吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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院長の健康情報コラム

よくわかる子供の漢方:食が細い・胃腸炎・便秘

2018-07-01

Mr. Genn became seven-month-old, he is waiting for food. The food plate  is above his head.

食養生
薬膳とは、食材も薬も『食べ物』として区別せず(医食同源)、中医学(黄帝内経;素問)の理論をもとに体質、体調、季節などに合わせて、個人ごとに作る食事(食養生)のことです。理論を知らなくても、基本の考えは、自然界にある物を食べ、自然とのバランスをとることです

 ご家庭では、下記の二つのことをまず心がけます。

一物全体いちもつぜんたい):一つの物を丸ごとすべて食べることです。
お米は、白米より皮や胚のついた玄米、野菜は根や葉や皮を、小魚は骨や頭も食べます

 

 

身土不二しんどふじ):その土地で育った旬のものを食べることです。
日本人が昔から行ってきた、その土地でその季節にとれた魚や野菜を食べる暮らしは、まさに身土不二です。

中医学で生命活動の源を『気』と言い、遺伝的なものは先天の気と言います。我々が日常できることは、後天の気の脾(消化機能)を整え、毎日、食べる事で補います。食べなれければ、生命活動の源が得られません。

腸内フローラの重要性
現代医学でも、腸は消化吸収の役割だけでなく、アレルギーなどの免疫の調整、肥満予防、ビタミン産生など腸内細菌叢(腸内フローラ)の重要性が徐々にわかってきました。
腸内フローラを整えるため、野菜、オリゴ糖、発酵食品を積極的にとり、抗生剤など細菌叢を乱す物は最小限にすることが重要です。幼少時からの抗生剤の服用はアレルギー疾患の増加をまねく報告もあります。

漢方の体内への作用は多様性があります。かぜに使用される麻黄は、アルカロイドのため、腸内の代謝を受けず吸収され、すぐに薬効を表し、桂皮の精油成分は匂いや神経を介して薬効を示します。
大半の漢方生薬は腸内細菌の資化菌の助けを借りて薬効を示すため、効果が出るまで時間を要し、腸内細菌が乱れると効果が薄れます

食を整えることは、漢方の体質改善本治)となり虚弱児、皮膚疾患、精神症状など様々な疾患の治療の基本になるものです。

食が細い虚弱児に対して
幼児の食が細く風邪を引き易い虚弱児は、漢方の良い適応となります。
その個人の証や状態に合わせ、六君子湯、補中益気湯 建中湯類などの補脾剤を用います。
感覚過敏を伴うお子さんは、甘麦大棗湯抑肝散など心や自律神経に作用する漢方を併用することもあります。

特殊なケースとして胃食道逆流症(GERD)があります。
乳児から1歳半程度までは、胃食道逆流症に伴う食事摂取不良は見逃してはいけませんが、食の症状より、咳・痰・喘鳴など他の症状が目立つこともあります
1~2歳以降、症状が強く体重増加が得られない場合、手術適応が優先されます。軽い場合は、授乳後30分は上半身を起こした姿勢を維持して下さい。
日本小児外科学会MSD家庭版を参考にしましょう。

GERDに対して漢方では、元気・食欲がない場合(気虚)は、六君子湯を用います。食欲亢進作用があるグレリン分泌増加あります。虚証から用いることができ使いやすい方剤です。
のどから腹部のつかえがあり、嘔気や不安が強い場合(気虚+気滞)は、茯苓飲半夏厚朴湯を用います。中間~実証に使う茯苓飲枳実には、胃運動促進を認めます。

胃腸炎
水分を欲しがるも飲むそばから嘔吐してしまう、いわゆる“水逆の嘔吐” は五苓散を使用。吐き気が強いときは、一口ずつ冷服(熱いお湯に溶かし、氷で冷たくして少しずつ服用)します。
2000年前の傷寒論の時代から、汗がでて口渇があり尿が少ないときの方剤です。
飲みにくいお子さんには、腹痛にも効果があり膠飴が含有されている小建中湯合方すると飲みやすくなります。

嘔吐・下痢で胃部不快感強い時に、胃苓湯(五苓散+平胃散)
腹部症状に、発熱・咳・痰など併存する時に、柴苓湯(五苓散+小柴胡湯)
腹痛持続する時小建中湯桂枝加芍薬湯を服用し、腹痛が特に強ければ芍薬甘草湯屯用します。
吐き気あり下痢が多く持続し、胃部が痞えお腹のゴロゴロが強いときは、半夏瀉心湯を使用しますが、苦味があります。
嘔気が強ければなま生姜の汁入れると効果が増します生姜瀉心湯)。

冷えて腹痛あれば、大建中湯上腹部の腹痛安中散を、ストレスと腹痛では、柴胡桂枝湯を使用します。

ふらつき、 下痢持続、ぐったり感あれば少陰病の症状)、真武湯 を用います。
下痢が続き、食欲なくよだれが時にあり、上腹部症状あれば、飲みやすい人参湯を使用します。 数週間持続する下痢には啓脾湯 が効果を認めることもあります。
ミルクの場合は乳糖不耐症のこともありますので、チラクターゼの内服や、特殊なミルクに変更します。

便秘
乳児便秘は、母乳栄養にみられ離乳食が進むにつれ改善します。
急性便秘は、日頃便秘なく、何らかの原因で急に便秘になり浣腸や一時的な下剤で対応します。
週3日以上排便がない、または週2回以下の排便習慣を慢性便秘とし、漢方の良い適応となります。

2~3歳ごろ発症が多くなり、トイレトレーニングの失敗で、4~5歳ごろも認めます。

すぐに下剤は使用せず、食と生活習慣の改善から始めます
適度な水分摂取、起床時の冷水、規則正しい食事と適度な運動、リンゴ・海藻など水溶性食物繊維、小児では、朝食後、定期的にトイレに座る習慣をみにつけます。
便秘の小児の多くは、排便時に何らかの苦痛を伴っていることが多く、薬を使ってでも排便はすっきりして気持ちよいものと体感させることが重要です。

西洋薬の大腸刺激性下剤(ピコスルファートナトリウム、生薬の大黄塩類下剤(酸化マグネシウム、生薬の芒硝早く効果を認めますが、止めると再発し離脱が難しいこともあります。場合によっては腹痛や量が多いと下痢が出現します。

大腸刺激性や塩類下剤大黄・芒硝含まない漢方薬の服用で、約半数の患者さんに効果を認める報告があり、服薬終了後も自然な排便を期待できます
まず1~2週間ほどの内服で、効果が感じられ、うまくいけば半年ほどで自然な排便を認めるようになります。副作用はあまりみられません。
一方、漢方は、薬の量が多く、味とにおいが問題となります。

まずは、苦く即効性大黄を含まない方剤から始めます。効果に時間がかかりますが、まずは漢方嫌いにしないように、シナモン味の甘い小建中湯を、皮膚症状あれば黄耆建中湯を服用します。
腹部が冷えて腹部膨満あれば、生姜の味がする腹部の術後に多く用いる大建中湯を用い、
腹痛伴えば小建中湯との合方を行います。
成人に多く使用する桂枝加芍薬大黄湯大黄甘草湯は、苦味があり、大黄を含むので効きすぎて下痢や腹痛を生じることもありますので、上記で効果が無いときは検討します。

漢方で効果が期待できないときは、西洋の下剤を併用していきます。下剤単独より、漢方薬併用で下剤の量を減らすこともできます。

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薬膳・漢方の食材帳:実業之日本社   小児科診療 2018:2(小児漢方)   漢方医学:慢性便秘の漢方 Vol.41 No2(ツムラスクエア)

よくわかる子供の漢方:アトピー・蕁麻疹・よだれ皮膚炎・水いぼ

2018-06-08



Itchy dog is scratching all the time,  click to enlarge the photo.

皮膚は内臓の鏡
日光による紫外線・乾燥・加齢・化粧・洗顔・入浴石鹸などの外因により皮膚は様々なダメージを受けています。皮膚の手入れをして、表面だけきれいにしても、皮膚の創傷治癒力や皮膚を維持するタンパク・ビタミン・鉄などから構成維持される皮膚の組織が健康でなければ、自然と肌が荒れてきます。

不眠、体調不良、便秘・下痢、食欲低下などあれば、肌の状態も悪くなる経験が、特に女性にはあると思います。加齢によるバリア機能や創傷治癒力の低下も大きな要因です。
昔から皮膚は内臓の鏡といわれ、内面や内臓の健康状態を保つことはきれいな皮膚を維持するにはとても大切です。

皮膚科領域では、内臓の悪性疾患、肝疾患、皮膚筋炎などの内臓や体内の病気が皮膚や体表面にあらわれることをデルマドロームと言います。

古来から、皮膚は内臓の鏡と言われ、すべての人体の機能を中医学の五臓論では、
以下のように述べられています。

:ストレス・自律神経・目の疲れ・情動・爪のもろさ・皮膚の艶と関連し、筋膜や腱を主る。
:精神・こころ・動悸や心臓の駆血・不眠・顔面や舌の色つやと関連あり。
:気力・食欲・味覚・消化機能・後天の気と関連、四肢肌肉を主る。
:嗅覚・呼吸機能・水分代謝と痰と関連、心拍動と呼吸を推進、皮毛を主り、皮膚や体表面の免疫と関係あり。
:成長発育生殖を主り、骨・加齢・水分代謝や腎機能と関連あり。

これら五臓は、現代医学の臓器の考えと違いますが、中医学ではすべての機能と五臓との関係を重視しています。

五臓論と皮膚との関連では、現代の考えも参考にすると、以下のように考えます。

:ストレスによる肌荒れ、艶がない、爪がもろい、脱毛、筋肉けいれんと関連あり。
:不安や不眠による肌への影響あり。
:皮膚を維持する栄養成分を吸収し、消化機能は筋肉や皮下組織の維持に重要な役割あり。
:五臓論では、皮毛をつかさどり汗腺や体温調整に影響を与えます。
:加齢による皮膚の老化と関連あり。

👉 子どものアトピー性皮膚炎などの皮膚病では、脾(消化機能)を整え、腸内細菌叢を改善させ、肝(ストレスや過剰な自律神経)の関与を抑え、皮膚のバリア機能障害を改善していくことが重要です。

標治と本治
皮膚表面に出現している症状に対する治療を標治療法
身体内部の根本原因に対する治療を本治療法の2つに分けて考えます。
標治で皮膚の状態を整え、本治に移る場合と標治本治を同時に行う場合があります。

西洋医学での適切な外用療法とスキンケアを継続することは、皮膚のバリア機能を改善させ、スキンケアの標治が、本治につながっていく場合もあります。
近年、生後早期からの保湿を含むスキンケアなどの外用療法は、その後の食物アレルギーなどのアレルギーマーチの予防においても大切な要素であると考えられています。

アトピー性皮膚炎
標治として、紅斑・熱感あれば黄連解毒湯、白虎加人参湯
むくみや湿潤・丘疹が強ければ越婢加朮湯、皮疹の初期では桂枝加黄耆湯、
水泡・膿疱には十味敗毒湯、柴苓湯、排膿散及湯を検討し、本治の方剤と併用することもあります。

子どもの本治の基本方剤桂枝加黄耆湯または黄耆建中湯がよく使われます。

桂枝加黄耆湯は上半身に汗をかき易く、胸から上、頸部顔面に症状がある場合を目標に使用し、発表剤として急性初期の皮疹にも使用します。虚弱児には桂枝加黄耆湯補中益気湯の合方を考えます。

黄耆建中湯は、消化機能を立てなおし、気を補い、発汗異常をやわらげ浮腫をとり創傷治癒促進作用を期待して使用します。皮膚に重要な黄耆を含んだ方剤は、脾虚(胃弱)と衛気(皮膚の発汗調整・免疫)の改善を期待できます。
黄耆を含んだ補中益気湯十全大補湯も応用可能です。

気虚(元気がない)を伴う場合は、補中益気湯を用い生体側の治癒機構を促し、皮膚炎の増悪回数を減らします。

肝・心の異常では、痒みのため不眠や激しい搔痒行動につながるなど、さらなる皮疹の悪化を招きます。このように、不安や痒みのストレスが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服と
外用療法をしっかり行い、甘い甘麦大棗湯を使用します。
小麦アレルギーの方には使えません。
年長児には、抑肝散、柴胡桂枝湯を、思春期以降は、四逆散、加味逍遥散を用いる場合もあります。

夏に汗をかき易く悪化する場合、風(変化する痒み)湿(湿潤性)熱(発赤・熱感)
燥(乾燥皮疹)などが混在する場合は、消風散を使用します。
苦味があり飲ませるにはコツが必要です。胡麻アレルギーの方には使えません
痒みと発赤が強ければ消風散黄連解毒湯本治と併用する場合は、消風散黄耆建中湯または桂枝加黄耆湯を併用します。

秋から冬にかけて燥(乾燥皮疹)が強くなると、清熱・滋潤作用を期待して
温清飲(黄連解毒湯+四物湯)関連方剤を使用します。

慢性期に入る青少年のアトピーは、燥が強く、温清飲関連方剤で、扁桃炎あれば柴胡清肝湯
鼻・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎あれば荊芥連翹湯を考えます。
慢性期では、局所の所見も参考にしますが、全身的な証を重要視した方剤を組み立てます。
お血(皮膚が浅黒い、皮膚血管拡張、血行不良、苔癬化、色素沈着)あれば桂枝茯苓丸、通導散、桃核承気湯を併用します。

蕁麻疹
食事、薬品、温熱、寒冷、疲れ、日光、ストレス、生活環境因子などが原因として生じます。急性期の大半は抗ヒスタミン薬内服で解決します。

急性期で、風邪に合併した場合は、葛根湯や熱感・痒み・汗が出にくいときは桂麻各半湯を使用します。

温熱蕁麻疹発赤・浮腫が強ければ、清熱剤の越婢加朮湯、白虎加人参湯、
いんちん五苓散、消風散、呂上がりや痒みが強い場合は黄連解毒湯を使用します。
発疹が激しければ、越婢加朮湯消風散、浮腫が強ければ越婢加朮湯いんちん五苓散を併用します。
急性期の化膿から慢性期まで証を気にせず、体質改善も兼ねて十味敗毒湯を使用する場合もあります。
慢性化すれば柴胡剤六君子湯・補中益気湯・建中湯類の補脾剤を併用していきます。

ストレス過敏なお子さん柴胡桂枝湯、
寒冷蕁麻疹には麻黄附子細辛湯、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用います。
食事性蕁麻疹香蘇散を使います。

蕁麻疹は数時間から半日ほどで消失し反復するものです。
消退せず24時間以上持続する皮疹は、通常の蕁麻疹ではない場合があり、注意が必要です。
まずは西洋薬の抗ヒスタミンを優先し、漢方は補完的に使用していきます。
稀にアナフィラキシーに進展する場合があり、発症早期は注意が必要となります。

よだれ皮膚炎
乳児のよだれによる口周囲から頬・頸部にかけてのよだれ皮膚炎は、食物の付着による皮膚感作からの食物アレルギーへの進展の可能性があり、スキンケアによる保湿が重要です。

漢方では裏寒・脾虚と水の偏在ととらえ、甘草乾姜湯の方位の人参湯がよく使われ、水の偏在に対して五苓散、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯も検討します。

 

水いぼ
小丘疹・結節を主徴をとする、小児に多くみられるウイルス感染症です。
アトピー性皮膚炎に多発し、プールなどで感染する場合が多くあります。
1~2年で自然治癒する疾患ですが、細菌2次感染を生じることもあります。

ヨクイニンは、ハトムギの成熟種子を乾燥したもので、イボの妙薬として古くから知られており、尋常性疣贅や扁平性疣贅に応用されてきました。
ヨクイニン単独ではやや多めの量を用います。ヨクイニンヨクイニンを含む麻杏よく甘湯との合方や、虚弱児には、ヨクイニン補中益気湯または黄耆建中湯の合方を考えます。

関連コラム:

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よくわかる子供の漢方:中耳炎・鼻・のど・肺    よくわかる風邪の漢方

漢方について

参考図書:

中医学入門 神戸中医学研究会:東洋学術出版社   小児科診療2018:2 実践 小児漢方 診断と治療社

医療用漢方製剤の使い方 南山堂    漢方薬の考え方、使い方 中学医学社

 

 

よくわかる子供の漢方:中耳炎・鼻・のど・肺

2018-05-16

 

Genn : 5 month – old , click to enlarge the photo

👉今回は、小児の外来にて抗生剤を頻回に使用する耳鼻咽喉科・呼吸器領域での漢方の使用法についての話です。

薬剤耐性菌について:薬剤耐性対策アクションプラン(AMR)と有害事象
抗生剤の不適正使用による薬剤耐性菌の増加とそれに伴う感染症の増加が、国際社会の大きな課題の一つに挙げられています。不適正な抗生剤使用に対して対策が講じられなければ、2050年には全世界で年間1000万人が、薬剤耐性菌により死亡することが推測されています。2016年4月日本では薬剤耐性対策アクションプラン(AMR)が策定され、2020年の人口千人あたりの 一日抗菌薬使用量 2013年の水準の 3分の 2減少させること等が設定され手引き書も作成されています。手引書は成人および学童以上が対象で、乳幼児は特殊な病態の配慮が必要となっています。

また抗生剤には、効率に有害事象や副作用が存在します。
子供さんによく使われるセフェム系抗生剤の副作用は皮疹1~3%、下痢1~19%、
アナフィラキシー0.01%と決して安全とは言えません。
普通の風邪には抗生剤は必要ありません。

 

細菌感染と普通の風邪との見極め漢方適応
子どもの感染症で、患者数が多く抗生剤を頻回に使用するのは、耳、鼻、のど、呼吸器の急性気道感染症と急性下痢で、特に風邪症状の耳痛・鼻水・咽頭痛・咳・発熱に対して抗生剤を最小限にすることは耐性菌対策に最も有効です。

ガイドラインでは、中耳炎の軽症例、青い鼻水が5~10日以内の鼻・副鼻腔炎、溶連菌以外の咽頭炎、マイコプラズマ・百日咳以外の気管支炎などは、抗生剤を使わないで経過をみていくことが推奨されています。

受診当日に、普通の風邪と細菌感染やインフルエンザとの見極めは、症状とその時間経過、身体所見のほかには、採血以外では侵襲が少ない迅速検査で行います。特定の症状所見で、迅速検査にて陽性反応があれば方針がつきやすくなりますが、陰性の場合や不特定の症状所見では、重症でない限り初期の段階では、ウイルスと細菌感染の見極めは、わからないことが殆どです。初期で、細菌感染やインフルエンザかわからない時期には、風邪薬や解熱鎮痛剤が通常使用され、その個人の病歴や基礎疾患によっては抗生剤が使用されます。

皆さんご存知の葛根湯は、ゾクゾクとした風邪の初期や発熱に使用されます。
漢方薬を使用することで、副作用は少なく西洋の風邪薬以上の効果が期待でき、細菌感染が疑われても抗生剤を使用せずとも軽快することを中には経験します

中耳炎・鼻・のど・呼吸器への漢方薬のメリット

抗生剤・抗インフルエンザ薬は、細菌・ウイルスに対して作用し耐性を生じますが、漢方は患者さんの生体に作用し、生体反応の調整で、ゆっくりのこともありますが、作用を発揮するので耐性を生じません。
耐性菌や副作用を生じやすい抗生剤使用最小限に抑える可能性
病気になり易い虚弱児には、反復する感染を最小限に抑える。
(扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、喘息、嘔吐・胃腸炎など)
確立された西洋医学的治療との併用での相乗・相加効果
ステロイド以外では西洋薬の治療で対応が難しい炎症への対応が、マイルドな効果だが可能。

子どもの感染症への漢方使用の特徴
子どもは実証で抗病反応が強く、水毒体質です。消化機能が弱く(脾気虚)、呼吸器症状が出やすく(肺気虚)、口腔・扁桃から気管・肺にかけての漢方でいう半表半裏に症状を多く認めます。幼児から10歳ごろまでは、頸部リンパ腺体質柴胡清肝湯の適応)になり易い特徴があります。生薬では子供は麻黄剤に強く、嘔吐・下痢など頻回な罹患のため五苓散など水をさばく方剤を用い、半表半裏少陽病期(こじれた風邪の時期)によく使う柴胡剤の適応が多くなります。中耳炎

中耳炎
急性中耳炎: 軽症では最初3日間は抗生剤を使用せず経過観察。

遷延性 西洋薬や鼓膜切開 補完療法として葛根湯、葛根湯加川きゅう辛夷、柴胡剤など

反復性
反復する中耳炎漢方薬で再発を抑制
十全大補湯:これは西洋医学的エビデンスあり、他には補中益気湯、建中湯類など使用します。
IgG2低下で免疫グロブリンの適応や鼓膜チューブ挿入を考えます。
積極的に鼻吸い、鼻洗、鼻かみを行いましょう。

滲出性中耳炎:

3ヶ月以上遷延し40dB以上の難聴の場合や、鼓膜接着が強く病的鼓膜の時は、鼓膜チューブ挿入、
発症3ヶ月を目安に、アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎の治療します。

柴胡剤、柴苓湯、五苓散、小青竜湯、葛根湯加川きゅう辛夷、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯など使用。
西洋薬の内服では明らかなエビデンスがある薬はなく、日本ではカルボシステインの内服が保険適応あり。
鼻副鼻腔炎合併では鼻の治療とマクロライド療法、アレルギー性鼻炎では点鼻ステロイドや抗アレルギー薬使用します。

慢性中耳炎:抗生剤や点耳で加療、一定年齢での手術加療を考え、合併する鼻副鼻腔炎の加療を行います。
漢方は補完療法として使用、葛根湯加川きゅう辛夷、補中益気湯、建中湯類、
十味敗毒湯、排膿散及湯、柴胡剤、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯など使用します。

鼻・副鼻腔炎
急性期:
熱性(濃い鼻水、頭痛):辛夷清肺湯、五虎湯、麻杏甘石湯 子供の感染症・免疫力に

寒性(薄い鼻水、悪寒やゾクゾク感):鼻閉と白い粘性鼻汁、後頭部痛は葛根湯加川きゅう辛夷、膿性鼻汁と発熱、顔面紅潮あれば黄連解毒湯を併用、眼の充血や鼻粘膜発赤や口渇、咽頭痛あれば桔梗石膏を併用、水様鼻汁は小青竜湯、胃弱には苓甘姜味辛夏仁湯

寒熱中間は、葛根湯加川きゅう辛夷辛夷清肺湯または小柴胡湯加桔梗石膏を併用。

乳幼児の鼻閉には麻黄湯の屯用

慢性期:内熱(口渇、乾燥感が強い)に変化 脾虚が出現
辛夷清肺湯、またはこれに粘性が強いとき麦門冬湯を追加。
排膿を期待すれば排膿散及湯を併用、皮膚症状あれば、荊芥連翹湯
薄い鼻汁が多いときは半夏白朮天麻湯苓桂朮甘湯を併用。鼻閉と抑うつには四逆散。痰湿の後鼻漏には、小半夏加茯苓湯

肺脾気虚(呼吸器や消化器が弱い)では、補中益気湯、十全大補湯、六君子湯を使用または辛夷清肺湯荊芥連翹に併用。胃弱と鼻閉には補中益気湯または六君子湯香蘇散を併用。冷えて悪化して、なかなかよくならない場合は桂枝湯麻黄附子細辛湯を併用。

アレルギー性副鼻腔炎には、辛夷清肺湯黄耆建中湯を併用

アレルギー性鼻炎
寒性(悪寒やゾクゾク感、冷え性)では小青竜湯、寒冷刺激で悪化あれば麻黄附子細辛湯、冷えや症状が強ければ小青竜湯麻黄附子細辛湯の併用。

胃弱には麻黄附子細辛湯と六君子湯を併用、風邪を引き易く水様鼻汁は苓甘姜味辛夏仁湯当院のアレルギーの対応についてまたは補中益気湯と併用。
頭痛粘性鼻汁・鼻閉あれば葛根湯加川きゅう辛夷、咳や花粉症で症状が強いときは五虎湯小青竜湯の併用。

花粉症とアレルギー性結膜炎の合併には、越婢加朮湯、花粉症後の4~5月頃で内熱(口渇、乾燥感が強い)が強いとき、荊芥連翹湯竜胆しゃ肝湯、効果悪ければ五虎湯を併用。

体質改善(本治)として建中湯類補中益気湯を使用します。冷えが強ければ人参湯を使用。花粉症では緩解期に使用して腸内フローラを整えます。血虚・水毒(むくみ易い)、生理不順あれば当帰芍薬散補中益気湯を併用。

 

咽頭・扁桃炎
急性期:
傷寒(悪寒、ゾクゾクあり)
太陽病期(頭痛、発熱、悪寒あり)であれば、のどチクには桂麻各半湯、口渇には桂枝二越婢一湯桂枝湯越婢加朮湯の合方)、肩こりあれば葛根湯のどチクに脈沈、冷え強いとき少陰病期麻黄附子細辛湯
上記に咽頭痛が強くなれば桔梗湯、口渇あれば桔梗石膏を追加、強い咽頭痛、咳・痰が出現すれば小柴胡湯加桔梗石膏追加。
溶連菌感染や扁桃周囲膿瘍を疑えば積極的に抗生剤を併用。

小柴胡湯加桔梗石膏や桔梗湯、桔梗石膏は暑いお湯に溶かして冷ましながらゆっくり含んで飲むと効果を高めます。ゆっくり含みながら服用するときは、オブラートは用いません。

単独の扁桃炎には桔梗湯や炎症が強ければ小柴胡湯加桔梗石膏、化膿が強ければ排膿散及湯併用します。

慢性・反復:
鼻副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎による口呼吸があれば鼻の治療を積極的に対応します。
柴胡清肝湯をベースに、悪化時には小柴胡湯加桔梗石膏追加、副鼻腔炎合併時は辛夷清肺湯または葛根湯加川きゅう辛夷を追加、
食が細く腹診でくすぐったがり腹部緊張が強ければ建中湯類を使用。
扁桃肥大や頸部リンパ腺の炎症を反復すれば、苦いが柴胡清肝湯が望ましい。
胃弱の時は、柴胡清肝湯六君子湯を併用します。

温病(悪寒なし):
悪寒はほとんどなく咽頭痛が強く梅雨から夏にかけて悪化するときは、傷寒ではなく温病の考え方で市販薬の銀しょう散、医療用エキス剤では代替として清上防風湯、口渇あれば小柴胡湯加桔梗石膏を使用します

👉反復性扁桃炎の新たな展開
PFAPA症候群
(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis, and adenitis症候群)
5歳以下に出現する扁桃炎、口内炎、頸部リンパ節炎の一つ以上を伴いながら発熱を反復する疾患。
治療は発熱時のステロイド投与と予防に扁桃摘出術。
小柴胡湯黄耆建中湯の併用で効果を認める報告がある。

気管支炎
一次的な発熱やゼーゼーが無く咳・痰のみの症状が出現し、肺炎との鑑別が
重要となります。
漢方は病名に対しての治療ではなく漢方的病態(証)による治療を行いますので、
治療は下記の喘息の要領とほとんど変わりません
成人の咳・痰については、よくわかる風邪の漢方を参照してください。

痰の性状によって

粘膿性:五虎湯、麻杏甘石湯

水溶性:小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、麻黄附子細辛湯

乾性:麦門冬湯、ストレス・自律神経失調あれば四逆散併用

副鼻腔炎合併気管支炎(後鼻漏を含む)
 小柴胡湯または竹じょ温胆湯に、鼻・副鼻腔炎で使用する葛根湯加川きゅう辛夷辛夷清肺湯など併用。

気管支拡張症には、小柴胡湯清肺湯を併用。

胃食道逆流症合併気管支炎
肥満対策と食事生活指導
六君子湯と茯苓飲半夏厚朴湯、半夏瀉心湯など併用

喘息咳
2017年11月17日発行の小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(GL)2017には、
漢方薬の使用についての記載はありません
まずはGLに沿う治療を行うことで相当の効果が期待されます。
漢方薬は、これに補完的に行われます

鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎あればone way one diseaseとして鼻を積極的に治療します。鼻と秋の喘息を参照して下さい。

急性期:
熱性(口渇、黄色粘性痰、顔面・舌・咽頭発赤など)
麻杏甘石湯、越婢加朮湯、五虎湯に咳が強ければ半夏厚朴湯合方、
痰が多く胃弱者は二陳湯六君子湯を合方。
痰の切れが悪い乾性の咳の時は麦門冬湯を合方、発作と緩解期の両者を兼ねて小柴胡湯を合方します。
寒性(くしゃみ、透明な鼻汁や痰、冷えると悪化、青白い顔など)
小青竜湯に、必要によっては上記熱性と同様に他剤を併用
冷えが強ければ苓甘姜味辛夏仁湯や生理が始まっていれば当帰芍薬散を追加
寒熱中間(夾雑)
水様鼻汁、粘性痰、口渇、顔色は青白いなどの時は、五虎湯と小青竜湯を半分ずつ混合
肝うつ(ストレスの関与)
神秘、必要によっては半夏厚朴湯の合方、

気管支痙攣を想定すれば、建中湯類芍薬甘草湯

緩解期:脾虚以外、体質改善も兼ねて柴胡剤の適応が多い
肺気虚(易感冒 易疲労 疲労で悪化)
補中益気湯、胃弱でなく皮膚が乾燥傾向あれば人参養栄湯
脾気虚(食が細い、食欲低下、食後の痰が多い)
六君子湯または六君子湯半夏厚朴湯の合方、茯苓飲半夏厚朴湯
食が細く腹痛下痢など反復すれば建中湯類、冷えが強ければ人参湯
肝うつや少陽病期(遷延するのど呼吸器症状)
柴朴湯、腹痛や関節痛あれば柴胡桂枝湯や虚弱者では補中益気湯半夏厚朴湯の合方、遷延する粘性痰や発作性の咳には柴胡桂枝湯小柴胡湯麦門冬湯を併用。
少陽病期(鼻副鼻腔炎や扁桃炎を反復)
学童まで柴胡清肝湯、思春期以降は荊芥連翹湯
お血(生理不順など)
当帰芍薬散

臨床では、症状経過に沿いながら
急性期の漢方急性期緩解期の漢方併用緩解期の漢方へと変更していきます。

急性期で頻回に使用する麻黄含有製剤(越婢加朮湯、小青竜湯、麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯など)とβ2刺激剤(メプチンやホクナリンなど)やキサンチン製剤(テオドールなど)
との併用は、動悸・震えや不眠など交感神経興奮作用が強く出るため、十分注意を払う必要があります。

関連ブログ:よくわかる風邪の漢方 よくわかる子供の漢方:服用法、子供の漢方の総論 よくわかる子供の漢方:感覚過敏/夜泣き/夜驚症
関連HP: 漢方処方
参考図書: 漢方診療のレッスン(金原出版)  医療用漢方製剤の用い方(南山堂)
小児科診療:特集 実践!小児漢方2018:2(診療と治療社) 漢方薬の考え方、使い方(中外医学社)

小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2017(協和企画)  中医臨床2012年12月 特別連載:耳鼻咽喉科疾患

 

よくわかる子供の漢方:感覚過敏/夜泣き/夜驚症

2018-05-05

               福岡県糸島芥屋の海岸  2018年5月    クリックで写真が拡大

発達障害では感覚過敏を伴うことが多く、西洋医学では、カウンセリング、環境調整、薬物療法として中枢の脳に作用する薬を使います。
易刺激性・情緒不安に対して、長期に中枢神経作用薬を使用することは、親御さんにとっては抵抗があり、生活環境指導と漢方薬で少しでも改善できれば、望ましいところです。
東洋医学では、感覚過敏や乳幼児の夜泣き、学童前から多くなる夜驚症(やきょうしょう)は疳が強いお子さんと考え、中医学の五臓弁証では、肝気と心気が亢進しているととらえます
現代風に言えば、肝心が亢進すると落ち着きがなく、イライラしていて、情緒不安、睡眠障害を認めるようになります。

母子関係の重要性
母子関係は重要で、両親の子供さんへの影響は大きく、500年前の古典で明代の小児医学書(保えい撮要)では、母子同服として母もお子さんと同じような薬(抑肝散)を内服しています。昔から、母も同時に治療することがお子さんの治療で重要な意味をもっています。
お子さんと一緒に内服することで、最近イライラすることが多くないか、お母さんの普段の言動を少し考える機会にしてみてはどうでしょうか

 

 

漢方治療の考え方肝気・心気の亢進、脾気虚、体質改善
一般的には、子供は前述の肝と心の亢進認め虚弱なところは脾と呼吸器になります。
脾虚とは、腹痛、嘔吐、下痢などを反復し、食が細い、痩せているなどの所見から判断します。肝と心の亢進は、脾虚が基礎にありますので、脾気虚の治療も同時に行います。

感覚過敏やそれに伴う症状だけに目を向けず、お子さんの体質改善としてのバランスの崩れを是正するため、消化機能を高める治療も同時に行うことも必要なことがあります。
これは漢方の体質改善を意味して本治といいます。
女性は思春期が近くなると、生理と関係する症状が多くなります。
漢方では、お血・血虚ととらえ血に関する治療も追加していきます。

分析的な西洋医学だけで治療を行うと、子供の成長という全体を見る考えが欠落することがありますので、よく食べる、穏やかによく寝る、便や尿が良好か、いつもニコニコしているかなど気をつけてみていきましょう。

漢方処方薬

肝と心に対して
抑肝散 抑肝散陳皮半夏 甘麦大棗湯 帰脾湯 加味帰脾湯 桂枝加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯 四物湯
これらの処方は、四物湯以外は補脾薬や胃腸薬が加味されています。
抑肝散 抑肝散陳皮半夏は認知症の周辺症状(家族や介護者からは問題行動)に効果を認め西洋薬と同等に使われています。

脾虚に対して
小建中湯 黄耆建中湯 桂枝加芍薬湯 補中益気湯 柴胡桂枝湯

生理が関連すれば、
当帰芍薬散、当帰建中湯など

甘麦大棗湯 小建中湯 黄耆建中湯は膠飴が含有され飲みやすく甘い薬です。

各疾患について
夜泣き
新生児期から2歳ごろまで認め、睡眠中の定期的な啼泣です。浅い睡眠のレム睡眠の時に起こります。
原因は複数あり特定することは難しいのですが、睡眠サイクルの未熟さなど考えられています。両親の生活リズムの乱れも関係しますので、改善すべき点を考えてみてください。
中には鼻閉と中耳炎などの耳鼻咽喉科の疾患が隠れています
鼻閉で母乳やミルクを飲むのが苦しい、耳に手が頻回にいくなどあれば担当医と相談して下さい。
漢方の一般的な使用法では、突発的で激しいときは、甘麦大棗湯を臨時で服用します。
常用薬として抑肝散 抑肝散陳皮半夏を使用します。下痢・軟便や便秘を反復すれば建中湯類を追加します。個人の証によって処方はかわります。

夜驚症
小児の数%にみられ、夢遊病との関連があり遺伝的背景が指摘されています。
3~6歳で発症し学童期後半が最好発期で12歳までには改善し、症状そのものは半年から1年で自然に消失する傾向になります。脳機能(特に前頭葉)が発達途中であることが関係していると考えられています。
雷など過去の怖い記憶が原因になる場合は、雷は怖い物ではないと分からせることが治療につながります。
入眠3時間ごろまでに突然大声で叫びあばれ10分程度で終息して再び寝入ります。
覚醒させることは困難で症状を覚えていません。
夜泣きと違い、深い睡眠のノンレム期の異常のためです。
てんかんとの鑑別が必要になることがあります。
似たような症状で、レム睡眠行動障害がありますが、成人以降の病気です。
前述の漢方治療の考え方に基づき、個人の証にあわせて漢方を処方していきます。

発達障害
発達障害は生まれつきの脳の機能の問題で下記が主な病態となります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)
限局性学習障害(LD)
が主な病態で、療育と環境調整が治療の主体です。
心身の状況により薬物療法となります。
ここで副作用が少ない漢方薬が考慮されます。

本人はコミュニケーションをとること自体が難しく、周囲が気になる症状を察知して
漢方薬でその症状を少しでも緩和させることが、周囲の人も含めて少しでもよい家庭や学校での状況を作り出すことが治療目標となっていきます。

 発達障害に随伴しやすい症状を理解することが重要です。

発達障害に起因する随伴症状
こだわり
感覚過敏
睡眠障害
フラッシュバック
予想と違う事態に陥ったことへの不安 など

合併しやすい身体症状
アレルギー疾患や鼻・副鼻腔炎
自律神経症状(頭痛、たちくらみ、めまいなど)
消化器症状
月経関連で悪化する症状

漢方は、発達障害そのものへの治療ではなく、周辺症状の身体症状・感覚過敏への治療で
生活の質の改善を目標に使います。

具体例:
イライラ、腹部症状が主であれば、建中湯類を使用。

鼻呼吸障害による睡眠の質の低下があれば、葛根湯関連処方や、辛夷清肺湯
荊芥連翹湯など用い、西洋薬の点鼻や抗アレルギー薬の追加処方

不眠・イライラ、小さな物音で起きるなどあれば、抑肝散、桂枝加竜骨牡蛎湯、
柴胡加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯
学童以降で抑うつ傾向あれば半夏厚朴湯追加処方

思春期前からの女子の易興奮性は月経周期と関連する場合が少なくないので、
冷え虚弱でぽっちゃり型には当帰芍薬散、腹痛強ければ当帰建中湯、体力あれば桂枝茯苓丸
イライラ肩こり便秘傾向には加味逍遥散、便秘あり体力自身あれば桃核承気湯、通導散

学童以降でフラッシュバックや頭痛、腹部症状あれば、桂枝加芍薬湯建中湯類を用い
改善なければ四物湯を追加
神田橋処方として、PTSDによるフラッシュバックやパニック障害に対して、桂枝加芍薬湯、小建中湯、桂枝加竜骨牡蛎湯四物湯(胃弱には十全大補湯)を合方する有用性が報告されています。

参考に、西洋薬による治療は以下になります。
西洋薬による治療専門医による加療)
ASD:
易刺激性には少量の抗精神病薬(リスパダール、エビリファイ)
全身性不安障害、フラッシュバックには抗うつ薬(SSRI、ルボックス、ジェソロフトなど)
こだわりには薬物療法は効果示さない。

ADHD:
感情コントロールができにくいとき、脳内神経伝達物質の不足にコンサータ、ストラテラ
易刺激性には少量の抗精神病薬(リスパダール、エビリファイ)
気分の浮き沈みはデパケン

関連ブログよくわかる風邪の漢方    よくわかる子供の漢方:服用法、子供の漢方の総論
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よくわかる子供の漢方(服用法・こどもの漢方総論)

2018-04-22

upper : a three-month-old puppy dog called Genn3ヶ月   lower: a same four-month-old dog 4ヶ月 click to enlarge the photos

子犬の成長コミュニケーション
犬は人間の4倍の速さで成長と老化が進みます。生後1か月半には乳離れが始まり、生後から3か月間は、母親や子犬たちから犬同士のコミュニケーションや社会性を学ぶ重要な時期となります。早く兄弟の子供たちと別れされた子犬たちは、大事な知識や社会性、加減して噛むことなど学べず、今後人間と暮らしていくうえで、問題行動を起こすことになります。
小さく可愛かった子犬も、成長が早く1歳までには成人に近い体型となっています。

赤ちゃんの成長 スマホ育児について
人間の乳児期も両親や家族とのコミュニケーションが大事な時期となります。
最近では、育児で子守りの代わりにスマホを与えていると、スマホには赤ちゃんの興味をそそる要素にあふれているため、あやす必要がなくなり育児の負担が減るメリットもありますが、スマホに過剰に夢中になると依存しすぎることになり両親とのコミュニケーションが不足します。また母親もスマホに夢中になりすぎると、子守りが疎かになりコミュニケーションが不足することで、お子さんの情緒や言葉の発達の遅れが問題となっています。

子どもの疾患の治療 食養生生活習慣の是正漢方治療
病期にかかりやすい、治りにくい、情緒不安なお子さんを治療していくうえで、甘い物や冷たい物ばかり食べる過食・偏食コミュニケーション不足、冷暖房の普及、生活リズムの乱れ、ITの普及など、現代のライフスタイルの影響を考えていくことが重要となります。薬による西洋・東洋医学の治療を行う以前に、日常生活の食養生と生活習慣の是正が抜きでは先に進みません。

自然治癒力を高めながら改善してく漢方治療は薬剤による治療と同時に貝原益軒の養生訓(健康法)でご存知のように食養生・生活習慣の改善をセットで考えていきます。

 現代の子どもにとって漢方薬のメリット

耐性菌や副作用を生じやすい抗生剤使用を最小限に抑える

病気になり易い虚弱児への対応が可能
(扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、喘息、嘔吐・胃腸炎など)

確立された西洋医学的治療との併用での相乗・相加効果

西洋薬で効果が得られにくい食欲不振・体重増加不良への対応可能

小児心身症への抗不安薬などの精神薬の導入には慎重を要するので、
依存などの副作用が少ない漢方は導入しやすい。
俗にいう『疳』が強いタイプの子で、夜泣き・神経症・感覚過敏にも効果を認める。

アトピー性皮膚炎などへのステロイド外用療法とスキンケアへの補完療法として
心身と肌を丈夫にする。

上記のような漢方薬の有効性を認めますが、子供への使用には、服用の難しさがあります。
まず飲み方の工夫について説明します。

 漢方の服用法の工夫

乳児の場合味覚がまだ未熟なので、すんなり飲めることもあります。
スプーンの背で粉末をすりつぶし、少量の湯で泥状にしてよく練り、清潔な手で、赤ちゃんの頬に塗りつけます。溶かしたものをスポイトで服用させてもかまいません。
赤ちゃんが、なめなめしてくれれば、多少吐き出しても体に吸収されるので大丈夫です。
すかさず、母乳やミルクを与えるとさらに良いでしょう。

幼児の場合自我が強くなり最も内服させるのが難しい時期です。
発熱している時は、発汗療法として葛根湯麻黄湯を用いることが多く、服用の基本は温めて発汗を促すことです。なるべく熱い50ml程度の熱いお湯に溶かして少し冷まして食前に服用させます。食事は温かく消化の良い物を食べ発汗をさらに促します
汗をかけば着替えて眠りましょう。脱水を防ぐため水分補給も忘れないようにします。

平熱の時は、白湯や水で服用します。

飲みやすい漢方黄耆建中湯、小建中湯、大建中湯(これらは膠飴(麦芽糖)含有)

甘麦大棗湯、五虎湯、桔梗湯、苓桂朮甘湯などです。黄耆建中湯、小建中湯は子供のファーストチョイスの漢方で消化機能を高め虚弱体質の改善に効果があります。

このような飲み方ができないときは、下記の色々なものに混ぜて服用させてください。

服薬ゼリー:かき混ぜず、顆粒を包み込むだけにする。
アイスクリームやシャーベット:夏に最適です。夏はシャーベットや水に溶かして製氷皿で凍らしてから服用すると飲みやすくなります。冷たい物には、味覚が低下します。
ココア、ミロ、麦芽飲料など温かい飲み物: 麦芽飲料が相性が良く飲みやすくなります、冬は温まります。ミロは牛乳アレルギーの方は注意します。
チョコレートペースト、イチゴジャム、ピーナッツバター、練乳、水あめ、はちみつ(1歳以上):包み込んだり混ぜる。

リンゴジャム、リンゴジュース:漢方によく含有される桂枝(シナモン)と相性がよく飲みや   すくなります。
サツマイモ:つぶしてペースト状にして混ぜる。
ヨーグルト

ミニシュークリームの上半分を開け、漢方を入れて戻す方法もありますが手間がかかります。

混ぜ物はお子さんの好みがありますので、皆さんの良い方法を見つけてください。

緑茶、コーヒー、牛乳、ジュースなどは薬の働きに影響を与えるので避けた方が良いと
いわれますが、子供の場合は、飲まないより飲んでくれればなんでもOKです

学童の場合薬の意味を理解させて、納得して飲ませることが出来る時期となります。
発熱時以外でも、温めた方が効果を発揮する漢方薬の場合は、煎じ薬のように50~100ml程度の熱いお湯に溶かしてから少し冷まして服用します。
漢方のエキス剤の溶かし方は、お湯に混ぜて電子レンジで溶かすとよく溶けます。
時間が無ければ白湯や水でかまいません。

〇〇湯の名前の漢方溶かして飲みますエキス剤はインスタントコーヒーのようなものなので溶かして飲むことが基本です。例外的に、〇〇湯の名前の漢方でも清熱作用を期待する漢方や、嘔気の時は、水や冷たくして内服と思って下さい。詳細は担当医と相談が必要です。

嘔気の時に服用する五苓散などは、冷服(熱いお湯に溶かし、氷で冷たくして少しずつ服用)を勧めます。

理想はそうですが、服用することが大事ですので、粉末をそのまま口に含み水で服用してかまいません
飲めないときは、幼児のところで説明したように、ココアに混ぜる、オブラートに包む、服薬ゼリーで包み込むなど工夫して下さい。

最終的には、ご両親の漢方服用への情熱が一番大事のような気もします

メーカーによっては錠剤の漢方もありますので、担当医と相談してみましょう。
但し、錠剤の数はかなりおおくなります。

口内炎、歯肉炎、咽頭炎など直接含んで口腔粘膜に接触することで効果を発揮する、
桔梗湯、立効散、半夏瀉心湯などはオブラートに包むと効果を発揮しません。

 小児疾患への漢方治療の総論
小児科疾患の特徴として、急性疾患は、発熱や脱水、慢性疾患では虚弱対応・体質改善と
心身症の解決が重要となります。

急性疾患の発熱や脱水には、麻黄剤五苓散の適応が多く
慢性疾患では虚弱児への漢方が多くの疾患の基本となります。

漢方医学の補益剤(虚弱児への漢方)は、体力増強・胃腸機能強化・感染予防・心身一如・精神安定など種々の面で全身症状の改善に貢献しています。

漢方を使用する上で、乳児期から学童期への発達過程で虚弱児の疾患の特徴が変化し
それに応じて漢方の使い方も違ってきます。

👉 次の成長過程の3段階で考えると分かりやすくなります。

乳児期の滲出性体質:皮膚や気道・消化器の粘膜が過敏に反応しやすい状態、
乳児湿疹・アトピー・鼻汁・ゼーゼー・下痢をすぐに反復する時期。

幼児期のリンパ腺体質:扁桃・鼻咽腔・のどの感染を反復し、
耳鼻咽喉科疾患が増える時期。

学童期の神経炎症体質:頭痛・関節痛・起立性障害・臍疝痛・心身症など認める。

👉 虚弱児のタイプ分類では
( )の意味は、西洋医学ではなく中医学・日本漢方による考え方です。

消化器型(脾型・太陰病期)胃腸が弱いタイプ 漢方:建中湯類、五苓散など

扁桃・鼻・中耳(扁桃型・少陽病期)かぜを引き易く、鼻副鼻腔炎、中耳炎を反復するタイプ
漢方:柴胡剤など

呼吸器・アトピー型(肺型・少陽病期)かぜを引き易く、喘鳴を反復・アトピー体質
漢方:柴胡剤、五虎湯など

神経症型(肝・心型)神経過敏タイプ 漢方:抑肝散、甘麦大棗湯など

循環器型(心型・水滞・気逆・気滞)気分不良、頭痛、立ちくらみのタイプ
漢方:苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、半夏厚朴湯など

その他、上記併用の混合型腎型(腎虚)などあります。

小児は、実証傾向で水分代謝や自律神経の失調をきたしやすく、感染症を反復するため、
麻黄剤利水剤肝の失調を改善する方剤(抑肝散など)および柴胡剤が選択されることが多くなります。

アトピー体質以外では、成人のように、お血、血虚の証は、多くはありません。

各疾患の漢方加療については今後、院長の健康情報ブログでアップしていく予定です。

関連ブログ:よくわかる風邪の漢方

関連HP: 漢方処方

参考図書:耳鼻咽喉科漢方薬処方ガイド(中山書店) 漢方診療のレッスン(金原出版)

専門医のための漢方医学テキスト(日本東洋医学会) 医療用漢方製剤の用い方(南山堂)

小児科診療2018:2(診療と治療社)

 

 

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