吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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院長の健康情報コラム

汗とアトピー、そして漢方

2018-08-15

It is hot summer day. Dogs do sweat only in their  foot pads and some in their nose, but not in the same way as we human do.  Dog’s mechanism of cooling down is panting with the tongue out.

汗はかきたくない人、汗をかいてすっきりしたい人、汗が多くてこまっている人、人それぞれ汗に対する感じ方があります。
今年の夏は異常な暑さのなかで、毎日、汗だくの方が多く、熱中症の話題がつきません。

☞ 今回は、汗の重要性と、最近の汗とアトピーの考え方、そして東洋医学ではどうかについての話です。

汗とアトピーの結論

アトピー皮膚炎(AD)の患者は汗をかくとかゆくなるため、長い間、汗をかかないような指導が行われてきました。最近では、発汗量の測定法が発展するにつれ、汗をかかないとADとなることがわかってきました。

汗とADとの関係の結論は、汗はかけたほうがよく、汗をかくことを避ける必要はありません。
汗をかいた後は、皮膚表面に長時間残らないよう洗い流す、拭き取るなど対策が必要。
汗はしっかりかいて、ふきとることです。

人類と汗
人類は発汗による体温調整法で、文明を発展させてきました体温調整のために、環境の変化で素早く発汗できるエクリン汗腺を全身に持っているのは人間のみです。イヌ科と猫は肉球と鼻先のみエクリン汗腺あり、毛づくろいの唾液の気化熱を利用して体温調整します。犬なら新鮮な空気を吸い舌を出しあえいで唾液を蒸発させ、象、兎は長い耳を風にさらして、また象は鼻で身体に水をかけ体温調整をしています。馬は特殊で、運動や興奮で発汗するアポクリン汗腺で体温調整しています。馬は人間の2倍の汗をかき、運動時はもっとかきます、エクリン汗腺は足の裏にあります。

人間のアポクリン汗腺は、匂い、腋臭、フェロモンと関係しています。
耳垢のジュクジュクはアポクリン汗腺によるものです。
エクリン汗腺の汗はサラサラで臭いはほとんどしません。

動物に較べ、人間は中枢神経をになう脳が発達しています。脳は熱に弱く、脳が発達するためには、体内で栄養源の摂取に伴う熱産生を調節する必要性がありました。
発汗による気化熱・蒸散を利用した熱産生システムを構築することは、脳の発達に重要な要素となっています。

人間はマラソンのような長距離走を行えるのも発汗能力の高さによります。アフリカの狩猟民族はこれを利用し、獲物の大型獣が体温上昇で走れなくなるまで追いかけて狩ります。先史時代のヒトも同様の狩りを行っていたと考えられています。

赤ちゃんと汗(エアコン使い過ぎによる能動汗腺の低下)
人間の汗腺数は、一人当たり200-500万個といわれていますが、出生後の環境(熱帯、温帯、寒冷地)によって、実際に働く汗腺(能動汗腺)の数は違ってきます。
赤ちゃんは、生まれてすぐは汗をかかず、成熟児では2週間以内に発汗が見られるようになります。満2歳ころには、おとなとほとんど同じ数の能動汗腺が働くようになります。
満2-3歳までの環境で汗をかく能力がある程度決まってしまうわけです。

夏には赤ちゃん時代から、1日に2時間程度汗をかく機会がないと能動汗腺が充分に発達しないと言われています。夏以外の季節では、子どもはおとなの2倍近く汗をかきます。
夏に、赤ちゃんをエアコンの中ばかりで育てるのではなく、戸外でも室内でも、しっかり汗をかく環境と時間が必要です。1日2時間くらいは汗をかかせて、汗をかいた後はシャワーや行水をさせて汗をとり、それから涼しいエアコン環境ですごさせます。

汗をかきにくい大人にしないように赤ちゃんの時から注意して下さい。

赤ちゃんの寝汗について、おとなは環境温度が29度C以下だとかくことが少ないのですが、子どもはもっと低い温度でも寝汗をかきます。
子どもは四季を通じて、眠りついて1時間-1時間半くらいの間に寝汗をかくのが普通です。

 

熱中症と汗
エアコン利用、帽子、涼しい服装、水分や塩分をまめにとることだけでなく、汗が出ないなど体温を外に放出する仕組みがうまく機能しないと熱中症となります。
体温調整に重要な体表面の気化熱について、体重70kgの人が1度下げるには、100ccの汗をかきすべて蒸発しなければなりません

 

 

汗のメリット

皮膚のバリア機能維持
汗は、角質の水分の保持を行いアレルゲンの侵入を防ぎ、皮膚のバリア機能を維持に効果を認めます。
皮膚のバリア機能の維持には、洗浄力が強いボディーソープより、弱い固形石鹸で脂質を守ります。こすり過ぎないこと、長湯を控えることも大事です。

皮膚の温度調整
汗の蒸散による気化熱により、皮膚表面や体内の温度を低下させ、痒みを抑える効果。
乏汗と自律神経失調症では、皮膚乾燥と皮膚の熱感を認めます。

抗菌成分の供給
汗含有の抗菌ペプチドや免疫グロブリンが肌を守ります。

汗の低下がADを悪化

なぜ発汗低下がおこるのか?

ADでは、表面皮膚への汗の排出は低下するが、汗を作る能力は決して低下しているわけではありません。今までは、炎症の結果として汗菅の閉塞が原因と考えられてきましたが、汗菅の閉塞はADでは起きていないことが、わかってきました。
最近では、汗菅のタイトジャンクションの脆弱性のため、皮膚直下の真皮への汗の漏れが、絶えず日常的に生じていると考えられてきています(2018:Shiohara T, Shimoda など)。

汗のディメリット
余剰な汗を長時間皮膚表面に放置すると汗孔の閉塞と汗疹が形成されます。つまり皮膚炎と乏汗の原因となり、皮膚乾燥と熱感を助長させます。

不感蒸泄の汗と違い運動後の汗は、pHが少したかく皮膚には少し刺激となる心配があります。

AD患者での、過剰な汗の対策

汗をかけばシャワー浴
おしぼりで吸い取る
可能なら汗でぬれた衣類を着替える
下着もナイロン・ポリエステルなどの化学繊維でなく吸湿・通気性がよい木綿が推奨されます。

汗をかかせるためには
夏にいつもクーラーの中にいると、汗をかきにくい体質となるため、朝夕の涼しいときに、軽く汗をかく程度の運動を行いましょう。熱中症を予防するためにも4~5月頃からはじめるとよいでしょう。

通常から、スポーツの習慣(有酸素運動)を持ちましょう。
シャワーだけでなく適度な入浴(半身浴など)をしましょう。
必要以上に、冷房や除湿の環境で過ごすことは避けましょう
こうすることで、ベタベタしにくい臭みが少ないいわゆる良い汗かき易くなります

以前までのADに対しての汗をかかない生活活動(シャワーのみ、常時エアコン環境など)をやめることです。

基礎発汗を高める最近の研究では、ヘパリン類似物質含有保湿クリームの通常量の3倍程度塗布が効果を認めるようです。これにより角質成分の増加をもたらし、アレルゲンの侵入を防ぐことも可能と報告があります(2017:Shiohara T, Shimoda など)。

ステロイド軟膏の単独での長期塗布は、基礎発汗を低下させる一因となります。

漢方では
汗が出なくてかゆい場合は、桂枝麻黄各半湯を用いることもあります。
風邪の時、漢方では、汗がでず発熱・悪寒などあれば、発汗療法として、葛根湯麻黄湯など桂枝麻黄含有方剤を用いて治療します。
桂枝麻黄各半湯桂枝湯麻黄湯を半々入れて作ったものです。
少し汗があり、でたりないときに用います。

話が飛びますが、逆の病態多汗症漢方では、

暑がり寒がり、水太りには防已黄耆湯

皮膚表面の発汗・免疫調整役の衛気が不足すると寝汗が生じます。
皮膚乾燥も混じる、寝汗じとじと肌は桂枝加黄耆湯、寝汗あり元気がない方には補中益気湯、寝汗、虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、黄耆建中湯
上記の方剤には体表の水のうっ滞を治し、免疫調整を行う黄耆が含有されています。

強い口渇、多尿多汗、舌が赤いには白虎加人参湯裏熱)、
夏バテ、口渇、尿が少ない方には五苓散水毒)、
のぼせ発汗、下肢の冷えには気逆として、桂枝甘草含有の苓桂朮甘湯苓桂味甘湯気逆)、

過緊張で手汗が多い場合は、四逆散を用い、ストレスで胸脇が痛むものは香蘇散を加味します;柴胡疎肝湯気滞

など使用いたします。

乾燥肌(血虚・陰虚)と漢方での対策

西洋医学では、乾燥肌・痒みに対してステロイド軟膏、保湿剤、掻破を防ぐため抗ヒスタミン薬を使用するのが一般的です。

漢方では漢方の考え方によるバランスをとることを重要視します。
気・血・水や寒・熱や五臓論などによる証に基づき処方を決めますので、
乾燥肌は血虚・陰虚と関連が深く、以下に説明していきます。

実際の現場で慢性の病態には血虚・陰虚+αを考え、お血・脾気虚・腎虚などの方剤を加減して処方します。悪化時の局所所見ジュクジュク化膿、水泡、発赤など観察のうえをさらに幅広く加味していきます。よくわかる子供の漢方:皮膚編参照して下さい

血虚:
皮膚表面では、加齢とともに、肌がカサカサ、爪が割れやすく、髪が抜けやすくなる漢方の血が不足した状態(ただの貧血とは異なります)を表します。表面的な症状だけでなく、不眠、集中力低下、目のかすみ、動悸、こむら返りなども血虚を意味します。
アトピー性皮膚炎老人性皮膚搔痒症の皮膚症状は血虚と考えます。

陰虚:
中医学では陰は寒と水を意味し、陰虚とは、水が不足し火が興り、熱(虚熱)が生じます。陰虚とは血虚+熱を意味します。陽不足の陰虚でも、寝汗があります。

陰虚では、血虚と同様の皮膚表面の乾燥の他に、身体が痩せ、大きい筋肉は脱落し(サルコペニア)、手足がほてり、めまい、耳鳴り、口渇、舌乾燥、兎糞便を伴います。

皮脂分泌悪く、皮膚乾燥あれば四物湯基本処方となり、色々な四物湯配合処方を用います。月経不順、内分泌・自律神経の異常にも応用します。

痒み皮膚乾燥で、老人や冷えには当帰飲子

慢性炎症と皮膚乾燥には温清飲、青年の副鼻腔炎合併には荊芥連翹湯、幼児学童の扁桃の反復感染には、柴胡清肝湯
貧血や元気がないときは十全大補湯

四物湯が入っていない桂枝加黄耆湯は、寝汗(自汗)や皮膚乾燥などの表虚・衛気不足に使用します。虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、脾気虚の黄耆建中湯、元気がないおとなには補中益気湯を使います。

皮膚症状以外では四物湯配合処方として、
寒証の月経不順、手足のほてり、口唇乾燥には、温経湯。熱証の月経不順は温清飲
体力低下、筋肉萎縮、屈伸むずかしい関節痛には大防風湯。
冷え、血行障害、関節筋肉痛、酒飲みには疎経活血湯など多数あります。

中医学では、陰虚六味丸、滋陰降火湯など用います。

関連自院HPコラム よくわかる子供の漢方:皮膚編

参考資料
アレルギー 2018、Vol67:6,7        漢方治療 44の鉄則(メディカルユニコーン)        中医学入門   神戸中医学研究会 東洋学術出版社        漢方診療のレッスン(金原出版)
飯塚病院 漢方診療科HP        小児科医:澤田 啓司のブログ         汗;ウイキペディア

 

よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛

2018-07-08

 


Genn, puppy has grown big , 3 month  to 7 month lower photo, the dog at puberty.

 動物の世界では人間も哺乳類の仲間です。犬や猫など身近な哺乳類から学ぶことも多くあります。

犬の成長との比較の中で、お子さんの成長を考えていきましょう。

 

犬の身体と精神の成長

犬の成長ははやく、中~大型犬では、1~1.5歳で大きさは成犬となります。

生後6ヶ月以降は青年期となり、生後6ヶ月頃から1~1.5歳の成犬になるまでは、骨や筋肉の発達に伴い股関節など成長に伴う病気がでてきます。この時期の激しい運動は体にダメージを与えることもあります。

 

精神面では生後1~3ヶ月第一の社会化期人間の6ヶ月~幼児期に相当)と呼ばれ、恐怖心が無く、好奇心が旺盛な時期です。外界からの刺激を受けて社会に適応していく大事な時期でもあります。母親や子犬たちから犬同士のコミュニケーションや社会性を学ぶ重要な時期となります。早くから兄弟と別れさせられた子犬たちは、大事な知識や社会性、加減して噛むことなど学べず、今後人間と暮らしていくうえで、問題行動を起こすことになります。

4ヶ月を過ぎると、好奇心より警戒心が少しずつ強くなってきます。

 

生後6~12ヵ月は、体の成長に伴い運動能力も発達し、第二の社会化期(人間の学童後半~思春期に相当)となり、周囲の環境に適応していくことを学んでいくことになります。初めての出来事に対する警戒心や恐怖心を覚え、ストレス耐性を学び、性格形成がなされていきます。

良い性格形成のため、色々な犬との交流、赤ちゃんから老人までの人の交流、人間社会での車、信号機、自転車、色々な環境音に少しずつ慣らしていくことが重要です。

常日頃から、耳の後ろから背中にかけ優しくなでてあげるスキンシップも穏やかな犬に育てる要素となります。

 

 

 

 

 

お子さんの成長(感染症から自律神経症状へ)

幼児から学童・思春期になるにつれて、急に体も大きくなり、よく風邪をひいていたお子さんたちは半成人のころまでには、感染症による病気にかからなくなってきます。

代わりに、成長にともない、骨や筋肉と内臓のバランスに伴う症状が出現するようになります

 

乳幼児までの近所の同年代の子供たち、兄弟や親子が中心の人間関係から、学童・思春期にかけ、交流が急に広がっていきます。それに伴い、学級やクラブ活動での多くの友人や上下関係、異性への意識など心身面の影響が多くみられるようになります。

具体的には、腹部片頭痛、成長痛・関節痛、臍疝痛・夜尿症・心身症・不登校や自律神経症状を伴う起立神経調節障害など心と体の成長との関係の中から生じる症状が多くなります

 

成長過程での漢方的病態

小児は常に発達しているので、動的なものとしてとらえます。生命力や自然治癒力にあふれているので、本来の良さを上手に引き出してあげましょう

漢方はその一つの手段となるはずです。

 

幼児までは、消化器が弱い脾虚や感染症にかかりやすい扁桃・呼吸器(肺)型の疾患が問題となります。

学童から思春期にかけて、漢方的病態も変化していきます。

肝・心型の不安・ストレスに関連した心身症や『気・血・水』の病理の『気』『水』に関連する漢方的病態を認めることが多くなり、頭痛、立ちくらみ、めまい、気分不良、自律神経症状となって表れます。

 

近年、小児心身症は、糖質の取り過ぎ、野菜や海藻に含まれるビタミンやミネラルの不足との関連が指摘されていて、医食同源として食養生をわすれてはいけません

 

起立性調節障害(OD

10~16歳に多くみられ、学童・生徒のODの発生頻度は5~10%と最も多い疾患の一つです。自律神経失調症の一つで、起立時や少し遅れての低血圧、立ちくらみ(重症では失神)、めまい、動悸などに加え、自律神経の不安定に由来する様々な症状が生じる疾患です。男性より女性に多く家族内発生は80%にみられます。朝起きが悪く登校前に頭痛、立ちくらみ、めまい、腹痛などのため不登校の原因にもなっています。午前中の活動性が低く夕方にかけて目がさえ、スマホやゲーム依存となることもあり、夜遅くまで寝付けず、その結果、朝に、起れず悪循環となっていきます。

 

自宅でできる対策:

朝日を浴び、タンパク、野菜を含めた朝食をしっかりとる、水分と塩分を十分とるなどの生活習慣の改善や食事療法をまず行っていきます。

起床時はゆっくり起き上がり、立ち上がる前に足を動かしたり、両手を引きあったりして脳貧血を起こしにくくして立ち上がります加圧ストック使用も検討します。

 

西洋薬では昇圧剤のミドドリン塩酸塩(メトリジン)メチル硫酸アメジニウム(リズミック)などの昇圧剤を使用していきますが、十分な効果が得られているわけではありません。

心療内科でのカウンセリングも必要になるときもあります。

 

漢方では水滞と脾・気虚として対応します。

多彩な自律神経の不安定に由来する症状を認め、以下の三つ分類すると分かりやすくなります。以下の方剤で、苓桂朮甘湯、建中湯類以外は、飲みやすいとは言えません。

めまい・ふらつき

 

循環虚弱型めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、吐き気):

苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、真武湯、五苓散、当帰芍薬散、小半夏加茯苓湯

片頭痛の関与あれば、呉茱萸湯、五苓散、葛根湯、桂枝人参湯

 

胃腸虚弱型腹痛、食欲低下、倦怠感):

小建中湯、黄耆建中湯、六君子湯、補中益気湯

 

精神身体型不安、腹痛、頭痛、不眠):

柴胡桂枝湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、四逆散、加味逍遥散、香蘇散、半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、帰脾湯

循環虚弱タイプ

朝に立ちくらみ、頭痛、めまい、食欲低下があり、昼から元気が出るタイプを山本巌漢方では、フクロウ型と呼んで苓桂朮甘湯を用います。脳血流亢進させ心悸亢進を抑制する桂枝・甘草と抗不安効果の茯苓と利水剤を含有した方剤です。動悸が強ければ、甘麦大棗湯を合方します。思春期以降の女性で、生理不順やストレス強ければ加味逍遥散, 男女関係なく緊張強く手に発汗あれば四逆散、抑うつで元気なければ補中益気湯を合方します。

片頭痛の合併も認め片頭痛家系のお子さんの場合、腹部症状が前面に出ることが多くあります。このとき、心下の冷えが強い時、まずい呉茱萸湯肩こり・頭痛あれば葛根湯雨による悪化には五苓散胃弱と冷えのお子さんは飲みやすい桂枝人参湯を使用することもあります。

胃弱で頭痛、またはふらふらめまいには半夏白朮天麻湯これは片頭痛にも効果あります、手足の冷えや低血圧のめまいには真武湯水逆の嘔吐や口渇・吐き気五苓散嘔気が強ければ小半夏加茯苓湯を使用します。思春期女性の生理不順とめまいには当帰芍薬散を使用します。

胃腸虚弱タイプ

食欲不振が主であれば六君子湯倦怠感が強ければ補中益気湯腹部緊張感があり腹痛と食欲不振、便秘などがあれば建中湯類腹痛強い時は屯用で芍薬甘草湯を用います。

精神身体タイプ

ストレスが強く不安・腹痛には柴胡桂枝湯不安・イライラ・背中のはりには抑肝散、それ以外に胃弱・ふらつき・頭痛などあれば抑肝散加陳皮半夏を使用します。

中学生以降でストレスや緊張がつよければ四逆散女性でストレスや生理と関係あれば加味逍遥散、不安強くや胃弱あれば香蘇散を合方していきます。

不眠・不安の虚弱者桂枝加竜骨牡蛎湯不安が強ければ帰脾湯を合方、ストレスと胸脇苦満あれば、証に合わせ柴胡桂枝乾姜湯または柴胡加竜骨牡蛎湯を用いることもあります。

 

関連ブログ よくわかる子供漢方;服用法   お金をかけない肥満&健康対策

参考図書

漢方123処方 臨床解説 メディカルユニコーン

小児科診療 2018;2 実践!小児漢方 診断と治療社

漢方の考え方、使い方 中外医学者

 

 

 

 

よくわかる子供の漢方:食が細い・胃腸炎・便秘

2018-07-01

Mr. Genn became seven-month-old, he is waiting for food. The food plate  is above his head.

食養生
薬膳とは、食材も薬も『食べ物』として区別せず(医食同源)、中医学(黄帝内経;素問)の理論をもとに体質、体調、季節などに合わせて、個人ごとに作る食事(食養生)のことです。理論を知らなくても、基本の考えは、自然界にある物を食べ、自然とのバランスをとることです

 ご家庭では、下記の二つのことをまず心がけます。

一物全体いちもつぜんたい):一つの物を丸ごとすべて食べることです。
お米は、白米より皮や胚のついた玄米、野菜は根や葉や皮を、小魚は骨や頭も食べます

 

 

身土不二しんどふじ):その土地で育った旬のものを食べることです。
日本人が昔から行ってきた、その土地でその季節にとれた魚や野菜を食べる暮らしは、まさに身土不二です。

中医学で生命活動の源を『気』と言い、遺伝的なものは先天の気と言います。我々が日常できることは、後天の気の脾(消化機能)を整え、毎日、食べる事で補います。食べなれければ、生命活動の源が得られません。

腸内フローラの重要性
現代医学でも、腸は消化吸収の役割だけでなく、アレルギーなどの免疫の調整、肥満予防、ビタミン産生など腸内細菌叢(腸内フローラ)の重要性が徐々にわかってきました。
腸内フローラを整えるため、野菜、オリゴ糖、発酵食品を積極的にとり、抗生剤など細菌叢を乱す物は最小限にすることが重要です。幼少時からの抗生剤の服用はアレルギー疾患の増加をまねく報告もあります。

漢方の体内への作用は多様性があります。かぜに使用される麻黄は、アルカロイドのため、腸内の代謝を受けず吸収され、すぐに薬効を表し、桂皮の精油成分は匂いや神経を介して薬効を示します。
大半の漢方生薬は腸内細菌の資化菌の助けを借りて薬効を示すため、効果が出るまで時間を要し、腸内細菌が乱れると効果が薄れます

食を整えることは、漢方の体質改善本治)となり虚弱児、皮膚疾患、精神症状など様々な疾患の治療の基本になるものです。

食が細い虚弱児に対して
幼児の食が細く風邪を引き易い虚弱児は、漢方の良い適応となります。
その個人の証や状態に合わせ、六君子湯、補中益気湯 建中湯類などの補脾剤を用います。
感覚過敏を伴うお子さんは、甘麦大棗湯抑肝散など心や自律神経に作用する漢方を併用することもあります。

特殊なケースとして胃食道逆流症(GERD)があります。
乳児から1歳半程度までは、胃食道逆流症に伴う食事摂取不良は見逃してはいけませんが、食の症状より、咳・痰・喘鳴など他の症状が目立つこともあります
1~2歳以降、症状が強く体重増加が得られない場合、手術適応が優先されます。軽い場合は、授乳後30分は上半身を起こした姿勢を維持して下さい。
日本小児外科学会MSD家庭版を参考にしましょう。

GERDに対して漢方では、元気・食欲がない場合(気虚)は、六君子湯を用います。食欲亢進作用があるグレリン分泌増加あります。虚証から用いることができ使いやすい方剤です。
のどから腹部のつかえがあり、嘔気や不安が強い場合(気虚+気滞)は、茯苓飲半夏厚朴湯を用います。中間~実証に使う茯苓飲枳実には、胃運動促進を認めます。

胃腸炎
水分を欲しがるも飲むそばから嘔吐してしまう、いわゆる“水逆の嘔吐” は五苓散を使用。吐き気が強いときは、一口ずつ冷服(熱いお湯に溶かし、氷で冷たくして少しずつ服用)します。
2000年前の傷寒論の時代から、汗がでて口渇があり尿が少ないときの方剤です。
飲みにくいお子さんには、腹痛にも効果があり膠飴が含有されている小建中湯合方すると飲みやすくなります。

嘔吐・下痢で胃部不快感強い時に、胃苓湯(五苓散+平胃散)
腹部症状に、発熱・咳・痰など併存する時に、柴苓湯(五苓散+小柴胡湯)
腹痛持続する時小建中湯桂枝加芍薬湯を服用し、腹痛が特に強ければ芍薬甘草湯屯用します。
吐き気あり下痢が多く持続し、胃部が痞えお腹のゴロゴロが強いときは、半夏瀉心湯を使用しますが、苦味があります。
嘔気が強ければなま生姜の汁入れると効果が増します生姜瀉心湯)。

冷えて腹痛あれば、大建中湯上腹部の腹痛安中散を、ストレスと腹痛では、柴胡桂枝湯を使用します。

ふらつき、 下痢持続、ぐったり感あれば少陰病の症状)、真武湯 を用います。
下痢が続き、食欲なくよだれが時にあり、上腹部症状あれば、飲みやすい人参湯を使用します。 数週間持続する下痢には啓脾湯 が効果を認めることもあります。
ミルクの場合は乳糖不耐症のこともありますので、チラクターゼの内服や、特殊なミルクに変更します。

便秘
乳児便秘は、母乳栄養にみられ離乳食が進むにつれ改善します。
急性便秘は、日頃便秘なく、何らかの原因で急に便秘になり浣腸や一時的な下剤で対応します。
週3日以上排便がない、または週2回以下の排便習慣を慢性便秘とし、漢方の良い適応となります。

2~3歳ごろ発症が多くなり、トイレトレーニングの失敗で、4~5歳ごろも認めます。

すぐに下剤は使用せず、食と生活習慣の改善から始めます
適度な水分摂取、起床時の冷水、規則正しい食事と適度な運動、リンゴ・海藻など水溶性食物繊維、小児では、朝食後、定期的にトイレに座る習慣をみにつけます。
便秘の小児の多くは、排便時に何らかの苦痛を伴っていることが多く、薬を使ってでも排便はすっきりして気持ちよいものと体感させることが重要です。

西洋薬の大腸刺激性下剤(ピコスルファートナトリウム、生薬の大黄塩類下剤(酸化マグネシウム、生薬の芒硝早く効果を認めますが、止めると再発し離脱が難しいこともあります。場合によっては腹痛や量が多いと下痢が出現します。

大腸刺激性や塩類下剤大黄・芒硝含まない漢方薬の服用で、約半数の患者さんに効果を認める報告があり、服薬終了後も自然な排便を期待できます
まず1~2週間ほどの内服で、効果が感じられ、うまくいけば半年ほどで自然な排便を認めるようになります。副作用はあまりみられません。
一方、漢方は、薬の量が多く、味とにおいが問題となります。

まずは、苦く即効性大黄を含まない方剤から始めます。効果に時間がかかりますが、まずは漢方嫌いにしないように、シナモン味の甘い小建中湯を、皮膚症状あれば黄耆建中湯を服用します。
腹部が冷えて腹部膨満あれば、生姜の味がする腹部の術後に多く用いる大建中湯を用い、
腹痛伴えば小建中湯との合方を行います。
成人に多く使用する桂枝加芍薬大黄湯大黄甘草湯は、苦味があり、大黄を含むので効きすぎて下痢や腹痛を生じることもありますので、上記で効果が無いときは検討します。

漢方で効果が期待できないときは、西洋の下剤を併用していきます。下剤単独より、漢方薬併用で下剤の量を減らすこともできます。

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よくわかる子供の漢方:服用法、こどもの漢方総論

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関連図書

薬膳・漢方の食材帳:実業之日本社   小児科診療 2018:2(小児漢方)   漢方医学:慢性便秘の漢方 Vol.41 No2(ツムラスクエア)

よくわかる子供の漢方:アトピー・蕁麻疹・よだれ皮膚炎・水いぼ

2018-06-08



Itchy dog is scratching all the time,  click to enlarge the photo.

皮膚は内臓の鏡
日光による紫外線・乾燥・加齢・化粧・洗顔・入浴石鹸などの外因により皮膚は様々なダメージを受けています。皮膚の手入れをして、表面だけきれいにしても、皮膚の創傷治癒力や皮膚を維持するタンパク・ビタミン・鉄などから構成維持される皮膚の組織が健康でなければ、自然と肌が荒れてきます。

不眠、体調不良、便秘・下痢、食欲低下などあれば、肌の状態も悪くなる経験が、特に女性にはあると思います。加齢によるバリア機能や創傷治癒力の低下も大きな要因です。
昔から皮膚は内臓の鏡といわれ、内面や内臓の健康状態を保つことはきれいな皮膚を維持するにはとても大切です。

皮膚科領域では、内臓の悪性疾患、肝疾患、皮膚筋炎などの内臓や体内の病気が皮膚や体表面にあらわれることをデルマドロームと言います。

古来から、皮膚は内臓の鏡と言われ、すべての人体の機能を中医学の五臓論では、
以下のように述べられています。

:ストレス・自律神経・目の疲れ・情動・爪のもろさ・皮膚の艶と関連し、筋膜や腱を主る。
:精神・こころ・動悸や心臓の駆血・不眠・顔面や舌の色つやと関連あり。
:気力・食欲・味覚・消化機能・後天の気と関連、四肢肌肉を主る。
:嗅覚・呼吸機能・水分代謝と痰と関連、心拍動と呼吸を推進、皮毛を主り、皮膚や体表面の免疫と関係あり。
:成長発育生殖を主り、骨・加齢・水分代謝や腎機能と関連あり。

これら五臓は、現代医学の臓器の考えと違いますが、中医学ではすべての機能と五臓との関係を重視しています。

五臓論と皮膚との関連では、現代の考えも参考にすると、以下のように考えます。

:ストレスによる肌荒れ、艶がない、爪がもろい、脱毛、筋肉けいれんと関連あり。
:不安や不眠による肌への影響あり。
:皮膚を維持する栄養成分を吸収し、消化機能は筋肉や皮下組織の維持に重要な役割あり。
:五臓論では、皮毛をつかさどり汗腺や体温調整に影響を与えます。
:加齢による皮膚の老化と関連あり。

👉 子どものアトピー性皮膚炎などの皮膚病では、脾(消化機能)を整え、腸内細菌叢を改善させ、肝(ストレスや過剰な自律神経)の関与を抑え、皮膚のバリア機能障害を改善していくことが重要です。

標治と本治
皮膚表面に出現している症状に対する治療を標治療法
身体内部の根本原因に対する治療を本治療法の2つに分けて考えます。
標治で皮膚の状態を整え、本治に移る場合と標治本治を同時に行う場合があります。

西洋医学での適切な外用療法とスキンケアを継続することは、皮膚のバリア機能を改善させ、スキンケアの標治が、本治につながっていく場合もあります。
近年、生後早期からの保湿を含むスキンケアなどの外用療法は、その後の食物アレルギーなどのアレルギーマーチの予防においても大切な要素であると考えられています。

アトピー性皮膚炎
標治として、紅斑・熱感あれば黄連解毒湯、白虎加人参湯
むくみや湿潤・丘疹が強ければ越婢加朮湯、皮疹の初期では桂枝加黄耆湯、
水泡・膿疱には十味敗毒湯、柴苓湯、排膿散及湯を検討し、本治の方剤と併用することもあります。

子どもの本治の基本方剤桂枝加黄耆湯または黄耆建中湯がよく使われます。

桂枝加黄耆湯は上半身に汗をかき易く、胸から上、頸部顔面に症状がある場合を目標に使用し、発表剤として急性初期の皮疹にも使用します。虚弱児には桂枝加黄耆湯補中益気湯の合方を考えます。

黄耆建中湯は、消化機能を立てなおし、気を補い、発汗異常をやわらげ浮腫をとり創傷治癒促進作用を期待して使用します。皮膚に重要な黄耆を含んだ方剤は、脾虚(胃弱)と衛気(皮膚の発汗調整・免疫)の改善を期待できます。
黄耆を含んだ補中益気湯十全大補湯も応用可能です。

気虚(元気がない)を伴う場合は、補中益気湯を用い生体側の治癒機構を促し、皮膚炎の増悪回数を減らします。

肝・心の異常では、痒みのため不眠や激しい搔痒行動につながるなど、さらなる皮疹の悪化を招きます。このように、不安や痒みのストレスが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服と
外用療法をしっかり行い、甘い甘麦大棗湯を使用します。
小麦アレルギーの方には使えません。
年長児には、抑肝散、柴胡桂枝湯を、思春期以降は、四逆散、加味逍遥散を用いる場合もあります。

夏に汗をかき易く悪化する場合、風(変化する痒み)湿(湿潤性)熱(発赤・熱感)
燥(乾燥皮疹)などが混在する場合は、消風散を使用します。
苦味があり飲ませるにはコツが必要です。胡麻アレルギーの方には使えません
痒みと発赤が強ければ消風散黄連解毒湯本治と併用する場合は、消風散黄耆建中湯または桂枝加黄耆湯を併用します。

秋から冬にかけて燥(乾燥皮疹)が強くなると、清熱・滋潤作用を期待して
温清飲(黄連解毒湯+四物湯)関連方剤を使用します。

慢性期に入る青少年のアトピーは、燥が強く、温清飲関連方剤で、扁桃炎あれば柴胡清肝湯
鼻・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎あれば荊芥連翹湯を考えます。
慢性期では、局所の所見も参考にしますが、全身的な証を重要視した方剤を組み立てます。
お血(皮膚が浅黒い、皮膚血管拡張、血行不良、苔癬化、色素沈着)あれば桂枝茯苓丸、通導散、桃核承気湯を併用します。

蕁麻疹
食事、薬品、温熱、寒冷、疲れ、日光、ストレス、生活環境因子などが原因として生じます。急性期の大半は抗ヒスタミン薬内服で解決します。

急性期で、風邪に合併した場合は、葛根湯や熱感・痒み・汗が出にくいときは桂麻各半湯を使用します。

温熱蕁麻疹発赤・浮腫が強ければ、清熱剤の越婢加朮湯、白虎加人参湯、
いんちん五苓散、消風散、呂上がりや痒みが強い場合は黄連解毒湯を使用します。
発疹が激しければ、越婢加朮湯消風散、浮腫が強ければ越婢加朮湯いんちん五苓散を併用します。
急性期の化膿から慢性期まで証を気にせず、体質改善も兼ねて十味敗毒湯を使用する場合もあります。
慢性化すれば柴胡剤六君子湯・補中益気湯・建中湯類の補脾剤を併用していきます。

ストレス過敏なお子さん柴胡桂枝湯、
寒冷蕁麻疹には麻黄附子細辛湯、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用います。
食事性蕁麻疹香蘇散を使います。

蕁麻疹は数時間から半日ほどで消失し反復するものです。
消退せず24時間以上持続する皮疹は、通常の蕁麻疹ではない場合があり、注意が必要です。
まずは西洋薬の抗ヒスタミンを優先し、漢方は補完的に使用していきます。
稀にアナフィラキシーに進展する場合があり、発症早期は注意が必要となります。

よだれ皮膚炎
乳児のよだれによる口周囲から頬・頸部にかけてのよだれ皮膚炎は、食物の付着による皮膚感作からの食物アレルギーへの進展の可能性があり、スキンケアによる保湿が重要です。

漢方では裏寒・脾虚と水の偏在ととらえ、甘草乾姜湯の方位の人参湯がよく使われ、水の偏在に対して五苓散、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯も検討します。

 

水いぼ
小丘疹・結節を主徴をとする、小児に多くみられるウイルス感染症です。
アトピー性皮膚炎に多発し、プールなどで感染する場合が多くあります。
1~2年で自然治癒する疾患ですが、細菌2次感染を生じることもあります。

ヨクイニンは、ハトムギの成熟種子を乾燥したもので、イボの妙薬として古くから知られており、尋常性疣贅や扁平性疣贅に応用されてきました。
ヨクイニン単独ではやや多めの量を用います。ヨクイニンヨクイニンを含む麻杏よく甘湯との合方や、虚弱児には、ヨクイニン補中益気湯または黄耆建中湯の合方を考えます。

関連コラム:

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よくわかる子供の漢方:中耳炎・鼻・のど・肺    よくわかる風邪の漢方

漢方について

参考図書:

中医学入門 神戸中医学研究会:東洋学術出版社   小児科診療2018:2 実践 小児漢方 診断と治療社

医療用漢方製剤の使い方 南山堂    漢方薬の考え方、使い方 中学医学社

 

 

よくわかる子供の漢方:中耳炎・鼻・のど・肺

2018-05-16

 

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👉今回は、小児の外来にて抗生剤を頻回に使用する耳鼻咽喉科・呼吸器領域での漢方の使用法についての話です。

薬剤耐性菌について:薬剤耐性対策アクションプラン(AMR)と有害事象
抗生剤の不適正使用による薬剤耐性菌の増加とそれに伴う感染症の増加が、国際社会の大きな課題の一つに挙げられています。不適正な抗生剤使用に対して対策が講じられなければ、2050年には全世界で年間1000万人が、薬剤耐性菌により死亡することが推測されています。2016年4月日本では薬剤耐性対策アクションプラン(AMR)が策定され、2020年の人口千人あたりの 一日抗菌薬使用量 2013年の水準の 3分の 2減少させること等が設定され手引き書も作成されています。手引書は成人および学童以上が対象で、乳幼児は特殊な病態の配慮が必要となっています。

また抗生剤には、効率に有害事象や副作用が存在します。
子供さんによく使われるセフェム系抗生剤の副作用は皮疹1~3%、下痢1~19%、
アナフィラキシー0.01%と決して安全とは言えません。
普通の風邪には抗生剤は必要ありません。

 

細菌感染と普通の風邪との見極め漢方適応
子どもの感染症で、患者数が多く抗生剤を頻回に使用するのは、耳、鼻、のど、呼吸器の急性気道感染症と急性下痢で、特に風邪症状の耳痛・鼻水・咽頭痛・咳・発熱に対して抗生剤を最小限にすることは耐性菌対策に最も有効です。

ガイドラインでは、中耳炎の軽症例、青い鼻水が5~10日以内の鼻・副鼻腔炎、溶連菌以外の咽頭炎、マイコプラズマ・百日咳以外の気管支炎などは、抗生剤を使わないで経過をみていくことが推奨されています。

受診当日に、普通の風邪と細菌感染やインフルエンザとの見極めは、症状とその時間経過、身体所見のほかには、採血以外では侵襲が少ない迅速検査で行います。特定の症状所見で、迅速検査にて陽性反応があれば方針がつきやすくなりますが、陰性の場合や不特定の症状所見では、重症でない限り初期の段階では、ウイルスと細菌感染の見極めは、わからないことが殆どです。初期で、細菌感染やインフルエンザかわからない時期には、風邪薬や解熱鎮痛剤が通常使用され、その個人の病歴や基礎疾患によっては抗生剤が使用されます。

皆さんご存知の葛根湯は、ゾクゾクとした風邪の初期や発熱に使用されます。
漢方薬を使用することで、副作用は少なく西洋の風邪薬以上の効果が期待でき、細菌感染が疑われても抗生剤を使用せずとも軽快することを中には経験します

中耳炎・鼻・のど・呼吸器への漢方薬のメリット

抗生剤・抗インフルエンザ薬は、細菌・ウイルスに対して作用し耐性を生じますが、漢方は患者さんの生体に作用し、生体反応の調整で、ゆっくりのこともありますが、作用を発揮するので耐性を生じません。
耐性菌や副作用を生じやすい抗生剤使用最小限に抑える可能性
病気になり易い虚弱児には、反復する感染を最小限に抑える。
(扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、喘息、嘔吐・胃腸炎など)
確立された西洋医学的治療との併用での相乗・相加効果
ステロイド以外では西洋薬の治療で対応が難しい炎症への対応が、マイルドな効果だが可能。

子どもの感染症への漢方使用の特徴
子どもは実証で抗病反応が強く、水毒体質です。消化機能が弱く(脾気虚)、呼吸器症状が出やすく(肺気虚)、口腔・扁桃から気管・肺にかけての漢方でいう半表半裏に症状を多く認めます。幼児から10歳ごろまでは、頸部リンパ腺体質柴胡清肝湯の適応)になり易い特徴があります。生薬では子供は麻黄剤に強く、嘔吐・下痢など頻回な罹患のため五苓散など水をさばく方剤を用い、半表半裏少陽病期(こじれた風邪の時期)によく使う柴胡剤の適応が多くなります。中耳炎

中耳炎
急性中耳炎: 軽症では最初3日間は抗生剤を使用せず経過観察。

遷延性 西洋薬や鼓膜切開 補完療法として葛根湯、葛根湯加川きゅう辛夷、柴胡剤など

反復性
反復する中耳炎漢方薬で再発を抑制
十全大補湯:これは西洋医学的エビデンスあり、他には補中益気湯、建中湯類など使用します。
IgG2低下で免疫グロブリンの適応や鼓膜チューブ挿入を考えます。
積極的に鼻吸い、鼻洗、鼻かみを行いましょう。

滲出性中耳炎:

3ヶ月以上遷延し40dB以上の難聴の場合や、鼓膜接着が強く病的鼓膜の時は、鼓膜チューブ挿入、
発症3ヶ月を目安に、アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎の治療します。

柴胡剤、柴苓湯、五苓散、小青竜湯、葛根湯加川きゅう辛夷、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯など使用。
西洋薬の内服では明らかなエビデンスがある薬はなく、日本ではカルボシステインの内服が保険適応あり。
鼻副鼻腔炎合併では鼻の治療とマクロライド療法、アレルギー性鼻炎では点鼻ステロイドや抗アレルギー薬使用します。

慢性中耳炎:抗生剤や点耳で加療、一定年齢での手術加療を考え、合併する鼻副鼻腔炎の加療を行います。
漢方は補完療法として使用、葛根湯加川きゅう辛夷、補中益気湯、建中湯類、
十味敗毒湯、排膿散及湯、柴胡剤、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯など使用します。

鼻・副鼻腔炎
急性期:
熱性(濃い鼻水、頭痛):辛夷清肺湯、五虎湯、麻杏甘石湯 子供の感染症・免疫力に

寒性(薄い鼻水、悪寒やゾクゾク感):鼻閉と白い粘性鼻汁、後頭部痛は葛根湯加川きゅう辛夷、膿性鼻汁と発熱、顔面紅潮あれば黄連解毒湯を併用、眼の充血や鼻粘膜発赤や口渇、咽頭痛あれば桔梗石膏を併用、水様鼻汁は小青竜湯、胃弱には苓甘姜味辛夏仁湯

寒熱中間は、葛根湯加川きゅう辛夷辛夷清肺湯または小柴胡湯加桔梗石膏を併用。

乳幼児の鼻閉には麻黄湯の屯用

慢性期:内熱(口渇、乾燥感が強い)に変化 脾虚が出現
辛夷清肺湯、またはこれに粘性が強いとき麦門冬湯を追加。
排膿を期待すれば排膿散及湯を併用、皮膚症状あれば、荊芥連翹湯
薄い鼻汁が多いときは半夏白朮天麻湯苓桂朮甘湯を併用。鼻閉と抑うつには四逆散。痰湿の後鼻漏には、小半夏加茯苓湯

肺脾気虚(呼吸器や消化器が弱い)では、補中益気湯、十全大補湯、六君子湯を使用または辛夷清肺湯荊芥連翹に併用。胃弱と鼻閉には補中益気湯または六君子湯香蘇散を併用。冷えて悪化して、なかなかよくならない場合は桂枝湯麻黄附子細辛湯を併用。

アレルギー性副鼻腔炎には、辛夷清肺湯黄耆建中湯を併用

アレルギー性鼻炎
寒性(悪寒やゾクゾク感、冷え性)では小青竜湯、寒冷刺激で悪化あれば麻黄附子細辛湯、冷えや症状が強ければ小青竜湯麻黄附子細辛湯の併用。

胃弱には麻黄附子細辛湯と六君子湯を併用、風邪を引き易く水様鼻汁は苓甘姜味辛夏仁湯当院のアレルギーの対応についてまたは補中益気湯と併用。
頭痛粘性鼻汁・鼻閉あれば葛根湯加川きゅう辛夷、咳や花粉症で症状が強いときは五虎湯小青竜湯の併用。

花粉症とアレルギー性結膜炎の合併には、越婢加朮湯、花粉症後の4~5月頃で内熱(口渇、乾燥感が強い)が強いとき、荊芥連翹湯竜胆しゃ肝湯、効果悪ければ五虎湯を併用。

体質改善(本治)として建中湯類補中益気湯を使用します。冷えが強ければ人参湯を使用。花粉症では緩解期に使用して腸内フローラを整えます。血虚・水毒(むくみ易い)、生理不順あれば当帰芍薬散補中益気湯を併用。

 

咽頭・扁桃炎
急性期:
傷寒(悪寒、ゾクゾクあり)
太陽病期(頭痛、発熱、悪寒あり)であれば、のどチクには桂麻各半湯、口渇には桂枝二越婢一湯桂枝湯越婢加朮湯の合方)、肩こりあれば葛根湯のどチクに脈沈、冷え強いとき少陰病期麻黄附子細辛湯
上記に咽頭痛が強くなれば桔梗湯、口渇あれば桔梗石膏を追加、強い咽頭痛、咳・痰が出現すれば小柴胡湯加桔梗石膏追加。
溶連菌感染や扁桃周囲膿瘍を疑えば積極的に抗生剤を併用。

小柴胡湯加桔梗石膏や桔梗湯、桔梗石膏は暑いお湯に溶かして冷ましながらゆっくり含んで飲むと効果を高めます。ゆっくり含みながら服用するときは、オブラートは用いません。

単独の扁桃炎には桔梗湯や炎症が強ければ小柴胡湯加桔梗石膏、化膿が強ければ排膿散及湯併用します。

慢性・反復:
鼻副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎による口呼吸があれば鼻の治療を積極的に対応します。
柴胡清肝湯をベースに、悪化時には小柴胡湯加桔梗石膏追加、副鼻腔炎合併時は辛夷清肺湯または葛根湯加川きゅう辛夷を追加、
食が細く腹診でくすぐったがり腹部緊張が強ければ建中湯類を使用。
扁桃肥大や頸部リンパ腺の炎症を反復すれば、苦いが柴胡清肝湯が望ましい。
胃弱の時は、柴胡清肝湯六君子湯を併用します。

温病(悪寒なし):
悪寒はほとんどなく咽頭痛が強く梅雨から夏にかけて悪化するときは、傷寒ではなく温病の考え方で市販薬の銀しょう散、医療用エキス剤では代替として清上防風湯、口渇あれば小柴胡湯加桔梗石膏を使用します

👉反復性扁桃炎の新たな展開
PFAPA症候群
(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis, and adenitis症候群)
5歳以下に出現する扁桃炎、口内炎、頸部リンパ節炎の一つ以上を伴いながら発熱を反復する疾患。
治療は発熱時のステロイド投与と予防に扁桃摘出術。
小柴胡湯黄耆建中湯の併用で効果を認める報告がある。

気管支炎
一次的な発熱やゼーゼーが無く咳・痰のみの症状が出現し、肺炎との鑑別が
重要となります。
漢方は病名に対しての治療ではなく漢方的病態(証)による治療を行いますので、
治療は下記の喘息の要領とほとんど変わりません
成人の咳・痰については、よくわかる風邪の漢方を参照してください。

痰の性状によって

粘膿性:五虎湯、麻杏甘石湯

水溶性:小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、麻黄附子細辛湯

乾性:麦門冬湯、ストレス・自律神経失調あれば四逆散併用

副鼻腔炎合併気管支炎(後鼻漏を含む)
 小柴胡湯または竹じょ温胆湯に、鼻・副鼻腔炎で使用する葛根湯加川きゅう辛夷辛夷清肺湯など併用。

気管支拡張症には、小柴胡湯清肺湯を併用。

胃食道逆流症合併気管支炎
肥満対策と食事生活指導
六君子湯と茯苓飲半夏厚朴湯、半夏瀉心湯など併用

喘息咳
2017年11月17日発行の小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(GL)2017には、
漢方薬の使用についての記載はありません
まずはGLに沿う治療を行うことで相当の効果が期待されます。
漢方薬は、これに補完的に行われます

鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎あればone way one diseaseとして鼻を積極的に治療します。鼻と秋の喘息を参照して下さい。

急性期:
熱性(口渇、黄色粘性痰、顔面・舌・咽頭発赤など)
麻杏甘石湯、越婢加朮湯、五虎湯に咳が強ければ半夏厚朴湯合方、
痰が多く胃弱者は二陳湯六君子湯を合方。
痰の切れが悪い乾性の咳の時は麦門冬湯を合方、発作と緩解期の両者を兼ねて小柴胡湯を合方します。
寒性(くしゃみ、透明な鼻汁や痰、冷えると悪化、青白い顔など)
小青竜湯に、必要によっては上記熱性と同様に他剤を併用
冷えが強ければ苓甘姜味辛夏仁湯や生理が始まっていれば当帰芍薬散を追加
寒熱中間(夾雑)
水様鼻汁、粘性痰、口渇、顔色は青白いなどの時は、五虎湯と小青竜湯を半分ずつ混合
肝うつ(ストレスの関与)
神秘、必要によっては半夏厚朴湯の合方、

気管支痙攣を想定すれば、建中湯類芍薬甘草湯

緩解期:脾虚以外、体質改善も兼ねて柴胡剤の適応が多い
肺気虚(易感冒 易疲労 疲労で悪化)
補中益気湯、胃弱でなく皮膚が乾燥傾向あれば人参養栄湯
脾気虚(食が細い、食欲低下、食後の痰が多い)
六君子湯または六君子湯半夏厚朴湯の合方、茯苓飲半夏厚朴湯
食が細く腹痛下痢など反復すれば建中湯類、冷えが強ければ人参湯
肝うつや少陽病期(遷延するのど呼吸器症状)
柴朴湯、腹痛や関節痛あれば柴胡桂枝湯や虚弱者では補中益気湯半夏厚朴湯の合方、遷延する粘性痰や発作性の咳には柴胡桂枝湯小柴胡湯麦門冬湯を併用。
少陽病期(鼻副鼻腔炎や扁桃炎を反復)
学童まで柴胡清肝湯、思春期以降は荊芥連翹湯
お血(生理不順など)
当帰芍薬散

臨床では、症状経過に沿いながら
急性期の漢方急性期緩解期の漢方併用緩解期の漢方へと変更していきます。

急性期で頻回に使用する麻黄含有製剤(越婢加朮湯、小青竜湯、麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯など)とβ2刺激剤(メプチンやホクナリンなど)やキサンチン製剤(テオドールなど)
との併用は、動悸・震えや不眠など交感神経興奮作用が強く出るため、十分注意を払う必要があります。

関連ブログ:よくわかる風邪の漢方 よくわかる子供の漢方:服用法、子供の漢方の総論 よくわかる子供の漢方:感覚過敏/夜泣き/夜驚症
関連HP: 漢方処方
参考図書: 漢方診療のレッスン(金原出版)  医療用漢方製剤の用い方(南山堂)
小児科診療:特集 実践!小児漢方2018:2(診療と治療社) 漢方薬の考え方、使い方(中外医学社)

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2017(協和企画)  中医臨床2012年12月 特別連載:耳鼻咽喉科疾患

 

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