吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

お子さんの新型コロナ対策は大人から!!

2021-03-14

👉 子供の感染対策は、なぜ難しいか?

成人より子供は無症状者が多い

学童以下では嗅覚・味覚は訴えないことが多く典型的な症状がない

大人と症状の経過が違う;

大人と違い感染しにくく、感染しても通常の風邪症状と変わらず軽症がほとんどで重症化しにくい

子供は、新型コロナ以外の風邪ウイルス(RSV,インフル、アデノなど)、マイコ、溶連菌などに罹りやすく鑑別診断が難しい

など成人とは少し異なります。

 

子供さんの立場からすれば、無症状が成人より多く悪くならないので良いことですが、子供の新型コロナの感染者は見つけにくくなります。

子供の場合、感染対策の視点からは、大人よりいっそう対応が難しくなっていきます。

成人でも、COVID-19は無症状であるケースも多くあり、水際で100%防ぎきれません。どれだけ症状を詳しく聞き、発熱に注意したとしても、ウイルス排泄は発症の2~3日前から始まり、0.8日前にはピークを迎えています。そういう意味で、COVID-19はきわめてたちが悪く、感染対策という点で対応しづらいウイルスであることを我々は実感しています。最近では、有症状者は、発症後より発症前の方が40%感染させる確率が高いことも報告されています。

よく知られた大人の新型コロナ感染症の経過として

潜伏期は2~14日程度(5日が平均)

発症から1種間程度は通常の風邪症状・倦怠感・嗅覚味覚障害など

軽症者の80%はこのまま軽快

約20%が発症1週間頃から咳・痰・呼吸困難が悪化して肺炎が悪化。

約5%が集中治療室で人工呼吸器管理

2~3%で致命的

子供の新型コロナは軽症または無症状で重症化することはほとんどありません。特異的とされる嗅覚・味覚障害はお子さんが自分から訴えることはあまりなく、

子供は、成人の経過とは異なると思って対応が必要です3月14日現在、日本の20歳未満の死亡者はゼロです。

子供の新型コロナの特徴

2021年3月14日現在、日本の感染者約44万人 死亡者約8500人のなかで、10代の感染者は約2万8700人、10歳未満は約1万2600人の感染者がいますが、20歳未満の死者はゼロです

20歳未満の治療は、90%は無治療で10%程度にステロイドなど使用することがあります。つまり、子供の新型コロナはほとんど重症化すること無く、かかってもほとんどが無治療ですんでしまうことになります。

 子供は成人より新型コロナに感染しにくいと考えられています。但し、1歳未満は2~5歳より感染リスクは高くなるようです。無症状感染が多く感染しても1日で熱が下がるなど通常の風邪と変わらないこともあり実態がわかりにくい状態です。症状として発熱・咳が多く10%程度お腹の症状が認めます。新型コロナに特徴とされる嗅覚・味覚異常を10歳未満の子供が訴えることはほとんどありません。子供は、新型コロナ以外の風邪ウイルス(RSV,インフル、アデノなど)、マイコ、溶連菌などに罹りやすく診断を難しくしています。新型コロナと普通の子供の感染症との混合感染にも注意が必要になります。

👉 ポイント!!

子供の感染経路から対策を見つける

子供の感染経路のほとんどは、大人からで家族内感染(約70%)が最も多く、両親・家族の風邪症状や体調不良から確認することが大事です。

新型コロナウイルスを

大人が学校へ

親が家庭へ

持ち込むことから考えましょう。

 日本小児科学会報告では、日本の20歳未満の報告では、家族からの感染は70% 学校内感染は5~6%幼稚園保育園内感染は5% 塾関係では1%程度です。

2020年12月の文科省からの小・中・高を分けた具体的報告では、

小学・中学での家族内感染は約70%程度の同様な報告ですが、高校では家族内感染が30%程度に低下して、学校内感染は小・中の6%程度から高校では24%程度上昇します。

高校生は、成人並みの感染経路を考えた対応が必要です。

クリニックでの問診は、まず両親や家族のの感染を確認します、次に感染の順番は、こどもが先か大人の家族が先かを確認していきます。

新型コロナの潜伏期は5日程度(2~14日)が多く、感染発熱が1~2日で連鎖するときは、インフルや別のウイルスの方が、可能性が高くなります。

今後、変異株の増加に伴い子供のクラスターの発生に注意を向けた対応も必要になります。今は、風邪、インフルは流行していませんので、集団保育・学校での病気欠席者が多いときは、変異株の感染クラスターを疑い、早めのPCR検査を行う必要性があります。

👉 お子さんの新型コロナ対策はどうするか

 子供はかかりにくいと考えられていますが、子供のウイルス排泄量は多いと報告されています。

2021年1月18日The Lancet infectious diseaseの報告では

20歳未満は、60歳以上と比べ60%近く他人を感染させる確率が高いとなっています。

この報告では、無症状者は有症状者に比べ80%感染させる確率が低く有症状者は、発症後より発症前の方が40%感染させる確率が高いことも報告されています。

日本でも変異株の増加が報告されてきていますので、子供のクラスターの発生が危惧されています。子どもの身の回りの世話をする大人の感染の予防も考える必要性があります。

大人や周りから感染を推測する重要性

インフルの場合発熱の直前から感染力を認めますが、新型コロナの場合は、発症3日前からと無症状者からの感染を考えなければならず、無症状が多い子供の感染を考えた対応では、お子さんの学校の生徒さん及び先生の病気欠席状態の他にも、ご両親・家族の健康状況に気を配る必要性があります。

大人の感染に対する予防の自覚

子供はまわりから、確認していくことが重要です。つまり、子供の感染を防ぐには、我々大人の感染対策への自覚が最も大事です。

 子供の身の回りの世話をする大人の感染の予防も大事

子供のウイルス量の排出は成人並みと考えられ20歳未満は、60歳以上と比べ60%近く他人を感染させる確率が高い報告があります。

子供の身の回りの世話をする大人の感染の予防も大事です。

 

新型コロナ対策:性差・子供の視点から

2021-02-10

3密回避、マスク・手洗いはwith コロナでは、常識となっています。

これを実際どこまでできるかが問題です!!

米国疾病管理予防センターから、無症状の感染者からの感染割合について、全感染の半分以上を占めることが示唆されました(JAMA Network Open誌2021年1月7日号に掲載)。

有症状者への対応は、施設・学校・会社では今では常識として定着して効果をあげていると思われますが、無症状者からの感染リスクを減らすには十分ではありません。

3密(密閉・密集・密接)回避、マスク・手洗いを、自宅も含め徹底するしかありません。

家でもユニバーサルマスクも考える必要があります。

重症化リスクが高い高齢者と関連する施設や感染リスクが高い病院では、偽陰性のことも考え1週間隔での定期的な無症状者へのPCR検査や、精度は落ちますがスクリーニングとして容易な抗原定性検査を行うなど戦略的対策も考えなければならないでしょう。

最後は、各自が免疫を落とさない生活食習慣を実行していくことです!!

切り札のワクチンの課題

切り札としては、安全で効果的なワクチンが利用可能になり広く使用されるしかないと思われます。しかし現在の日本で予定されている遺伝子ワクチンは、効果はあるようですが、冷凍管理の問題、効果の期間、安全性、今後出現する様々な変異株への効果などわからないことが多く、今後も改良の余地が多く残されています。また発症または重症化を予防できても、新型コロナは無症状からの感染も多く、ワクチンで感染力をどこまで抑制されるか不明です。

 

👉 今回のテーマ

女性は男性より重症化率が低く、子供はかかりにくく重症化しにくいことがわかっています。なぜなのかを考え、我々が免疫を落とさないように出来ることを学びましょう。

子供はなぜ軽症またはかかりにくいのか

 

子供の新型コロナの特徴

子供は新型コロナウイルスがくっつくACE2受容体の発現レベルが低く、子供の重症化リスクは、30代を基準に10代が0.2 10歳未満は0.5と低いことがわかっています。成人より感染しにくいと考えられています。無症状感染が多く感染しても1日で熱が下がるなど通常の風邪と変わらないこともあり実態がわかりにくい状態です。お子さんの特徴として、マイコ、インフル、RSVとの混合感染も稀ではありませんので診断が難しくなります。2歳未満、悪性疾患や心疾患をお持ちのお子さん、重症化の恐れがり注意が必要です。

稀ですが、欧米では子どもの新型コロナに関連して、(不全型) 川崎病に似た全身に強い炎症を起こす病態が報告され、新型コロナウイルス感染症関連小児多系統炎症性症候群と呼ばれています。これは発熱、皮疹、結膜充血、心筋障害、腎障害などが見られる重症の病態です。アジアでの報告はほとんどありません。

第1波の時に行われた学校閉鎖は、流行阻止効果は乏しいと現在は考えられています。

 

小児の感染経路

小児の感染経路について文科省の報告(2020年12月3日)から

家族内感染(小学73%、中学64%、高校32%)

学校内感染(小学6%、中学10%、高校24%)

家庭学校以外の活動(小学11%、中学8%、高校9%)

感染経路不明(小学10%、中学18%、高校35%)

小中学生の約7割が家族内感染のため、現状では、小児の感染を考える時、ご両親や周囲の大人からの感染をまず考えます。

最近の報告では、小児は成人より新型コロナに感染しにくいと考えられています。しかし小児のウイルス排泄量は成人同様で便からも排出を多く認めます。小児の場合、症状の在り無しでウイルス量はあまりかわらないようです。 しかし、子供間の学校内感染は多くありません

小児は、成人よりインフル、RSVなどウイルスやマイコなど呼吸器感染に罹患しやすいのが通常ですが、新型コロナでは、逆に小児に感染しにくく重症化しません。この現象は、SARSやMERSでも同様のことが起こっています。

但し、小児は感染者が少ないため、スプレッダーとして過小評価されている可能性があります。今後、感染者が増え変異株の割合が増えてくるに従い小児の感染力や社会への影響がはっきりしてくると思われます。

 

最近の外国の子供と新型コロナのまとめ論文から

「Archives of Disease in Childhood」に2020年12⽉1⽇掲載

➊ 自然免疫が強い

免疫強化つながる生ワクチンを多く接種して経過時間が短い、何度も他の風邪ウイルスに多く罹患していて、自然免疫記憶が向上しているなど、子供は強い自然免疫反応を持っています。

子供は抗炎症・抗酸化作用のビタミンDが多い傾向にあります。欠乏すると、新型コロナの重症化を招く報告があります。ビタミンDはインフルや風邪ウイルスの呼吸器感染抑制効果を認め、高齢になればビタミンDは低下します。

ビタミンD欠乏で 新型コロナの死亡率は約4倍高くなる報告(American Journal of Clinical Pathology誌2020年11⽉25⽇号)が最近でていますが、重症化と関係ない報告もあります。ブラジルからのビタミンDのサプリで、新型コロナの重症化は防げなかった報告もあります。

細菌叢は、免疫の調節や炎症、疾患に対する防御において重要な役割を果たしています。子供は成人と違い、鼻の奥に細菌叢やウイルスの定着があり、細菌ウイルス間の相互作用と競争で新型コロナウイルスを排除している可能性があります。

子供は癌治療や免疫抑制の状態にあっても、成人より新型コロナの影響を受けにくいと考えられています。

 新型コロナがくっつくACE2受容体の発現が低い

子供は、抗炎症・抗酸化作用のメラトニンが多く、メラトニンはACE2受容体の発現を低下させます。

子供は、新型コロナウイルスがくっつくACE2受容体の発現レベルが本来低いと考えられています。

 

 子供は糖尿病などなく血管がきれいで血栓ができにくい

新型コロナは、呼吸器に感染するが悪化するときは血栓をつくり

血管病として重症化すると考えられています。

 

 

女性は男性よりなぜ重症化しないのか

男女とも罹患率は変わらないようですが、60歳以上の高齢になるほど、男性は特に致死率が高まります

この男女差について今までは

エストロゲンで血管保護

男性のアンドロジェンは免疫抑制

女性は男性よりソーシャルディスタンスなどルールを守る

男性の方がタバコ・飲酒・偏った食事習慣の方が多い

など色々な説が考えられていました。

 最近のエール大学の報告(Nature | Vol 588 | 10 December 2020)では、新型コロナでは、男性は獲得免疫を担うキラーT細胞と呼ぶ免疫細胞の活性が落ちるほど重症化しやすいことがわかりました。女性のほうが、免疫応答が活発であるようです。膠原病など自己免疫疾患は女性が男性より多いことからも納得できる内容です。今までも新型コロナ以外のSARSなど多くの感染症でも男性の方が重症化しやすいことはわっかています。

 

まとめ

子供と性差の視点から、

免疫を落とさない生活習慣(睡眠、運動)

腸内細菌を整える食生活

ビタミンDを減らさない食生活と適度な日光浴

日内リズムを整え、メラトニンを減らさない運動、日光浴、食生活

血管保護を考えた生活食習慣

重症化リスク因子の肥満の改善

を行いましょう。

👉 具体的には

マスク・手洗い・3密回避(密閉・密集・密接)以外に皆さんにすぐにできることは、

ビタミンD豊富な食材のキノコ類やサーモン・鮭など魚を食べる

サーモンは、お子さんにも人気で、回転すし店の一番人気食材です。

ビタミンDは、抗炎症・抗酸化作用、呼吸器感染抑制効果を認めます。欠乏で新型コロナによる死亡率を4倍上昇させる報告がありますが、重症化と関係ない報告もあります。ビタミンDにこだわらず、バランス良い上記食材の摂取は健康な食生活に良いと考えられます。

 

 

自宅内だけで自粛せず密にならない公園など外に出かけ、

日光をあびてビタミンDをあげましょう。

日光浴・運動は、メラトニン上昇にも影響します。

納豆・肉・乳製品を食べトリプトファンを摂取するとメラトニンの上昇を促します。メラトニンは、抗炎症・抗酸化作用およびACE2受容体の発現を低下させます。ビタミンD、メラトニンは加齢に伴い低下していきます。

 

動脈硬化を予防する黄緑色野菜・キノコ類の食物繊維を多くとり、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)が豊富な魚・クルミを食べ、塩分を控えます。免疫に重要な腸内細菌叢を整える効果もあります。

 

免疫を落とさないように、良質な睡眠をとり、運動習慣を持ち、重症のリスク因子の肥満を改善しましょう

 

 

お勧め食材

サーモン・鮭など魚(ビタミンD 、アレルギー抑制・心血管系によいオメガ3脂肪酸が豊富)

キノコ類:マイタケ、シメジ、エリンギなどのキノコ類は、ビタミンDや免疫活性のβ-グルカンも含む食物繊維豊富で、カロリーが低く、腸内細菌叢も整えます。

オメガ3脂肪酸を多く含む食材:魚や青魚の缶詰、くるみ、

お子さんの中耳炎の疑問に答えます:パート1(家庭の医学編)

2021-01-10

中耳炎

家族からの質問編

耳に洗髪や入浴の水がいると中耳炎になりますか?

子供に中耳炎が多いのはなぜ?

子供の中耳炎は何科がみる?

最近の子供の中耳炎は軽症化しているの?

鼻吸いで中耳炎の予防ができますか?

急に耳が痛いときはどうする?

おしゃぶりで中耳炎が悪化しますか?

赤ちゃんのミルクで中耳炎が悪化するの?

赤ちゃんを飛行機にのせても大丈夫?

中耳炎になると聞こえなくなるの?

中耳炎・発熱で入浴は大丈夫?

中耳炎で保育園・幼稚園は言ってよいですか?

中耳炎でプールに入ってよいですか?

中耳炎は自然に治るの?

中耳炎で頻回な通院は必要?

 

解説

家族からの質問編

耳に洗髪や入浴の水がいると中耳炎になりますか?

中耳炎は鼻の奥の上咽頭耳管を通して感染炎症が中耳まで波及して起こしますので、耳に水が入っても鼓膜がブロックしてくれて中耳炎はおこしません。但し、鼓膜に穴があると耳に水が入れば起こすことがあります。また入浴や温泉プールで深く潜ると、耳抜き機能の耳管の圧調整がうまくいかず中耳炎をおこすことがあります。鼻の奥に炎症があると生じやすくなります。

子供に中耳炎が多いのはなぜ?

鼻と子供の中耳炎(当院コラム)を参考に!!

中耳炎は、鼻の奥の耳管を介して感染・炎症が波及して生じます。

次の三つの因子が重要です。
耳管の未熟性(耳管とは鼻の奥から中耳につながる管のこと)未熟な免疫 ③易感染と薬剤耐性

耳管の未熟性
乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。学童のころになると成人に近い耳管構造となり、中耳への感染が波及しにくくなります。

未熟な免疫
赤ちゃんは母体から胎盤を経由してもらった免疫を持って生まれますが、5~6ヶ月頃には尽きてしまい風邪を引き易くなります。かぜを予防するIgG免疫グロブリンは、2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人並みになります。

易感染と薬剤耐性
免疫が十分でない乳幼児のお子さんは、サークルや集団保育に参加することが多くなり、周囲から風邪のウイルスや細菌をもらいやすくなります。

集団保育のお子さんたちは、風邪をひく機会が多く、そのたびに抗生剤を服用する機会が多くなり、必然的に薬剤耐性菌が子どもたちを介して広がっていきます

 

最近の子供の中耳炎は軽症化しているの?

急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)を参考に!!

ここ10年次第に、急性中耳炎への鼓膜切開の回数が、減ってきています。鼓膜切開は重症中耳炎の急性期治療手段の一つです。重症中耳炎を何度も繰り返すとき鼓膜チューブ挿入術を行うことがありますが、チューブ挿入術も減少していて欧米でも同様の傾向です。最近のワクチンの普及と2010年頃発売された新規抗生剤の効果もあり、中耳炎が治りやすくなっていると思われます。昨年からの新型コロナの時代では、感染対策が行き届き風邪をひかなくなり、中耳炎そのものの減少がおこっています。

小児疾患全般でも、鹿児島県の小児入院患者数が2005年9万人から2014年6万人へ減少しています。細菌性ヒブ髄膜炎は、鹿児島で年間10~12人発症が、今はゼロとなりました。厚労省の報告でも、小児入院患者数が1999年からは2011年には65%に減少、同時期の小児人口の減少は95%程度ですので、全国的にも小児入院患者数が減少は明らかな状態です。外来患者数が減っているわけではないようですので、重症の患者さんが減って、外来で通院対応できるようになったと考えられます。呼吸器疾患では、小児喘息の患者さんの入院が、吸入ステロイドの普及で減少し、小児肺炎の入院が減っているようです。

子供の中耳炎は何科がみる?

急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)を参考に!!

日本では、耳鼻咽喉科が診察することが多いとも思いますが、欧米では、小児科や家庭医が診察することが多く、外科的治療が必要な場合に耳鼻咽喉科へ紹介となることが多いようです。本邦では、欧米より薬剤耐性菌が多く中耳炎が難治化していることや欧米との医療体制の違いもあります。

最近では、ワクチンの普及と抗生剤の新薬の効果もあり、中耳炎の軽症化や鼓膜切開および鼓膜チューブ挿入術の減少に伴い、本邦でも、小児急性中耳炎を耳鼻咽喉科医より小児科医や救急医・家庭医がみることが多くなっています。小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版では、重度の中耳炎の鼓膜切開の適応について、耳鼻咽喉科以外の医師のことも考え鼓膜切開が可能な環境では実施を考慮とオプションとしての選択となっています。

鼻吸いで中耳炎の予防ができますか?

鼻水・鼻詰まりがあれば鼻吸いは定番になっているようです。赤ちゃんの鼻閉はおとなのように口呼吸がうまくできないため、容易に哺乳不良、不機嫌、息苦しさが出現します。鼻の奥(上咽頭)から中耳炎はおこすため、鼻汁を外にだしてあげることは、赤ちゃんの症状の改善や中耳炎へ一定の予防効果はあると思われます。 但し、効果の限界と弊害にも注意しましょう。

弊害鼻の入り口は非常にデリケートな場所で特に赤ちゃんは容易に傷つきやすくやり過ぎると粘膜炎症からカサブタがつきやすくなり逆効果となります。鼻が少し通りやすい入浴後など粘膜が湿潤している時は鼻吸いのタイミングです。赤ちゃんは成長するにつれ、押さえるのも大変で、鼻吸いによるストレスの方が大きくなり2歳以降は、鼻吸いより自分で上手に鼻をかむ練習(片方ずつゆっくり)をしましょう。鼻をかむことも成長のステップと考えて下さい。

効果の限界鼻吸いは鼻の粘膜腫脹には効果はありません。鼻水に対しても、自宅鼻吸いや先が丸い透明のオリーブ管鼻吸引でとれるのは、主に鼻の前方の鼻汁です。鼻粘膜腫脹があれば効果はわずかです。中耳炎の予防や難治性鼻閉で最も問題なのは、鼻の奥の耳管に通ずる上咽頭の炎症や鼻汁です。鼻吸いやオリーブ管鼻吸引では、上咽頭までうまく対応できません。鼻汁の粘ちょう性が強ければ吸引効果は尚更減弱します。耳鼻咽喉科での処置は上咽頭を含めた対応を行っていますのでご相談して下さい。

 

急な耳痛時はどうする?

耳痛&夜間対応(当院HP疾患)を参考に!!

お子さんの場合は中耳炎の可能性が高くなります。

長期に持続するいたみでなければ、夜間はカロナール(アセトアミノフェン)など解熱鎮痛剤で応急処置を行い、翌日の耳鼻咽喉科受診で問題ありません。小さいお子さんがいる家庭では、解熱鎮痛剤の常備は必要です。

他の原因として、外耳炎やおたふく、首のリンパ節炎、扁桃咽頭炎からの放散痛のこともあります。外耳炎の場合、耳介を引っ張って痛い、耳いじりや耳掃除後から出現することが多く、中耳炎の場合、耳閉感、難聴を伴います。嚥下に伴い痛い場合は、のどや顎からの放散痛の可能性も考えます。首をさわって痛い場合、頸部のリンパ節炎やおたふくの耳下腺炎の初期のこともあります。最近は稀ですが、耳の後ろが腫れる中耳炎の合併症の乳様突起炎は、緊急入院となります。

 

おしゃぶりで中耳炎が悪化しますか?

乳幼児におしゃぶりを止めたグループでは2~3割程度、急性中耳炎が少なかった報告があります。おしゃぶりは、鼻呼吸の習慣、精神安定など効果はあるようですが、歯並びへの悪影響、中耳炎への影響もあるため、乳歯が生えてくる時期と集団保育・サークル活動を始める1歳までにやめるほうが望ましいでしょう。

赤ちゃんのミルクで中耳炎が悪化するの?

ミルク性中耳炎といわれていますが、医学的には頭位・体位性中耳炎と考えます。言葉からは、臥位や添い寝をしてミルクを飲ませると直接鼻の奥へ逆流し耳へ波及すると考えてしまいますが、実際は、ミルクを飲み、飲んだ後の胃食道逆流が原因で鼻の奥から中耳へ波及することで中耳炎が生じると考えられています。ミルクだけでなく母乳も飲ませたら背中を軽く叩いてゲップをさせて大丈夫となって寝かせると防げます。ミルク、母乳を飲ませてすぐに横にすると、赤ちゃんの胃食道は未熟なため逆流をおこしてしまいます。赤ちゃんが、咳や泣くだけで吐くのもそのためです。ミルクが原因ではなく、飲ませてすぐに横にすることが問題です。右を下に寝かせる右中耳炎を生じやすくなります。

赤ちゃんを飛行機にのせても大丈夫?

耳抜きが問題となる成人に多い航空中耳炎を心配されると思います。乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため気圧の調整は容易にできる構造になっています。ミルクを飲んだり泣くだけで耳管が開きやすく航空中耳炎は生じにくいと考えられますその代わり、鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。鼻汁・鼻閉時は、赤ちゃんも航空中耳炎を注意しなければなりません。赤ちゃんの免疫力、飛行機内の特殊な環境、授乳回数、首の座りの問題なども考えて搭乗を考えて下さい。

 

中耳炎になると聞こえなくなるの?

成人の急性中耳炎は多くありませんが、内耳に波及したり、慢性中耳炎・好酸球性中耳炎が背景にあると回復しない感音性難聴が生じることがあります。急性中耳炎は、7~8割程度の乳児が、一度は経験するありふれた病気です。現在はすぐに治療を行うこともあり、通常の中耳炎から回復しない感音性難聴の後遺症はあまり経験しません。中耳炎が回復すれば聞こえも戻ります。

但し、一部は難治性の反復性中耳炎、慢性滲出性中耳炎、癒着性中耳炎、鼓膜穿孔を伴う慢性中耳炎、真珠性中耳炎などになり、外科的治療が必要になることもありますし、長期間難聴のため言語発達にも注意が必要となります。小児でもこのように慢性の中耳感染が反復すれば、長期的には、感音性難聴の後遺症が出現することがあります。

中耳炎は治せる難聴ですが、感音性難聴は、急性期(初期2週間程度)以外は回復困難と考えられています。乳幼児の難聴で中耳炎以外では、先天性感音性難聴(1/1000人)や回復が困難なムンプス性重症感音性難聴(予防には、おたふくワクチン2回推奨)が問題になります。

発熱と入浴について

中耳炎・発熱で入浴は大丈夫?

発熱・免疫・入浴(当院HP疾患)を参考に!!

元気があり38度未満で嘔吐下痢がなければ入浴は問題ないと思います。
湯冷めしない配慮は必要です。入浴は乳幼児の鼻閉に効果があり、のどへ加湿を行い、皮膚を清潔に保ちます。細菌に対する抵抗力を高め、新陳代謝を亢進するなどの効果が期待できます。潜ることは控えてください。

 

中耳炎で保育園・幼稚園は言ってよいですか?

全身状態が良い中耳炎の登園は問題ありません。但し、急性中耳炎は急に進行することがあります。朝、耳痛で受診し午後から急に悪化して再受診のこともありますので、発病初期は、急な進行を想定していてください。発熱なく全身状態がよくて幼稚園に行くことができても、場合によっては耳痛や発熱が急に出現して、電話で呼ばれることもあると思って下さい。

中耳炎でプールに入ってよいですか?

プールに入ってもよいですか?耳鼻の病気(当院コラム)を参考に!!

急性期と耳漏が多量の場合禁止です。急性中耳炎(耳痛と発熱などあり)では最低1~2週間禁止となります。鼻漏を認めるときは再発のリスクが高いと認識することです。鼓膜穿孔や鼓膜チューブ挿入の場合は、耳栓・水泳帽を使用し、潜水や飛び込みは控えます。滲出性中耳炎は、プールは可能ですが、担当医と相談しましょう。

 

中耳炎は自然に治るの?

小児の7割弱は、3歳までに一度は中耳炎に罹患します。その3~4割は3回以上も起こす乳幼児には、ありふれた疾患です。軽い中耳炎の場合、乳幼児の訴えはわかりにくいこともあり、病院にいかないで自然に改善していることもあると思われます。診断された軽症急性中耳炎は、痛み止めだけで抗菌剤を使用せず、数週間以内に自然に改善することもあります。難聴が主の滲出性中耳炎も数ヶ月で自然回復することもあるため、3ヶ月は、経過を見ることになっています。2歳未満、保育園・幼稚園などの集団保育、両側罹患、鼻・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の合併があれば自然治癒は低くなり、特に鼻炎症状が持続すれば中耳炎はなかなか治りません。高熱・耳痛を反復する中耳炎(反復性中耳炎)、長期難聴のため言語発達に影響する中耳炎(慢性滲出性中耳炎)、危険な中耳炎、大きくなっても改善しない慢性中耳炎など、最初から診断できることは少なく、数ヶ月~数年の経過の中で聴力・鼓膜所見を参考に判断されるものです。中耳炎は自然治癒することもある疾患ですが、難治化することも多くあるため、乳幼児の間は、長期的視点での対応が必要になります。

中耳炎で頻回な通院は必要?

担当医により対応が違うことがあります。

急性中耳炎、遷延性中耳炎の場合

急性中耳炎の耳漏が持続する場合や、中耳炎に合併する鼻閉・鼻汁がひどく睡眠障害や哺乳障害などあれば、頻回な通院による耳や鼻の処置・鼻洗が必要になることがあります。鼻副鼻腔炎は、急性中耳炎の難治化や再燃・再発の重要なリスク因子となるので、鼻処置は中耳炎の治癒促進に一定の効果はあると思われます。しかし、頻回な通院はご家族の負担も大きく、自宅での対応も考えましょう。乳児~2歳程度までは自宅での鼻吸い、すこし大きくなれば上手な鼻かみ、学童になるころは自宅鼻洗なども、治癒促進や再発予防に一定の効果があると思われます。やり過ぎると鼻粘膜損傷、鼻出血、耳痛など出現することもありますので気をつけて下さい。

難聴が主の滲出性中耳炎の場

ある程度自然治癒が期待できるため3ヶ月程度経過観察を行います。リスク因子の鼻副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎があれば同時に治療を行います。以前から耳鼻咽喉科外来で行われている頻回通院の鼻処置・ネブライザーや通気療法は、小児滲出性中耳炎に対する有効性は明らかではありませんが、無効というわけでもありません。通気療法は、自宅でオトベントによる自己通気を1日3回以上行うと有効性が認められるようです。

 

参考資料

小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年度版

小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年度版

あなたの喘息は何タイプ?成人編

2020-11-20

長引く咳は、医療機関受診動機として最も頻度が高く、近年は、アレルギーや生活習慣に関連した咳が増加しています。3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。最近は、咳喘息の認識が高くなり、少し咳が長引いているだけで、喘息吸入治療薬がすぐに処方される傾向にあります。処方前の検討が十分でなく発症3週未満にステロイド吸入の治療をすると、咳喘息以外の病気にも効果があるため、咳喘息の診断を難しくすることが懸念されています。

喘息を疑う病歴・家族歴・検査結果、強制呼気喘鳴の聴取や気管支拡張薬吸入の効果があれば喘息または咳喘息の可能性が高くなります。喘息の有病率は、成人は5%程度、小児ではもっと多く男児は女児の1.5倍、成人は女性のほうが男性より少し多く認めます。

喘息とは何か?

医学的に喘息とは気道の慢性炎症が存在して、気道狭窄症状が良くなったり悪くなったりすること( 気道可逆性)で、ゼーゼー・息切れ・咳・息苦しさなどの症状が変化する反復する自覚症状)病気です。夜間や早朝に増悪する傾向があります。症状が感冒,運動,ダニなどアレルゲン曝露,天候の変化,笑い,大気汚染,硫黄など強い臭気 などで誘発されることが多く認めます(非特異的気道過敏性)。

喘息とは、上記➊ ❷ ❸を特徴とします。

喘息は症状群!!

喘息の病像はバラエテイーに富んでいて、一つの病気と言うより症候群としてとらえ、喘息を類似した気道・肺の病気の集まりと考えます。

症状や病態生理の特徴から分類すると(フェノタイプ:病型分類)、病因の解明、見通しの予測、焦点を絞った適切な治療を行いやすくなります。今後は、単なる重症度から治療方針を決めるのではなく、このフェノタイプ分類に基づいて適正な治療が進められるようになると期待されています。最近は、治療効果が上がる分子レベルに基づく分類(エンドタイプ)の研究が進められ、分子生物学的製剤(高価な注射薬)が難治性喘息に対して、適応が増加してきています。

医学的な喘息のフェノタイプ・エンドタイプ分類は難しい!!

喘息のフェノタイプ分類は ①タイプ2免疫反応型 ②非タイプ2免疫反応型に分け、

好酸球性炎症型抗原特異性IgE型気道過敏・気道リモデリング型好中球性炎症型などに分類されます。自然免疫・獲得免疫、IL5,IL4,IL13、IL8などのサイトカインおよび各種メディエーターを組み合わせ、分子レベルの複数のエンドタイプに分類されていきます。

これを患者さんに説明するには、難しい話です!!

 

👉👉 今回は、日常の診療の中で、わかりやすい喘息のタイプ分類の解説と、それぞれの疾患などで、どうしたらよいかの説明です。

自分がどのタイプの喘息なのか、どの疾患または何の薬と関連して悪化しているか考えてみましょう!!

ダニ対策などの環境整備、控える薬物、生活食事習慣の改善、ステロイド吸入以外の薬・治療法の選択の参考になります。

 

疾患との関連は?

アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎:

喘息の悪化は、鼻炎も同時に治療することが重要です喘息患者でのアレルギー性鼻炎の合併は80%前後、喘息の悪化にも影響します。アレルギー性鼻炎には鼻噴霧ステロイド薬抗ロイコトリエン薬を併用すると喘息症状の改善効果が高くなります

鼻と秋の喘息(当院院長コラム)を参照して下さい。

通常の副鼻腔炎:風邪のあとこじらせると、粘性又は膿性の鼻汁・後鼻漏・鼻閉・咳・痰・頭痛などの症状があれば急性副鼻腔炎をおこしています。喘息や咳が長引き治らなくなりますので、副鼻腔炎の治療も重要です。必要な方は抗生剤を併用します。鼻洗も効果的です。

匂いの障害・好酸球性副鼻腔炎(新型)

匂いの障害や鼻ポリープが特徴の最近急増している副鼻腔炎が好酸球性副鼻腔炎です。

副鼻腔炎のコントロールが悪いと喘息が悪化しますので、副鼻腔炎をしっかり治すことが重要ですが、好酸球性副鼻腔炎はステロイドホルモン服用以外の効果は乏しく難治性です。白血球の一種でアレルギーの病気で増加する好酸球が副鼻腔粘膜に増加してきます。従来の慢性鼻副鼻腔炎より難治で、手術を行っても再発が多くみられます喘息合併例で、エアロゾルなどの粒子径が小さい吸入ステロイド使用の場合、口から吐き出さず、鼻の奥の後鼻腔から出す方法で効果があることもあります(鼻呼気法)。

治療は、ステロイド内服や抗ロイコトリエン薬および手術治療、術後再発のポリープを伴う重症例には生物学的製剤(デユピルマブ):重症アトピー性皮膚炎や重症喘息にも保険適応あり、高価な注射薬です)が2020年から保険適応となりました。重症例は指定難病として認定されることがあります。難治性の好酸球性中耳炎、気管支喘息、アスピリン喘息などが、多くの症例で合併します。

あなたの副鼻腔炎は何タイプ?(当院院長コラム

 

胃食道逆流症(GERD)

喘息患者ではGERDの保有率は高く(45~71%:一般日本人は6.6~37.6%)、胸やけや呑酸、げっぷなど逆流症状があり、夜の呼吸器症状がある患者はPPI(プロトンポンプ阻害薬)の服用(8週間)を行うと効果を認めます。GERDの症状がない方への投与は効果を認めません。就寝前3時間程度は水以外の飲食を控え、脂もの、刺激物、コーヒー、飲酒なども控えます。。

GERD喘息悪化の因子の一つです。GERD合併喘息では、経口ステロイドの投与回数が多く、不安やうつ状態を伴い夜間発作症状が強く出てきます。またコントロール不良の喘息患者のうち24%サイレントGERDが存在する報告があります。

GERDが関与する喘息の特徴

非アトピー性

主に夜間に発作が増悪

食後症状が悪化

喘息治療に抵抗性

胃酸分泌を抑制することにより症状が改善

胃酸の逆流と耳・鼻・のど・呼吸器(当院院長コラム

 

肥満

肥満は喘息の難治化因子です、内臓脂肪が関与します。

非アトピー型で好酸球が増加せず、直接的なアレルギーが介在しない機序が考えられ、喘息の一般治療薬のステロイド吸入療法の効果が低いと言われています

肥満対策・ダイエットが重要す。

肥満喘息発症メカニズム

最近、脂肪細胞は、生理活性物質の分泌臓器と考えられるようになってきています。

脂肪細胞から、喘息の悪化をもたらす気道過敏性の亢進や気道の慢性炎症を悪化させる生理活性物質(レプチン、TNF-α、PAI-1)が放出されます。

肥満による肺機能低下

運動不足による気道過敏性の亢進(運動は気道過敏性へ効果の報告あり)

肥満や睡眠時無呼吸症による胃食道逆流症の合併

肥満と喘息;ダイエットで喘息が治る?(当院院長コラム

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喘息合併COPDACO)は高齢者喘息に多くみとめます。ACOは男性が少し女性より少し多く副流煙は喫煙の半分程度の影響があると考えられています。60歳台40%、70歳台50%、80歳台60%と加齢で増加していきます。過去の喫煙や副流煙歴も影響します。ACOは通常の高齢者喘息よりコントロールが不良となります。40歳以上で、咳・痰持続、労作時の息切れがあり、①喫煙歴(副流煙も含む)や長期間大気汚染に暴露歴があればCOPDを疑います。②胸部CTでは気腫性変化を示す低吸収領域や、③肺拡散能障害を認めます。①~③のうち1項目あればCOPDの可能性が高くなります。

 

閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)

OSASは睡眠中に繰り返し呼吸が止まり、夜間に低酸素血症が反復します。喘息発作は夜間就寝中に起こり易く、喘息にOSASが加われば夜間の低酸素血症は増強し不整脈や高血圧を悪化させます。適切なOSASの治療(CPAP療法、鼻の治療、歯科マウスピース)すれば低酸素血症や呼吸器症状の改善が期待できます。

 

薬物で喘息悪化!!

解熱鎮痛剤との関連(アスピリン喘息

小児にはほとんどなく、成人喘息の5~10%。男性も認めますが成人女性に多く、嗅覚障害・好酸球性副鼻腔炎と合併することがあります。アスピリン喘息を診断する特異的な検査はありません。本人はわからず服用して初めて病院受診後に気づくことがよくあります。咳・呼吸器症状の反復と嗅覚障害があれば要注意です。痛み止めを服用すると喘息発作が、急速に進行して救急車を呼ぶこともあります。解熱鎮痛剤・湿布薬の使用が制限されます。使えるのはソランタール、少量のアセトアミノフェンなど限定されますので前もって発熱・痛みのときの対応を、担当医に尋ねておきましょう。歯科や整形外科では消炎鎮痛剤が出されることが多く、前もって申告する必要があります。

βブロッカー降圧薬と緑内障点眼薬

緑内障の目薬と心不全に使用されることが多い降圧薬に注意します。気管支粘膜にはβ2受容体 心臓にはβ1受容体が存在します。

降圧薬

β1選択制が高いβ1ブロッカ―降圧薬を選びます。

β1選択制のテノーミン(アテノロール)、メインテート(ビソプロロール)などが慎重投与となります。

αβブロッカーであるアーチスト(カルベジロール)は禁忌です。高血圧と喘息がある方は注意して下さい。

緑内障薬

チモプトール点眼、ミケラン点眼などのβブロッカー点眼薬とその配合剤は控えます。

誰も目薬で喘息が悪化するとは思いもつきません。

アトピーとの関連は?

IgE型(アトピー型:外因型)ダニ 花粉(スギ、ヒノキ、イネ、ブタクサなど)ペット(犬、猫など) カビ(アスペルギルス、アルテルナリアなど)昆虫(ゴキブリ、ガなど)

湿度が高い日本では、年間を通してダニが最も重要です。若年者の80~90%はアトピー型喘息です。ダニ関連アトピー型喘息とアレルギー性鼻炎はダニの増加に伴い悪化します。ダニ対策の環境整備は重要です長期的にはダニなどの免疫療法(舌下・皮下)による喘息・アレルギー性鼻炎の体質改善・新規感作予防が行われます。夏に繁殖したダニが秋に死んで、家に中にたまった死骸や糞が体に入り症状が出てきます。糞はダニの数十分の一の大きさ(0.01mm)で、気管支の中に入りやすくなり喘息を起こしてきます

カビ・ペット・昆虫など多数を認める場合は、難治化することが多くなります。

実践ダニ対策当院院長コラム

舌下免疫療法:ダニ・スギ(当院院長コラム)

花粉症に新たな治療薬(ゾレア)(当院院長コラム

非IgE型(非アトピー型:内因型)

成人になると、ダニなど外因と関連がないおとなの喘息が増加してきます。免疫療法の効果はありません。

 高齢化医療へ取り組み

年齢・性差での特徴は?

乳幼児 喘鳴(ぜんめい)として経過をみることから開始します。

お子さんの喘鳴は何タイプ?(当院院長コラム)を参照して下さい。

学童思春期 ダニなど関与のアトピー型喘息が80~90%

年単位の長期的には、ダニ・スギなどの免疫療法が効果を認めます。アレルギー性鼻炎・喘息の体質改善や新たな外因アレルギーによる疾患予防(アレルギー性鼻炎があり免疫療法で将来の喘息の発症予防)にも効果が期待されています。

成人 好酸球性気道炎症を中心とした非アトピー型(内因性)の喘息が増加します。

肥満・タバコ・大気汚染、従来の好中球性副鼻腔炎との合併との関連で好中球性喘息が増加してきます。好中球性は吸入ステロイドの効果が乏しいこともあり、抗生剤マクロライドの使用や肥満者の減量、禁煙を行います。

高齢者 喘息死は70年前の1/10に減少していますが、高齢者が喘息死の多くを占めています。COPD、 GERD、心疾患、嚥下機能低下などに配慮して対応が必要です。

女性:妊娠の有無、月経周期との関連、肥満(BMI30<)との関連を確認します。

月経前喘息:月経3~4日前に起こる症状を呼びます。女性喘息患者の3~4割で認める報告があります。月経前の気管支粘膜浮腫や性ホルモンとの関連などが考えられています。

妊娠と喘息:喘息のある妊婦の1/3は喘息が悪化すると言われています。吸入ステロイドを継続します。

 

好酸球の上昇の有無で治療を判断!!

好酸球性気道炎症を示す2型炎症マーカーの評価を行います。

検査:末梢血好酸球数、血清総IgE, 呼気NO

好酸球性では、ステロイド吸入、抗ロイコトリエン薬を主体に治療開始。匂いの障害や好酸球性副鼻腔炎・アスピリン喘息の確認を行います。難治例では、副作用が問題となる経口ステロイドが連用されるため、最近は生物学的製剤の適応を検討します(呼吸器内科専門医へ)。この治療でステロイドの減量や離脱を期待します。

好中球性は、吸入ステロイドの効果が乏しいこともあるため、マクロライド抗生剤など使用、肥満あれば減量、禁煙指導、副鼻腔気管支症候群あれば副鼻腔炎の治療(耳鼻咽喉科受診)を行います。

咳喘息とは!!

3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。

ゼーゼーを伴わない咳(聴診では正常)が2か月以上持続

(3週以上でも診断可能;3週未満の咳では診断しない

気管支拡張薬で一時的効果あり

季節性があり夜間・早朝に多い

血液や喀痰の好酸球上昇、呼気NO高値(27以上)、気道過敏性亢進あり

経過中30~40%は典型的喘息に移行します。吸入ステロイドの治療(最低1年)を行い、再燃時は早期受診が必要です。治療開始後、症状がすぐに改善する場合、いつまで治療続けるかエビデンスはありません。

 

運動誘発喘息とは!!

十分な準備運動、通常の喘息のコントロールと抗ロイコトリエン薬が効果を発揮します。気道粘膜の脱水と冷却、気道上皮損傷による気道過敏性の亢進が出現します。

運動・アスリートと喘息・鼻炎(当院院長コラム)を参照して下さい。

 

カビや血管炎との鑑別は?

EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

ABPM(アレルギー性気管支肺真菌症:アスペルギルスが多い、成人喘息の約2%))

問診

固形状の粘液栓を咳に伴いだしたことがあるか?(ABPM)

手足のしびれの自覚は無いか?(EGPA)

検査

胸部CT

EGPAでは、MPO-ANCA、末梢血好酸球数1000/μL<、CRP高値

ABPMでは、末梢血好酸球数500/μL< 血清総IgE1000IU/mL<、真菌特異性IgE,アスペルギルス沈降抗体など確認します。

 

~~重症喘息について~~

必須検査は血液検査、胸部CT,スパイロメトリー、鼻汁・鼻閉・後鼻漏・嗅覚障害例は顔面CTおよび耳鼻咽喉科受診をします。頻度は喘息患者の5~10%で、呼吸器専門医での診断・治療が必要です。

実際は、喘息の診断が正しくされていない場合や服薬遵守や吸入手技が悪いことで難治化していることがあるため、医師、薬剤師、看護師は服薬遵守・吸入手技・環境要因(ペットなど)を再確認し患者さんへの教育が必要です。

難治化因子の併存症(感染症、肥満、胃食道逆流症、好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎や通常の副鼻腔炎、COPD,閉塞性睡眠時無呼吸症、薬剤性、アスピリン喘息、パニック発作および過換気症候群、)の確認を再度行います。

鑑別する病気としては専門医療機関にてABPM(アレルギー性気管支肺真菌症),EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症),声帯機能障害(心因の関与もあり)、非結核性抗酸菌症,気管支結核・腫瘍、心不全が無いのか確認します。このようなステップを踏むと重症喘息の割合が、5~10%から数%まで減少すると考えられます。

本当の重症喘息には生物学的製剤を検討します。

アトピー型喘息(IgE30~1500IU/ml)オマリズマブ(重症スギ花粉症にも適応あり)

好酸球性気道炎症 IL-5関連:メポリズマブ ベンナリズマブ IL-4,13関連 デユピルマブ

 

参考資料:

難治性ぜんそく診断と治療の手引き2019(成人)アレルギー 8-12、Vol69 2020

咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

お子さんの喘鳴(ぜんめい)は何タイプ?

2020-11-08

お薬飲んでも長引く咳・夜間の咳で眠れないなど症状が反復し、親御さんから喘息でしょうか?と質問を受けることはよくあります。

お子さんは風邪をひきやすく、成長過程であり、検査の協力を得られにくいので繰り返す喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー)という症状として経過を見ていく必要性を説明しています。

小さいお子さんの場合、喘息ではなくても風邪のウイルスや鼻・副鼻腔炎や鼻炎の後鼻漏、哺乳・食事摂取後の咳・嘔吐などから喘鳴(ぜんめい)が聴取されることはよくあります。

アトピー性皮膚炎、乾燥肌、両親の喘息の家族歴、ダニ抗体陽性や喘鳴の回数の上昇(1週間の間隔をあけて呼気性喘鳴3回以上)、β刺激薬吸入に反応良好などから、喘息の可能性が高くなっていきます。吸気性喘鳴の代表はクループです。

 

 病型分類フェノタイプ)について

気管支喘息患者さんを、症状や病態生理の特徴から分類すると、病因の解明、見通しの予測、焦点を絞った適切な治療を行いやすくなります。

この分類をフェノタイプ(phenotype: 表現型 病型分類)と言います。

 

乳幼児期は検査の協力が得られず、小児期の呼吸器系は、解剖・生理で変化し、風邪をひきやすく免疫機能も大きく変化する時期のため、喘息(ぜんそく)の診断は難しく、喘息とは言わず反復する症状としての喘鳴(ぜんめい)と呼び分類した方がわかりやすくなります。

👉 今回は反復喘鳴(ゼーゼー)・喘息:乳児期・学童思春期での病型分類(フェノタイプ)の話です。

反復しない基本的に1回だけの急性喘鳴はRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどによる急性細気管支炎・肺炎・気管支炎による喘鳴の鑑別が必要です(迅速キット検査あり)、生後3ヶ月未満では無呼吸発作のこともあります。稀ですがピーナッツなどの気道異物も喘鳴の原因となります。大きく以下の二つに分けて考えます。

1)乳幼児期 反復呼気喘鳴(ぜんめい)のフェノタイプ

(乳幼児期のフェノタイプはタイプ間で移行することがあります、喘息の診断はつきにくく喘鳴:ぜんめい としてフォロー

 

2)学童思春期 喘息(ぜんそく)のフェノタイプ

(成人分類に近い状態になる,検査ができる年齢のため喘息の診断がつきやすい

(アトピー型喘息が80~90%と最も多い)

 

詳細は以下に

1)乳幼児期の呼気性喘鳴(ぜんめい)のフェノタイプ:

この病型分類も歴史と共に変遷しています。

2003年海外の報告の臨床経過からの分類

 一過性初期喘鳴群(2~3歳までに改善

 非アトピー型喘鳴群学童前半までにかなり改善するも一部は学童期喘息へ移行

 IgE関連喘鳴/喘息群学童後も持続し喘息へ

2017年小児気管支喘息治療管理ガイドラインからの分類変更

 IgE関連喘息(アレルゲン誘発性喘息・アトピー型喘息)

学童期以降のアトピー型喘息へ移行することが多いため、気流制限・リモデリング予防のため早期から治療が必要です。

診断に有用な所見

両親喘息

アトピー性皮膚炎

ダニ等吸入アレルゲン陽性

風邪をひいてないときの呼気性喘鳴 など

ライノウイルスやRSウイルスの気管支炎の罹患は、気道上皮障害をおこしアレルゲンの感作が生じて喘息発症のリスクが高まります。

治療:吸入ステロイド(フルタイド、アドエアー、パルミコートなど)

 非IgE関連喘息(風邪ウイルス誘発性喘息、他の誘因タバコ、冷気など)

この一部は、学童期までにアトピー型喘息または非アトピー型喘息移行します。

治療:抗ロイコトリエン薬など

学童

 

2)学童思春期 喘息(ぜんそく)のフェノタイプ

アトピー型喘息が80~90%と多いが、非アトピー型喘息もあります。

アスリートや運動部に所属する場合、運動誘発喘息が問題になります。

鼻・副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの耳鼻咽喉科疾患が、幼児から学童・思春期では悪化因子として多く認めます。

肥満が喘息難治化要因となります。

体育や運動の課外活動が、運動誘発喘息の原因となりますが、認識不足のため気づいていないこともあります。

低肺機能を伴う喘息や小児発症の重症喘息は成人でCOPDのリスクになります。

早期発症で気流制限を伴い、ダニ以外にも様々なアレルゲンを持つアトピー型喘息は難治化します。

治療:

ダニ回避などの環境整備

フルタイド、アドエアーなどの吸入ステロイド、抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻

免疫療法:ダニ・スギの舌下免疫療法など(ダニ舌下免疫療法は喘息の保険適応はありませんが、喘息にも効果が報告されています)

肥満児は減量、食事指導

運動誘発喘息は、十分な準備運動、抗ロイコトリエン薬やステロイド吸入などの喘息管理

心理的、経済的要因も悪化因子となります。

 最新治療 フェノタイプを参考に、重症喘息に対して生物学的製剤を使用することがあります(かなり高価な注射薬です)

*6歳以上 ゾレア(オマリズマブ)抗IgE製剤

*12歳以上 メポリズマブ 抗IL-5製剤

*12歳以上(2019年3月~)デユピルマブ IL4受容体α鎖抗体

デユピルマブは、重症好酸球性喘息にアトピー性皮膚炎、鼻茸伴う慢性副鼻腔炎などを伴う例には、今後、早めに検討してもよいと思われます。

 

 難治化の盲点として

ステロイド吸入の仕方の誤りは多く認めます。吸入方法については医師、看護師、薬剤師など積極的に確認して下さい。

学童から思春期にかけて親の言う通りに服薬や吸入をしなくなる場合です。

 

参考資料:

小児気管支喘息治療管理ガイドライン 2017

57回日本アレルギー学会専門医認定医セミナー(2020年8月)

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