院長の健康情報コラム
運動誘発喘息・せき

『運動により一時的に咳・喘鳴や呼吸困難が起こる現象:運動誘発喘息』
◆運動誘発喘息(EIA:exercise induced asthma)
運動により一時的に咳・喘鳴や呼吸困難が起こる現象を運動誘発喘息(EIA)と言います。喘息素因があれば生じやすい現象ですが、喘息でない者にも起こりえるため、運動後に気管支が収縮する現象として運動誘発気管支攣縮(EIB: exercise induced bronchoconstriction)と呼ぶこともあります。運動による気道粘膜の脱水と冷却、過剰な換気量や大気汚染物質などによる気道過敏性の亢進が考えられています。EIBの頻度は10%程度ともいわれていて、体調や環境によって誰にでも起こる病態と言えます。
冷たく乾燥した環境でマラソンなどの持続的な運動を続けた場合に起こりやすく、運動を始めて数分で起きて、運動を終了すれば治療をしなくても20~30分で回復します。中には運動を中止しても回復せず、重症の発作をおこしてしまうこともあります。
*予防
①10~20分のしっかりとしたウオーミングアップ;EIAは十分な準備運動で起こさなくなる期間(不応期:準備運動後の1~4時間)の存在が知られていて、目的とする運動のEIAを軽くすることが出来ます。
②普段から、喘息のコントロールをしっかり行い気道過敏症を抑制することです。コントロールが出来ていればEIAを起こしにくくなります。
③薬剤による予防;
➡運動15分前の短期作用吸入β2刺激薬(SABA:メプチン、サルタノールなど)の吸入、SABAの連用は気道過敏性の亢進をもたらすため短期使用にする。
➡DSCG(インタール)の運動15分前の吸入、
➡普段から自宅で、ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカストなど)の服用と定期吸入ステロイドで日常からコントロール:
学校で運動前の吸入薬を使うことは難しいことが多く、これが最も学校活動では望ましい対応と思われます。
④普段からの適切な運動,運動の継続でEIAが起こしにくくなります;水泳が起こしにくい運動と言われますが、なんでもよいので運動習慣を持つことが重要です。1日20分以上の早歩きでかまいません。マラソン、サッカー、ラグビーなどは、冬に外で走る運動量が多いスポーツに起こしやすくなります。徐々に強度が上がる運動はおこしにくいと言われています。スキューバーダイビングは、タンク内の乾燥冷気や海水由来の高浸透圧の海水を吸引することで気管支攣縮が起こしやすく生命の危険につながる恐れがあります。トップアスリートでは、競泳はアスリート喘息の有病率(約20%)が高いと報告されていて、塩素による気道上皮障害や長い持続的運動の関与が推測されます。
⑤マスク;湿度と温度の保持および水分喪失の防止
⑥運動中は鼻呼吸を行い、寒いときは室内で行います。
*EIAが起こったとき
運動をやめ鼻で息を吸いと腹式呼吸をします、水があれば飲むと加湿効果に役立ちます。治療しなくても20~30分で改善するのが通常です。改善なければSABA:メプチン、サルタノールなどの吸入を行い医療機関へ
運動誘発喘息:腹式呼吸;環境再生保全機構(サイト)
などで普段から腹式呼吸を練習しましょう。
*ピークフローモニタリングによる早期発見は理想ですが、利用率は低く、デジタルピークフローメーターなど注目されています。
➡運動誘発性過換気症候群
喘息の検査や喉頭ファイバーによるVCD(vocal cord dysfunction)などの検査では異常なく、ランニングなどの運動負荷を行い、呼吸苦・過換気・テタニー(手足のしびれ、筋肉けいれん)の症状が出現時に、聴診で喘鳴無く呼気二酸化炭素の低下、動脈血液ガス検査などで診断を行います。心理的ストレスが原因となることが多く、抗不安薬、病態説明、腹式呼吸、認知行動療法、リラクゼーションなど心身医学的治療を行います。ペーパーバッグ呼吸法は、現在は行いません。
➡VCD(vocal cord dysfunctioon)
喘息発作と間違いやすい病態として,心不全,過換気症候群,COPD増悪などとともにVCDがある。本疾患は意外と知られていないが,WHOのガイドラインでは40歳以上の喘息との鑑別が必要な疾患の筆頭に挙げられている。
病態は一言で言えば,「気管支の閉塞ではなく,声帯が狭くなることにより喘鳴が生じる状態」である。ストレスや緊張などによる声帯の一時的な開口不全による気流制限が連続性呼吸雑音をもたらすが,気道は確保されているため低換気は起こらず,低酸素血症はみられない。①喘鳴・呼吸困難が夜間より日中に多い,②心因性因子の存在,③喘鳴が呼気より吸気で強い,④スパイログラムが正常あるいは上気道閉塞パターン,などを特徴とする。
発作時にタイミングよく喉頭ファイバーを実施しないと診断が難しい疾患です。
VCDは決してめずらしい病態ではなく,気管支喘息と診断された患者の3~5%,呼吸困難でICUを受診する患者の2~20%,治療抵抗性喘息の30%に存在するとされるが,本病態は気管支喘息への合併が多いため,呼吸困難を訴える患者自身も医師も,それが喘息発作ではなくVCDの状態であることに気づいていないことがあります。
➡運動誘発性喉頭閉塞症(EILO:exercise-induced laryngeal obstruction)
危険なめまいを見分ける
➡ 危険なめまいを見分ける
* 糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化の合併を疑わせる既往や発作性心房細動があるときは特に中枢性のめまいの注意が必要です。
* めまい以外に、運動・感覚障害や呂律異常、頭痛、顔面麻痺しびれ、目の焦点が合わない、二つに見えるなどあれば、中枢性をすぐ疑います。
まっすぐ歩けない、突然の肩こり、急に力が入らない、一瞬で消えるしびれのときも脳梗塞の前兆のこともあります。
めまいの他に、耳鳴り・難聴があれば末梢前庭性(耳鼻咽喉科疾患)の可能性が高くなります。
アメリカ脳卒中協会の標語にACT-FASTがあります。
日本心臓財団:ACT-FAST(サイト)を参考に!
Arm:手の脱力➡閉眼し、手のひらを上にして両腕を伸ばし5秒保持。手の落ち方の左右差をみます
Speech:言葉が出ない➡簡単な言葉を言う、パタカ発声。滑舌、ろれつが回るかを確認します。
Time:急いで行動➡症状が出始めた時間を記録し救急車を呼ぶ。治療は早ければその後の経過がよくなります。
血栓溶解療法(t-PA)点滴は、発症4.5時間以内の治療、カテーテル血栓回収療法は、できるだけ早い治療(6~8時間以内)
👉突然の回転性のめまいがあれば、既に脳外科などでMRIなど画像診断を行い、異常なく耳鼻咽喉科受診を勧められすぐに来院される場合は多くあります。
経過を見る事の重要性:稀ではありますが、最初はめまいだけ、又はめまい・難聴だけの症状が、後で顔面麻痺しびれ・呂律異常・上下肢の協調運動障害の出現や開眼で側方転倒傾向を示すめまいが持続するときは、以下の理由により再度早めに頭部精査が必要になります。
*梗塞の早期MRI診断の問題点
発症24時間以内(特に早期6時間以内は)急性期脳梗塞の5.8~17%に、症状は明らかにもかかわらず、画像所見は異常を認めない偽陰性例があります。
経過観察の上、早めのMRI再検が必要となります。椎骨脳底動脈系は梗塞巣(小脳・脳幹)のサイズが小さく、MRIでの所見出現が遅くなります。
*小脳・脳幹障害の障害は、当初 耳鼻咽喉科の疾患のようで、時間経過とともに脳からの症状が出現することがあります。
脳幹障害:めまい以外の神経症状を伴うことが多い
➡ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)動脈の解離性病変により若年層でも発症、めまい・ふらつき・頭痛・嚥下や発声障害が出現。特徴的な感覚障害が出現します(同側の顔面、反対側の上下や体感の感覚障害)
➡上小脳動脈(SCA)領域の症状:めまい以外に滑舌呂律異常、患側上下肢の協調運動障害
➡前下小脳動脈(AICA)領域の症状:めまい難聴以外に顔面麻痺、滑舌呂律異常、患側上下肢の協調運動障害、
AICAから分岐した迷路動脈の虚血が生じ、内耳障害(難聴、めまい)と同じ症状が出ます。
最初、耳からのめまいに思えても顔面麻痺・しびれや呂律異常の出現に注意します。
➡後下小脳動脈(PICA)領域の症状:起立や歩行機能障害、開眼で側方転倒傾向を示すめまいです。耳のめまいは、開眼では姿勢を維持できます。
ある報告では、小脳梗塞でめまいのみは11%、その96%が後下小脳動脈領域の梗塞です。
👉 後遺症を残すことがあるHunt 症状群(ヘルペス)も最初はめまいや耳痛、その後高度な顔面神経麻痺が出現
脳からの場合は、額の左右は対称、顔の片側下半分の麻痺は認め手足まひしびれを伴います。脳外科 神経内科で入院加療となります。
脳からではないHunt症候群は、額の皺寄せで非対称になる点で鑑別します。
Hunt症候群は、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性で起きます。水ぼうそうの再発という現象なので、その人の体力が弱ると出てきます。
子どもの頃の水ぼうそうのウイルスが、脊髄の神経の根元や三叉神経や顔面神経の神経節に潜んでしまい、ウイルスの抗体が弱ったり、過労やストレスで免疫が低下したタイミングで症状として発症してきます。顔面麻痺 疱疹 耳痛 めまい 難聴が出現。年間1万人発症。20歳台と50歳台に発症のピークあり。3~4月と6~7月に発症が増加します。三分の一は耳帯状疱疹後、2日以上して顔面麻痺が出現しますので、気を付けなければいけません。顔面神経麻痺は1週間程度症状が進行することもあります。
あなたのめまいは更年期or年のせい?BPPV
めまいは女性に多く、また加齢とともに増加します。女性は更年期障害として、めまいの訴えは6~12%程度出現する報告もあります。年をとって足腰が弱りふらつきころびやすくなり、また脳の働きの低下とともに平衡機能も衰えてつまずくことも増えます。グルグル回るようなめまいや、手足・顔の麻痺や呂律が回らないような症状と共にめまいがあればびっくりして救急車を呼ぶか、急いで病院受診を考えると思います。
軽いふらつきや立ちくらみ程度ではどうでしょうか。
病院受診はせず、疲れ、更年期、寝不足、年のせいではと自己判断していませんか? 耳からのめまいが、かなりの割合で含まれている可能性があります。
◆脳からのめまいは、意外に少ない
報告にもよりますが、脳からのめまいは、2~5%程度と考えられています。命にかかわることもあり、中枢性めまいを見逃してはいけませんので、動脈硬化・高血圧・糖尿病をお持ちの方や、中高年以降のめまいは、頭部精査を優先させる必要性があります。特に、男性中高年のめまいは注意が必要です。女性より中枢性のめまいの割合が高くなります。
脳からのめまいの注意点は以下で確認して下さい。
めまいの原因で最も多いのは良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。確率的にはめまいの約半分と考えて下さい。
難聴・耳鳴りが出ないため、自分で耳からのめまいと判断するには難しい病気です。通常は回転性めまいですが、軽い場合や高齢者では、ふらつき程度で、自然にも軽快することも多く、更年期や年のせい疲れなどと見逃されていることもあります。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、発生機序から薬で治す病気ではありません。初期は、対症療法として点滴や内服することはあります。長期に薬を飲んで安静にすれば治る病気ではありませんが、医療機関で、長期に薬がだされ安静を指示されていることが多くあります。
◆良性発作性頭位めまい症(BPPV)について
耳鼻咽喉科が扱うめまいには、脳からではない末梢前庭性が多く、全めまいの60%を占めます。その中で最も多いのが良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。40%強はBPPVであると考えられています。65歳以上女性では60%強の割合に増加するようです。
BPPVは、回転性めまいの内耳疾患で、めまいの半分程度を占め、男性より3倍程度女性に多く、中高年の女性に多い疾患です。軽い方や、高齢者ではふらつきの訴えのこともあります。
内耳の耳石が何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで三半規管を刺激してめまいが起こります。運動不足、長期臥床、外傷後に起こり易くなります。寝たきり・運動不足など動かないでいると、半器官へ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症してきます。また耳石もカルシウムであるため、閉経後の女性に多い骨粗しょう症との関連も考えられています。
【診断】難聴・耳鳴り症状はなく画像検査や聴力検査・採血検査などしてもわかりません。眼振検査で誘発性の眼振・めまいで確認します。検査のタイミングが合わないまたは軽い場合は検査で所見なく、原因不明のめまい・ふらつき(めまい症)として診断されていることもあります。
【治療】
浮遊耳石置換法と自宅でのめまい体操と前庭リハです。
発症機序から、薬で治す病気ではありません。
対症療法として嘔気、めまいに対して、点滴、薬物療法は一時的に行います。治りにくい方は、薬物療法、生活指導、前庭リハを継続していきます。BPPVプラスαのめまい疾患が併存していることもありますので慎重に判断していきます。
通常は、2~3週間で自然治癒することも多い疾患ですが、再発例や難治例も多く認めます。再発率も高いため普段から運動を心がけ、動くことを意識する必要があります。難治例で、毎晩耳石が剥がれて三半規管を刺激して遷延・再発する方には、めまい体操や耳石置換法では間に合わず、上半身を少し高くしての就寝、枕を高くすると起こしにくくなると言われています(奈良の北原医師提唱)。

☞ BPPVの基本事項は次のサイトを見てください。
- メディカルノート BPPV(新潟大学耳鼻咽喉科 堀井教授 監修)
耳石置換法とは: 例として後半規管BPPVの治療法 Epley法 効果は80%程度と言われています。
以下に質が高い動画の一つをを紹介します。
Fauquier ENT 米国の医療従事者のチャンネル Epley法
☞ BPPVの難治化要因としての寝相・骨粗鬆症との関係:
難治化や再発例は、寝相が良すぎて動かずいつも同じ向きで寝る方、長期臥床後、二次性(メニエール病後、外傷後)に多いと言われています。
また骨密度が低下した方に、再発例が多い報告があり、耳石が脆弱化している耳石粗鬆症とも考えられています。今後、若いころからから骨粗鬆症への対応がBPPV発症の予防につながる可能性があります。
◆possible BPPV(BPPVの可能性として治療 検査でわかりにくい)
眼振検査で分かりにくい典型的眼振消失後の耳石異常のBPPVのことです。
2015年の BPPV の新診断基準では,繰り返す頭位性めまいを訴えるが,頭位,頭位変換眼振を観察されない,非典型眼振を認める BPPV を possible BPPV と定義されています。
臨床の現場では、検査のタイミング次第で、眼振所見を認めず、典型例以外の眼振疑いの状態はよく経験します。頸部痛・腰痛・めまい恐怖・体調不良からうまく検査ができない方も多くいらっしゃいます。Possible BPPVは、誘発性めまいを反復し、めまいリハを恐れず反復することで改善に向かう方たちを想定された呼び名です。誘発性めまいを恐れないで前庭リハを行うことが強調されます。
病院で確定診断されず、原因不明のめまいに中にpossible BPPVが潜んでいる可能性があります。耳石は2~3週間で自然代謝して消失するため、病因での検査の時に小さい耳石で検査感度以下の時は、眼振検査ではわからないことがあります。原因不明のめまいの方は、一度はBPPVを疑い積極的に前庭リハを行ってみましょう。
または奈良の北原先生が提唱しているヘッドアップ療法を行ってみてい下さい。
BPPVとヘッドアップ療法(原因不明のめまい) youtube 北原:耳鼻科めまいセンター
◆めまいの原因は一つではない
高齢になれなるほど併存疾患もふえてきます。併存疾患のための薬が多くなり薬剤性めまい・ふらつきが増えてきます。加齢のため動脈硬化が進行し脳虚血が起こり易く、筋力の低下が進むため立ちくらみ・ふらつきが増えます。女性は貧血・更年期障害・片頭痛関連・自律神経症状との併存が多くなります。
以下のコラムも参考にしてください。
診断が難しい高齢者めまい:院長コラム
『めまい疾患併存例』
*更年期のめまいとメニエール病
*BPPVとメニエール病
*BPPVと立ちくらみ
*メニエール病と心因性めまい
*片頭痛関連めまいとメニエール病
*加齢によるふらつきとBPPV
*薬剤性のめまいとBPPV
*薬剤性のめまいと加齢によるふらつき
*肩こりのめまいとBPPV
*椎骨脳底動脈循環不全とBPPV
など併存していることもあり見極めて対応が必要になります。
確率的に多いBPPVはいつも鑑別に上げて耳鼻咽喉科専門医やめまい相談医の受診を考えて下さい。
◆まとめ
めまいの訴えイコール
抗めまい薬(メリスロン、アデホスなど)、漢方などの長期処方や点滴加療・安静で終わりではありません。
めまい・ふらつきの原因を見極め、耳鼻咽喉科的精査以外では、必要により頭部精査・貧血・心疾患不整脈の精査および婦人科での精査など行っていきます。前庭リハや運動習慣も重要です。フレイル・筋力低下対策としての筋トレ・食事療法も行いましょう。BPPVはいつも鑑別に上げましょう。
【めまい・ふらつきの治療】
内科的治療
耳石置換療法、ヘッドアップ、前庭リハビリ
抗めまい薬、漢方処方
睡眠指導
筋トレ、運動食事療法
カウンセリング、心身症として治療
など幅広い知識のもとに対応が必要です。他科の先生方の協力を得ながら対応する必要性も出てきます。
メニエール病の新しい治療法:中耳加圧療法
◆中耳加圧療法;メニエール病の新しい治療法の中耳加圧療法は、2018年9月に保険収載されてから、初期の段階の大病院に限定された治療の段階から、次第に開業医のクリニックの耳鼻咽喉科専門医(めまい相談医など)にも普及してきています。但し、適応が厳密のため、メニエール病を疑われている方にすぐできる治療ではありません。
耳鼻咽喉科専門医(内科・脳外科ではありません)で診断を受けて初めて適応できることになっています。また、外科的治療の一歩手前で、めまいを伴い、内服加療・生活睡眠指導を行っても数ヶ月以上コントロール不可能なメニエール病確実例および遅発性内リンパ水腫確実例のみが対象です。
➡ 中耳加圧療法とメニエール病:NHK健康チャンネル(中耳加圧の患者体験談:サイト)
メニエール病の全員ではありませんが、かなりの方にこの体験談と同様の効果が期待されています。
◆昔の安易なメニエール病の診断
まず、メニエール病は稀な疾患であることを理解して下さい。(人口10万人に15~18人、最近は元気な高齢者で増加傾向)
最近はめまい疾患で脳の可能性が低ければ、耳鼻咽喉科専門医を受診するように説明される内科・救急・脳外科の先生が多くなってきています。メニエール病ではなく、耳からの良性発作性頭位性めまい(BPPV)が、めまい疾患の半数ちかくを占める最も多いめまい疾患であることが一般内科の先生にも普及してきています。
この最も多いBPPVは、急性期以外は薬や点滴で治療する疾患ではなく、運動生活習慣の改善、前庭リハビリ、耳石置換療法など動きを主体に対応する病気です。しかし、内科の先生のなかには急性期過ぎても、めまいの訴えがあればすぐに点滴加療を行い、あるいはずっと抗めまい薬を数か月以上、年単位で処方されていることも散見されます。
10年以上前までは、BPPVの概念の認識が低く、めまいで受診された場合、耳鼻咽喉科紹介は無いことが多くメニエール病疑いと説明をうけて、点滴、長期内服、安静指導がよく行われていました。
中高年以上のめまい経験者のなかには、めまいイコール点滴そしてずっと薬と安静と考えている方が、今も多くいらっしゃいます。
めまい疾患で最も多いBPPVを治療する上で、運動、前庭リハが主になるため、逆効果となることもあります。
最近では、新井先生の『めまいは寝てては治らない』シリーズの本が、めまいへのリハ、運動や活動の重要性を一般の方へ知ってもらうのに役に立っています。
BPPVのグルグルめまいは、朝を主に1~2時間程度で自然に回復し、嘔気・ふらつき感が持続します。メニエール病のめまいは半日から1日で自然に回復し、嘔気・ふらつき感が長期に持続するのが通常の経過です。ほとんどは点滴が必要なのは一部の症状がひどい方で一時期に(1~2日程度)限られます。メニエール病の前庭リハは、回復期に、症状が落ち着いてから慎重に行います。
◆メニエール病とBPPV(良性発作性頭位性めまい)の見極めの重要性
BPPVは、薬・点滴ではなく運動習慣、前庭リハなど運動・活動を主に対応する疾患で、ぐるぐるめまいは朝が主で比較的早く回復に向かい、軽い方は自宅で自己管理できることもあります。
メニエール病は、急性期は点滴および長期にくすりの服用が必要になり難治性疾患です。めまい・難聴を反復し進行すれば難聴・耳鳴りが進行して回復が困難となり後遺症が残ります。自律神経症状や心因性の問題・不眠症の管理も必要になることが多く、難治化すれば治療は容易ではありません。
最近、難治性のメニエール病に対して、難治者への中耳加圧療法が注目されてきています。
メニエール病とBPPVは治療方針で大きく違いますので、専門医での最初の診断が重要になります。メニエール病とBPPVが併存していることもあります。
➡ 中耳加圧療法の治療対象は:
保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返し、外科的治療を考慮するメニエール病確実例および遅発性内リンパ水腫確実例(stage4)です。耳鼻咽喉科専門医のみが実施できます。
中耳加圧療法の動画 YouTube(第一医科 管理会社)
中耳加圧療法の治療の実際 YouTube(動画)
👉 ポイント!!
ここで大事なのは、診断確実例のみが対象となることです。
*複数の医療機関で、数ヶ月から半年あるいは数年以上のあいだ、反復している方が多く、前医での治療経過、眼振の有無や眼振の性状、聴力の変化とめまい症状の出現の確認が必要になることがあります。頭部MRI(聴神経周辺など)結果はどうだったのかの情報も必要です。
お持ちであれば、前医耳鼻咽喉科での検査記録を持参して下さい。
*内科でメニエール病の治療をされている方は、まず、近くの耳鼻咽喉科専門医(めまい相談医)に相談して下さい。
*片頭痛関連めまい、心因性めまい、PPPDとの鑑別や併存の確認が必要です。前述のBPPVの合併例も多く、本当のメニエール病かの見極めが大事です。
➡ 実施要領:
貸し出しの中耳加圧装置(シリコンゴムチューブを介して、圧波を、外耳道を通して鼓膜に送る装置)を1回3分1日2回行い、月間の症状を日誌に記載してもらいます。月1回通院して1年後に評価を行います。中耳加圧治療器(第一医科)の貸し出しには予約が必要です。
以前は、半年待ちもありましたが、最近は比較的早く使用できるようになっています。
めまいの原因は複雑・混在:どう対応?
6月の梅雨のシーズンになれば、なぜかめまいの患者さんが増えてきます。東洋医学では、水毒、水滞と言ってめまい・ふらつきと関連すると考えれています。
西洋医学で、水毒、水滞は内リンパ水腫に近い病態です。具体的例として、比較的に稀なメニエール病、遅発性内リンパ水腫と若い女性に多い低音障害感音性難聴です。
神経痛、頭痛などのように気象病としてめまい・耳鳴りも含まれ、低気圧の接近で、副鼻腔・鼓室内圧の相対的上昇の関与が推測されています。
『めまいへの初期療法としての対症療法』
めまいの薬物治療は何十年も前から変わっていません。ぐるぐる回るめまいであれば、吐き気も強く、点滴で、吐き気止め、脱水対策を行い、内服は吐き気止めのナウゼリン、トラベルミン、漢方など処方されることがよく行われます。
但し原因を考えてではなく、とりあえず症状を緩和するため、対症療法として対応されます。この中には脳からのめまいも混ざっている可能性があります。めまい・吐き気・嘔吐は自然治癒することも多くある為そのまま落ち着き、浮遊感や吐き気はしばらく持続することは、よく経験する経過です。その後、めまいが反復または持続することもありますので、原因により判断しての対応が必要になります。
原因療法の必要性 ➡ 耳鼻咽喉科・脳外科・神経内科などで精査を行い、疾患を見極めて対症療法から原因療法に変えなければいけません。
『対症療法は最小限で!!』
身近な対症療法の例として、風邪の時には、風邪薬として症状をとりあえず抑える目的で最小限処方され、1~2週間自然治癒するのを待ちます。原因療法ではありません。発熱の時は、解熱剤を使用します。しかし発熱は病原への免疫反応を高める効果があるため解熱剤で下げ過ぎると弊害の方が大きくなることがあります。風邪薬は、眠気や倦怠感、のどが渇き、痰の切れや便の出が悪くなったりすることも多くあります。高齢者が咳止めを続けると肺炎のリスクが増加します。
症状が持続するときは、まだ原因がわかっていない病気が隠れていることがあります。
対症療法に依存するのはよくありません。
『複雑・混在するめまい疾患の原因療法:どう対応?』
めまいの原因は、以下に示すように、あまりにも多く見極めるのがたいへんです!!
大きく分けて、①耳から ②脳から ③身体・心身からかを考えます。
👉 疾患のリスクと疾患の頻度から、次の2点の確認をまず考えましょう。
➡5%未満の稀な脳からの危険なめまいの原因を見逃さない事。高齢者や糖尿病、高血圧、心疾患があれば病院や脳外科にて脳の画像検査が必要です。
➡頻度としてめまいの半数近くを占める良性発作性頭位めまい(BPPV)かどうかの見極めが最も重要です。耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医を受診することです。
👉 その他の一般的な注意点は?
➡梅雨前から夏は、熱中症の初期症状としてのめまい・ふらつきを忘れないように!!
➡高血圧薬や睡眠薬・精神薬など服用している方は、薬剤性めまい・ふらつきではないか担当医と相談しましょう。
①耳から
前庭神経炎
めまい伴う突発性難聴
外リンパろう
②耳・内耳の症状だが脳の関与
前庭発作症
小児良性発作性めまい症(幼児に多い BPPVとは違う 片頭痛と関連)
明らかな脳の関与
一過性脳虚血発作
椎骨脳底動脈循環不全
神経変性疾患
脳腫瘍
➂身体・心身から
頸性めまい
心因性めまい
薬剤性めまい
貧血
循環器疾患
サルコペニア フレイル(加齢性前庭障害と合併)
『良性発作性頭位めまい(BPPV)にはさらに細かい原因が分類されます』
最も頻度が高い良性発作性頭位めまい(BPPV)には、耳石に位置により原因が異なります。
*後半器官結石 *外側半規管結石 *外側半規管クプラ結石
原因により治療法は少しずつ異なります。前庭リハや耳石置換療法のやり方を変えて対応します。
『反復するめまいの原因は時間とともに変化していき、複雑混在するようになります』
*最初は通常のめまい疾患で発症しても、めまいは反復することが多く、めまいに対する予期不安が出現し、不眠が出現し外に出るのが怖くなり心因性めまいを併発しやすくなります。また運動不足から、BPPVも出現する可能性が高くなり、めまいの原因が複雑化してきます。
*メニエール病・めまいを伴う突発性難聴・HUNT症候群の場合、めまい以外に難聴・耳鳴りも持続するため、精神的負担が大きく、うつ傾向も併発して心療内科受診する方もいます。
*強いめまい発作が持続する前庭神経炎は、めまい・ふらつきの持続は長期化することが多く、その後、運動不足等からくるBPPVが途中出現することがあります。
*ストレスなどが誘因となり、まじめな方に多いとされるメニエール病は働き盛りの方に多く、めまいが反復する疾患です。この疾患にもBPPVが混在することがよくあります。
*メニエール病は、更年期年齢および前後の女性に多く、女性に多い疾患である片頭痛も持っている方は片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)や更年期による自律神経によるふらつきなどが混在することもあります。
*2017年以降に国際的に統一された慢性機能性めまいのPPPDは、先行する通常のめまい疾患や、パニック発作・不安の平衡障害後、先行する疾患の病態が無くなり、3ヶ月以上ほとんど毎日持続する浮遊感・不安定感が生じる疾患です。先行するめまい疾患が混在していることもあります。先行するめまい疾患から3ヶ月以上経過して疾患が判断できるようになりますが、特異的検査がないため診断がつきにくく治療にも難渋する疾患です。
👉このようにめまい疾患は、反復するにつれ数週間~数ヶ月と時間経過ともに別のめまい疾患が併発し混在することが多くなります。
『複雑・混在するめまい疾患に対応するため、めまい相談医の役割』
日本めまい平衡医学会では2011年にめまい相談医制度を発足しています。
めまい臨床の専門的知識と高度の診療技術をもつ会員を対象に講習会と試験を受け合格者を認定する制度です。(鹿児島県では、現在7名:2026年6月1日)複雑極まりないめまい疾患に対応するには、『耳』『脳』『身体・心身』なのか判断できる総合的な臨床能力が必要になります。脳・身体・心身からの可能性の場合、該当する専門医や総合病院への紹介が必要になります。



























