気密性が低下して寒くなるので行うのは難しいと思われます。換気扇をしっかり使うこと以外良い方法が見つかりません。
感染対策基本②
進入路対策
まず皆さんが心掛けていることは、マスク、うがい、手洗いの三つだと思います。
➡ マスクの感染予防としての効果は限定的です。マスクと顔の皮膚のすき間から入ってくるからです。ご存じのように、布、ウレタン、不織布など効果は材質にも依存します。不織布が最も効果的です。
発症した方が、マスクをつけると飛沫飛散が抑制されるので非常に効果的です。
高価なN95マスクは、感染予防にも効果が高く推奨されますが、息苦しくなるため日常使用するには問題があります。
マスクは、鼻やのど加湿効果があるので粘膜の感染防御の維持に効果あります。
➡ うがいの効果が限定的またはほとんどないこともあります。
ウイルスは鼻やのどから侵入すると20分以内に粘膜から感染してしまうと考えられています。15分ごとのうがいは、日常では行いません。おそらく朝と帰宅時にする程度と思いますので、うがいによる効果は期待できませんが、うがい時の一時的にウイルスを流してくれる効果はあるでしょう。また、粘膜の加湿効果も少しあるでしょう。
例外として、高齢者の肺炎予防としての口腔ケアの一つとしての、うがい、歯磨きなどを行うのは効果があると思われます。
2024年12月から2025年1月初期までに、高齢者のインフルの感染者が多く、インフル後の肺炎での救急搬送の増加および受け入れ困難ケースが多数報告されています。うがい、歯磨きなどの口腔ケアは、高齢者の肺炎予防として効果が期待できます。
➡世界共通で、もっとも推奨されているのは、手洗いです。
【液体石鹸と流水】
手洗いの考え方で 除菌するのか殺菌するのか考えます。
液体石鹸と流水による手洗い、細菌、ウイルスほとんどにおいて効果を認めます。物理的に洗い流す除菌しての効果です。
流水で、ウイルスは1/100程度に減少、石鹸で泡立てた流水だと1/1000~1/10000程度ウイルスを減少することが可能なようです。
【アルコール消毒】
除菌・殺菌も行ってくれるのが、アルコール消毒です。最も短時間で消毒できる方法のため最も普及しています。
*アルコール消毒の注意点
アルコール消毒に効果を認めは、エンベロープの層を持つウイルスのみです。コロナ、インフル、RSなどたいていのウイルスに効果あり、マイコ、溶連菌にも効果あります。
アルコール消毒は、エンベロープを持たない、おなかの風邪ウイルスの、ノロ、ロタウイルスには効果ありません。秋に多い鼻風邪ウイルスのライノウイルスや夏風邪のアデノウイルスにも効果はありませんが、石鹸と流水の手洗いは、エンベロープを持たないウイルスにも効果があります。ハイターなどの塩素系消毒は効果があります。
また、アルコール消毒は、乾燥しないと効果が期待できません。インフル患者の鼻水がついた手にそのままアルコール消毒しても乾燥していないので効果は低く、鼻水など分泌物を石鹸・流水手洗いで落として、自分用タオル、ペーパータオルで拭いて乾燥させてアルコール消毒すると効果を発揮します。
➡鼻のどの乾燥予防も、進入路の粘膜の防御能を維持するのに重要
*ウイルスの進入路のとしての、鼻とのど
ウイルスの侵入は、鼻やのど、眼の粘膜に侵入して感染することから始まります。鼻の粘膜に炎症を起こせば、鼻水、鼻閉、くしゃみが出現、のどに炎症起こせば、咽頭痛やのどの違和感を、感じるでしょう。
のどや鼻の粘膜が乾燥すれば、粘膜の防御能が低下してきます。
*鼻の粘膜乾燥は気づきにくい
のどの乾燥感は実感することは容易ですが、鼻の乾燥を実感するのは意外に難しいと思います。
鼻の入り口にカサブタや鼻水に血が混じるときは鼻の粘膜はかなり乾燥していると思ってください。耳鼻咽喉科医は毎日のように多くの患者さんの鼻の中をみていますので、エアコンを使用するような時期の冬から春にかけて鼻の粘膜が乾燥する患者さんが急に増えます。患者さんは、実際に自分で鼻の粘膜を見ることは難しいので、自分で気づく方はほとんどいません。内視鏡で乾燥して荒れた鼻の粘膜をお見せして納得されます。
鼻や気管より下の下気道、肺は呼吸上皮のため粘膜線毛機能が備わっていて、ウイルスや菌が粘膜に付着しないように常に動いていて外へ排出するように働いています。
粘膜が乾燥したり冷えたりすれば機能が低下して 感染しやすくなります。
感染対策基本③
免疫の維持
これが最も重要で、最も難しい対策です。
日ごろからの生活習慣、食習慣を心掛けなければなりません。インフルワクチンの場合、効果が出るのに、2週間ほどかかります。比較的早く免疫を上げるためには、それぞれのワクチンを接種することになります。乳幼児は免疫の発達段階のため、ワクチンは特に重要です。
成人も、重症化しやすい高齢者や免疫を落とす治療中の方などワクチンは重要です。
普通の健康な大人は新型ウイルスでなければ、以前にどこかで感染していて、または以前ワクチンを接種している人も多いため、免疫の記憶は残っていると思われ、免疫を落とさない生活習慣・食習慣がもっと重要な要素と思われます。
マイコ検査は、総合診断で
マイコ検査は、コロナと違い迅速検査の感度が悪く、迅速検査は参考に、迅速検査以外の他の検査や症状を考えて総合診断を行います。
今年(2024年)は、夏以降マイコの患者さんが増えています。咳・発熱・咽頭痛などあれば以前はコロナ検査希望が多く、最近は、若い人や子供さんがいる保護者からは、マイコを心配される方が増えてきました。
➡潜伏期間を考えた検査
コロナ・インフルなどは、感染者と接触後、数日以内に発症することが多く、同じ感覚でマイコ感染者に接触後、すぐに検査希望されて受診されます。
マイコの潜伏期間は2~3週間と長く、接触したことを忘れたころに発症してきますので、潜伏期間を考慮して検査を考えましょう。
➡マイコ迅速検査は感度が低い
マイコの検査をコロナ・インフル同様に、診察時の迅速検査をすれば、すぐにわかると考えている方が多くいらっしゃいます。
マイコの抗原検出免疫クロマト迅速検査は感度が低く、臨床的にマイコを疑っても陰性になる場合が多くありますので、陽性であればマイコとして対応し、陰性でも検査結果は参考にしながら総合診断とします。最近は、この迅速検査キットが不足しています。
マイコ迅速検査の感度が低い理由は、菌は下気道の線毛上皮に定着増殖するため、線毛上皮がない咽頭では増殖しません。菌は、咳に伴い気道から咽頭へ排出さます、咽頭の菌量は下気道の1/10程度と考えらています。のどから菌で判断するには非常に感度が良い検査が必要になります。
➡マイコの検査は総合診断
周りの感染状態、臨床症状を参考に、その他の精度が高いDNAを検出するLAMP法を用いると診断の精度が上がります。
1週間以内の急性期の段階では、当日わかる咽頭ぬぐい液を用いるマイコ迅速検査または3日以上して結果判明するLAMP法を選択します。
または採血のPA法など組み合わせて総合診断を行います。このPA法、発症1週間以上してから陽性率が高くなりますので、急性期は陰性になることがあります。1回採血測定では抗体価320倍以上 2回採血(例:1週間と3週間後)ではペアで、4倍上昇で陽性と判断しますので、臨床的には治療が終わっているときに判明することもあります。
LAMP法やPA法はすぐに判明する検査ではなく、ともに結果で出るまで3日以上かかるのが問題です。
肺炎を疑えば、胸部レントゲンや精度が高いCTが必要になります。
検査結果を待ってはいられませんので、臨床症状からマイコを想定して治療を開始します。
マイコ感染による肺炎の確率は約10%程度です。マイコ感染症、マイコ肺炎は基本的に自然治癒する病気ですので、必ずしも抗菌薬を使わなくても、軽症の方は、体力の回復を待てば改善する病気です。
喘息などの合併症や体力・年齢などを参考に個別に治療を考えていきます。
➡マイコを疑う臨床症状・検査(成人肺炎診療ガイドライン2024から)
*60歳未満
*基礎疾患がないか軽微
*頑固な持続する咳
*聴診上所見に乏しい
*採血で白血球が1万未満
*迅速診断法で原因菌が証明されない
5項目以上合致すれば、マイコプラズマ肺炎を強く疑います。
初発症状は頭痛・発熱・倦怠感などで3~5日ごろから痰を伴わない頑固な咳に移行していきます。1か月近く咳が持続することもあります。発熱はないこともよくあります。喘息様の喘鳴が出現し喘息様気管支炎を呈することもあります。
➡注意すべき合併症
肝機能異常が4割程度、消化器症状1割程度、または発疹が出現することがあります、稀ですが髄膜炎・脳炎や心筋炎の報告もあります。
もし以下のような症状が出た場合は注意が必要です。
*黄疸
*疲れやすい
*発疹
*けいれん、意識障害
自分でチェック:良性発作性頭位めまい症
めまいで最も多い病気が、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。統計では、めまいの半分近くはこの病気です。
『良性』とありますが、激しい回転性めまいが生じるので、症状は決して軽くはありあません。救急車を呼ばれる方も多く、反復することも多いため予期不安から外出を控えたり、精神的負担も大きくなります。
急性期は、嘔吐が出現して、吐き気も強く、めまいは改善してきてもムカムカ感、食欲低下は持続します。回転性めまい発作は、一度につき数分以内で治まります。数日から数週間の間に何度も発作が起きることがあり、発作は徐々に自然になくなっていきます。一部の方は月単位持続する方もいます。症状事態は、脳梗塞のような危険なものではありませんが、車の運転や転倒のリスクとなります。
BPPVを自分である程度判断できれば落ち着いて対応することができるようになります。
➡ セルフチェック (大阪大学耳鼻咽喉科 今井医師2016から)
*目がグルグル回るめまい +1
*寝返りをするとめまいが悪化 +1
*めまいの持続時間は5分以内 +2
*もともと左右どちらかの難聴、または今回のめまいに耳鳴り、難聴、耳閉感を伴う -1
合計点が2点以上は、BPPVの可能性が高くなります。
その他のチェック項目として
*起床直後の朝が悪く、昼過ぎから改善傾向となる
*勇気をだして動いてみると、症状が軽くなる(めまいは寝ては治らない)
*頭痛はない
*耳鳴り、難聴は伴いません
*頭が動くたびに症状が出現する
具体的には、靴を結ぶ、洗濯物を干す、朝起床時または昼寝後、頭を動かすときに起きます
*病気や入院、腰痛などで、以前より運動量は減ったあと起こりやすくなる
*肩や腰痛などで就寝中寝返りができず、同じ姿勢で就寝するようになる時に起こりやすくなる
BPPVは、片頭痛、メニエル、肩こりなど他疾患と併発していることも稀ではなく、頭痛や5分以上持続するふらつき症状が同時にまたは前後して出現していることありますので、前述のセルフチェックだけは難しいこともあります。めまい相談医など専門医に相談しましょう。
➡ 治療: BPPVは、薬で治す病気ではなく動きの中で改善していくものです、耳石を、症状を起こさない場所に動かすだけです。
浮遊耳石置換療法がうまくいけば、翌日にはかなり改善しています。薬は、対症療法的に症状を緩和させる目的で使用しますが、本質的治療にはなりません。
➡ 症状を再発させないためには、運動習慣を持つことです
朝のラジオ、テレビ体操を習慣化することも良い方法です。
高齢者でも誰でも行えるものは、枕を使い寝返り体操を就寝時と起床時に行います
関連コラム あなたのめまいは更年期or年のせい? BPPV
補聴器は好かん!! 耳鼻咽喉科医の役割
『8020運動:歯科』
歯科では、8020運動が30年ほど前から行われ、その結果80歳以上で歯が20本以上ある方が現在(2022年)では、50%ほどいます。30年前は7%程度でした。20本以上あれば食生活にほほ満足できる本数のようです。
どのようにおこなったか?
*定期歯科検診で治療可能な歯は治療を
*なんでも相談できる、かかりつけ歯科医を持つ
*歯磨き口腔衛生習慣の徹底
*禁煙や過度な飲酒避ける
*栄養バランスの取れた食事
現場の歯科で行われているのは、定期歯科検診、むし歯や歯周病の治療を行い
正しい歯磨き指導や歯垢除去など口腔衛生への対応をしっかり行ないます、内科などでの生活習慣病の生活指導も重要です。
なんでも相談できる歯科医がそばにいて治療を行い、歯磨き指導と口腔衛生習慣徹底が非常にうまくいった結果と思われます。
『8030運動:耳鼻咽喉科』
➡耳鼻咽喉科でも、歯科を真似るように8030運動が最近始まりました。80歳でささやき声の30dBが聞こえるようにする活動です。現在、80歳で30dB聞こえるのは30%程度です。20年後に50%まで増加させる運動です。この運動に補聴器を使うことも含みます。
40dB以上が中等度難聴、30dB~40dBが軽度難聴、補聴器効果を期待できるのが40dB以上の難聴と考えられています。
現在の80歳の会話領域の平均聴力は35~40dB程度(国立長寿医療センター)ですので、30dBに近づかせるには、聴力を悪化させないような生活習慣の改善、騒音回避などの行動の変化を行い、治せる難聴は治療を行います。適切な補聴器の使用も重要になってきます。
*定期耳鼻咽喉科受診で聴力検査を行います
*なんでも相談できる、身近な、かかりつけ耳鼻咽喉科医に相談
加齢変化による難聴か、治せる可能性がある難聴かの鑑別を行います。
耳垢栓塞や中耳炎の可能性はないか?
精査が必要な難聴が隠れていないか専門医で確認することから始まります。
*難聴を悪化させる騒音下の趣味や仕事があればどうすればよいのか専門医と対応を考えます。
*喫煙や糖尿病、高血圧、脂質異常などあれば、生活習慣の改善を行い内耳への全身からの影響を軽減させます。
*加齢による慢性難聴であれば、適切な補聴器を使い30dB程度へ難聴を改善させ、周りとのコミュニケーションを維持できるようにします。
補聴器には、社会参加の維持、認知症の進行の緩和、うつ傾向の予防、一部の方には耳鳴りの緩和効果など多くのメリットが存在します。
難聴は、周りの会話についていけず、孤立化やうつ傾向をもたらします。
中年期の難聴は、認知症の最も大きい悪化因子の一つ(7%)と考えられていますので、補聴器使用で認知症の進行を緩和させる可能性があります。
最近、年間300万円もする軽度認知症の注射薬(レカネマブ)が、保険適応になりましたが、副作用の問題もあり適応は限定されます。認知症の進行を遅らせる効果あるようですが完治する薬ではありません。
ここで、今 注目されているのが補聴器です!!
高額で、副作用が強い薬を使用しなくても、認知症を遅らせることができます。
2024年高齢者の15%が認知症です(軽度認知障害MCI含む)。80歳から急に増加して、90歳女性は55%、男性36%になります。特に女性は顕著に増加してきます。
最近の報告から、難聴があれば、難聴なしに比べ認知症リスク37%増加聴力の難聴が10dB増加すれば、リスク16%増加します。
実際に補聴器が認知症に効果あるのか?
デンマークでの50歳以上で57万人以上の約8年の大規模な臨床研究(2003~2017年)で、補聴器使用で認知症リスクが減少しています。
米国の研究で、認知症のリスクが高い集団(高齢、一人暮らし、糖尿病、高血圧、喫煙者など)にて、補聴器の使用で認知機能の低下を大幅に減少させることが示されました。
『補聴器は使いたくない』
しかし、多くの方が、補聴器を使うことへの抵抗があります。
*補聴器を使ってもうるさいだけで役に立たない
*年寄りくさい
*高い補聴器を買ってもたいして聞こえない
高齢者からよく聞かれる会話です。
使う前から、『補聴器は好かん!!』と言われることも多くあります。
➡補聴器への否定的な考えは、補聴器への、理解不足や誤解からきていることが多くあります
眼鏡は調整が良ければ、すぐに見えます。
補聴器では、聞こえなかった耳に音が入ると、最初はうるさいと感じるため、使い始めは、目標の7割程度から開始して、音を次第に上げていき、補聴器の音に1~2か月かけて慣れていくことが必要です。適切なトレーニングが必要なこともあります。
メガネと違い、補聴器は買ってすぐには、目標とする効果をすべて期待できません。
時間をかけて補聴器の音に対して脳の慣れを促すことが必要です。
*テレビで宣伝されている安価な集音機を補聴器と勘違いしている。
補聴器はその人の様々な周波数の聴力パターンに合わせてオーダーメードで使うものです。集音機は音量以外、様々な個人の聴力パターンに合わせて使えません。また聴力保護機能もありません。聴力障害を起こすこともあります。集音機は様々な個人の耳の形状に合わせて作成されていません。デザイン的にも今の補聴器はお洒落な物になっています。
集音機は家電製品で、補聴器は管理医療機器です。
*補聴器店で、聴力レベルや周波数パターンに合わない補聴器を購入している
以前から補聴器購入で問題となっていることで、日本では、知識や十分な技量がなくても、補聴器は販売することが可能で、一部にはビジネス優先と思われる補聴器店が存在していました。
これを改善するため必要な技能や十分な知識を持っている補聴器認定技能者育成や認定施設制度が、1990年代に設けられました。
耳鼻咽喉科医の中でも、補聴器相談医の認定資格制度が、2006年、日本耳鼻咽喉科学会に設けられました。
欧米では、聴覚の専門職のオーディオロジストが補聴器購入、調整に関与しています。
補聴器購入時は、補聴器相談医に相談の上、補聴器認定技能者がいる販売店での購入を勧めます。
当院の院長は補聴器相談医であり、予約制で補聴器認定技能者との補聴器外来を行っています。
インフルとコロナどちらが怖い
◆コロナ5類以降後、様々な感染症で混沌
2023年5月コロナ5類以降後、感染症の流行が、2019年までの常識が通じなくなっています。集団免疫(人口の一定割合以上人が免疫を持つことで流行抑止)の低下もあり、インフルは夏からずっと増加、タイプもA型が2種流行、B型が2024年早々から増加。他の通常疾患の感染症(溶連菌、プール熱など)も増加、致死率が高い人食いバクテリアと呼ばれる劇症型溶連菌感染も増加しています。溶連菌とプール熱のキットが不足して注文しても入ってこない状態です。咳止めが薬局で不足して入ってこないようです。
発熱などでクリニック受診すれば、インフル・コロナ同時迅速検査が行われます。2024年早々からコロナはオミクロンの変異株の免疫逃避が高いJN.1など増加しています。しかしコロナに関しては、オミクロン前の致死率が高い状態にはなっていないようです。
👉 2024年現在、インフル コロナどちらが、怖い病気でしょうか?
◆2022年前半のオミクロン初期では
➡インフルエンザと新型コロナの死亡者数の差は69歳以下では大きくない
➡新型コロナの軽症化
オミクロン株では以前のコロナと違い、肺炎、血症症、嗅覚味覚障害は低下して、咽頭痛、嚥下障害、ひどい喉頭炎が多く喉頭蓋炎(緊急入院する疾患)を呈することもあります。食事摂取できず体力が低下して持病の悪化による誤飲性肺炎、心不全などの合併症での悪化が目立つようになっています。コロナの死亡者は80歳以上の割合が目立っています。
新型コロナの罹患率は高いが、症状について一部の方を除き軽症化していて、当院は耳鼻咽喉科のこともあり、発熱が無く咽頭痛程度の方が多く自分がコロナとは思って受診されない方が多くいます。
2020年初期の新型コロナの致死率が高く(80代 15%、70代 8%)、恐れられた疾患でしたが、時を経て2022年以降オミクロン株に代わり、感染力は高くなっているが、死亡率は低下して インフルとほぼ同等に近い死亡リスクに変わってきました。
『初期のオミクロンとコロナ流行前のインフルの死亡率の比較報告』
2022年8月奈良県立医大の報告で
初期オミクロン株が主流となった2022年1月5日~7月5日の調査では以下のことが判明
*インフルエンザと新型コロナの死亡者数の差は69歳以下では大きくない
*乳幼児学童の死亡率はコロナよりインフルの方が少し高い
*70歳以上高齢になると死亡率はコロナの方がインフルより約2倍高くなっています。
*70歳以上では、インフル・コロナともに死亡率は急増してともに20代と比較しておよそ100倍以上の増加。
*インフル・コロナとも80歳以上になると70歳代の約5倍程度の死亡率に跳ね上がります。
*ワクチン接種率が向上して死亡率の低下あり
*オミクロン以降も小児は軽症が多い、オミクロン以降2022年から稀だがコロナによる小児の死亡例もあり
◆2023年5月コロナ5類以降 コロナとインフルの比較では
➡高熱を伴うことが多いインフルの方が辛く感じる方が多い
➡体力が落ちた高齢者は、インフル・コロナ両方怖い
➡コロナ:オミクロン株での咽頭痛・喉頭炎が軽症化している
➡コロナは高熱が出ない方も多く、コロナの自覚なく受診する方が多い
新型コロナは、重症化の徴候はなく、5類以降後 臨床現場ではコロナよりインフル患者の方が、高熱患者が多く子供を中心に入院適応になる場合があります。
コロナは、咽頭痛が強く発熱がない患者が多いため、自分がコロナの自覚なく受診される場合を多く認めます。
当院は耳鼻咽喉科クリニックため、若年者から比較的若い方の受診が多く、また比較的元気な高齢者の受診が多いためか、2023年以降コロナで入院になる方はいません。オミクロン前半期のようなひどいコロナ喉頭炎や喉頭蓋炎(緊急入院する疾患)を診察することはなくなりました。
◆子供の急性脳症の変化
➡ 急性脳症もコロナよりインフルが多い
➡コロナ渦でコロナのオミクロン関連脳症増加するも2023年は減少して代わりに、インフル脳症が最も増加、ヘルペス脳症、ヒトパレコ脳症など増加
急性脳症の8割は15歳未満で、特に5歳未満の乳幼児が50%程度と小児救急3大疾患の一つで、中枢性の後遺障害を残すことを多く認めます。
以前からインフルエンザ脳症が最も多く コロナ渦では逆に脳症が減少して2022年のオミクロン関連の脳症が増加していました。2023年のコロナ5類以降後コロナ関連脳症は減少するもインフルや他の感染症の流行ともに、インフル脳症が最も多くなりその他にはヘルペス脳症、ヒトパレコウイルスによる脳症が増加しています。
◆コロナ5類以降後は、『風邪は万病の元』の考えが重要
コロナ5類以降後は、当院耳鼻咽喉科の緊急入院は コロナ以外の患者がほとんどです。
現在の怖い病状は、通常の風邪症状から、その本人の睡眠不足、不摂生、疲れ、ストレス、または糖尿病などの生活習慣病の問題もあり、体力・免疫が落ちこじらせ、大病となった状態です。
昔から『風邪は万病の元』と言われることが、コロナ5類以降の感染症の重症化の流れと似ています。
2000年ほど前の、中国の医学書の黄帝内経に『風者百病之長也』(風邪は万病の元の意味)昔の中国では外からの悪い物が入ってくると様々な病気を引き起こすと考えられていました。現代も風邪ウイルス・細菌・コロナ・インフルがやってくると様々な病気を引き起こします。昔は栄養状態が問題だったと思われますが、飽食の時代の現代は生活習慣病・ストレス・不眠・疲れなど現代特有の内面的な要素による免疫の低下が問題です。
いつも言われることですが、十分な睡眠、適度な運動、バランス良い食事と手洗い・換気・必要時のマスク、それにワクチン接種が重症化予防の最も大事なことです。最近のコロナワクチンの接種率は、高齢者50% 全体で20%のようで以前の80%以上だった時からかなり低下しています。今後、無料でなくなればもっと低下すことが予測されます。
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