院長の健康情報コラム
睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?
2026年6月1日から CPAP保険適応基準が、変更されました。
簡易睡眠検査(外来で器機借りて自宅で行う) AHI(睡眠1時間あたり無呼吸低呼吸指数)30以上で適応(以前40以上)
PSG(終夜睡眠ポリグラフ 1泊入院)AHI 15以上で適応(以前 20以上)
重症度判定は以前と同様です。 0-4 正常 5-14 軽症 15-29中等症 30以上重症
子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのは普通ですので、AHI 1 でも OSASと診断されます。
*睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療・検査につては当院HP睡眠時無呼吸症
*CPAPマスク治療についての詳細は、当院院長コラム:睡眠時無呼吸症のマスクを参照して下さい。
『睡眠時無呼吸症(OSAS)を疑う症状』
▢ 毎晩、大きないびきをかく
▢ 睡眠中呼吸が止まると言われる
▢ 昼間いつも眠い
▢ 口を開けて寝る(特に小児)
『睡眠時無呼吸症で生じるが、あまり知られていない症状』
▢ 起床時の頭痛
▢ 夜間頻尿
▢ 元気がない
▢ うつ傾向
▢ 集中力がでない
▢ 朝の目覚めがわるい
▢ 寝汗
▢ 多動(小児)
▢ おねしょ(小児)
▢ 学習障害(小児)
▢ 発育障害(小児)
睡眠時無呼吸症の症状は多彩のため、うつ病、前立腺肥大、更年期障害、不眠症、頭痛持ち、発達障害、自律神経失調などとも間違えられることがあります。
👉 なぜ睡眠時無呼吸症(OSAS)が起こるのでしょうか?
① 肥満
② 鼻閉
③ 加齢
④ エストロゲンの低下(更年期以降)
⑤ 鎮静作用の薬剤やお酒
⑥ 子供のアデノイドや扁桃肥大
⑦ 小さい顎
など睡眠時無呼吸症は様々な原因で起こってきます。
① 肥満
誰もがご存知の肥満は、成人で最も多い原因です。特に皮下脂肪が関与します。
●3%ダイエット:
内臓脂肪型肥満は、3~6ヶ月で体重3%減らす、皮下脂肪型肥満は、6~12か月で体重の3~5%減らす目標達成すれば、また3%ダイエットを試みます。
●毎日体重測定:なぜ体重が増加したのか毎日考えます。
●リバウンド対策:
*筋肉は糖を取り込む作用がありエネルギーを多く消費するので、筋肉量を増やしながらできる運動を勧めます。
インターバル速歩, 自転車こぎ, 水中歩行など筋肉が落ちない運動を行います。
*急激な減量をしない事
極端な食事制限で大幅に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉量が減ります。筋肉量が減ると消費エネルギー量が減り、糖質や脂質がたまりやすくなり、痩せにくくなります。
*糖質制限ダイエット
*地中海式ダイエット
*時間栄養学ダイエット
(お金をかけない肥満&健康対策:当院コラム)
② 鼻閉
小児の場合は鼻閉があれば、急に睡眠時無呼吸症(OSAS)が悪化します。すぐに治療が必要です。成人の場合、鼻閉そのもののOSASへの関与はありますが低く、CPAPマスク治療の弊害となりますのでCPAPマスク治療者は同時に鼻の治療を行います。
③ 加齢
加齢に伴いのど周囲筋肉がたるみOSASは悪化します。後期高齢者では中年の方のように命への危険性に関してのリスクはわかっていません。昼間の傾眠だけでなく元気がない、夜間頻尿などの症状を参考にCPAP治療を行うか判断します。OSASを認知症や老年期うつと間違えることもあります。
④ 女性のエストロゲンの低下(更年期以降)
睡眠時無呼吸症(OSAS)は性差医療です。若い方の罹患率は、女性は男性の1/5程度です。しかし更年期以降エストロゲンの低下により女性もOSASが悪化し60歳ごろから急に増加してきます。症状も典型的でなく疲れやすい、元気がない、朝の目覚めの悪さなど更年期障害や自律神経障害と勘違いするようなこともあります。女性の無呼吸は低呼吸のことが多く、夜間のいびき・無呼吸も穏やかに感じわかりにくいことがありますので注意しましょう。女性のCPAP普及率は低いのが現状ですので、60歳前後からの啓発が必要です。
⑤ 鎮静作用の薬剤やお酒
睡眠薬・精神薬服用でのど周囲の筋肉が弛緩していびき無呼吸が悪化します。お酒も同様の作用がありますので、飲み過ぎは注意が必要です。
⑥ 子供のアデノイドや扁桃肥大
子供のねむり 口呼吸 歯並び当院コラム
アデノイドは鼻の奥の上咽頭組織で通常の診察では確認できません。鼻から内視鏡が必要。
子供は、いびき・無呼吸・口呼吸だけなく、夜尿症、多動、学習障害、発育障害などにも注意して観察します。子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのが普通ですので、AHI 1<で、OSASと診断されます。
子供の場合、成人と違い肥満の関与は低く、2~3歳ごろから生理的に大きくなるアデノイドや扁桃が子供のOSASの原因です。風邪でアレルギー性鼻炎・鼻副鼻腔炎がひどくなると鼻閉が悪化して急にOSASが悪化します。すぐに耳鼻咽喉科で治療が必要です。治療しても改善が悪いときは、アデノイドや扁桃の切除術を考えなければなりません。耳鼻咽喉科では、レントゲンだけでなく電子スコープでアデノイドの大きさと表面の炎症を確認して治療をすすめます。子どもの場合、風邪をひかなくなる夏に、一時的のこともありますが改善することがあります。生理的にアデノイドは7歳以降少しずつ小さくなるので、保存的治療を頑張ってもらい手術を回避することも行います。
成人と違い、子供の場合、簡易検査の精度は低く、終夜監視睡眠無呼吸検査(精密検査)は、子供を行う検査施設は非常に少ないためビデオモニタリング(当院HP睡眠時無呼吸症を参照)や様々な症状とファイバーなどの局所所見で、子供のOSAS治療の第一選択である手術などの方針を総合的に決めることが一般的に行われます。
⑦ 小さい下顎
顎が小さく、うしろに後退した形状はOSASの原因です。現代人は、食べ物が軟らかくなり噛まなくなったため昔に較べ小顔となり下顎も小さくなったと考えられていますが、原因ははっきりしません。幼少時からの鼻閉・口呼吸も顎顔面発育に影響を与え、歯並びの悪化や顎が小さくなる原因と考えられていて将来のOSASの予備群となります。鼻閉と口呼吸の習慣を幼少時から改善させることはお子さんの将来にプラスになると思われます。
睡眠時無呼吸症のマスク(CPAP)
CPAPマスク治療の進歩
1970年代は、OSASの治療として気管に穴を開ける気管切開が行われていました。その後1980年代に外科的治療はせず、鼻から空気を入れのどを広げる掃除機を改良した機械のCPAP鼻マスク治療がオーストラリアで行われ気管切開と同等の効果が得られることがわかりました。その後マスク・機械・AIの進歩に伴い機械の小型化が進みAIで自己判断するオートCPAPが現在では主流になっています。同時にマスクの改良や種類が増え、より快適な睡眠のもとにCPAP治療が進化しています。以前は使用状況のデータをSDカードに入れて通院時に患者さんに持参してもらっていましたが、ここ1~2年で、オンラインで使用状況をクリニックから確認できるようになりました。
👉 機械を横に置きマスクを着け毎晩寝るため慣れずに継続できずに途中で中断する方もいます。以前うまくできず中断した方も、今の進歩したCPAP治療ではうまくいく可能性もありますので、再度検討してみてください。
肥満者だけが起こすわけでなく、肥満なしでも、小顔、顎が小さい、二重顎の方は起こす確率が上がります。小顔指向の若者や性ホルモンが減少する更年期以降の女性も注意しましょう。
OSASに最も効果が期待できるCPAPマスク治療
●症状の改善(昼間の傾眠、夜間頻尿、朝の頭痛)
●命を守る(脳梗塞、心房細動、心筋梗塞、高血圧などの予防)
の効果が期待できます。
一日4時間以上装用できることで、心疾患への効果が期待できます。
現在のOSASの治療
現在のOSASの治療で、第一は肥満の方は減量、CPAPマスク療法は効果が最も期待できる保存的対症療法です。ほかに顎を前に出すマウスピース治療(歯科的治療)が補助的治療と考えられています。大人の咽頭・扁桃の手術治療は再発が高く、扁桃肥大が顕著でなければ、現在推奨されなくなっています。大人の鼻の手術はCPAPの導入をしやすくするために行われることがあります。小児のOSASでは手術が第一の治療です。
詳しくは当院HP睡眠時無呼吸症を参照して下さい。
👉 様々なマスクの種類:ネーザル、ピロー、フルフェイス:
メーカー; フィリップ(米国) レスメド(オーストラリア) フィッシャー(ニュージーランド) など
◆鼻マスクタイプ(ネーザル)鼻を覆うマスク
最もよく使用されているマスクのタイプで、安定感あり, 横向き寝にも対応 鼻呼吸ができる人。頭部のヘッドギアを強く締めすぎるとマスクと鼻根部に跡が残ることがあります。
*AirFit N20(レスメド テイジン)
視界の制限をなくした小型ネーザルマスク(メガネ使用可能)です。最近、ネーザルマスクの中でも当院で最も使用されているタイプです。
*F&PネーザルマスクEson 2(Fisher&Paykel Healthcare)
確かな装着感とほどよい密着性を実現したマスク。
*ウイスプネーザルマスク(フィリップス):
ネーザルマスクとピローマスクのメリットを融合した新しいマスクで、前述の小型ネーザルマスクのレスメドAirFit N20と同じようなコンセプトです。
ウイスプネーザルマスク(テイジン フィリップス HP)
➡従来のネーザルマスク利点:フィット感、快適性
不利な点:接触面が大きく皮膚への刺激の可能性あり,視界を制限することがあります。
➡従来のピローマスクの利点:軽量、視界が広く接触面が小さい。
不利な点:空気の圧力に制限、鼻の入り口への直接的な不快感あり。
◆鼻内マスク(ピロー)
鼻の入り口に少しだけ差し込んで使用するマスクです。圧迫感が最もないタイプのマスクなので、マスクの締め付け感が辛い方にはおススメで、解放感がありますが、寝返りで外れやすいことがあります。メガネや読書との相性が良い。高圧設定であわない人がいる。使用感は慣れが必要です。鼻腔入り口の粘膜に少しあたりますので鼻前庭の炎症に注意が必要です。このタイプの選択は慎重に行います。
*P10 AirFitマスク(テイジン レスメド)
46gの軽量、高い静音性。
ピローサイズ:XS S M L
*ドリームWear(フィリップス):新しいデザインのピロータイプのネーザルマスク
ドリームウエアネーザルマスク(フィリップスHP)
鼻の入り口に横長の空気を通すフレームマスクを当てるタイプです。CPAPへの呼吸回路の接続ホース部が、前述の2タイプと違いマスクに接続せず、頭頂部になるため寝返りが打ちやすく、頭頂部からフレーム内に空気を通すことで、寝返りの際も呼吸回路と接続部が邪魔になりません。何もつけていないような解放感が得られメガネの装着や寝る前の読書も可能です。少しマスクがずれやすくリーク(漏れ)が多くなりがちなのが欠点です。
◆鼻口マスク(フルフェイス)
鼻と口覆うタイプのマスク、最初からこれを選択する人はいませんが、中にはフルフェイスがすごく良いという方もいますのでうまくいかない方は試す価値はあります。鼻閉などで口を開いてしまう(口呼吸)方が使うことが多くなります。乾燥感・圧上昇・空気漏れ・睡眠中の舌を押し込んで無呼吸を引き起こしてしまう等にディメリットがあります。これを選択する前に口を閉じる習慣を身に着けることが優先されます。また鼻が悪ければ耳鼻咽喉科受診をしましょう。
* F&P フルフェイスマスク( フィッシャー テイジン)
* F20 AirFitマスク(レスメド テイジン)
メガネ装着可能、より多くの人にフィットすることを目指したフルフェイスマスク。
*F30 AirFit マスク 最小接触面フルフェイスマスク(レスメド)
メガネ装着可能、マスク上方を短くし、鼻の背部への接触を軽減して快適性を向上させたもの。
マスク協力CPAPメーカー
TEIJIN
若い人にも稀ではない耳閉感・ふらつき
難聴と言えば高齢の方の加齢変化と思われる方が多いでしょう。
実は、乳幼児から高齢者まで耳閉感・難聴の病気は誰もが罹患する可能性があります。
若い人でも稀ではありません。
難聴には治る可能性が高い病気と、治すのが難しい病気が存在します。
【伝音性難聴】
治る可能性が高い難聴の疾患は外耳と中耳に病変がある伝音性難聴です。
*耳垢栓塞
*中耳炎
*鼓膜損傷・穿孔
*耳管機能障害(耳抜き不良など)
などが該当します。
中耳炎から内耳炎、内耳障害まで波及しなければめまい・ふらつきは出現しません。
【急性感音難聴】
内耳と聴神経・脳に原因がある場合、感音難聴と総称され治すのが難しい病気です。
めまい・ふらつきが、併発することもよくあります。
*突発性難聴
*急性低音障害型感音難聴(今回のテーマ)
*メニエール病
*音響外傷
*ムンプス難聴(おたふくと難聴:当院コラム)
*外リンパろう(診断が難しい)
*聴神経腫瘍(MRI必要)
*特発性両側性感音難聴
*若年発症型両側性感音難聴(難病指定:遺伝子の確認)
など多数存在し、突発性難聴、音響外傷、急性低音障害型感音難聴の急性期では回復の可能性があることもあります。
外リンパろう、聴神経腫瘍では手術が適応となる場合もあり、難聴が進行して回復しないときは補聴器を検討します。
【慢性感音難聴】には、
騒音性難聴、老人性難聴、先天性難聴があり薬で治すのが困難な疾患です。
補聴器、人工内耳などの適応を考えます。騒音性難聴やスマホ難聴は予防が肝心です。
☞☞ 若い人にも稀ではない耳閉感・難聴・ふらつきは、
耳閉感・難聴で、外来受診が多い疾患は、上記の耳垢・中耳炎などの伝音性難聴と
感音難聴では、若い20~40歳代にかけて多い急性低音障害型感音難聴です。
若年女性に多い病気です(女性は男性の2~3倍)。
『急性低音障害型感音難聴とは
』
発症頻度は人口10万人あたり40~60人と急性感音難聴を来す疾患の中で最も多いと考えられています。30代での発症が多く女性は男性の2~3倍です。
軽い場合は2~3日で改善することもあり病院受診しないこともあるため、実際はもっと多い印象です。
突発性難聴は40~70代で増加します。難聴を伴うメニエール病は30~50代に多く最近は高齢発症が増加していますので、若い人に多い急性感音難聴は急性低音障害型感音難聴が大半です。
◆症状:
低音域の難聴を特徴として、自覚症状は耳閉感が最も多く、耳鳴、難聴、自分の声が響くなどの症状を認め、通常めまいは認めませんが、軽いめまい感を訴える場合もあります。
原因は不明ですが、近年内リンパ水腫の関与が指摘されています。通常は一側性ですが両側のこともあります。
◆難聴の特徴として:
*短期的には予後良好例が多い
*長期的には反復、再発例が多い
*長期間経過していても回復する例がある
*自然治癒する例も少なくない
◆メニエール病・突発性難聴との鑑別:
病態としてメニエール病と同じ内リンパ水腫が想定され、その一部はメニエール病に移行します。急性低音障害型感音難聴の反復例は、めまいを伴わない蝸牛型メニエール病に該当します。めまいや眼振が確認されればメニエール病を疑います。急性低音障害型感音難聴は、軽いめまい感を訴える場合もあります
初期の低音障害型の突発性難聴との鑑別は、経過の中で中高音の聴力の変化で判断します。
◆治療:
ステロイド剤、浸透圧利尿剤(イソソルビド)、ATP、漢方(五苓散、当帰芍薬散・・)など使用します。
メニエール病はストレスとの関与が強く、急性低音障害型感音難聴も同様にストレス、不眠、疲労、自律神経や気象と関連することもあります。
台風と気象病(当院コラム)も参考にしてください。
参考資料
急性感音難聴 診療の手引き2018年版 日本聴覚医学会
お子さんのめまい・ふらつき・立ちくらみ
お子さんのめまい・ふらつきは成人に較べ非常に少なく、耳からのめまいは成人の1/100程度と考えられています。疾患が少ないため、医師の経験不足も認められる領域です。
お子さんは成長過程のため、小学高学年頃から思春期にかけて成長過程の症状でもある起立性調節障害によるめまい・ふらつき・立ちくらみが増えてきます。男性にも認めますが、特に女性は成人同様の貧血によるふらつきもこの頃からから多くなります。小さいお子さんの場合は、自分のことをご両親に伝えることが苦手のため診断を難しくしています。
今までの日本からの報告では、子供のめまい・ふらつきの原因で多いのは起立性調節障害(OD)と考えられていました。
海外の子供のめまい報告では、片頭痛関連めまい(VM)や小児反復性めまい(RVC)が多く報告されています(両疾患で約40%程度)。以前、日本では疾患概念として小児反復性めまい(RVC)や片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛:VM))は医師の中でもなじみが薄い疾患でした。最近、この疾患概念が普及してきて日本でもVMやRVCが小児のめまいの原因として報告されるようになってきています。
VMは反復する難聴や音過敏もあり耳からのめまいとの鑑別を必要とします。起立性調節障害も頭痛が出現することも多く片頭痛との鑑別を難しくします。
海外の統計では頭部外傷によるめまいは3番目に多く、心因性めまい、前庭神経炎も比較的多く認めます。
稀ですが、小児のめまいの特徴として脳腫瘍、側頭葉てんかん、内耳奇形、ムンプスなどの感染によるものも認められます。原因不明が30%程度認めるようです。
ポイント!!
お子さんのめまい・ふらつきの原因は成長過程の貧血や起床時の低血圧・起立性調節障害(OD)だけではなく、将来片頭痛に移行することもある幼児期に多い小児反復性めまい(RVC Recurrent Vertigo of Chilidhood)や、学童期以降に多い片頭痛関連めまい(VM)が多いことがわかってきました。ODと片頭痛は併存する傾向があります。小児の片頭痛は成人と違い、後述の小児周期性症候群として現れることがあります。RVCとVMは今まで日本では医師の間でもなじみが薄い疾患概念です。
追記:片頭痛は子供に多いアレルギー性鼻炎と併存することも多く頭痛の原因が鼻からか片頭痛からか治療経過で見分けることも必要になります。
海外学童の有病率は、2.6%と高く、日本での報告少ない疾患です。疾患概念が医師に浸透していない可能性があり、最近、日本でも報告が増加しています。小児に特有な片頭痛の一つと考えられています。海外の報告では子供のめまいの約20%が、この良性発作性めまいによるものです。ぐるぐる回るような感覚や、回って倒れるような感覚を感じるめまいで、2〜4歳頃に発症することが多く、通常は成長とともに症状が消えます。原因はよくわかっていませんが、めまいの多くは数秒から数分しか続かず数時間持続は稀、めまいが起きていない間は特に異常は見られません。なお、良性発作性めまい患者の半分は家族に片頭痛持ちがおり、患者の一部は将来片頭痛を発症しています。
◆小児反復性めまいの診断基準( RVC)
➊前触れなく生じ,発現時の症状が最強で,意識 消失を伴うことなく数分~数時間で自然寛快する回転性めまい発作
❷下記の随伴症状・徴候のうち少なくとも1 項 目を満たす
- 眼振, 運動失調,3. 嘔吐,4. 顔面蒼白, 5. 恐怖
➊および❷を満たす発作が5回以上
❸発作が無いときは正常
回転性めまいを持つ年少児が,ぐるぐる回る 症状を説明することは難しいかも知れません。 発作的な落ち着きのなさが親によって観察される場合,これが年少児の回転性めまい発作を説明しうることがあります。
今まで、めまい患者さんが、頭痛を訴えても、脳卒中や脳腫瘍以外では、関連を疑うことは今まではあまりありませんでした。最近では、頭痛外来の片頭痛患者の半数以上に何らかのめまい症状があり、片頭痛とメニエール病の共存率も高いと知られています。前庭性片頭痛という疾患単位として診断基準が確立されたのは近年(ICDHβ3 2013年)のことです。片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)は、今まであまり知られていなかったため、難治性や原因不明のめまいの患者さんの中にかなりの割合で含まれていると考えられています。
学童以降、最近では子供のめまいの約20%がこの病気によって起きていると考えられてきました。発症しやすいのは12歳頃です。発症すると片頭痛とともに、日常生活に支障をきたすほどの回転するようなめまいや、ふらつきなどが現れます。前庭性片頭痛は特に前触れもなく症状が出ることもあれば、頭を動かしたり、目の疲れ、心理的なストレスなどがきっかけとなって症状が出ることもあります。めまいの持続時間は、短いと数分、長いと数日続くこともあり、場合によりまちまちです。
◆診断(成人)
*過去も含め片頭痛症状がある
*めまい前後に頭痛がある
*めまい症状は、自発性めまいや視覚刺激・頭部運動で誘発されるめまいや浮動感(回転性めまいが多いが、一部に浮動感あり)
*少なくとも5回のめまい発作で、5分~72時間持続
*めまい発作の少なくとも50%に1つ以上の片頭痛兆候(頭痛、光・音過敏、前兆)がある
*めまい発作時は、高度難聴はなく、耳鳴・耳閉感のあることは多い
◆生活で注意点と対策(成人)
*強い光、騒音、人混みを避ける
*寝過ぎ寝不足を避け、休日も普段通り
*ストレス回避
*ワイン、チーズ、アルコール、チョコは避ける
*赤系サングラスを選ぶ
*片頭痛発作時は、静かな暗い場所で安静または睡眠、冷たいタオルで痛む箇所を冷やします。
◆お子さんの場合、家族特に母親の片頭痛歴や乗り物酔いのしやすさは片頭痛の診断の助けになります。治療は成人と同様の薬が使えないことが多くあります。
国際頭痛分類第2版では,小児に特有な片頭痛として「 小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)」が加えられています.小児周期性症候群には下記のものが含まれます.頭痛がなくとも,周期的に吐いたり,腹痛やめまいを起こす場合も片頭痛の仲間に入れられています.
*周期性嘔吐症(CV) 海外・国内共に報告が多い
過去1年に3回以上のエピソード、発作時以外は健康 嘔吐は1時間から数日持続。ストレス、感染、疲労、食事(チーズ・チョコなど)、生理などが誘因となります。夜間・早朝に発症、片頭痛の治療薬が効果を認めることが多くあります。小児5歳、成人35歳が発症の平均値で、成人にも発症します。軽症は2~5年で自然軽快します。
*腹部片頭痛(AM) 海外有病率1~4% 日本での報告少ない
CVと違い嘔吐は少なく、腹痛が主の症状です。発症は3~15歳で8歳が平均値です。大部分の小児は、将来片頭痛に移行します。1~72時間持続する腹痛(臍周囲、正中部または局在に乏しい)。発作時は悪心・嘔吐・食欲不振・顔面蒼白などあり。
*小児反復性めまい(RVC) 海外学童の有病率2.6% 日本での報告少ない、詳細は前述。
子供のめまいは起立性調節障害によって起きることもあります。この障害は自律神経の異常や水分の摂取不足などによって起き、めまい以外に朝起きにくくなったり、吐き気や倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などを感じることがあります。10〜16歳頃に発症しやすく、小学生では約5%、中学生では約10%以上の子供が発症しています。
起立性調節障害の症状は、思春期には健常な子どもでも自覚することがしばしばあります。すべてを疾患として扱う必要はありませんが、生活に支障をきたしている場合は疾患として扱い、診察を受ける必要があります。
*起立直後性低血圧:起立直後に強い血圧低下および血圧回復の遅延を認める。ODの20%程度あり最も多く認めます。起立直後のめまい・ふらつき・立ちくらみ・頭痛が主な症状。
*体位性頻脈症候群:起立直後性低血圧の次に多い病態です。起立性低血圧をきたさずに頻脈だけが生ずることになります。頭痛・倦怠感が強くなるタイプです。起立3分以後 心拍数増加≧35/分または、心拍数≧115/分。
*遷延性起立性低血圧:起立3~10分経過して収縮期血圧15%以上または20mmHg以上低下。
*神経調節性失神:起立中突然の意識低下
起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神の詳細な診断には、ヘッドアップティルト試験が必要です。
◆ヘッドアップティルト試験(youtube)動画で詳細な解説あり
*良性発作性頭位性めまい:成人では最も多い耳からのめまいです。小児では耳石の変性は少なく稀、外傷が関連することがあります。
*メニエール病とは、めまいと吐き気の発作が繰り返し起こる病気で、耳鳴りや難聴を伴うことも多くあります。30〜50歳頃にかかりやすいとされていますが、子供でも小学生ごろから発症することがありますが稀です。
*前庭神経炎:突然めまい症状が出現しめまいは数ヶ月に及ぶこともあります。耳鳴り難聴はありません。男性にやや多く,発症年齢は50 歳代に多い。上気道感染の先行する症例が多く、前庭神経節に潜伏感染している単純ヘルペスウイルス1型の再活性化により前庭神経炎が発症するとの説も提唱されていますが、抗ウイルス薬は前庭神経炎に対して効果がありません。海外の子供のめまいの報告では、BPV,VM,頭部外傷の次、4番目の多さとなっています。日本では子供の発症は稀です。
*乳幼児期:出生時に蓄えていた鉄は6ヶ月頃までに低くなり、鉄分の補給が必要、離乳食を開始し、鉄分を補給します。特に未熟児で生まれると鉄分の蓄えが少ないため、貧血はより強く出ます。離乳食がうまく進まなかったり、食べている食品中に含まれる鉄の量が少なかったりすると、鉄分の摂取が不足します。また、急激な発育・成長によって、今まで以上に鉄分が必要となることで鉄分が不足することがあります。加えて、過度の牛乳摂取による貧血が生じることもあります。
*思春期:体の急激な成長によって多くの鉄分が必要となりますが、このときの鉄分は通常の食事では賄いきれない場合が少なくありません。女子では生理によって血液が失われるため貧血を起こすことがあります。特に女子では過度のダイエットによる鉄分の摂取不足も貧血の原因になります。このほか、激しい運動によるスポーツ貧血(緩衝材入りの靴を履き予防)が起こることもあります。
参考資料
小児めまいの取り扱い:堀井 新 小児耳 2016; 37(3): 300‐304
小児のめまい:五島 史行 小児耳 2011; 32(3): 305‐309
子供のめまい:OD 田中 秀高 Equilibrium Res Vol.71(2) 53~60,2012
子供のめまい:五島 史行 脳と発達 2017;49 237‐42
診断・治療が難しい高齢者めまい
日本の不慮の事故の報告で多いのは、若者・中年では交通事故、高齢者では窒息、転倒・転落、溺死が問題になります。
溺死の多くは浴槽内への転倒・転落で起きていることから転倒・転落の割合はもっと多くなります。
高齢者の寝たきりの原因で多い大腿骨近位部骨折の74%は転倒が原因です。
20歳(100%)と比較すると70歳で筋持久力低下(30%)と平衡性の低下(20%)となります。
小脳の退行変性は40歳台から始まり加齢ともに加速し高齢者の平衡機能低下へ大きな影響力を持ちます。高齢者のめまいの年間有病率は若年者の約3倍です。
中枢神経、末梢受容器(内耳)の加齢による機能低下および筋力低下は誰にでもおこる現象です。
転倒対策は重要ですが、老人性平衡障害への有効な薬物療法や手術治療は存在しません。
有望なのは中枢前庭代償を促進させるリハビリと筋力増強のためのリハビリです。加齢変化のため前庭代償の発現が不十分となりリハビリの効果が十分に得られないこともあります。
めまいの訴えに対して漫然と抗めまい薬が処方されていることがありますが、基礎疾患が多い高齢者ではポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)となり薬害を起こすことも懸念されています。減薬の意識も大事です。
👉 診断・治療が難しい高齢者めまい
若い人は、良性発作性頭位性めまいを主に内耳からのめまいが多く、ほかには片頭痛・肩こり・貧血・自律神経症状・生理・心因性などを考えた対応が多くなります。
高齢者では、若い人のめまい疾患の他に、基礎疾患が多く、下記のような多くのふらつきの・めまいの原因となる脳心・内科領域疾患および薬剤性、運動器・筋力の低下による老年症候群を考えた対応が必要になり診断・治療が難しくなります。
内耳疾患も感知する感覚が衰え若い人のような回転性ではなく浮動性の訴えが多くなり診断を難しくします。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなる両側前庭機能障害を示す加齢性平衡障害も出現してきます。
『内科領域』
薬歴や病歴からめまい・ふらつきに関係する疾患や薬物を丁寧に確認して対応していきます。
➡ 様々なめまい・ふらつきに関与する多くの疾患
*脳卒中 :危険なめまいです。
*椎骨脳底動脈循環不全
*頸椎性
*くも膜下出血:4%はめまいで発症します。
*心疾患
*不整脈:労作時のめまい、動悸の有無の確認します。
*高血圧・動脈硬化
*脱水:梅雨から夏にかけては熱中症に注意
*食事摂取・栄養不良:嚥下機能障害・嗅覚障害が隠れていることあります。
*糖尿病:自律神経障害、起立性低血圧など出現することあります。
*起立性低血圧:入浴時や食後低血圧など、下半身から上半身への血液還流改善のため下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉:第二の心臓)を鍛えます。脳循環自己調節機能や自律神経調節中枢の機能低下が原因。
*認知症(レビー小体など)
*パーキンソン病
*アルコール中毒
*薬剤性:薬物投与より減らすことを意識して対応 ポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)と言います。
減薬についてはかかりつけ医と相談しての対応が必要です。
『老年症候群』
次の四つが重要です。
*フレイル(健常から要介護の中間段階:加齢による衰え全般)
*運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア
*骨粗鬆症
*加齢性平衡障害(下記の内耳からのめまいで詳細記載)
*運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア
今までの対策
【動的持久的運動】(有酸素運動:脂肪と糖を消費、心拍予備能60%を超えない程度が望ましい)
動的有酸素運動(散歩、早歩きなど)は血圧変動の程度が少なく、代謝・循環系の改善効果から今まで静的筋トレより適応な運動として勧められてきました。
最近は筋力維持、強化という点から、高齢者にも適切な強度の筋抵抗性運動(静的運動:スローな運動)であれば、動的運動と平行して指導することが求められています。
心拍予備能60%を超える運動は、血圧や血糖をあげるホルモンが上昇します。乳酸が蓄積して、二酸化炭素が過剰排泄となります。静的運動は血圧をあげますので息を止めないで行います。
これからは、有酸素運動に平行して
【静的運動(スローな運動)】
欠点は血圧をあげますので、レジスタンス運動時に力発揮が強まるときには、息を吐き、弱まるときには息を吸うことが基本です。
具体的には
スロースクワット(腰痛、糖尿病対策にも効果)
スロー腹筋
スロー片足引き上げ
スロー腕立て伏せ など
メリットとして
ゆっくりであっても筋肉が動き続けていると乳酸が分泌します。
乳酸が成長ホルモンの分泌を促します。成長ホルモンが筋肉肥大、骨や腱の代謝を促進し、また体脂肪の分解も促進します。
*骨粗鬆症
骨を強くし転倒を予防する運動
背筋運動
片足立ち
スクワット など行います。
運動は背筋運動、スクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行います。食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・納豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンD・ビタミンKをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。
➡日常生活での注意点
*急な立ち上がりや急に振り向くことを避ける
*階段の降りる時は手すりを使い慎重に
*両手フリーで歩行、荷物は背中に背負うか手押し車に入れる
*戸外では杖や手押し車を使用
*室内の障害物の整理、バリアフリー、トイレや廊下を明るく
高齢者の急性期は、脳血管障害によるめまいに注意した対応が必要です!!
*加齢性平衡障害
いままで高齢者で原因不明のふらつき・めまいに対して診断していた概念ですが、2019年に国際基準ができました。
軽度の両側前庭機能障害が出現します。
通常歩行では加齢性平衡障害の両側前庭機能障害者と健常者では差はみられず、歩行速度が速くなるほど歩行中枢が中心になり不安定歩行が出やすくなります。ゆっくり歩行は、視覚など感覚情報を利用して対応しています。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなります。
➡2019年に国際学会のバラニー学会で診断基準が示されたばかりです。
3ヶ月以上持続する前庭症状(めまい・ふらつき)少なくとも以下の二つを認めます。
- 姿勢のバランスあるいは不安定感
- 歩行障害
- 慢性の浮遊感
- 繰り返す転倒
加齢性平衡障害を診断しても、確立した治療法や予防法があるわけでなく今後の研究課題となっています。
☞ 実地診療では、従来通りの前庭リハビリ、サルコペニア対策(ウーキング、下肢の筋トレ)が重要と思われます。
*BPPV(良性発作性頭位性めまい)高齢でも最も多い内耳からの眩暈です。60歳以上では20~40歳の7倍高い発症率です。頭部外傷、メニエール病、前庭神経炎などの二次性に発症しやすく、骨粗鬆症との関連、全身疾患との合併が指摘されています。変形性頚椎症や腰痛の合併も多く検査や耳石置換療法が出来ないこともあります。高齢者ではBPPVを感知する感覚が衰えているため発見が遅れることがあります。
*メニエール病:中年で発症することが多い疾患ですが、最近、元気な高齢者が多くなり以前より高齢者で増加しています。若い人のように回転性ではなく、持続的浮遊感の訴えが多くなります。BPPVの併存のこともあり頭部挙上での就寝も考えます。
*前庭神経炎:30~60歳に好発
『心因性めまい』
長い人生の中、心身の不調、身近な人との離別・死別、生活環境の変化に対応できないなどの理由から、ストレスを感じる高齢者が増えています。ストレスは、心因性のめまいの引き金になりあらゆる病気に進展します。。
*不安症・うつ病・精神疾患に合併するめまい
*当初は内耳のめまいが、反復するうち心因性めまいへ変化することも多くあります
*若いときに前庭神経炎やめまいを伴う突発性難聴に罹患して70歳過ぎて脱代償(加齢で小脳のコントロールが低下)してめまいが出現するようになり、それに不安・抑うつなどの心因が合併して難治化している場合もあります。この場合、前庭リハビリを主に薬物療法を考えます。
参考資料
高齢者のめまいを治す:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2020:5
« Older Entries Newer Entries »



































