吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

回転性めまいの話題&注意点

2019-10-16

めまい・ふらつき

めまいを訴える患者さんは高齢社会を反映して増加の一途をたどっています。麻痺が無い短期のふらつきは風邪症状、不眠、疲れ、肩こり、脱水など日常生活に問題あることも多く、自己対応で済ませる方も多いと思いますが、ぐるぐる回る回転性のめまいは、びっくりして救急車を呼ばれる方も多くいらっしゃいます。

👉今回は、耳鼻咽喉科医が診察することが多い回転性のめまいの最近の話題と生命に関わるめまいを見分けるうえでの注意点の話です。

三つの話題

良性発作性頭位めまい症(BPPV)と骨粗鬆症

メニエール病の中耳加圧療法

片頭痛とめまいの関係

めまいの注意点危険なめまいを見分ける事

 

ふらつきをめまいと考えてない方もいるので、ふらつきも含めてめまいと呼んでいます。

めまいを回転性のぐるぐる回るめまいふらつき(浮遊性めまい)に分けて考えています。

めまいの原因を考える時 末梢前庭性(耳鼻咽喉科疾患に多い)中枢性(脳卒中、脳腫瘍など) その他(不整脈、貧血、自律神経、薬剤性、筋力低下、肩こりなど)に分けます。回転性めまいは末梢前庭性に多く、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、内耳炎が代表疾患です。中枢性では、脳卒中・脳腫瘍以外では、近年、片頭痛に関連するめまいが、前庭性片頭痛という疾患単位として確立され、症状として回転性めまいを多く認めます

 

話題➊ 良性発作性頭位めまい症(BPPV)と骨粗鬆症

耳鼻咽喉科が扱うめまいには末梢前庭性が多く全めまいの60%を占めます。その中で最も多いのが良性発作性頭位めまい症です。回転性めまいの内耳疾患で、半分程度を占め、男性より3倍女性に多く中高年の女性に多い疾患です。

内耳の耳石が何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで三半規管を刺激してめまいが起こります。運動不足、長期臥床、外傷後に起こり易くなります寝たきり・運動不足など動かないでいると、半器官へ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症してきます。また耳石もカルシウムであるため、閉経後の女性に多い骨粗しょう症との関連も考えられています。

治療:

浮遊耳石置換法自宅でのめまい体操です。発症機序から、薬で治す病気ではありません。対症療法として嘔気、めまいに対しての薬物療法は一時的に行う程度です。

通常は、2~3週間で自然治癒することも多い疾患ですが、再発例や難治例も多く認めます。再発率も高いため普段から運動を心がけ、動くことを意識する必要があります。難治例で、毎晩耳石が剥がれて三半規管を刺激して遷延・再発する方には、めまい体操や耳石置換法では間に合わず、上半身を少し高くしての就寝、枕を高くすると起こしにくくなると言われています。

 NHKガッテン20191023放送サイト上半身挙上の仕方が説明されています。

 

 BPPVの基本事項は次のサイトを見てください

 

 NHK健康チャンネルの動画を参考にめまい体操にチャレンジしましょう。

 後半器官結石(右、左)BPPVのめまい体操(Epley)(動画

Ⓑ BPPV全般の寝返り体操 BPPV全般のめまい体操動画)(特に外側半規管結石)

 平衡感覚を鍛えてめまいを解消動画

動画、BPPVだけでなく、前庭神経炎、メニエール病などの急性期後のリハビリとしてのめまい体操や加齢変化による平衡機能の低下予防にも応用できます。

 

BPPVの難治化要因としての骨粗鬆症との関係:

難治化や再発例は、長期臥床後、二次性(メニエール病後、外傷後)に多いと言われています。骨密度が低下した方に、再発例が多い報告があり、耳石が脆弱化している耳石粗鬆症とも考えられています。今後、若いころからから骨粗鬆症への対応がBPPV発症の予防につながる可能性があります。

骨粗鬆症での対応:

骨密度は20歳ごろがピークと言われ、若いときの過剰なダイエットや痩せすぎは、閉経後の骨粗鬆症の悪化が予測され、骨折予備軍と考えられています。

食事、運動、生活はどうするか?

ロコモ体操:兵庫県立尼崎総合医療センター(youtube)

運動は背筋運動スクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行います。食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・納豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンD・ビタミンKをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。

骨粗鬆症の運動療法:NHKの健康チャンネルサイト

骨粗鬆症の食事療法:NHKの健康チャンネルサイト

骨粗鬆症の薬物療法:NHKの健康チャンネルサイト

を参考にしてみてください。

 

話題メニエール病の中耳加圧療法

メニエール病の基本事項は次のサイトで確認して下さい。

メニエール病:NHK健康チャンネルサイト

耳のめまいの病気のメニエール病は内耳のリンパ水腫でめまいを起こす疾患です。内リンパ水腫を起こす理由はまだわかっていません。メニエール病はストレス、睡眠不足、几帳面との関与が大きい疾患です。月経はメニエール病の誘発因子となり、更年期障害と合併しやすいと考えられています。急性期のめまいに対して、回転性めまいの持続時間10分程度から数時間程度ですので、内服または点滴加療、急性の聴力低下はステロイド治療などを行います。

この疾患は反復するので予防が重要です。生活習慣の改善、睡眠指導、軽く汗を流す運動をすること、飲水指導を行います。難治例に対して外科的治療は後遺症を残す可能性が高く慎重に検討する必要があります。後遺症を残さない新しい中耳加圧療法が外科的治療の前段階治療と位置づけられます

難治・再発するケースは多く、難治例(stage4)を対象に、2018年9月から中耳加圧療法が、保険収載されました。

詳細は、日本めまい平衡医学会適正使用指針サイトで確認して下さい。

中耳加圧療法の治療対象は:

保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返し、外科的治療を考慮するメニエール病確実例および遅発性内リンパ水腫確実例(stage4)です。耳鼻咽喉科専門医のみが実施できます。

実施要領:

貸し出しの中耳加圧装置(シリコンゴムチューブを介して、圧波を外耳道を通して鼓膜に送る装置)を1回3分1日2回行い、月間の症状を日誌に記載してもらいます。月1回通院して1年後に評価を行います。2019年10月現在この装置の貸し出しは、一部の大きな病院に限定されています。2020年頃から開業医へも貸し出しが拡大されるようです。

 

話題 片頭痛とめまいの関係(前庭性片頭痛、メニエール病との併存)

片頭痛の基礎知識は日本頭痛学会:片頭痛サイトNHK健康チャンネル:片頭痛サイト)で確認して下さい。

日本では約840万人と推計、ほとんどは30歳までに発症し、6割程度は生理中に悪化、妊娠中は改善、更年期初期に悪化し年齢とともに罹患率は低下します。20台から50台の女性に多く、エストロゲンの関係が考えられています。

めまい患者さんが、頭痛を訴えても、脳卒中や脳腫瘍以外では片頭痛との関連を疑うことは今まではあまりありませんでした。最近では、頭痛外来の片頭痛患者の半数以上に何らかのめまい症状があり、片頭痛とメニエール病の共存率も高いと知られています。前庭性片頭痛という疾患単位として診断基準が確立されたのは近年のことです片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)は、今まであまり知られていなかったため、難治性や原因不明のめまいの患者さんの中にかなりの割合で含まれていると考えられています。外国の耳鼻咽喉科外来の高齢者のめまいの原因で13%の報告があります。

診断

過去も含め片頭痛症状がある

めまい前後に頭痛がある

めまい症状は、自発性めまいや視覚刺激・頭部運動で誘発されるめまいや浮動感(回転性めまいが多いが、一部に浮動感あり

少なくとも5回のめまい発作で、5分~72時間持続

めまい発作の少なくとも50%に1つ以上の片頭痛兆候(頭痛、光・音過敏、前兆)がある

めまい発作時は、高度難聴はなく、耳鳴・耳閉感のあることは多い

治療

めまい発作時は、トラベルミン、セファドール、ナウゼリンなど

トリプタンのめまい効果は認めないようですが、頭痛には屯用で使用。トリプタンは、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、重度高血圧、重度肝臓病では使えません。

片頭痛の予防治療が発作の予防に有効

ミグシス、トリプタノール、インデラル、デパケン、SSRI(抗うつ薬)、呉茱萸湯など

めまいのリハビリ(片頭痛症状も改善することが報告あり)

生活で注意点と対策

強い光、騒音、人混みを避ける

寝過ぎ寝不足を避け、休日も普段通り

ストレス回避

ワイン、チーズ、アルコール、チョコは避ける

赤系サングラスを選ぶ

片頭痛発作時は、静かな暗い場所で安静または睡眠、冷たいタオルで痛む箇所を冷やします。

『めまい診療の流れ』

めまいの注意点危険なめまいを見分ける事

糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化の合併を疑わせる既往や発作性心房細動があるときは特に中枢性のめまいの注意が必要です。

めまい以外に、運動・感覚障害や呂律異常、頭痛、顔面麻痺しびれ、目の焦点が合わない、二つに見えるなどあれば、中枢性をすぐ疑います。

まっすぐ歩けない、突然の肩こり、急に力が入らない、一瞬で消えるしびれのときも脳梗塞の前兆のこともあります。

めまいの他に、耳鳴り・難聴があれば末梢前庭性(耳鼻咽喉科疾患)の可能性が高くなります

ACT-FAST脳卒中の症状と緊急性の標語

アメリカ脳卒中協会の標語にACT-FASTがあります。

日本心臓財団:ACT-FAST(サイト)を参考に

  • Face:顔がゆがむ笑顔を作りゆがみの左右差を確認
  • Arm:手の脱力閉眼し、手のひらを上にして両腕を伸ばし5秒保持。手の落ち方の左右差をみます
  • Speech:言葉が出ない簡単な言葉を言う、パタカ発声。滑舌、ろれつが回るかを確認します。
  • Time:急いで行動症状が出始めた時間を記録し救急車を呼ぶ。治療は早ければその後の経過がよくなります。

血栓溶解療法は発症4.5時間以内の治療、脳カテーテル治療は発症8時間以内の治療

 

👉突然の回転性のめまいがあれば、既に脳外科などでMRIなど画像診断を行い、異常なく耳鼻咽喉科受診を勧められすぐに来院される場合は多くあります。

経過を見る事の重要性:稀ではありますが、最初はめまいだけ、又はめまい・難聴だけの症状が後で顔面麻痺しびれ・呂律異常・上下肢の協調運動障害の出現開眼で側方転倒傾向を示すめまいが持続するときは、以下の理由により再度早めに頭部精査が必要になります。

 梗塞の早期MRI診断の問題点

発症24時間以内(特に早期6時間以内は)急性期脳梗塞の5.8~17%に、症状は明らかにもかかわらず、画像所見は異常を認めない偽陰性例があります。
経過観察の上、早めのMRI再検が必要となります。椎骨脳底動脈系は梗塞巣小脳・脳幹)のサイズが小さく、MRIでの所見出現が遅くなります。

小脳・脳幹障害の特徴

脳幹障害:めまい以外の神経症状を伴うことが多い

例:ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)動脈の解離性病変により若年層でも発症、めまい・ふらつき・頭痛・嚥下や発声障害が出現。特徴的な感覚障害が出現します(同側の顔面、反対側の上下や体感の感覚障害)

上小脳動脈SCA)領域の症状:めまい以外に滑舌呂律異常、患側上下肢の協調運動障害

前下小脳動脈AICA)領域の症状:めまい難聴以外に顔面麻痺、滑舌呂律異常、患側上下肢の協調運動障害、

AICAから分岐した迷路動脈の虚血が生じ、内耳障害と同じ症状が出ます最初、耳からのめまいに思えても顔面麻痺・しびれや呂律異常の出現に注意します。

後下小脳動脈(PICA)領域の症状:起立や歩行機能障害、開眼で側方転倒傾向を示すめまいです。

ある報告では、小脳梗塞でめまいのみは11%、その96%が後下小脳動脈領域の梗塞です。

 

👉 後遺症を残すことがあるHunt 症状群も最初はめまいや耳痛、その後高度な顔面神経麻痺が出現

脳からの場合は、額の左右は対称、顔の片側下半分の麻痺は認め手足まひしびれを伴います。脳外科 神経内科で入院加療となります。

脳からではないHunt症候群は、額の皺寄せで非対称になる点で鑑別します。

Hunt症候群は、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性で起きます。水ぼうそう再発という現象なので、その人の体力が弱ると出てきます。

子どもの頃の水ぼうそうのウイルスが、脊髄の神経の根元や三叉神経や顔面神経の神経節に潜んでしまい、ウイルスの抗体が弱ったり、過労やストレスで免疫が低下したタイミングで症状として発症してきます。顔面麻痺 疱疹 耳痛 めまい 難聴出現。年間1万人発症。20歳台と50歳台に発症のピークあり。3~4月と6~7月に発症が増加します。三分の一は耳帯状疱疹後、2日以上して顔面麻痺が出現しますので、気を付けなければいけません。顔面神経麻痺は1週間程度症状が進行することもあります。

 

参考資料

めまいの検査改定3版 診断と治療社

メニエール病の診断と治療 将積 日出夫 日耳鼻会報122:1191-1197、2019

BPPVと骨粗鬆症の臨床的関係 山中 敏影などEquilibrium Res Vol.71(1) 33-39,2012

実践ダニ対策(チリダニ・マダニ)

2019-09-29

ダニ関連の喘息やアレルギー性鼻炎の改善目的にダニ対策は重要であることは認識されている方は多いと思います。しかし、薬物治療と比べダニの環境整備は、即効性はなく行っても実感がわかないと感じている方が多いでしょう。

ネットを探せばダニ対策参考資料はたくさんでてきますが、掃除の細かいことや一般的なことなど沢山かかれています。何から手を付ければよいのかわかりにくい感じがします。実際行われているかと言うと実行性に乏しいように思われます。動画による説明と解説があれば、おそらくダニ対策の有効性が理解でき実行への動機づけになると思いますので、今回、環境再生機構の動画を用いて解説をくわえてみました。頑張ってみましょう。

その他にも屋外ダニのマダニの注意点やマダニやチリダニによる食物アレルギーのことも触れてみました

ダニの種類

ダニは昆虫ではなくクモやサソリの仲間になります。ダニは5万種以上あるといわれていますが、身近に問題となるのは、目に見えないmite(マイト;屋内チリダニ)と吸血する見えるtick屋外マダニ:犬ダニ)となります。

屋外ダニでは、マダニは2.5mm~10mmの大型のダニでダニ媒介性感染症(死亡するこもあるSFTSなど)を引き起こします。ネズミに寄生するイエダニ(大きさ0.6~0.8mm)は、5~9月に発生して、吸血し痒みや痛みを引き起こします。ネズミ駆除を行います。

屋内ダニでは、大きさが0.2mm~0.4mmと小さく、肉眼で確認できないチリダニ(ヤケヒョヒダニ、コナヒョウヒダニ)が9割で、様々なアレルギー症状の原因となります。ほかには人を刺し痒みの原因になるツメダニ、保存環境が悪い食品に住むコナダニなどがあります。畳に白い小さな虫がいればチャタテムシを疑います。チャタテムシがいれば、ツメダニはチャタテムシを餌にするのでツメダニの存在も疑います。

マダニ対策

国立感染症研究所:マダニ対策サイト

西日本を中心にマダニによるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)が報告されていますので、山歩き、キャンプ、屋外作業するときはマダニ対策をしっかり行う必要があります。SFTSの潜伏期間は6日~2週間で5~8月に患者数が増加します。症状は発熱、消化器症状、出血傾向を認め、死亡率6~30%になります。治療は対症療法のみです。国立感染症研究所:マダニSFTS(サイト)

 

チリダニ対策(ダニ関連アレルギー性鼻炎・結膜炎・喘息対策)

日本では昔は、屋内では人を刺すツメダニが多くいましたが、高気密・高断熱の家の増加のため、チリダニが1960年代ごろから急に増加しています。冬でも温度・湿度が一定に保たれるため、一年中ダニが増殖することになります。

喘息発作を起こすダニのアレルゲン量は感作:2µg/g塵 発作:10µg/g塵 がWHOの基準ではなっています。

世界比較の寝具のダニアレルゲンで、日本は2µg/g塵以上で10µg/g塵が平均的な数値ですが、スエーデンでは、2µg/g塵以下がほとんどです。日本は世界でもダニアレルゲン量が最も多い国と言えます。日本家屋内の調査でも、床より寝具のダニアレルゲンが特に多いことも知られています

室内ダニの最適温度25~30℃、相対湿度60~80%のため、ヒョウヒダニは湿度が高い梅雨に増え始め、7月から9月はじめにかけて増加し、死骸・フンが10~11月に増加してアレルギー症状(喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)の原因となります。

ダニ対策を中心とした環境整備を行うことが、喘息やアレルギー疾患の急性発症予防やステロイド吸入の減量につながります。

ダニ対策の実践(環境再生機構サイト)要点が簡潔にまとまっていますので、確認して下さい。

👉以下の環境再生機構の動画がよくできています。動画を見た方が、具体的にどうやればよいかイメージがわきやすく、動画はリアルでストーリー性があり動機付けになります。それぞれの動画の簡単な解説を付けていますので、参考にしてみてください。

簡単にまとめると、寝具の加熱(50℃以上)は3ヶ月に1回、シーツのこまめな洗濯、寝具の掃除機掛けと天日干しは1週間に1回、布団たたきのみは逆効果、たたいた後は掃除機掛けを。床・たたみ・カーペットは、週に1回以上(1回/3日間)掃除機掛けを行います。窓の換気を、こまめに行い湿度をあげないようにします。優先順位は寝具のダニ駆除を第一に考えましょう

動画1サイト

布団の中のダニが原因で、お子さんが喘息を突然発症する話です。ダニ対策ドラマの開始です。

動画2サイト

喘息の治療は環境整備、薬、体質改善・体力増強です。環境整備では、ダニの関与が最も多く、ダニを減らすことが大事です。ダニを減らすと薬を減らせます。ツメダニやコナダニは喘息に影響しません。チリダニが原因になります。チリダニは3週間で卵から成虫に成長し、ダニの環境が良いと10週間後には30匹が1万匹まで増殖します。その糞・死骸なども粉々に(0.2μm)なり空中を浮遊してアレルゲンとなり、吸って喘息発作を起こします。

動画3サイト

子供がダニ襲われる夢を見てドラマが始まります。チリダニの隠れ場所:たたみ、カーペット、ぬいぐるみ、布ソファです。フローリングはホコリが舞い上がり易くなります。寝具はダニが最も住みやすい場所です。

動画4サイト

ダニの弱点を知る!実験では、ダニは20~30度では増殖し、40℃でもなくならず、50℃以上で死滅します。湿度は40%以下で4時間後に全滅します。実際の室内では、室温22~28℃、湿度60~80%でどんどん増殖します。

動画5サイト

西宮市の環境衛生課のダニ対策を中心に解説しています。

西宮市:ダニを駆除するにはサイト)も参考にしてください。

効率的な掃除の方法

第一にやることは寝具のダニを駆除すると喘息発作が防げます。ダニは人の皮膚カスが大好きです。ダニの駆除と増殖予防を同時に行う。

普段から窓を開け湿度をあげない、掃除の時は窓も開ける事。カビはダニのえさにもなります。湿度40%以下でダニの死滅効果があります。冬は加湿器で湿度をあげすぎない事。

子供の寝室はカーペットはひかず、ごみがたまりやすい物を置かない事。ぬいぐるみを置く場合3ヶ月に1回洗濯する。

窓を開け、畳、カーペットの床面に毎日掃除機を1m²に20秒かけて週に1回以上行うこと小児喘息時の部屋は毎日の掃除が良い。フローリングは、ホコリを舞い上げない拭き掃除の後の掃除機が良い。フローリング、畳、絨毯の順にダニは増加します。

就寝時子供の寝返りでダニのアレルゲンを吸い込むと発作を起こすので、1週間に1回は寝具・布団の掃除を1m²を20秒かけて行うこと。布団はシーツをはずし、布団用ノズルを用いて裏・表に行います。布団用ノズルが無いときは、ストッキングの先端を先にかぶせる方法もあります。喘息のお子さんは、布団のなかで暴れると喘息発作を起こします

天日干しは乾燥させるためダニの増殖対策に有効ですが、ダニそのものは光に過敏に反応して布団の反対側の影の部分に移動して駆除効果は乏しい。

布団たたきについて5分の布団たたきと布団たたき後76秒の掃除機掛けの方が約30倍のダニ駆除効果を高めます布団たたきだけでは、ダニアレルゲンを表面に浮かすだけで逆効果のこともあります。

衣類乾燥機(通常55℃以上)と洗濯

洗濯はダニのえさとなるフケ・垢など除去しますが、ダニそのもの死滅効果はあまりありません。衣類乾燥機50℃以上で死滅効果があり、60℃以上ではすぐに死滅します。乾燥機での加熱は3ヶ月に1回行います。毛布やタオルケットなどは30~60分でダニは死滅可能。夏の炎天下では車の中でも同様の効果があります。死骸は残りますので乾燥後も掃除機掛けは行います。衣類乾燥機に適している寝具なのかは各自確認して下さい。

防ダニ布団カバー(高密度繊維)

カバーのおかげで、ダニは布団の中に入らなくなりますが、表面にはダニが存在するためシートの洗濯と掃除機掛けは必要

布団乾燥機では、中心が50℃以上40分で死滅します。

 

動画6サイト

ダニ駆除を行えば、子供の小児喘息が改善した話。リビングなど全部行うのは大変なので、シーツや寝具と寝るところをしっかり定期的に行うだけで効果があります。ハッピーエンドにドラマは終わります。

ためしてガッテン2015年7月22日ダニ撲滅宣言サイト)前述したことがまとめてあります。

 

👉次はチリダニやマダニの食物アレルギーの話になります。

パンケーキアナフィラキシー(貯蔵チリダニアレルギー)

チリダニが原因の食物アレルギーです。

海外では、パンケーキ粉が原因であることが多く、日本ではお好み焼き粉やたこ焼き粉混入したチリダニなどが原因で起こす食物アレルギーです。ほかにコナダニの報告もあります。小麦アレルギーやお好み焼きの具材の食物アレルギーを除外する必要があります。加熱調理しても抗原性は失いにくく、調理後のお好み焼きなどを食べて30分以内に喘鳴、膨疹、呼吸苦が出現します。小麦粉のみの製品によるダニ混入のアナフィラキシーは少ないと言われています。

診断は難しく、症状を誘発した顕微鏡によるダニの存在の確認、原因製品・未開封の製品・小麦粉・ダニのそれぞれのプリックテストなど皮膚科の検査、特異的IgE抗体検査など行う必要があります。

対策:ダニはわずかな隙間からでも入るため、お好み焼き粉・パンケーキ粉・たこ焼き粉は、開封後、密閉して冷蔵保存します。

肉アレルギー(マダニ関連経皮感作)

四つ足の肉(牛肉、豚肉、羊肉)を食べて数時間から半日以内に起こる遅発性獣肉アレルギーです交差反応を示すカレイ魚卵を食べても同様のアナフィラキシーを起こすことがあります。肉アレルギーの方は、医療の分野(頭頸部癌、大腸がん)で使用される抗ガン剤のセツキシマブの使用によるアナフィラキシーの可能性があり注意が必要です。

肉、カレイ魚卵、セツマキシブに共通するのは、原因抗原のα-galです。α-galはフタトゲチマダニの唾液腺中に存在していて、マダニ咬傷による経皮感作が考えられています。患者は犬などのペットを飼っている方が多く、犬などを介してのマダニ咬傷が推測されます。

参考資料

環境再生機構HP  国立感染症研究所HP  小児気管支喘息治療・管理ガンドライン2017

年代別食物アレルギーのすべて 海老澤 編 南山堂

運動・アスリートと喘息・鼻炎

2019-09-16

運動会は、以前は秋がほとんどでしたが、残暑、熱中症、台風による季節的な理由や秋には行事が多く、現在は小中学の運動会が5~6月または9~10月に多く開催されています。当院の周囲の学校では9月中旬以降に運動会が多いようです。最近、気候の変化に伴い運動会の練習など咳がとまらない、呼吸苦・ゼーゼー・だるいなどの訴えのお子さんたちが多くなりました

👉 今回は運動誘発喘息、運動誘発鼻炎、競技会に参加するアスリートたちが注意すべきことなどのお話です。

 

運動誘発喘息(EIA:exercise induced asthma)

運動により一時的に咳・喘鳴や呼吸困難が起こる現象を運動誘発喘息(EIA)と言います。喘息でない者にも起こりえるため、運動後に気管支が収縮する現象として運動誘発気管支攣縮(EIB: exercise induced bronchoconstriction)と呼ぶこともあります。運動による気道粘膜の脱水と冷却、過剰な換気量や大気汚染物質などによる気道過敏性の亢進が考えられています。EIBの頻度は10%程度ともいわれていて、体調や環境によって誰にでも起こる病態と言えます。

発作は

冷たく乾燥した環境でマラソンなどの持続的な運動を続けた場合に起こりやすく、運動を始めて数分で起きて、運動を終了すれば治療をしなくても20~30分で回復します。中には運動を中止しても回復せず、重症の発作をおこしてしまうこともあります。

予防

10~20分のしっかりとしたウオーミングアップEIAは十分な準備運動で起こさなくなる期間(不応期:準備運動後の1~4時間)の存在が知られていて、目的とする運動のEIAを軽くすることが出来ます。

普段から、喘息のコントロールをしっかり行い気道過敏症を抑制することです。コントロールが出来ていればEIAを起こしにくくなります。

薬剤による予防;

運動15分前短期作用吸入β2刺激薬(SABA:メプチン、サルタノールなど)の吸入、SABAの連用は気道過敏性の亢進をもたらすため短期使用にする。

DSCG(インタール)の運動15分前の吸入

普段から自宅で、ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカストなど)の服用定期吸入ステロイドで日常からコントロール学校で運動前の吸入薬を使うことは難しいことが多く、これが最も学校活動では望ましい対応と思われます。

普段からの適切な運動,運動の継続でEIAが起こしにくくなります;水泳が起こしにくい運動と言われますが、なんでもよいので運動習慣を持つことが重要です。1日20分以上の早歩きでかまいません。マラソン、サッカー、ラグビーなどは、冬に外で走る運動量が多いスポーツに起こしやすくなります。徐々に強度が上がる運動はおこしにくいと言われています。スキューバーダイビングは、タンク内の乾燥冷気や海水由来の高浸透圧の海水を吸引することで気管支攣縮が起こしやすく生命の危険につながる恐れがあります。トップアスリートでは、競泳はアスリート喘息の有病率(約20%)が高いと報告されていて、塩素による気道上皮障害や長い持続的運動の関与が推測されます。

マスク;湿度と温度の保持および水分喪失の防止

運動中は鼻呼吸を行い、寒いときは室内で行います。

EIAが起こったとき

運動をやめ鼻で息を吸いと腹式呼吸をします、水があれば飲むと加湿効果に役立ちます。治療しなくても20~30分で改善するのが通常です。改善なければSABA:メプチン、サルタノールなどの吸入を行い医療機関へ

運動誘発喘息:腹式呼吸;環境再生保全機構サイト

などで普段から腹式呼吸を練習しましょう。

ピークフローモニタリングによる早期発見

喘息の患者さんが自宅で毎日測定することで自分の喘息の状態を客観的に把握することが出来ます。特にお子さんの場合は自分のことがうまく言えず無理をして体育の授業や課外運動活動に参加していることもあります。簡易型ピークフローメーターは安価(2000~4000円程度)で購入可能です。朝、夕2回測定して日誌に記録します。喘息の方は症状が良くなると、本来必要なのに、定期吸入薬は使わなくなることが多く、データが悪ければ早めにステロイドの吸入を再開または増量を行います。症状があれば短期作用吸入β2刺激薬(SABA)の屯用での吸入を行い、吸入前後で測定して改善悪ければ病院受診も考えます。

ピークフローモニタリングの使い方;環境再生保全機構サイト

ピークフローメーターの実際;ミニライト使用例youtube

鑑別すべき病気喘息の治療をしても改善しない時

運動誘発性過換気症候群

喘息の検査や喉頭ファイバーによるVCD(vocal cord dysfunction)などの検査では異常なく、ランニングなどの運動負荷を行い、呼吸苦・過換気・テタニー(手足のしびれ、筋肉けいれん)の症状が出現時に、聴診で喘鳴無く呼気二酸化炭素の低下、動脈血液ガス検査などで診断を行います。心理的ストレスが原因となることが多く、抗不安薬、病態説明、腹式呼吸、認知行動療法、リラクゼーションなど心身医学的治療を行います。ペーパーバッグ呼吸法は、現在は行いません。

運動誘発性喉頭閉塞症(EILO:exercise-induced laryngeal obstruction)

激しい運動で生じるVCD(声帯機能不全)、本来開大すべき吸気中に声帯が内転し呼吸困難を来し、運動が最も激しいときに発症して、運動終了後、次第に改善します。突然の呼吸困難と胸痛・咽頭痛からパニックや過換気を合併しやいと言われています。日本ではまだ認知度が低い疾患です。北欧の健康若者の有病率は5.7%~7.5%、アスリートでは35.2%といわれています。

診断:喘鳴は吸気時に頸部主体に認め運動終了後1~5分で改善。安静時の喉頭には異状は認めず、運動負荷中の持続的喉頭内視鏡検査にて声帯の観察を行い診断します。

治療リラックスした正しい呼吸法(腹式呼吸)の習得、エルゴメーターで運動負荷をかけて、持続的喉頭内視鏡を用いて運動負荷中の声帯を観察して、リアルタイムで視覚的フィードバックを行い呼吸法の修正を行います、現時点では、日本で視覚的フィードバックを行うところを探すのは難しいと思われます。

 

運動誘発鼻炎

運動誘発喘息の予防に、湿度と温度の保持および水分喪失の防止が重要で、鼻で息を吸うことは必須となります。水泳では、瞬時に息継ぎが求められ、口吸気鼻呼気で行います。アレルギー性鼻炎や喘息があっても、運動直後は鼻腔粘膜の収縮がおこり鼻閉は改善しますが、健常者と比較して10~20分後には逆に鼻粘膜が腫脹して鼻閉が悪化してきます。アレルギー性鼻炎や喘息の患者の20~40%程度に生じる報告があります。マラソン、サッカーなどの鼻呼吸や水泳の鼻呼気の障害となります。運動選手がブリーズライト(鼻翼拡張テープ)をつけている方がいます。鼻翼の構造的因子の改善には効果があると思われますが、鼻粘膜腫脹への効果は補助的役割しか及ぼさないでしょう。運動誘発性鼻炎と運動誘発性喘息との相関は確認されていないようです。

治療:抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド

 

アスリート喘息

アスリート喘息とはアスリートにみられる前述の運動誘発喘息で述べたEIAやEIBのことを言います。アスリートが運動によって喘息様状態になることアスリート喘息と考えて下さい。最近の日本オリンピック選手の有病率は約11%とかなり多く、訴えはゼーゼーではなく、運動中の咳が多く胸部圧迫感がみられます。運動の途中から急に動けなくなるという訴えも多いようです。

検査:スパイロメトリー、気道可逆性検査、気道過敏性試験など呼吸器専門的検査を行い、TUE申請では、呼吸器専門的検査が要求されています。

治療:通常の喘息治療の1~2段階上のステップから開始してステップダウンします。

競技者はアンチドーピングの知識を持つこと

国際大会や国内選考会に出場するトップアスリートだけでなく、日本のスポーツ文化を育成するためにも、ジュニア世代から理解する必要があり、一般のスポーツ愛好家も含めて認識することが重要となります。

ドーピングとはスポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為のことです。禁止薬物を意図的に使用することだけをドーピングと呼びがちですが、それだけではありません。意図的であるかどうかに関わらず、ルールに反する様々な競技能力を高める「方法」や、それらの行為を「隠すこと」も含めて、ドーピングと呼びます。ドーピングは、自分自身の努力や、チームメイトとの信頼、競い合う相手へのリスペクト、スポーツを応援する人々の期待などを裏切る、不誠実で利己的な行為であり、ドーピングがある限り、そもそもスポーツはスポーツとして成り立つことができません。詳細は、日本アンチドーピング機構のHPサイト)を参照して下さい。

アンチドーピングを考えた処方

自分のもらった薬に不安があれば次のサイトでドーピング薬に該当するのか確認できます。アンチドーピングについて詳しくない医師も多くいます。

自分の薬について確認する検索サイト:JADA

次はアンチドーピングの知識を持った薬剤師の紹介のサイトです。

スポーツファーマシスト検索サイト:JADA

世界アンチドーピング禁止表国際基準2019/1/1:JADA(サイト

禁止薬

ステロイド:経口、静注は禁止、セレスタミン(競技会時に禁止)点耳、点眼、点鼻、ステロイド喘息吸入は問題なし

エフェドリン含有薬:風邪薬、花粉症薬(ディレグラ)、漢方薬(競技会時に禁止)

血管収縮剤の点鼻は頻回使用で体内に吸収され問題となる場合があります。

高血圧やめまいでの利尿薬、β遮断薬:メニエール病のイソバイド、メニレットなど(常時禁止)

目薬:利尿薬、β遮断薬(常時禁止)

痛風薬:プロベネシド(常時禁止)

漢方:半夏、麻黄含有(競技会時の禁止)ホミカ

ヒゲナミン含有(非選択制β刺激薬)(常時禁止)南天、附子、細辛、呉茱萸、丁子など

トップアスリートには、漢方薬は出さない方が良い

喘息・咳止め:β2刺激薬(常時禁止)

例外ありサルブタモール:ベネトリン サルタノール、サルメテロール:アドエア、ホルモテロール:シムビコートは用量を守れば問題なしだが検査時に申告は必要。内服は禁止。メプチンエアー(プロカテロール)はTUE申請が必要になります。ホクナリン(ツロブテロール貼付剤は禁止薬です。テオフィリン、抗コリン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗アレルギー薬は問題ありません。

TUE申請

禁止薬物であってもTUE(治療使用特例)のこともあり確認・申請で対応できることがあります(書類提出に慣れた呼吸器専門医やスポーツドクターと相談が必要)。また禁止薬物国際基準は毎年変更があり必ず確認が必要です。

TUE(治療使用特例)情報サイト:JADA

参考資料:小児気管支喘息治療管理GL2017 アレルギー疾患のすべて;日本医師会 日本耳鼻咽喉科学会会報2019,4予稿集

アレルギーマーチの予防と対策

2019-09-08

アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎は、ダニなどの環境アレルゲンに対するIgE抗体を産生しやすい体質(アトピー素因)をもつ人に多く発症します。子どもの成長によって発症しやすいアレルギー疾患が変化する現象を1980年代に馬場 実 医師が行進のようであると考えアレルギーマーチと名付けました。

アトピー性素因(家族歴)

乳児湿疹・アトピー性皮膚炎

食物アレルギー

気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎

上記①➡②➡③➡④の順に成長につれて発症し、アトピー性皮膚炎・乳児湿疹がアレルギーマーチの出発点であるとされています。アトピー性皮膚炎の1/3に気管支喘息を発症、1/2にアレルギーマーチが続発すると考えられています。アトピー性皮膚炎があると、アレルギー性鼻炎2~3倍、喘息2~3倍、食物アレルギー6倍のリスクがあります。アトピー性皮膚炎の乳幼児早期発症重症・持続性やアレルギー疾患の家族歴があるとアレルギーマーチが発症しやすくなります。近年小児のアレルギー疾患が増加する中で、このアレルギーマーチの発症、進展を予防することが重要な課題となっています。気道アレルギー(喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症)のすべてがアレルギーマーチの経過で起こるわけではありません。半数以上はアトピー性皮膚炎がなく発症していて、気道粘膜バリア障害気道感作の関連が考えられます。

感作とは?

アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといい、私たちの身のまわりには、食物、花粉、ダニなど多くのアレルゲンが存在します。このアレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、IgE抗体という物質が作られ、この状態を感作といいます。ダニに感作されると、ダニに過敏に反応するようになります。感作されると肥満細胞にIgE抗体がくっつき、再度アレルゲンが侵入するとアレルギー症状が急に出るようになります。

但し、採血でダニ・スギ・エビなどが陽性(感作)となっても制御性T細胞(Tレグ)が働くとアレルギー反応はおこりません免疫寛容)。採血結果や皮膚テストと症状が一致してアレルギーの発症と考えます。採血結果陽性だけで症状が無ければ食物除去などは必要ありません。

アレルギーマーチは経皮湿疹感作から生じる

以前まで、食物アレルギーは消化管でアレルゲンが吸収され感作が成立する腸管感作が主体と考えられていました。ところが近年の研究結果から、スキンケア不足による皮膚の乾燥・湿疹やアトピー性皮膚炎による経皮感作により食物アレルギーは進行し、離乳食を遅らせず(生後5~6ヶ月)食物アレルゲンを症状なく食べて摂取を続けることにより経口免疫寛容が誘導されることがわかってきました。皮膚の状態が悪いと、経口免疫寛容の効果も得られにくいと考えられ、離乳食前に、生後からスキンケアなどで皮膚の状態を良くしておくことも重要です。 経口免疫寛容とは、食べたものに対して過剰なアレルギー反応を起こさないようにする仕組みのことです。

子どもの食物アレルギー当院HP)も参照して下さい。

アレルギーマーチとは関係なく、小児から成人まで、茶のしずく石鹸、化粧品、魚、ダニ、金属イオンなどのアレルギーもアトピー性皮膚炎・経皮湿疹感作の関与が考えられています。

👉 今回はアレルギーマーチを防ぐために自分でできる事や対応の話です。

 

アトピー性皮膚炎および食物アレルギーの予防

新生児期からのスキンケアの重要性

2014年、国立成育医療研究センターから、新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することが報告されました。皮膚のバリア機能が障害された状態で、早期に十分な対応がなされず皮疹の改善が遅れると、食物アレルゲンの皮膚感作が進行します。スキンケアを徹底して行い、皮膚バリア機能を改善し、新たな皮膚感作を起こさないようにしましょう。

リアクティブ療法とプロアクティブ療法(ステロイド)

アトピー性皮膚炎の外用療法には、症状が出たときに治療するリアクティブ治療と、症状の出る前から予防的に治療するプロアクティブ治療の2種類があります。再発の多いアトピー性皮膚炎の場合、リアクティブ治療ではうまくコントロールしにくいため、現在では、徐々にプロアクティブ治療が推奨されるようになってきました。次のサイトでアトピー性皮膚炎の治療を学びましょう。

九大皮膚科:アトピー性皮膚炎:3本柱サイト

九大皮膚科:入浴と保湿のスキンケア;動画ありサイト

九大皮膚科:保湿薬の塗り方;動画ありサイト)入浴後5分以内に塗る

九大皮膚科:外用量の適量と塗り方動画ありサイト

九大皮膚科:適切な期間、適切な範囲を塗るサイト

九大皮膚科:プロアクティブ療法サイト

九大皮膚科:具体的な治療例サイト

九大皮膚科:アトピー性皮膚炎の痒みと対策サイト

患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎サイト

新生児(生後7週~13週)からの湿疹へのスキンケアやステロイド治療が6ヶ月での卵アレルギーを予防できるかの研究(6歳まで観察)が次のPACIスタディで行われています。

PACIスタディ:リアクティブとプロアクティブの比較;成育医療研究センターサイト原因検索について

子供の食物アレルギーの予防

2017年に発表された成育医療研究センターから、アトピー性皮膚炎のある乳児に対しその湿疹をしっかり治療しながら加熱鶏卵を少量ずつ経口摂取させることで、卵アレルギーの発症を減少させることができることがわかりました。 離乳食の開始時期を遅らせたり、予防的に除去したりすることは、経口免疫寛容の誘導する機会を失うことにつながり、結果的に食物アレルギーの感作を進行させてしまいます。

経口免疫寛容を誘導する経口免疫療法はアナフィラキシーのリスクもあるため①急速免疫療法②安全な少量維持療法について次のサイトで説明されています。

経口免疫療法:成育医療研究センターサイト

鹿児島県で食物経口負荷試験医療機関のお探し方は次を参考にしてください

鹿児島県の食物経口負荷試験実施医療機関サイト

 

喘息およびアレルギー性鼻炎・結膜炎の予防

風邪ウイルスの予防と手洗い

日常生活におけるポイントとしては、乳児期に風邪の代表的な原因ウイルスである、RSウイルスやライノウイルスといったウイルス感染をくり返すと喘息を発症しやすくなるといわれています。そのため、手洗いなどを行い、ウイルス感染症を予防することが大切となります。春と秋のライノウイルスの時期には 喘息を発症しているお子さんは、前もってステロイドの吸入で気道過敏症を抑制する必要があります。ライノウイルスは消毒液の効果が乏しく石鹸と流水による手洗いが重要です。

不要な抗菌薬の使用を控える

成育医療研究センターの研究で、2歳までに抗菌薬を使用したことがある児は、5歳時の気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患のリスクが高まることが分かりました。一般的な風邪のほとんどはウイルス感染であり、抗菌薬は効果がないことからも、不要な抗菌薬の使用は避ける必要があります。

薬剤耐性(AMR)対策サイト

ダニ対策

アレルギーの原因となるアレルゲンが、乳児期から幼児期にかけて、食物からダニやハウスダストなどに変化していくとされています。そのため、ダニ対策を中心とした環境整備を行うことが、発症予防につながる可能性があります。ダニの最適温度25~30℃、相対湿度60~80%のため、ヒョウヒダニは湿度が高い梅雨に増え始め、7月から9月はじめにかけて増加し、死骸・フンが10~11月に増加してアレルギー症状(喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)の原因となります

ダニ対策の実践:環境再生保全機構サイト

アトピー性皮膚炎のスキンケア

アトピー性皮膚炎を発症している場合は、皮膚を炎症がない状態に保つことで皮膚から体内にダニやハウスダストなどの吸入アレルゲンが進入するのを防ぎ、喘息・アレルギー性鼻・結膜炎の発症予防につながる可能性があるとされています。

衛星仮説(田舎で家畜と触れ合う)

北米で農耕や牧畜によって自給自足の生活を営むアーミッシュはアレルギー疾患が極端に少なく、幼少期から家畜と触れ合い、細菌を吸い込んでおり、その結果、Tレグ(アレルギーを抑える役割)を多く持つようになったと言われています。日本のように衛生環境が良くなり乳幼児期の病原体感染機会の減少がアレルギー疾患の増加に働く可能性が報告されています衛生仮説

衛生仮説は、Tレグによるアレルギー抑制説が考えられていましたが、その他にも、幼少期から家畜と触れ合い、細菌を吸い込んで低用量のエンドトキシンに繰り返し曝されることで気道上皮細胞のバリア機能が強化され感作の成立が抑制される説が、最近報告されています(Schuijs MJ,2015年Science)。衛生仮説喘息や花粉症などのダニ・スギなどの吸入抗原に対して成立し、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーには当てはまらないと推測されています。兄弟が多いご家族では、幼少時から細菌をもらうことが多い年少なお子さんは、アレルギーが少ないことをよく経験します。

免疫療法スギ、ダニ:アレルギー体質改善、喘息予防の可能性

舌下免疫療法とはスギ花粉症とダニ通年性アレルギー性鼻炎の体質改善のための、自宅で行う注射でない口腔舌下の治療です。次世代の新治療として期待されている治療法です。程度の差はありますが、改善率は70~80%と言われています。わが国では2018年から、ダニおよびスギに対する舌下免疫療法が5歳以上で可能となりました。舌下免疫療法(口腔保持後服用)は、従来の皮下免疫療法(皮下注射)と比べ、アナフィラキシーなどの重度の副作用がほとんどなく自宅で行う痛くない治療です。ダニアレルギー性鼻炎とダニアトピー型喘息に対して効果は舌下免疫療法より皮下免疫療法の方が効果が高い報告があります。

舌下免疫療法(スギ・ダニ)当院おしらせ)を参考にしてください。

日本での保険適応:

【舌下免疫療法の適応】スギ花粉症、ダニのアレルギー性鼻炎

【皮下免疫療法(従来)の適応】スギ花粉症、ダニのアレルギー性鼻炎、気管支喘息

どちらも重症喘息や喘息のコントロール不良では禁止

日本では、舌下免疫療法は喘息単独には適応はありませんが、海外の報告では喘息にも効果を認めています。ダニのアレルギー性鼻炎合併の喘息であれば日本でも喘息への舌下免疫療法の治療も可能となります。鼻炎や喘息のすべてに効果があるわけでなくスギやダニが特異的に関与するアレルギー気道症状に効果があります。若年者の方が、効果が高いと考えられています。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーには効果はありません。

 

鼻炎は

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)②老人性鼻炎好酸球性増多性鼻炎アレルギー性鼻炎などあり、症状だけでアレルギー性鼻炎と区別できないこともあります。スギ・ダニ以外のアレルギー性鼻炎や、前述の①②③は免疫療法の効果はありません。スギ・ダニ免疫療法はスギ・ダニのアレルギー性鼻炎のみ効果あります。

喘息フェノタイプ(分類)

下記の①~⑧の様々なタイプの喘息が存在し、それぞれ治療方針が異なることもあります。免疫療法の効果が期待できるのは下記ののみです。

~~乳幼児・小児・青年層が主~~

乳幼児期の一過性喘鳴反復群:3~4歳で寛解し、非アトピー型。自然免疫・感染が関与。

もう少し遷延する非アトピー型喘息:小学校低学年で寛解

早期発症アレルギー性のアトピー型喘息:IgE高値、乳幼児期から発症して、ダニの関与が高く、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎の合併が多い。

運動誘発性・アスリート喘息学童から増加。通常の喘息のコントロールと抗ロイコトリエン薬が効果を発揮します。気道粘膜の脱水と冷却、気道上皮損傷による気道過敏性の亢進が出現。

~~成人・高齢者では非アトピー型が増加~~

期発症好酸球性喘息:非アトピー型、成人発症 好酸球性副鼻腔炎合併 自然免疫が関与します。

アスピリン喘息 非アトピー型、成人女性に多く 嗅覚障害・好酸球性副鼻腔炎合併 ロイコトリエンが関与します。

肥満性喘息:年女性に多く、主に内臓脂肪が関与し、ダイエットが重要です。

肥満と喘息:ダイエットで喘息が治る?当院コラム)も参照を。

⑧好中球性喘息喫煙者に多く、大気汚染や好中球性の慢性鼻副鼻腔炎の関与が考えられ、マクロライドの効果が期待されています。ステロイド抵抗性です。

 

喘息発症予防の可能性

免疫療法で喘息の発症予防が可能なのか?

海外の報告では

2007年PATスタディーでは、喘息がなく季節性鼻炎(6~14歳、シラカバ・イネ科)に皮下免疫療法(3年間)を行い、有意に喘息発症予防の効果を認めています。

2018年、喘息が無くイネ科花粉症(5~12歳)舌下免疫療法(3年間)で、喘息発症予防に舌下免疫療法でも効果を認めています。

2013年アレルギーのリスクが高い3歳未満の児へのダニ舌下免疫療法では喘息発症の予防効果は認めていません。

以上のことからアトピー型のIgE高値の喘息発症リスクが高そうな学童へ、わが国で現在行われている舌下免疫療法(スギ、ダニ)が喘息発症の予防の可能性があるかもしれません。

 

参考資料

国立成育医療研究センターHP

経皮感作と経口免疫寛容 夏目 アレルギー 2019;68(7)823-829

基礎から見た衛生仮説の再考 松田 アレルギー 2019;68(1)29-34

アレルギー疾患のすべて 日本医師会雑誌

九州大学皮膚科HP

女性とめまい・ふらつき:漢方編

2019-08-17

貧血や全身状態を把握するため

女性のライフステージは、思春期、成熟期、更年期、老年期と女性ホルモンの影響をうけて年を重ねます。短期的には、月経、ホルモンの変化の影響を月単位でうけます。

女性の一生を通して男女差を意識した女性医学と外来はここ20年で広がりつつあります。

性差医療について詳しくは、当院の次のコラムを参照して下さい

女性とめまい・ふらつき・転倒サイト

 

漢方の女性医学の歴史は長く、約2000年前の漢方・中医学の古典黄帝内経には婦人病が独立して記載されています。

現在の総合病院の報告でも、女性特有の更年期障害や様々な訴えに対して漢方が第一選択になっているようです。女性の社会進出、晩婚、ストレスの関与が考えられる女性の月経異常が、2000年から2014年にかけて約3倍に産婦人科外来で増加の報告があります。今後ますます、女性特有の訴えに対して漢方治療の役割が増えると考えられます

 

👉 今回は女性に多いめまい・ふらつきに対して、ライフステージを考慮した漢方の話(随証治療を含めて)になります

 

病名処方と証を考えた随証治療

漢方を処方するとき、西洋医学の疾患名や症状から処方を選ぶこと病名処方と言います。日本の医学教育と西洋医学を中心に勉強した医師が漢方を処方するときに行っています。

心身を含めたその人の全体像を漢方の物差しで把握し、その人の証にあわせて対応すること随証治療(証にあわせて治療)といいます。日本の西洋医学を主体とした医学教育以外に自主的に日本漢方や中医を勉強した医師が行う処方です。

産婦人科の先生は、漢方を自主的に勉強された方が多いと思います。医師・歯科医・薬剤師・針きゅう師も参加できる日本で最も大きな東洋医学の組織である日本東洋医学会の漢方専門医サイ)は、随証治療を行うように努力しています。鹿児島県の漢方専門医は前述のサイトから確認できます。

当院の漢方処方の方針サイト当院HP

同病異治とは?

めまいの代表例のメニエール病の西洋医学的治療は、急性期は服出来ないとき点滴加療、内服可能なら吐き気止め、イソバイド、トラベルミン、アデホス、メリスロン、セファドールが一般的に使用され、その疾患に対して処方されます。漢方のめまい・メニエール病の病名処方では、五苓散または苓桂朮甘湯がよく処方されます。これも疾患や症状に対して病名処方になります。

随証治療では、望聞問切の診断の所見を参考に、口渇、天候の変化、自汗、尿不利に、五苓散, 立ちくらみ、動悸、神経質をあれば苓桂朮甘湯、胃弱、嘔気、冷えがあれば半夏白朮天麻湯、高齢、冷え、ふらつきには真武湯、生理前のふらつき・めまいには当帰芍薬散などその人の全体像を把握してめまい・メニエール病の疾患や症状ではなくその人に対して処方を選択します。

同じ病名・症状であっても、その人の全体像が違えば処方選択が異なるのが同病異治の意味です。随証治療で行うやり方です。

 

証を決定する漢方の物差し

陰陽五行論 肝・心・脾・肺・腎 などの臓腑のバランスを重視して対応、女性には肝(精神安定、蔵血、規則的月経)と腎(生殖、骨、思考、水分代謝)が重要です(中医学

気・血・水 気は体を巡る目に見えない生命活動のエネルギーとしてとらえます(日本漢方で重要視)

八綱:陰陽・虚実・表裏・寒熱  虚実・寒熱の判断は臨床では重要です

六病位:太陽病・少陽病・陽明病・太陰病・少陰病・厥陰病 傷寒論の急性発熱疾患への対応がもとになった考え方です

口訣:日本漢方での経験の蓄積

これらの漢方の物差しをもとに証を判断していきます

前述を見ての通り、漢方で、証を考えて対応しようとすると、一般の医師にとって難解なものになります。随証治療を行うには勉強と経験が必要になり多くの時間が必要です。私もですが漢方医学は、勉強すればするほど膨大な古典の理解も必要となり、難解なものになってきます。ゴールが見えず、大海原で宝さがしをする心境になることもあります。2000年の歴史の東洋医学を学ぶのは容易ではありません。

理想は随証治療ですが、けっして病名処方が悪いわけではありません

日本では、煎じ薬ではなく、エキス剤が普及しているため、どの医師も漢方を処方できます。煎じ薬では、オーダーメイドでその個人に合わせた生薬の選択や量を調整可能です。エキス剤は煎じ薬の70%程度の効果と考えられています。

日本では、機能的月経異常を例にとると第一選択は漢方となっています。これまでの報告では、病名処方的に当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸を用いても60~70%に有用とされています。うまくいかないときの次の一手や、もっと有効率を高めたければ随証治療を学ぶ必要があります

 

女性の成長発達老化と漢方

黄帝内経より

中国の古典 黄帝内経素問での7歳ごとの身体変化

7歳腎気活発、永久歯が生え、髪が伸びる

14歳腎気旺盛、生殖能力が備わる

21歳腎気が全身を巡り、歯がそろう

28歳身体がもっとも充実

35歳腎気が衰え始め、肌の乾燥、爪が割れやすくなり顔に皺が生じ、髪が抜け始め

42歳皺が増え、白髪が出現

49歳閉経

月経は五臓の肝の影響を強く受けます。規則的な月経で経血を輩出してお血を改善し、気の巡りをよくすると考えます。月経異常は気が巡らなくなり体のバランスを崩す原因となります

女性の7歳ごとの身体変化では腎気(生殖、骨、思考、内耳機能、水分代謝、呼吸)に強く影響うけ、(精神安定、蔵血、規則的月経)の働きも重要です。

 

思春期:女性ホルモンの急激な変化により心身のバランスが崩れやすくなります。

漢方の考えでは、肝の機能が不十分で、心身の乱れを生じやすく脾虚・気虚(倦怠感や胃腸障害)と血虚・お血(貧血、生理痛など)をベースに、水滞(立ちくらみ)・気逆(イライラ)・気うつ(落ち込み)の症状を合併することも少なくありません。

この時期、めまい・ふらつきで問題になるのは貧血起立性調節障害です。

漢方で立ちくらみ、ふらつきには苓桂朮甘湯、ふらつきと胃弱あれば半夏白朮天麻湯、月経異常を伴えば当帰芍薬散。片頭痛とめまいを伴えば苓桂朮甘湯呉茱萸湯を、ストレス・緊張・手のひら発汗あれば四逆散を、ストレスや月経異常には加味逍遥散を、抑うつで元気なければ補中益気湯を、それぞれプラスすることを考えます。動悸強く感情コントロール不良には甘麦大棗湯を追加。

詳細は当院コラム:よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛サイト)で確認を。

貧血のふらつきは鉄剤の服用を優先します。

 

成熟期:ホルモン周期としては安定していて、妊娠・出産・不妊・子宮内膜症・子宮筋腫に関連した症状や、社会参加・仕事からくるストレスから心身のバランスを崩すことになります。漢方の考えでは、血虚・お血(月経異常、肌荒れなど)や気の異常に配慮した対応をします。冷えによる不妊、生理痛、月経不順をきたしやすくなります

月経とめまい・ふらつきの関係は、月経前症候群PMS)、月経困難症、妊娠が関係します。

詳しくは、当院コラム:女性とめまい・ふらつき・頭痛サイト)で確認して下さい。

妊娠中のふらつきはつわりに関係して起こるこることが多く、妊娠中の安胎薬として古くから当帰芍薬散が使用されます。嘔気や嘔吐には小半夏茯苓湯、嘔気・気鬱には半夏厚朴湯、胃の調子を改善するには二陳湯が使われます。

妊娠時控える漢方

妊娠の時も漢方は使いやすい薬として認知されていますが、妊娠初期の過敏期はどの薬も控えた方が望ましく、大黄、牡丹皮、桃仁、紅花、牛膝、芒硝を含む桂枝茯苓丸桃核承気湯、通導散などの強い駆お血剤は控えた方がよいといわれています。

月経困難症の下腹部痛には当帰建中湯、不正出血には、きゅう帰膠がい湯、ふらつきには貧血の改善を優先します。

PMSのふらつきには水滞の関与があり当帰芍薬散、効果無ければ苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯をプラス、PMSの精神症状に対してストレスと内に向けた怒りあれば抑肝散または抑肝散加陳皮半夏、訴えが変わり肩こりイライラや生理痛あれば加味逍遥散、感情的で傷つきやすい場合は甘麦大棗湯、実証で便秘あれば桃核承気湯など使用。

片頭痛は30代女性の5人に1人の割合で認めます。成熟期の片頭痛関連めまいも多いと推測されます。西洋薬では片頭痛の予防薬、めまいへはトラベルミン、セファドールが使われ、めまいリハを行います。めまいや頭痛に対して、漢方では、冷え性や心下の膨満があれば苓桂朮甘湯呉茱萸湯合方、気候と関係あれば五苓散を考えます。貧血、月経異常や肌荒れ強ければ連珠飲苓桂朮甘湯+四物湯)も候補です。

 

更年期:エストロゲンの低下による症状や女性特有の色々な訴えがでてきます。

漢方の考えでは、先天の本の腎気(生殖、骨、思考、内耳機能、水分代謝、呼吸)の衰え、うるおいがなくなり血虚(肌荒れ)、陰虚(水不足 ほてり)が問題となります。

五臓(肝、心、脾、肺、腎)の老化と密接に関連してきます。

中医学では陰は寒と水を意味し、陰虚とは、水が不足し火が興り、熱(虚熱)が生じ、

血虚+熱を意味します。

更年期の対しての3大処方(当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸)を中心に組み立てます。

めまい・ふらつきあれば、苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯をプラスします。自律神経症状が強ければ苓桂朮甘湯+加味逍遥散、虚弱と冷えが強ければ半夏白朮天麻湯+当帰芍薬散とします。口渇、皮膚口唇乾燥、手足のほてりあれば陰虚の進行を意味し、四物湯加減(連珠飲など)、温経湯、滋陰至宝湯六味丸など補腎剤を検討します。訴えが変わり易い肩こりめまいには加味逍遥散、いつも訴えが同じののぼせ・めまいに女神散も考えます。倦怠感(気虚)を兼ねる場合は補中益気湯を兼用します。

 

老年期:60歳を過ぎればエストロゲンは男性より低下します。骨量や記銘力の低下、脳血管・心疾患の罹患率に上昇、筋肉量が低下し低栄養をきたします。身体の虚弱化(フレイル)への対応が必要です。詳細は当院コラム(女性とめまい・ふらつき・転倒サイト)で確認して下さい。

漢方的には、五臓の老化、特に腎・脾(消化機能)の衰えと密接に関係してきます。エネルギーの生成が不十分で気血両虚を生じます。冷えふらつきには真武湯、倦怠感強ければプラス人参湯茯苓四逆湯)、下肢冷え夜間頻尿ふらつきには、胃が丈夫なら牛車腎気丸(利水あり)または八味丸。フレイル(栄養悪化、筋力低下)のふらつきには、気血両虚として十全大補湯、遠志が入った人参養栄湯を考えます。

めまい発作が強ければ苓桂朮甘湯または五苓散、その後の脾虚・気虚を補うため半夏白朮天麻湯。補腎薬を入れて牛車腎気丸プラス苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯として対応することもあります。

 

メニエール氏病の漢方治療

耳のめまいの病気のメニエール病は内耳のリンパ水腫でめまいを起こす疾患です。内リンパ水腫を起こす理由はまだわかっていません。メニエール病はストレス、睡眠不足、几帳面との関与が大きい疾患です。月経はメニエール病の誘発因子となり、更年期障害と合併しやすいと考えられています。メニエール病の誘因や背景から、最初から内リンパ水腫、水滞に陥るのではなく、睡眠障害、交感神経の緊張、それによる項頚部の筋の緊張、局所の微小循環の悪化、ホルモンのバランスの乱れが背景にあると思われます。

メニエール病の誘因や背景から、漢方的には、発作は水滞誘因と慢性化因子はお血と気の異常とも考えられます。

中医学では、気には推動作用があり、血の流れを良くします。気の異常があれば血の流れが悪くなりお血になると考えます。

急性期のめまいに対して、回転性のめまい持続時間10分程度から数時間程度ですので、西洋的治療を優先させ、点滴加療などを行い、漢方で、初期は利水剤の五苓散苓桂朮甘湯、柴苓湯、沢瀉湯(エキス剤はありません)など使用し、嘔気やめまい・ふらつきが持続すると虚証に変化していき、利水と補気を兼ねた半夏白朮天麻湯などに変更することもあります。気の異常が強い方は、補気も兼ねる抑肝散加陳皮半夏補中益気湯・六君子湯も変更の候補です。

この疾患は反復するので予防が重要です。生活習慣の改善、睡眠指導、軽く汗を流す運動をすること、飲水指導を行います。めまいの誘因と考えられる睡眠障害、交感神経の緊張、それによる項頚部の筋の緊張、局所の微小循環の悪化、ホルモンのバランスの乱れや年齢などの背景を考え、前述の漢方の物差しを参考に、お血と気の異常を中心に、その人の証に合わせた漢方的対応を考えます。めまいは長引けば予期不安やめまい恐怖症をおこしやく不眠対策や心因性のめまいへの対応も必要です。心因性のめまいへの漢方的対応は、五臓の心・肝・脾、冷え・裏寒、気血水のお血、気虚・気鬱・気逆などから証を見極め対応します。

 

緊張性頭痛のふらつき・めまいの漢方治療

肩こりのため頭部の位置情報が、視覚前庭に入る情報とのミスマッチが生じ、肩こりでふらつきが出現すると考えられています。

頭痛・肩こり改善のため、運動・頭痛体操・正しい姿勢・こまめな休憩・入浴など生活習慣の改善を指導します。

肩こりや緊張性頭痛に対しての漢方治療では、急性期は葛根湯関連(葛根湯、桂枝加葛根湯、葛根加朮附湯)や川きゅう茶調散、胃弱には桂枝人参湯、朝の頭痛・結膜充血・高血圧には釣藤散、口渇・気候の変化や水滞の関与の頭痛には五苓散、頭痛、冷え・陰証・心下の膨満感あれば呉茱萸湯、胃弱・嘔気なく冷えが無い肩こりは半夏瀉心湯を使用します。側頸部にかけての頭痛・肩こりには柴胡剤含有漢方薬や駆お血剤で対応します。

反復すれば証にあわせて、気虚には補中益気湯、お血には桂枝茯苓丸、血虚には四物湯、神経質で更年期には加味逍遥散などの兼用も考えます。

女性で肩こり関連のふらつき・眩暈にも前述の対応が適応されます。

漢方的には水滞の関与が強くなるので、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、真武湯、五苓散などの利水剤を加えた対応を考えます。

ENTONI 2019年3月号に、群馬県の竹越耳鼻咽喉科院長から肩こり関連めまいへの西洋医学的病態を考慮した病名処方が報告されています。改善率も高く興味深い内容でした。

内容(竹越の報告から)

肩こり関連めまいは

  • 肩こり
  • 低血圧
  • 血行動態性椎骨脳底動脈循環不全(H-VBI)

の3者が合併

女性は筋肉量が少なく肩こりと低血圧が起こり易く、診療所では8割が女性(20~60代)。

肩こりによる交感神経過緊張から血管収縮による循環障害(H-VBI)が生じ、低血圧がH-VBIを悪化させめまいが生じる。

ストレス疲れやスマホ・パソコン業務が悪化要因

漢方的対応

桂枝加苓朮附湯が基本処方

収縮期血圧110mmHg以下や立ちくらみあれば

昇圧を期待して補中益気湯を併用(生薬の柴胡・升麻は升提作用あり)

血圧正常で頭痛・肩こりが強い場合はH-VBIの要因と考え釣藤散を併用

ストレスなら釣藤散、よりストレスが高度な時は抑肝散加陳皮半夏併用、疲れには補中益気湯を併用

上記の方法で14日以内の改善例が87% (47例/54例)

 

参考資料

女性の漢方 小川 中外医学社

耳鼻咽喉科と漢方薬 ENTONI 2019年3月 全日本病院出版社

医療用漢方製剤の使い方 菊谷 南山堂

女性疾患を支える漢方薬 漢方医学2018 Vol.42 No.1 株式会社協和企画

耳鼻咽喉科編 漢方と診療 Vol.1 No.4 東洋学術出版社

中医臨床 耳鼻咽喉科疾患 2012年12月 東洋学術出版社

はじめての漢方診療 三潴 医学書院

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