吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

頸部痛の落とし穴:甲状腺疾患

2020-09-13

のどの違和感・咽頭痛・頸部の腫れ

発熱・咽頭痛・頸部痛は耳鼻咽喉科外来ではよくある訴えです。

扁桃炎、咽頭喉頭炎、リンパ節炎が最も多い原因ですが、見逃していけない緊急疾患の急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、喉頭浮腫など、咽頭所見、頸部触診、声の質の変化や開口障害、吸気性喘鳴などの有無を手掛かりに診断をすすめます。

 

前頚部圧痛があれば甲状腺疾患をみのがしてはいけません。

風邪症状と重なることもあり、頸部触診をしっかり行い甲状腺疾患を疑い頸部エコーを行うことが重要です。

 

頸部痛を示す甲状腺疾患

亜急性甲状腺炎

甲状腺の頸部痛の75%(今回のテーマ

甲状腺のう胞内出血

急性化膿性甲状腺炎:

90%は左側発症 先天性下咽頭梨状窩ろうが原因の細菌感染です。

無顆粒球症:

バセドウ病に対してメルカゾール服用時、特に3ヶ月以内に生じます。

甲状腺癌(未分化癌、悪性リンパ腫):稀

橋本病急性増悪: 稀

 

亜急性甲状腺炎

上記の中で最も多いのが亜急性甲状腺炎です。

頸部の自発痛・圧痛(頸部痛は移動することあり)に加え38度台の発熱、甲状腺の腫脹、甲状腺中毒症状(動悸、発汗過多、息切れ、倦怠感、体重減少など)認めます。

どんな人でも発症する可能性があります。

先行する咽頭炎、風邪症状の後に発症することが多いため、ウイルス感染の関与が疑われています。バセドウ病、無痛性甲状腺炎の次に多い甲状腺中毒症状(機能亢進)を呈する疾患です。

 

臨床で最も重要なのが

丁寧な頸部触診

同時に頸部エコーにて疑います。

甲状腺エコー検査所見:疼痛部に一致して境界不明瞭な低エコー領域を認めます。

血液検査(WBC CRP FT4 TSH)でほぼ診断が可能です。甲状腺抗体が強陽性例は橋本病急性増悪を疑います。

 

治療:

運動は避けてできるだけ安静、

軽症はNSAID(イブ、ロキソニンなど)

ステロイド゙内服の効果が高く数日中には痛みが軽減します。

ステロイド減量を急ぐと再燃しますのでゆっくり行います。通常プレドニン20mg程度から開始、1~2週間で5mgづつ減量10mg以降は4週ごとに5mg減量して中止します。永続的低下症の可能性や1.1%に甲状腺乳頭癌の合併の報告もあるため症状経過以後も半年程度は経過をみます。

 

経過:

頸部の自発痛・圧痛(頸部痛は移動することあり)に加え38度台の発熱、甲状腺の腫脹、甲状腺中毒症状(動悸、発汗過多、息切れ、倦怠感、体重減少など)で発症します。

初期にはこのように典型的な症状を確認できず、最初は発熱、咽頭頸部痛の症状しか気づかず、感冒の診断で抗菌薬や風邪薬を処方されることはよくあります。

20歳以上がほとんどで高齢者でも出現します。甲状腺専門病院では受診までの期間の平均は19日(0~87日)ですので最初はわからないことが多くあります。

参考資料

甲状腺疾患を極める 伊藤病院 新興医学出版社

気づきにくい甲状腺機能低下症

2020-08-23

甲状腺機能低下症は一般外来患者の2%程度に認められ、加齢とともに増加します。診断される年齢では30~40代が多く、その多くを占める橋本病(慢性甲状腺炎)の男女比は1:5で女性に多い疾患です。橋本病は女性の10~20人に1人の頻度で認められるといわれています。

自覚症状は無いか特異的な症状は無いため甲状腺の自己抗体が陽性化した時期が明確でない場合がほとんどです

疲れやすい、冷え性、肌荒れ、更年期障害、認知症、うつ病、便秘症、自律神経障害などとして診療を受けていることもあります。他覚的症状のむくみは進行しないとわかりにくく頸部の甲状腺腫大も痛みは無いためかなり大きくならないと気づきにくいものです。びまん性の甲状腺腫を認めないものを含めると、成人女性の8.5%、成人男性の4.2%に認められるとの報告もあります。

最近は検診のオプションで甲状腺機能採血、エコー(10分程度:被ばく無し)を行うところもありますが、通常の職員検診の項目には入っていません。

橋本病で自己抗体が陽性の場合、不妊と流産と有意な関連があることが示されています。妊娠18~20週までは、脳神経の発達に必要な甲状腺ホルモン(T4)は母体由来であるため妊婦さんが甲状腺機能低下であれば、赤ちゃんの精神遅滞や認知機能への影響が考えられます。これは海外からの報告が多く、日本では海藻を好んで食べる食文化があるため、海外と比べると少ない可能性があるとも考えらえています。

☞☞ 特に思春期以降の女性は、少しでも疑えば甲状腺機能を測定することを推奨します。

 

他覚症状

むくみ(下肢やまぶた:進行しないとでない)

甲状腺腫大(前頚部下方の腫脹:腫大がわかりにくい)

自覚症状

初期には症状なし

寒がり

易疲労感(疲れやすい)

皮膚の乾燥

月経異常

肩こり

筋力低下

便秘

体重増加

抑うつ

忘れっぽい

声がれ

徐脈

 

次の疾患として間違えやすい

慢性疲労

運動不足

冷え性

肌荒れ乾燥

更年期障害

女性の加齢変化

うつ病

認知症の初期

声の病気

便秘症

肩こり症

自律神経失調

 

他の次の疾患を悪化させます

甲状腺機能低下の妊婦さんは

赤ちゃんの精神遅滞

流早産、妊娠高血圧のリスク

不妊

動脈硬化

コレステロールの上昇

冠動脈疾患

 

診断

スクリーニング

甲状腺機能採血(TSH,FT4, FT3、FT4は日内変動が少ない)と

甲状腺の腫れをエコーで確認します。

精査

疑わしい疾患に応じて

甲状腺自己抗体(TgAb, TPOAb、TRAbなど)

腫瘍マーカー(サイログロブリンなど)

を追加依頼します。

低下症の場合、総コレステロール、CPK,AST,ALTが上昇することもあり。

エコー検査で

びまん性(全体に大きい)結節性(腫瘤を疑う)

に応じて対応が違います。

結節性の場合は穿刺細胞診やTSH抑制あればシンチグラムなど専門病院紹介の可能性があります。

 

治療

低下症はチラージンの服用

それぞれの病態に応じて対応

 

薬物やヨウ素欠乏又は過多の影響

ヨウ素欠乏による甲状腺機能低下はアフリカ内陸部などのヨウ素欠乏地域で認められます。日本では海産物の摂取が多く、ヨウ素摂取量はむしろ必要以上のため稀です。

ヨード摂取過多の場合も一過性甲状腺機能低下症の可能性があります。

イソジン頻回うがい

ヨウ素を含んだ健康食品の過剰摂取

炭酸リチウム(躁鬱、躁病の薬)

インターフェロン

等の薬剤のため、低下症をきたすことがあります。

 

潜在性甲状腺機能低下症微妙な低下症

甲状腺機能は正常、TSHが基準値以上に増加しています。3~6%程度で認め、女性に多く加齢とともに増加します。

治療方針は、各個人で異なります。通常は、定期のTSHの測定で経過観察です。

血中TSH>10µlU/mL

赤ちゃん希望

50歳以上の女性

80歳未満

甲状腺自己抗体陽性

甲状腺低下症の症状あり

甲状腺術後、放射線治療の既往あり

など参考に対応します。

 

参考資料

甲状腺疾患を極める(伊藤病院) 新興医学出版

若い人にも稀ではない耳閉感・難聴

2020-08-13

難聴と言えば高齢の方の加齢変化と思われる方が多いでしょう。

実は、乳幼児から高齢者まで耳閉感・難聴の病気は誰もが罹患する可能性があります。

若い人でも稀ではありません

難聴には治る可能性が高い病気と、治すのが難しい病気が存在します。

 

伝音性難聴

治る可能性が高い難聴の疾患は外耳と中耳に病変がある伝音性難聴です。

耳垢栓塞

中耳炎

鼓膜損傷・穿孔

耳管機能障害(耳抜き不良など)

などが該当します。

 

急性感音難聴

内耳と聴神経・脳に原因がある場合、感音難聴と総称され治すのが難しい病気です。

突発性難聴

急性低音障害型感音難聴今回のテーマ

メニエール病

音響外傷

ムンプス難聴(おたふくと難聴:当院コラム

外リンパろう(診断が難しい)

聴神経腫瘍(MRI必要)

特発性両側性感音難聴

若年発症型両側性感音難聴(難病指定:遺伝子の確認)

など多数存在し、突発性難聴、音響外傷、急性低音障害型感音難聴の急性期では回復の可能性があることもあります。外リンパろう、聴神経腫瘍では手術が適応となる場合もあり、難聴が進行して回復しないときは補聴器を検討します。

慢性感音難聴には、

騒音性難聴、老人性難聴、先天性難聴があり薬で治すのが困難な疾患です。

補聴器、人工内耳などの適応を考えます。騒音性難聴やスマホ難聴は予防が肝心です。

☞☞ 若い人にも稀ではない耳閉感・難聴は

耳閉感・難聴で、外来受診が多い疾患は、上記の耳垢・中耳炎などの伝音性難聴と

感音難聴では、若い20~40歳代にかけて多い急性低音障害型感音難聴です。

若年女性に多い病気です(女性は男性の2~3倍)。

今回は、外来で多い急性低音障害型感音難聴の話です

発症頻度は人口10万人あたり40~60人と急性感音難聴を来す疾患の中で最も多いと考えられています30代での発症が多く女性は男性の2~3倍です。

軽い場合は2~3日で改善することもあり病院受診しないこともあるため、実際はもっと多い印象です。

突発性難聴は40~70代で増加します。難聴を伴うメニエール病は30~50代に多く最近は高齢発症が増加していますので、若い人に多い急性感音難聴は急性低音障害型感音難聴が大半です。

 

症状:

低音域の難聴を特徴として、自覚症状は耳閉感が最も多く、耳鳴、難聴、自分の声が響くなどの症状を認め、通常めまいは認めませんが、軽いめまい感を訴える場合もあります。

原因は不明ですが、近年内リンパ水腫の関与が指摘されています。通常は一側性ですが両側のこともあります。

難聴の特徴として:

短期的には予後良好例が多い

長期的には反復、再発例が多い

長期間経過していても回復する例がある

自然治癒する例も少なくない

ニエール病・突発性難聴との鑑別:

病態としてメニエール病と同じ内リンパ水腫が想定され、その一部はメニエール病に移行します。急性低音障害型感音難聴の反復例は、めまいを伴わない蝸牛型メニエール病に該当します。めまいや眼振が確認されればメニエール病を疑います。急性低音障害型感音難聴は、軽いめまい感を訴える場合もあります

初期の低音障害型突発性難聴との鑑別は、経過の中で中高音の聴力の変化で判断します

治療:

ステロイド剤、浸透圧利尿剤(イソソルビド)、ATP、漢方(五苓散、当帰芍薬散・・)など使用します。

メニエール病はストレスとの関与が強く、急性低音障害型感音難聴も同様にストレス、不眠、疲労、自律神経や気象と関連することもあります。

台風と気象病(当院コラム)も参考にしてください。

参考資料

急性感音難聴 診療の手引き2018年版 日本聴覚医学会

診断が難しい高齢者めまい

2020-07-08

日本の不慮の事故の報告で多いのは、若者・中年では交通事故、高齢者では窒息、転倒・転落、溺死が問題になります。溺死の多くは浴槽内への転倒・転落で起きていることから転倒・転落の割合はもっと多くなります。高齢者の寝たきりの原因で多い大腿骨近位部骨折の74%は転倒が原因です。6月20日のニュースでは、長野で75歳の高齢者が自転車で転倒して、その後自宅で、外傷性くも膜下出血で亡くなっています。

20歳(100%)と比較すると70歳で筋持久力低下(30%)と平衡性の低下(20%)となります。小脳の退行変性は40歳台から始まり加齢ともに加速し高齢者の平衡機能低下へ大きな影響力を持ちます。高齢者のめまいの年間有病率は若年者の約3倍です。中枢神経、末梢受容器(内耳)の加齢による機能低下および筋力低下は誰にでもおこる現象です。

 老人性平衡障害への有効な薬物療法や手術治療は存在しません。

有望なのは中枢前庭代償を促進させるリハビリと筋力増強のためのリハビリです。加齢変化のため前庭代償の発現が不十分となりリハビリの効果が十分に得られないこともあります。前庭リハビリは耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医サイト:全国673名、鹿児島では6名認定に相談しましょう。

めまいの訴えに対して漫然と抗めまい薬が処方されていることがありますが、基礎疾患が多い高齢者ではポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)となり薬害を起こすことも懸念されています。減薬の意識も大事です。

👉 診断が難しい高齢者めまい

若い人は、良性発作性頭位性めまいを主に内耳からのめまいが多く、ほかには片頭痛・肩こり・貧血・自律神経症状・生理・心因性などを考えた対応が多くなります。

 高齢者では、若い人のめまい疾患の他に、基礎疾患が多く、下記のような多くのふらつきの・めまいの原因となる脳心・科領域疾患および薬剤性運動器・筋力の低下による老年症候群を考えた対応が必要になり診断が難しくなります。

内耳疾患感知する感覚が衰え若い人のような回転性ではなく浮動性の訴えが多くなり診断を難しくします。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなる両側前庭機能障害を示す加齢性平衡障害も出現してきます。

 

内科領域

薬歴や病歴からめまい・ふらつきに関係する疾患や薬物を丁寧に確認して対応していきます。

 様々なめまい・ふらつきに関与する多くの疾患

脳卒中 :危険なめまいです。

椎骨脳底動脈循環不全

頸椎性

くも膜下出血:4%はめまいで発症します。

心疾患

不整脈:労作時のめまい、動悸の有無の確認します。

高血圧・動脈硬化

脱水:梅雨から夏にかけては熱中症に注意

食事摂取・栄養不良:嚥下機能障害・嗅覚障害が隠れていることあります。

糖尿病:自律神経障害、起立性低血圧など出現することあります。

起立性低血圧:入浴時や食後低血圧など、下半身から上半身への血液還流改善のため下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉:第二の心臓)を鍛えます。脳循環自己調節機能や自律神経調節中枢の機能低下が原因。

認知症(レビー小体など)

パーキンソン病

アルコール中毒

薬剤性:薬物投与より減らすことを意識して対応 ポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)と言います。

 減薬についてはかかりつけ医と相談しての対応が必要です。

老年症候群

次の四つが重要です。

フレイル(健常から要介護の中間段階:加齢による衰え全般

運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア

骨粗鬆症

加齢性平衡障害(下記の内耳からのめまいで詳細記載

 

運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア

今までの対策

動的持久的運動(有酸素運動:脂肪と糖を消費、心拍予備能60%を超えない程度が望ましい

動的有酸素運動は血圧変動の程度が少なく、代謝・循環系の改善効果から今まで静的筋トレより適応な運動として勧められてきました。

最近は筋力維持、強化という点から、高齢者にも適切な強度の筋抵抗性運動静的運動:スローな運動)であれば、動的運動と平行して指導することが求められています。

心拍予備能60%を超える運動は、血圧や血糖をあげるホルモンが上昇します。乳酸が蓄積して、二酸化炭素が過剰排泄となります。静的運動は血圧をあげますので息を止めないで行います。

 

 

これからは、有酸素運動に平行して

 スローな運動の推奨

静的運動(スローな運動)

欠点は血圧をあげますので、レジスタンス運動時に力発揮が強まるときには、息を吐き、弱まるときには息を吸うことが基本です。

具体的には

スロースクワット(腰痛、糖尿病対策にも効果)

NHKガッテンピントレ糖尿病対策(スロースクワット:サイト

スロー腹筋

スロー片足引き上げ

スロー腕立て伏せ など

 メリットとして

ゆっくりであっても筋肉が動き続けていると乳酸が分泌します。

乳酸が成長ホルモンの分泌を促します。成長ホルモンが筋肉肥大、骨や腱の代謝を促進し、また体脂肪の分解も促進します。

 

骨粗鬆症

骨を強くし転倒を予防する運動

骨粗鬆症と運動 NHKサイト

背筋運動

片足立ち

スクワット など行います。

運動は背筋運動、スクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行います。食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・納豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンD・ビタミンKをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。

日常生活での注意点

急な立ち上がりや急に振り向くことを避ける

階段の降りる時は手すりを使い慎重に

両手フリーで歩行、荷物は背中に背負うか手押し車に入れる

戸外では杖や手押し車を使用

室内の障害物の整理、バリアフリー、トイレや廊下を明るく

内耳からのめまい

高齢者の急性期は、脳血管障害によるめまいに注意した対応が必要です!!

頭部CTでは急性の脳出血は有無を知ることは出来ても、急性期(6時間以内)の脳梗塞は、MRIが必要です。超急性期は偽陰性(当初の検査は正常)となる事もあり経過観察が重要で経過中の他の神経症状の出現に注意します。

 

加齢性平衡障害

いままで高齢者で原因不明のふらつき・めまいに対して診断していた概念ですが、2019年に国際基準ができました。軽度の両側前庭機能障害が出現します。

通常歩行では加齢性平衡障害の両側前庭機能障害者と健常者では差はみられず、歩行速度が速くなるほど歩行中枢が中心になり不安定歩行が出やすくなります。ゆっくり歩行は、視覚など感覚情報を利用して対応しています。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなります。

2019年に国際学会のバラニー学会で診断基準が示されたばかりです。

A: 3ヶ月以上持続する前庭症状(めまい・ふらつき)少なくとも以下の二つを認める

  • 姿勢のバランスあるいは不安定感
  • 歩行障害
  • 慢性の浮遊感
  • 繰り返す転倒

B: 軽度の両側前庭機能低下の指標、以下の検査の少なくとも一つを満たす

  • vHIT検査前庭動眼反射の利得が両側0.6~0.83(保険適応ではない)
  • 振子様回転検査による前庭動眼反射の利得測定
  • 冷温交互の温度眼振検査の最大緩徐相速度の測定

C: 60歳以上

D: 他の疾患で説明できない

加齢性平衡障害を通常のクリニックで、このB基準に沿って診断することは容易ではありません。

加齢性平衡障害を診断しても、確立した治療法や予防法があるわけでなく今後の研究課題となっています。各施設での診断の統計は標準化されます。

 実地診療では、従来通りの前庭リハビリ、サルコペニア対策(ウーキング、下肢の筋トレ)が重要と思われます。

前庭リハビリ耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医全国673名、鹿児島では6名認定:サイトにご相談下さい。

めまい・ふらつきでお悩みの方へ当院:疾患案内

 

BPPV(良性発作性頭位性めまい)高齢でも最も多い内耳からの眩暈です。60歳以上では20~40歳の7倍高い発症率です。頭部外傷、メニエール病、前庭神経炎などの二次性に発症しやすく、骨粗鬆症との関連、全身疾患との合併が指摘されています。変形性頚椎症や腰痛の合併も多く検査や耳石置換療法が出来ないこともあります。高齢者ではBPPVを感知する感覚が衰えているため発見が遅れることがあります。

 メニエール病:中年で発症することが多い疾患ですが、最近、元気な高齢者が多くなり以前より高齢者で増加しています。若い人のように回転性ではなく、持続的浮遊感の訴えが多くなります。BPPVの併存のこともあり頭部挙上での就寝も考えます。

 前庭神経炎:30~60歳に好発

心因性めまい

長い人生の中、心身の不調、身近な人との離別・死別、生活環境の変化に対応できないなどの理由から、ストレスを感じる高齢者が増えています。ストレスは、心因性のめまいの引き金になりあらゆる病気に進展します。。

不安症・うつ病・精神疾患に合併するめまい

当初は内耳のめまいが、反復するうち心因性めまいへ変化することも多くあります

若いときに前庭神経炎やめまいを伴う突発性難聴に罹患して70歳過ぎて脱代償(加齢で小脳のコントロールが低下)してめまいが出現するようになり、それに不安・抑うつなどの心因が合併して難治化している場合もあります。この場合、前庭リハビリを主に薬物療法を考えます。

 

参考資料

高齢者のめまいを治す:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2020:5

診断がつきにくいめまい症:PPPD

2020-05-28

貧血や全身状態を把握するため

英国の有症率報告では、高い順に疼痛、疲労感、めまいとなっています。日本の28年度国民生活基礎調査では、めまいの有訴率は女性:30% 男性:13% 70歳以上では女性4~5割、男性3割程度とめまいで悩んでいる方が多いのがわかります。めまいの病気の中でも原因不明のめまい症と診断されているものが20~25%存在しています。

慢性めまい疾患は、脳腫瘍や脳血管病変以外画像診断では診断がつかず、中耳炎のように鼓膜をみればわかるわけでなく、採血検査でも原因がわかりません。心因性、血圧などの循環動態、自律神経の関与も多く、丁寧な問診と繰り返しの聴検・めまい検査などおこない,慎重に診断を進めていきます中には月~年単位で長期に経過をみて診断されることもあります。めまい疾患は複雑に絡み合い心因性めまい・内耳性めまい・めまい関連片頭痛・肩こりのふらつきなど重なっていることも多く余計に診断を難しくしています。

 

👉 今回は、2017年以降めまいの疾患概念として国際的にも統一されてきた慢性めまい疾患の一つのPPPDという病気の話です。

今まで原因不明のめまい症(20~25%)とされていた疾患の中にかなり含まれていると考えられています。PPPDの情報発信している新潟大学耳鼻咽喉科では、慢性めまいの23%はPPPDと診断されています。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)

PPPD(日本めまい平衡医学会:サイト

PPPDが、診断がつきにくい理由

世界的めまい学会のバラニー学会で診断基準がまとめられたのが最近の2017年のため耳鼻咽喉科医も含め医師に広く認知されていないため。

症状が3か月以上持続する機能性めまい疾患のため、3か月以上経過を見る必要があり、すぐに判断することが出来ないため。

その上、聴検・めまい検査・画像検査・採血などで特異的所見が無い。

PPPDは耳・脳・不安症・うつ病とは独立した疾患で、症状以外明らかな異常がない疾患。

症状と経過のみで診断をつけることが必要になるため。

診断基準は以下の5つの項目すべてを満たすことが必要。

A: 浮遊感,不安定感,非回転性めまいのうち一つ以上が,3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する。

症状は長い時間(時間単位)持続するが,症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。

症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。

B: 持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが,以下の3つの因子で増悪する。

立位姿勢

特定の方向や頭位に限らない,能動的あるいは受動的な動き

動いているもの,あるいは複雑な視覚パターンを見たとき

C:この疾患は,めまい,浮遊感,不安定感,あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患,他の神経学的・ 内科的疾患,心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。

急性または発作性の病態が先行する場合は,その先行病態が消失するにつれて,症状は基準Aのパ ターンに定着する。しかし,症状は,初めは間欠的に生じ,持続性の経過へと固定していくことが ある.

慢性の病態が先行する場合は,症状は緩徐に進行し,悪化することがある.

D: 症状は,顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている.

E: 症状は,他の疾患や障害ではうまく説明できない.

 

#(補足PPPDは先行疾患があり、その病態が無くってからめまい・ふらつきパターンに移行します、PPPDを発症させる頻度が高い先行する急性発作性病態は

末梢や中枢性の前庭疾患(25~30%)

前庭性片頭痛(15~20%)

浮動感を示すパニック発作や不安(30%)

脳震盪やむち打ち(10~15%)

自律神経障害(7%)

などです。薬剤や不整脈によるめまい・浮遊感は3%以下とPPPDになりにくい。

 

めまいの原因で分類すると、各科の報告で異なります、概ね

耳から(30~50%)中枢(脳)から(10~20%)精神障害(10~20%)原因不明(10~20%) 他の原因が20~40%になるようです。

以下のように、PPPDは障害部位がはっきりせず、精神疾患ではない機能性めまいになります。

非器質性めまいの国際分類

不安症に関連するめまい

うつ病に関連するめまい

転倒恐怖症

めまいに関連する病気不安症

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患

持続性知覚性姿勢誘発めまいPPPD

 

ポイント:

👉 平衡感覚は、視覚 耳(前庭)体(足などからの体性深部感覚)の三つの信号を小脳で統合してバランスをとっています。PPPDは目と体からの入力バランスの崩れと考えられています。慢性のPPPDは、急性期の前庭機能の影響は3ヶ月で回復(前庭代償の完成)しますので3か月以上経過をみて判断します。

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患ですが、心因性めまいや器質的前庭疾患が合併している場合もあります。

前庭めまい疾患で最も多い良性発作性頭位めまいは朝に起きやすいが、PPPDは昼夕方に症状が悪化しやすくなります。PPPD単独では、回転性めまいは認めません。PPPDは自然寛解が難しく症状の増悪軽快を長期に繰り返します。

 

治療:次の三つが重要です。

前庭リハビリ

抗うつ薬(SSRI)

認知行動療法

前庭リハビリは、PPPD患者の内部感覚へ刺激を与えめまいへの順化を促します。

効果を得るには月単位(最低数ヶ月)で考えます。症状は一進一退することも多いことを理解して下さい。

日本の医療制度では整形外科や脳疾患後のリハビリのように、保険診療になっていません。外来整形やリハビリ病院のようにST、PT、技師のようなパラメディカルスタッフの協力を得て治療することは出来ません。

耳鼻咽喉科では医師の自助努力で、自宅でできるように指導を行い対応しています。定期通院でモチベーションを維持します

抗うつ薬は、観察研究で有効性が報告されていますが、吐き気、傾眠、めまい、ふらつきの問題や、やめる時も離脱症に注意が必要になります。アクチベーション症候群を生じることもあります。アクチベーション症候群とは、投与初期の2週間以内や増量期に起こりやすい不安、焦燥、不安、衝動性などの症状です。

PPPDはめまいに対する過敏性が形成されているため慎重に服用を考えます。PPPDの前身の慢性めまい疾患への効果は50~70%程度、うつ病の投与量の半分程度で効果を認めることが多いようです。2~3ヶ月で効果がみられ少なくとも1年継続が推奨されています。精神疾患の有無に関係なく効果を認めるため、中枢セロトニン神経系への作用が関与していると考えられています。現在、慢性疼痛にたいして鎮痛作用を目的とした抗うつ薬投与が行われている考え方と同様と推測されています。

認知行動療法とは、ストレスな状況にいたる否定的な考え方(認知)に働きバランスよい適応的な考えをつくり、気持ちを楽にする精神療法です。

我々は、ダイエットを行う時、毎日体重を測定してなぜ体重が増えたかを考え悪い行動や食習慣を是正していくと思います。これと同じことを、こころの問題について行い、誤った考え方や物事のとらえ方を自分で気づき歪んだ認知を適応的な考えに変更して、気持ちを楽にする方法です。

めまいに対しての簡易的認知アプローチとしてめまい日誌を作成して、誘発因子として、睡眠不足、疲れ、気圧の変化、人混み、スマホ・PCの視覚刺激、ストレス、生理との関連、肩こり、場所の変化など見極め、本人に誘因を自分で認識してもらい対応していきます。

ひとつの方法として、毎日のめまい・ふらつきのため、不安を感じている方は多く毎日の腹式呼吸の習慣を身に着け心の安定をはかります。最初は2秒で鼻から吸い、4秒で口からはく、5秒で吸い10秒ではくまで、少しずつ長くしていきます。

~~本格的認知行動療法について:精神科~~

世界的に見ると,認知行動療法は精神療法の世界標準となっていますが、日本においては,普及が十分に進んでいません。

うつ病、強迫性障害、パニック障害、PTSD、社会不安障害、神経性過食症は、認知行動療法の保険適応となっていますが、取り決めが多く保険点数が低いこともあり実施施設は少ないようです。自費診療で行うところもあるようです。通常は、精神科・メンタルクリニックが行います。この治療のメリットは再発率が低く、精神薬のような副作用がないことです。

PPPDへの認知行動療法は短期的には効果をみとめるようですが、長期的にはこれからの検討課題となっています。

患者さんに、この病気の病態生理を理解してもらい認知行動療法の必要性を理解してもらうことから始まります。患者さん自身が自己観察を行い、めまいに対する過剰な恐怖など自覚することから始まるようです。精神科の近藤医師は、第3世代認知行動療法の一つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピーのPPPDへの効果を報告しています。3世代認知行動療法とは、瞑想を利用したマインドフルネスを利用してネガティブな考えをつかまえ受容し対応していくやり方のようです。前庭リハと併用して行います。認知行動療法は、精神科医が誰でもできるわけではないようで一定の研修と臨床経験を必要とするようです。

通常の内科や耳鼻咽喉科の外来で行えるものではありません。

 

まとめ:

この疾患PPPDは、何科に行けば治るというものではなく、めまいに精通した耳鼻咽喉科医や認知行動療法に精通した精神科・心療内科医がPPPDの疾患を良く理解して対応することが重要になると思われます。臨床心理士や理学療法士の協力を得ながら行うことが望ましいのですが、日本の保険医療制度では難しいのが現状です。

老年症候群、心因性めまい、薬剤性めまい、椎骨脳底動脈循環不全、外リンパろう、脳脊髄液減少症など慢性化しやすいめまい・ふらつきの原因をしっかり鑑別して行うことが前提です。

 

参考資料

慢性めまい治療における認知行動療法と 前庭リハビリテーションの役割:近藤 真前 Jpn J Psychosom Med 58:517-523, 2018

姿勢誘発めまい(PPPD)の診断基準:堀井 新 Equilibrium Res Vol.76(4) 316~322,2017

めまいリハビリ 五島 史行 金原出版

« Older Entries