吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

診断がつきにくいめまい症:PPPD

2020-05-28

貧血や全身状態を把握するため

英国の有症率報告では、高い順に疼痛、疲労感、めまいとなっています。日本の28年度国民生活基礎調査では、めまいの有訴率は女性:30% 男性:13% 70歳以上では女性4~5割、男性3割程度とめまいで悩んでいる方が多いのがわかります。めまいの病気の中でも原因不明のめまい症と診断されているものが20~25%存在しています。

慢性めまい疾患は、脳腫瘍や脳血管病変以外画像診断では診断がつかず、中耳炎のように鼓膜をみればわかるわけでなく、採血検査でも原因がわかりません。心因性、血圧などの循環動態、自律神経の関与も多く、丁寧な問診と繰り返しの聴検・めまい検査などおこない,慎重に診断を進めていきます中には月~年単位で長期に経過をみて診断されることもあります。めまい疾患は複雑に絡み合い心因性めまい・内耳性めまい・めまい関連片頭痛・肩こりのふらつきなど重なっていることも多く余計に診断を難しくしています。

 

👉 今回は、2017年以降めまいの疾患概念として国際的にも統一されてきた慢性めまい疾患の一つのPPPDという病気の話です。

今まで原因不明のめまい症(20~25%)とされていた疾患の中にかなり含まれていると考えられています。PPPDの情報発信している新潟大学耳鼻咽喉科では、慢性めまいの23%はPPPDと診断されています。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)

PPPD(日本めまい平衡医学会:サイト

PPPDが、診断がつきにくい理由

世界的めまい学会のバラニー学会で診断基準がまとめられたのが最近の2017年のため耳鼻咽喉科医も含め医師に広く認知されていないため。

症状が3か月以上持続する機能性めまい疾患のため、3か月以上経過を見る必要があり、すぐに判断することが出来ないため。

その上、聴検・めまい検査・画像検査・採血などで特異的所見が無い。

PPPDは耳・脳・不安症・うつ病とは独立した疾患で、症状以外明らかな異常がない疾患。

症状と経過のみで診断をつけることが必要になるため。

診断基準は以下の5つの項目すべてを満たすことが必要。

A: 浮遊感,不安定感,非回転性めまいのうち一つ以上が,3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する。

症状は長い時間(時間単位)持続するが,症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。

症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。

B: 持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが,以下の3つの因子で増悪する。

立位姿勢

特定の方向や頭位に限らない,能動的あるいは受動的な動き

動いているもの,あるいは複雑な視覚パターンを見たとき

C:この疾患は,めまい,浮遊感,不安定感,あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患,他の神経学的・ 内科的疾患,心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。

急性または発作性の病態が先行する場合は,その先行病態が消失するにつれて,症状は基準Aのパ ターンに定着する。しかし,症状は,初めは間欠的に生じ,持続性の経過へと固定していくことが ある.

慢性の病態が先行する場合は,症状は緩徐に進行し,悪化することがある.

D: 症状は,顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている.

E: 症状は,他の疾患や障害ではうまく説明できない.

 

#(補足PPPDは先行疾患があり、その病態が無くってからめまい・ふらつきパターンに移行します、PPPDを発症させる頻度が高い先行する急性発作性病態は

末梢や中枢性の前庭疾患(25~30%)

前庭性片頭痛(15~20%)

浮動感を示すパニック発作や不安(30%)

脳震盪やむち打ち(10~15%)

自律神経障害(7%)

などです。薬剤や不整脈によるめまい・浮遊感は3%以下とPPPDになりにくい。

 

めまいの原因で分類すると、各科の報告で異なります、概ね

耳から(30~50%)中枢(脳)から(10~20%)精神障害(10~20%)原因不明(10~20%) 他の原因が20~40%になるようです。

以下のように、PPPDは障害部位がはっきりせず、精神疾患ではない機能性めまいになります。

非器質性めまいの国際分類

不安症に関連するめまい

うつ病に関連するめまい

転倒恐怖症

めまいに関連する病気不安症

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患

持続性知覚性姿勢誘発めまいPPPD

 

ポイント:

👉 平衡感覚は、視覚 耳(前庭)体(足などからの体性深部感覚)の三つの信号を小脳で統合してバランスをとっています。PPPDは目と体からの入力バランスの崩れと考えられています。慢性のPPPDは、急性期の前庭機能の影響は3ヶ月で回復(前庭代償の完成)しますので3か月以上経過をみて判断します。

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患ですが、心因性めまいや器質的前庭疾患が合併している場合もあります。

前庭めまい疾患で最も多い良性発作性頭位めまいは朝に起きやすいが、PPPDは昼夕方に症状が悪化しやすくなります。PPPD単独では、回転性めまいは認めません。PPPDは自然寛解が難しく症状の増悪軽快を長期に繰り返します。

 

治療:次の三つが重要です。

前庭リハビリ

抗うつ薬(SSRI)

認知行動療法

ですが、確立された治療法はありません。

前庭リハビリは、PPPD患者の内部感覚へ刺激を与えめまいへの順化を促します。

効果を得るには月単位(最低数ヶ月)で考えます。症状は一進一退することも多いことを理解して下さい。リハでめまいを誘発させ悪化させることもあります。

日本の医療制度では整形外科や脳疾患後のリハビリのように、保険診療になっていません。外来整形やリハビリ病院のようにST、PT、技師のようなパラメディカルスタッフの協力を得て治療することは出来ません。

耳鼻咽喉科では医師の自助努力で、自宅でできるように指導を行い対応しています。定期通院でモチベーションを維持します

抗うつ薬は、観察研究で有効性が報告されていますが、吐き気、傾眠、めまい、ふらつきの問題や、やめる時も離脱症に注意が必要になります。アクチベーション症候群を生じることもあります。アクチベーション症候群とは、投与初期の2週間以内や増量期に起こりやすい不安、焦燥、不安、衝動性などの症状です。

PPPDはめまいに対する過敏性が形成されているため慎重に服用を考えます。PPPDの前身の慢性めまい疾患への効果は50~70%程度、うつ病の投与量の半分程度で効果を認めることが多いようです。2~3ヶ月で効果がみられ少なくとも1年継続が推奨されています。精神疾患の有無に関係なく効果を認めるため、中枢セロトニン神経系への作用が関与していると考えられています。現在、慢性疼痛にたいして鎮痛作用を目的とした抗うつ薬投与が行われている考え方と同様と推測されています。

認知行動療法とは、ストレスな状況にいたる否定的な考え方(認知)に働きバランスよい適応的な考えをつくり、気持ちを楽にする精神療法です。

我々は、ダイエットを行う時、毎日体重を測定してなぜ体重が増えたかを考え悪い行動や食習慣を是正していくと思います。これと同じことを、こころの問題について行い、誤った考え方や物事のとらえ方を自分で気づき歪んだ認知を適応的な考えに変更して、気持ちを楽にする方法です。

めまいに対しての簡易的認知アプローチとしてめまい日誌を作成して、誘発因子として、睡眠不足、疲れ、気圧の変化、人混み、スマホ・PCの視覚刺激、ストレス、生理との関連、肩こり、場所の変化など見極め、本人に誘因を自分で認識してもらい対応していきます。

めまいを目標に治療するのではなく、めまいで何が困っているかを考え二次的な問題点から治療対象としていきます。めまいで、不安・不眠があれば、不眠の治療から、めまいで外に出れないのであれば、少しずつ外出、買い物に行けるよな行動を考えていきます。

ひとつの方法として、毎日のめまい・ふらつきのため、不安を感じている方は多く毎日の腹式呼吸の習慣を身に着け心の安定をはかります。最初は2秒で鼻から吸い、4秒で口からはく、5秒で吸い10秒ではくまで、少しずつ長くしていきます。

~~本格的認知行動療法について:精神科~~

世界的に見ると,認知行動療法は精神療法の世界標準となっていますが、日本においては,普及が十分に進んでいません。

うつ病、強迫性障害、パニック障害、PTSD、社会不安障害、神経性過食症は、認知行動療法の保険適応となっていますが、取り決めが多く保険点数が低いこともあり実施施設は少ないようです。自費診療で行うところもあるようです。通常は、精神科・メンタルクリニックが行います。この治療のメリットは再発率が低く、精神薬のような副作用がないことです。

PPPDへの認知行動療法は短期的には効果をみとめるようですが、長期的にはこれからの検討課題となっています。

患者さんに、この病気の病態生理を理解してもらい認知行動療法の必要性を理解してもらうことから始まります。患者さん自身が自己観察を行い、めまいに対する過剰な恐怖など自覚することから始まるようです。精神科の近藤医師は、第3世代認知行動療法の一つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピーのPPPDへの効果を報告しています。3世代認知行動療法とは、瞑想を利用したマインドフルネスを利用してネガティブな考えをつかまえ受容し対応していくやり方のようです。前庭リハと併用して行います。認知行動療法は、精神科医が誰でもできるわけではないようで一定の研修と臨床経験を必要とするようです。

通常の内科や耳鼻咽喉科の外来で行えるものではありません。

 

まとめ:

この疾患PPPDは、何科に行けば治るというものではなく、めまいに精通した耳鼻咽喉科医・神経内科や認知行動療法に精通した精神科・心療内科医がPPPDの疾患を良く理解して対応することが重要になると思われます。臨床心理士や理学療法士の協力を得ながら行うことが望ましいのですが、日本の保険医療制度では難しいのが現状です。日本めまい平衡医学会のめまい相談医から探されるのも方法です。

老年症候群、心因性めまい、薬剤性めまい、椎骨脳底動脈循環不全、外リンパろう、脳脊髄液減少症、上半規管裂隙症候群など慢性化しやすいめまい・ふらつきの原因をしっかり鑑別して行うことが前提です。

 

参考資料

慢性めまい治療における認知行動療法と 前庭リハビリテーションの役割:近藤 真前 Jpn J Psychosom Med 58:517-523, 2018

姿勢誘発めまい(PPPD)の診断基準:堀井 新 Equilibrium Res Vol.76(4) 316~322,2017

めまいリハビリ 五島 史行 金原出版

睡眠時無呼吸症と間違いやすい睡眠障害

2020-05-20

日本には睡眠に問題を抱えている人が多くいます。約5人に1人の方が悩んでいるのが不眠症です。睡眠に問題がある場合、不眠』『過眠』『睡眠中のいびき無呼吸や感覚・運動異常』『朝寝坊・早朝覚醒・昼夜逆転など覚醒時間帯の問題など考えて対応が必要です。不眠に加え食欲・意欲・興味の低下などがあればうつ病を疑います。

当院では睡眠時無呼吸症の患者さんを診察することが多いのですが、睡眠障害を背景にしたふらつき・めまい・耳鳴りやのど・舌の異常感の患者さんもよく診察しています。思春期のお子さんの場合、朝に起きることができない、ふらつく、学校にいけないなどの相談もあります。必要な方は精神科・心療内科・神経内科・睡眠医療専門病院への紹介も考え、睡眠障害のスクリーニングも必要な方は行っています。

睡眠時無呼吸症の症状は、日中傾眠・睡眠中のいびき無呼吸の他に、多彩な症状のため、うつ病、更年期障害、不眠症、頭痛持ち、前立腺肥大、発達障害、自律神経失調などとも間違えられることがあります。

睡眠時無呼吸症で生じるが、あまり知られていない症状

 起床時の頭痛  夜間頻尿  元気がない 

 うつ傾向  集中力がでない 

 朝の目覚めがわるい  寝汗 

 多動(小児) おねしょ(小児)

 学習障害(小児) 発育障害(小児)

など多彩です。

👉 日中傾眠が生じる睡眠時無呼吸症の症状と間違えやすい睡眠障害の病気を整理しました。皆さんの睡眠障害はどれになるか考えてみて下さい!!

睡眠不足症候群最も多い睡眠障害

日本人の睡眠時間は世界的にみても最も少ない国の一つで、50年前に比較して睡眠時間は1時間少なくなっています。

実際は、成人7~8時間 中高校生8~9時間 小学生9~10時間、幼稚園児10~11時間は必要とします。成人7時間、学生8時間以下は睡眠不足と考えられます。

10年後の死亡率の観点から、成人は約7時間が望ましいと考えられています。

しかし高齢者では、睡眠効率が悪くなり6時間程度で普通になります。高齢者では薬の影響や身体・心の疾患(夜間頻尿、疼痛、痒み、口渇、喘息や咳、逆流性食道炎、うつ病、認知症など)での不眠が生じやすくなります。

日本の統計では、現在中高大学生の就寝時間は0時頃のことが多く、学校に行くには6~7時に起床が必要なためほとんどの中高大学生は睡眠不足となります。

社会人の方も睡眠は5~6時間で大丈夫と考えている方も多いので、自分では気づかない慢性的睡眠不足・睡眠負債を抱えて生活していることになります。睡眠負債は、がん、生活習慣病、うつ、認知症などの発症リスクを高めます。経済的損失も社会的問題となります。寝て朝食をしっかりとらないと活動の質は高まりません。

日中の眠気でお困りの方は人口の1割程度いると考えられ、その大半が睡眠不足によるものです。平日の睡眠と休日の睡眠が、2時間以上の差があれば慢性的睡眠不足を考えます。週の後半に段々眠くなるようであれば睡眠不足が考えられます。

治療はまずは寝ることから始まります。

 

睡眠呼吸障害比較的多い生活習慣と関連する病気

睡眠時無呼吸症:男4~5% 女1% 50歳を過ぎると男女差はなくなってきます。不眠の方は将来、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に3~4倍なり易いと考えられています。閉塞性睡眠時無呼吸症の中等症〜重症になると、7〜8年後には20%〜30%の人が心筋梗塞や脳梗塞などで死亡すると報告されています。閉塞性睡眠時無呼吸症がほとんどで、中枢性の場合は少なく心不全の関与が指摘されていて特徴的いびきは確認できません。

精密検査目的で睡眠医療専門施設紹介することがあります。

当院コラム 睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?

当院コラム 睡眠時無呼吸症のマスク

全般的には、当院HP 睡眠時無呼吸症(OSAS)


 概日リズム睡眠障害ITの進歩や文明生活に伴い増加した病気

睡眠相後退症候群 罹患率0.13%程度 思春期は多く7%と増加します。不登校・会社遅刻となり社会的問題となります。

初期の症状は、学校・職場の居眠り、過食、イライラ、不注意などですが多彩です。

体内時計の調節異常のため、明け方まで入眠できず、悪化すると一旦入眠すると午後まで覚醒できないことがあります。単純に早く眠ることが出来ないだけで、覚醒が望ましい時間帯ではなく遅くなり難治な疾患です。精神障害、他の睡眠障害、自閉生活を生じやすくなります。薬剤による過鎮静などで二次的に同様の状態が引き起こされることもあります。半数でうつ病など心理的問題を抱えていると報告されています。

対応:

難治例は小児神経・精神科または睡眠専門医に紹介します。

うつ、双極障害、発達障害、ストレス反応の身体化など関与していることがあります。

軽度では、一例として望ましい睡眠時刻になるまで、毎日15分ずつ寝起きする時間を早くなるように調節します。朝は毎日朝日を浴びてバランスが良い朝食を取り、体内時計を少しずつ前進することから始めます。そこで睡眠日誌や睡眠アプリを活用します。

思春期のお子さんの7~16%程度は3時間程度睡眠相が後退していることがあるようです。

根気よく行う必要があります。

慢性的睡眠不足(7~10%程度)も関与していることもあり、毎日最低8時間就寝をまずは2週間持続してどういう変化が起きるか確認しましょう。

就寝前のスマホ・ブルーライトは止め、電球色にして強い光にあたらないようにします。

メラトニン関連の薬を使用することもあります。

当院コラム 食事と良質な睡眠

当院コラム 日の出と良質な睡眠

当院コラム よくわかる子供の漢方:起立性調節障害、ふらつき

なども参考にしてください。

睡眠覚醒前進症候群 多くはありませんが老人にみられます。夜、覚醒時に明るい光を浴びないようにします。

交代勤務睡眠障害者

一般 に、昼夜を逆転した場合、様々なリズム現象が、逆転された 昼夜の周期に同期するために要する時間は、ほぼ1週間 かかると考えられています、中年期以降では、睡眠・ 覚醒リズムの同調には、若年者と比べより長い時間が必要であることも判明しています。 35歳を過ぎた頃から、夜勤や徹夜が辛くなるのは、このためです。確率された治療法はありません。睡眠薬を安易に服用するようになります。

認知症による不規則型睡眠覚醒パターンは社会的に問題となっています。

 

不眠症皆んさんご存知の疾患

重症は精神科紹介

睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療ガイドライン2014年サイト

医師が、適正に睡眠薬を出せるように2014年にガイドラインが出来ました。

興味ある方は読んでみましょう。

睡眠薬乱用や依存が社会問題化しています。

今まで睡眠薬の投薬期間や休薬指針が明確でありませんでした。このガイドラインを参考に睡眠薬の使用を考え直します。

まず薬を使わない睡眠衛生から行います。

初期治療は単剤から行います。

不眠が回復(不眠なく昼間も調子よい)したら止め時を考え、少しずつ減量して休薬をトライします。

維持療法は治療のゴールを設定します、今までは漫然と長期服用が多くみられました

成人の30%以上が、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡困難などいずれかの不眠症状をもっています。20代ごろから加齢とともに増加して中高年で急激に増加します。男性より女性に多いと言われています。高齢者の二次的不眠の原因:夜間頻尿、頭痛、消化管疾患、気管支炎と気管支喘息、心血管障害、慢性の疼痛性、痒みの疾患、うつ病、認知症などの多数認めます。

睡眠関連運動障害あまり知られていないが比較的多い病気 

精神科・神経内科・睡眠医療専門施設へ紹介になることがあります

むずむず脚症候群 (RLS restless legs syndrome)

潜在患者を含め推定500万人 不眠症患者の1/10人

じっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢から腰・背中・手まで

むずむずする」「じっとしていられない」「痒い」「針で刺すような」「火照るような」「蟻やミミズなどの虫が這っているような

などの様々な異様な感覚が現われます。

患者さんはこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすらなければならない状況に追い立てられます。3分の1の患者では週に2回以上、中等症から重症の症状が起こります。特に夕方から夜間にかけて症状が増強し入眠障害をおこしたりして昼間の疲労感を引き起こし日常生活に大きな影響を及ぼします。下記の周期性四肢運動障害と合併することも多くみられます。

正確な原因はわかっていませんが、鉄不足、ドーパミンの機能低下が考えられています。

妊婦(1/5人)・透析・胃切除・鉄欠乏性貧血(フェリンチン50ng/ml以下・氷食・匙状爪)に多く、パーキンソン病、関節リウマチ、線維筋痛症、吐き気止め・統合失調の薬・抗うつ薬(SSRI)、中枢性抗ヒスタミン薬で起こることがあります。

対策:カフェイン、アルコール控えます。薬はフェロミア クロナゼパム少量 ドーパミン作用薬 レグナイトなど考慮します。

周期性四肢運動障害

高齢者に多いが睡眠時無呼吸症と同様、若・中年に較べ高齢者では健康への影響は小さいと考えられています。夜間に下肢や上肢にミオクローヌス様の不随意運動が繰り返し出現するため不眠もしくは日中の過眠が生じます。運動症状を自覚していない患者が多く、ムズムズ脚症候群に合併することもあります。

REM睡眠行動障害:

レム睡眠行動異常(REM sleep behavior disorder :RBD)とは、通常の行動や認知に問題はないが、レム睡眠の時期になるたびに体が動き出してしまう睡眠障害の1つ。突発性の睡眠障害で50~60代以上に多く見られます。レム睡眠時には脳は覚醒時に近い活動をして筋緊張は抑制されています。レム睡眠行動障害は何らかの原因で筋緊張の抑制が障害されるために夢で見たことをそのまま行動に移してしまいます。 粗大な四肢や体幹の運動、寝言(叫ぶ、泣く、笑う)や攻撃的運動、立ち上がって動き回るなどの異常行動がみられる20~30分が経過しレム睡眠が終わると再び通常の睡眠に戻ります。

原因:基礎疾患として、脳幹部の脳腫瘍、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レビー小体認知症などいくつかの原因が考えられていますが、約半数は基礎疾患を持たず、原因不明です。

診断:重要なのは寝言や睡眠時の異常行動が本人の見ていた夢と一致することです。

治療:クロナゼパム(第一)やパロキセチン、メラトニンなど

過眠症比較的稀な病気

睡眠医療専門施設、精神科、神経内科へ紹介します。

MSLT(反復睡眠潜時検査)が必要ですが、できる施設は日本睡眠医療学会認定医療機関など少数です。

ナルコレプシー:居眠り病と呼ばれます。脳の覚醒を維持する機能が弱く、REM睡眠機能調整障害です。 カタプレキシー(笑い情動脱力発作) 睡眠麻痺(金縛り) 入眠時幻覚などの症状を認め、Ⅰ型(脱力発作あり)2型は脱力発作なしの2タイプがあります。世界の有病率は1/2000人、日本では1/600人と外国より多い疾患です。日本は世界一短時間睡眠国のため睡眠不足の誤診が混入しているのではと考えられています。

車の運転事故の可能性があるため改善するまで運転を控える必要が出てきます。

対応:十分な睡眠をとる、薬はリタリン、モディオダールなどで登録医制度あり。

特発性過眠症:持続性あるいは反復性の日中の過度の眠気の発作を主症状とする睡眠障害の一種である。特発性過眠症の原因は判明していません。比較的稀な疾患であり、罹患率はナルコレプシーの1/10程度と推定されています。朝の寝覚めが悪く、頭が重い、頭が痛い、たちくらみ、めまいがするなどの症状が多く報告されています。

 月経随伴睡眠障害

まだ詳細がわかっていない領域です。月経前や月経時に過眠になり易くなる報告されています。月経周期後半の黄体期に入眠潜時が延長し、睡眠の効率が 悪化し、質的低下がみられることを報告されています。

 精神生理性不眠症

精神科紹介:眠れない日々を繰り返すうち、不眠への恐怖そのものにより不眠が増悪する悪循環に陥った状態。身体疾患、精神障害、嗜好品、生活習慣、薬剤などによる不眠と鑑別が必要。

ロングスリーパー 日本人の3~9%

先天的に睡眠時間が必要な方、10時間以上必要、病気ではなく体質、アインシュタインなどがそのようです。

睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?

2020-05-04

1時間あたりの無呼吸・低呼吸(10秒以上)が20回以上(AHI20<)に達するような中等症〜重症になると、7〜8年後には20%〜30%の人が心筋梗塞や脳梗塞などで死亡すると報告されています。CPAPマスク療法で、死亡率の改善が期待できます。

中等症AHIが20でも3分に1回10秒以上気流停止(無呼吸・低呼吸:AHI)が生じることを想像すると、怖い話です。

AHIが20以上あれば、死亡率の改善を期待し保険適応でCPAPマスク療法が認められています。子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのは普通ですので、AHI 1 でも OSASと診断されます。

睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療・検査につては当院HP睡眠時無呼吸症

CPAPマスク治療についての詳細は、当院院長コラム睡眠時無呼吸症のマスクを参照して下さい。

睡眠時無呼吸症(OSAS)を疑う症状

 毎晩、大きないびきをかく

 睡眠中呼吸が止まると言われる

 昼間いつも眠い

 口を開けて寝る(特に小児)

 

睡眠時無呼吸症で生じるが、あまり知られていない症状

 起床時の頭痛

 夜間頻尿

 元気がない

▢ うつ傾向

 集中力がでない

▢ 朝の目覚めがわるい

▢ 寝汗

 多動(小児)

 おねしょ(小児)

 学習障害(小児)

 発育障害(小児)

睡眠時無呼吸症の症状は多彩のため、うつ病、前立腺肥大、更年期障害、不眠症、頭痛持ち、発達障害、自律神経失調などとも間違えられることがあります。

👉 なぜ睡眠時無呼吸症(OSAS)が起こるのでしょうか

 肥満

 鼻閉

③ 加齢

 エストロゲンの低下(更年期以降)

 鎮静作用の薬剤やお酒

 子供のアデノイドや扁桃肥大

 小さい顎

など睡眠時無呼吸症は様々な原因で起こってきます。

 

原因の解説と対策

 肥満

誰もがご存知の肥満は、成人で最も多い原因です。特に皮下脂肪が関与します。

3%ダイエット:

内臓脂肪型肥満は、3~6ヶ月で体重3%減らす、皮下脂肪型肥満は、6~12か月で体重の3~5%減らす目標達成すれば、また3%ダイエットを試みます。

毎日体重測定:なぜ体重が増加したのか毎日考えます。

リバウンド対策:

筋肉は糖を取り込む作用がありエネルギーを多く消費するので、筋肉量を増やしながらできる運動を勧めます

インターバル速歩,  自転車こぎ, 水中歩行など筋肉が落ちない運動を行います。

急激な減量をしない事

極端な食事制限で大幅に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉量が減ります。筋肉量が減ると消費エネルギー量が減り、糖質や脂質がたまりやすくなり、痩せにくくなります。

ダイエットの具体例

糖質制限ダイエット

地中海式ダイエット

時間栄養学ダイエット

お金をかけない肥満&健康対策:当院コラム

  鼻閉

小児の場合は鼻閉があれば、急に睡眠時無呼吸症(OSAS)が悪化します。すぐに治療が必要です。成人の場合、鼻閉そのもののOSASへの関与はありますが低く、CPAPマスク治療の弊害となりますのでCPAPマスク治療者は同時に鼻の治療を行います。

 ③ 加齢

加齢に伴いのど周囲筋肉がたるみOSASは悪化します。後期高齢者では中年の方のように命への危険性に関してのリスクはわかっていません。昼間の傾眠だけでなく元気がない、夜間頻尿などの症状を参考にCPAP治療を行うか判断します。OSASを認知症や老年期うつと間違えることもあります。

 女性のエストロゲンの低下(更年期以降)

睡眠時無呼吸症(OSAS)性差医療です。若い方の罹患率は、女性は男性の1/5程度です。しかし更年期以降エストロゲンの低下により女性もOSASが悪化し60歳ごろから急に増加してきます。症状も典型的でなく疲れやすい、元気がない、朝の目覚めの悪さなど更年期障害や自律神経障害と勘違いするようなこともあります。女性の無呼吸は低呼吸のことが多く、夜間のいびき・無呼吸も穏やかに感じわかりにくいことがありますので注意しましょう。女性のCPAP普及率は低いのが現状ですので、60歳前後からの啓発が必要です。

 鎮静作用の薬剤やお酒

睡眠薬・精神薬服用でのど周囲の筋肉が弛緩していびき無呼吸が悪化します。お酒も同様の作用がありますので、飲み過ぎは注意が必要です。

 子供のアデノイドや扁桃肥大

アデノイドは鼻の奥の上咽頭組織で通常の診察では確認できません。

子供は、いびき・無呼吸・口呼吸だけなく、夜尿症、多動、学習障害、発育障害などにも注意して観察します。子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのが普通ですので、AHI で、OSASと診断されます。

子供の場合、成人と違い肥満の関与は低く、2~3歳ごろから生理的に大きくなるアデノイドや扁桃が子供のOSASの原因です。風邪でアレルギー性鼻炎・鼻副鼻腔炎がひどくなると鼻閉が悪化して急にOSASが悪化します。すぐに耳鼻咽喉科で治療が必要です。治療しても改善が悪いときは、アデノイドや扁桃の切除術を考えなければなりません。耳鼻咽喉科では、レントゲンだけでなく電子スコープでアデノイドの大きさと表面の炎症を確認して治療をすすめます。子どもの場合、風邪をひかなくなる夏に、一時的のこともありますが改善することがあります。生理的にアデノイドは7歳以降少しずつ小さくなるので、保存的治療を頑張ってもらい手術を回避することも行います。

成人と違い、子供の場合、簡易検査の精度は低く、終夜監視睡眠無呼吸検査(精密検査)は、子供を行う検査施設は非常に少ないためビデオモニタリング(当院HP睡眠時無呼吸症を参照)や様々な症状ファイバーなどの局所所見で、子供のOSAS治療の第一選択である手術などの方針を総合的に決めることが一般的に行われます。

 小さい下顎

顎が小さく、うしろに後退した形状はOSASの原因です。現代人は、食べ物が軟らかくなり噛まなくなったため昔に較べ小顔となり下顎も小さくなったと考えられていますが、原因ははっきりしません。幼少時からの鼻閉・口呼吸も顎顔面発育に影響を与え、歯並びの悪化や顎が小さくなる原因と考えられていて将来のOSASの予備群となります。鼻閉と口呼吸の習慣を幼少時から改善させることはお子さんの将来にプラスになると思われます。

睡眠時無呼吸症のマスク(CPAP)

2020-04-29

 

世界中が新型コロナに振り回されている中、欧米でもマスクの有効性が見直され世界中でマスクの争奪戦が行われています。今回は感染対策としてのマスクの話ではなく、睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療で行うCPAP療法のマスクについての解説です。CPAP: continuous positive airway pressure

CPAPマスク治療の進歩

1970年代は、OSASの治療として気管に穴を開ける気管切開が行われていました。その後1980年代に外科的治療はせず、鼻から空気を入れのどを広げる掃除機を改良した機械のCPAP鼻マスク治療がオーストラリアで行われ気管切開と同等の効果が得られることがわかりました。その後マスク・機械・AIの進歩に伴い機械の小型化が進みAIで自己判断するオートCPAPが現在では主流になっています。同時にマスクの改良や種類が増え、より快適な睡眠のもとにCPAP治療が進化しています。以前は使用状況のデータをSDカードに入れて通院時に患者さんに持参してもらっていましたが、ここ1~2年で、オンラインで使用状況をクリニックから確認できるようになりました。

👉 機械を横に置きマスクを着け毎晩寝るため慣れずに継続できずに途中で中断する方もいます。以前うまくできず中断した方も、今の進歩したCPAP治療ではうまくいく可能性もありますので、再度検討してみてください。

肥満者だけが起こすわけでなく、肥満なしでも、小顔、顎が小さい、二重顎の方は起こす確率が上がります。小顔指向の若者や性ホルモンが減少する更年期以降の女性も注意しましょう。

OSASに最も効果が期待できるCPAPマスク治療

症状の改善(昼間の傾眠、夜間頻尿、朝の頭痛)

命を守る(脳梗塞、心房細動、心筋梗塞、高血圧などの予防)

の効果が期待できます。

一日4時間以上装用できることで、心疾患への効果が期待できます。

現在のOSASの治療

現在のOSASの治療で、第一は肥満の方は減量、CPAPマスク療法は効果が最も期待できる保存的対症療法です。ほかに顎を前に出すマウスピース治療(歯科的治療)が補助的治療と考えられています。大人の咽頭・扁桃の手術治療は再発が高く、扁桃肥大が顕著でなければ、現在推奨されなくなっています。大人の鼻の手術はCPAPの導入をしやすくするために行われることがあります。小児のOSASでは手術が第一の治療です。

詳しくは当院HP睡眠時無呼吸症を参照して下さい。

👉 様々なマスクの種類:ネーザル、ピロー、フルフェイス

鼻マスクタイプ(ネーザル)鼻を覆うマスク

最もよく使用されているマスクのタイプで、安定感あり。頭部のヘッドギアを強く締めすぎるとマスクと鼻根部に跡が残ることがあります。

AirFit N20(レスメド)

視界の制限をなくした小型ネーザルマスク(メガネ使用可能)です。最近、ネーザルマスクの中でも当院で最も使用されているタイプです。

AirFit N20 マスク説明サイト Pmda)

F&PネーザルマスクEson 2(Fisher&Paykel Healthcare)

確かな装着感とほどよい密着性を実現したマスク。

F&PネーザルマスクEson2詳細 Fisher&Paykel Healthcare HP)


 

 

ウイスプネーザルマスク(フィリップス):

ネーザルマスクとピローマスクのメリットを融合した新しいマスクで、前述の小型ネーザルマスクのレスメドAirFit N20と同じようなコンセプトです。

ウイスプネーザルマスク(フィリップス HP

従来のネーザルマスク利点:フィット感、快適性

不利な点:接触面が大きく皮膚への刺激の可能性あり,視界を制限することがあります。

従来のピローマスクの利点軽量、視界が広く接触面が小さい。

不利な点:空気の圧力に制限、鼻の入り口への直接的な不快感あり。

 

 

鼻内マスク(ピロー)

鼻の入り口に少しだけ差し込んで使用するマスクです。圧迫感が最もないタイプのマスクなので、マスクの締め付け感が辛い方にはおススメで、解放感がありますが、寝返りで外れやすいことがあります。使用感は慣れが必要です。鼻腔入り口の粘膜に少しあたりますので鼻前庭の炎症に注意が必要です。このタイプの選択は慎重に行います。

P10 AirFitマスク(レスメド)

46gの軽量、高い静音性。

ピローサイズ:XS S  M  L

AirFit P10マスク解説サイト Pmda)

 

 

ミラージュスイフトFXマスク:女性向けレスメドHP

ヘッドギアに軟らかいシリコン素材使用して締め付けなくても顔のラインにフィットします。ヘアスタイルもくずれにくい軟らかさです。

ピローサイズ:XS S  M

 

 

ドリームWear(フィリップス):新しいデザインのピロータイプのネーザルマスク

ドリームウエアネーザルマスクフィリップスHP)

鼻の入り口に横長の空気を通すフレームマスクを当てるタイプです。CPAPへの呼吸回路の接続ホース部が、前述の2タイプと違いマスクに接続せず、頭頂部になるため寝返りが打ちやすく、頭頂部からフレーム内に空気を通すことで、寝返りの際も呼吸回路と接続部が邪魔になりません。何もつけていないような解放感が得られメガネの装着や寝る前の読書も可能です。少しマスクがずれやすくリーク(漏れ)が多くなりがちなのが欠点です。

 

鼻口マスク(フルフェイス)

鼻と口覆うタイプのマスク、最初からこれを選択する人はいませんが、中にはフルフェイスがすごく良いという方もいますのでうまくいかない方は試す価値はあります。鼻閉などで口を開いてしまう方が使うことが多くなります。乾燥感・圧上昇・空気漏れ・睡眠中の舌を押し込んで無呼吸を引き起こしてしまう等にディメリットがあります。これを選択する前に口を閉じる習慣を身に着けることが優先されます。また鼻が悪ければ耳鼻咽喉科受診をしましょう。

F20 AirFitマスク(レスメド)

メガネ装着可能、より多くの人にフィットすることを目指したフルフェイスマスク。

Pmda: Air Fit F20 マスク(説明サイト

F30 AirFit マスク 最小接触面フルフェイスマスク(レスメド)

メガネ装着可能、マスク上方を短くし、鼻の背部への接触を軽減して快適性を向上させたもの。

ニュースAir Fit F30マスク説明サイト

 

 

マスク協力CPAPメーカー

TEIJIN

お子さんのめまい・ふらつき・立ちくらみ

2020-03-30

めまい・ふらつき

 

お子さんのめまい・ふらつきは成人に較べ非常に少なく、耳からのめまいは成人の1/100程度と考えられています。疾患が少ないため、医師の経験不足も認められる領域です。

お子さんは成長過程のため、小学高学年頃から思春期にかけて成長過程の症状でもある起立性調節障害によるめまい・ふらつき・立ちくらみが増えてきます。男性にも認めますが、特に女性は成人同様の貧血によるふらつきもこの頃からから多くなります。小さいお子さんの場合は、自分のことをご両親に伝えることが苦手のため診断を難しくしています。

今までの日本からの報告では、子供のめまい・ふらつきの原因で多いのは起立性調節障害(OD)と考えられていました。海外の子供のめまい報告では片頭痛関連めまい(VM)良性発作性めまい(BPV)が多く報告されています(両疾患で約40%程度)。以前、日本では疾患概念として良性発作性めまい(BPV)や片頭痛関連めまい前庭性片頭痛:VM))は医師の中でもなじみが薄い疾患でした。最近、この疾患概念が普及してきて日本でもVMやBPVが小児のめまいの原因として報告されるようになってきています。VMは反復する難聴や音過敏もあり耳からのめまいとの鑑別を必要とします。起立性調節障害頭痛が出現することも多く片頭痛との鑑別を難しくします海外の統計では頭部外傷によるめまいは3番目に多く心因性めまい前庭神経炎比較的多く認めます。稀ですが、小児のめまいの特徴として脳腫瘍、側頭葉てんかん、内耳奇形、ムンプスなどの感染によるものも認められます。原因不明が30%程度認めるようです。

ポイント!!

お子さんのめまい・ふらつきの原因成長過程の貧血や起床時の低血圧・起立性調節障害(OD)だけではなく、将来片頭痛に移行することもある幼児期に多い良性発作性めまい(BPV)や、学童期以降に多い片頭痛関連めまい(VM)が多いことがわかってきました。ODと片頭痛は併存する傾向があります。小児の片頭痛は成人と違い、後述の小児周期性症候群として現れることがあります。BPVとVMは今まで日本では医師の間でもなじみが薄い疾患概念です。

追記片頭痛は子供に多いアレルギー性鼻炎と併存することも多く頭痛の原因が鼻からか片頭痛からか治療経過で見分けることも必要になります。

 

小児良性発作性めまい(BPV)海外学童の有病率2.6%幼児

海外学童の有病率は、2.6%と高く、日本での報告少ない疾患です。疾患概念が医師に浸透していない可能性があり、最近、日本でも報告が増加しています。小児に特有な片頭痛の一つと考えられています。海外の報告では子供のめまいの約20%が、この良性発作性めまいによるものです。ぐるぐる回るような感覚や、回って倒れるような感覚を感じるめまいで、2〜4歳頃に発症することが多く、通常は成長とともに症状が消えます。原因はよくわかっていませんが、めまいの多くは数秒から数分しか続かず数時間持続は稀、めまいが起きていない間は特に異常は見られません。なお、良性発作性めまい患者の半分は家族に片頭痛持ちがおり、患者の一部は将来片頭痛を発症しています。

良性発作性めまいの診断基準( Benign Paroxysmal Vertigo:BPV)

➊前触れなく生じ,発現時の症状が最強で,意識 消失を伴うことなく数分~数時間で自然寛快する回転性めまい発作

❷下記の随伴症状・徴候のうち少なくとも1 項 目を満たす

  1. 眼振, 運動失調,3. 嘔吐,4. 顔面蒼白, 5. 恐怖

➊および❷を満たす発作が5回以上

❸発作が無いときは正常

回転性めまいを持つ年少児が,ぐるぐる回る 症状を説明することは難しいかも知れません 発作的な落ち着きのなさが親によって観察される場合これが年少児の回転性めまい発作を説明しうることがあります。

 

前庭性片頭痛(VM)によるめまい・ふらつき・頭痛学童

今まで、めまい患者さんが、頭痛を訴えても、脳卒中や脳腫瘍以外では、関連を疑うことは今まではあまりありませんでした。最近では、頭痛外来の片頭痛患者の半数以上に何らかのめまい症状があり、片頭痛とメニエール病の共存率も高いと知られています。前庭性片頭痛という疾患単位として診断基準が確立されたのは近年(ICDHβ3 2013年)のことです片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)は、今まであまり知られていなかったため、難治性や原因不明のめまいの患者さんの中にかなりの割合で含まれていると考えられています。

学童以降、最近では子供のめまいの約20%がこの病気によって起きていると考えられてきました。発症しやすいのは12歳頃です。発症すると片頭痛とともに、日常生活に支障をきたすほどの回転するようなめまいや、ふらつきなどが現れます。前庭性片頭痛は特に前触れもなく症状が出ることもあれば、頭を動かしたり、目の疲れ、心理的なストレスなどがきっかけとなって症状が出ることもあります。めまいの持続時間は、短いと数分、長いと数日続くこともあり、場合によりまちまちです。

診断(成人)

過去も含め片頭痛症状がある

めまい前後に頭痛がある

めまい症状は、自発性めまいや視覚刺激・頭部運動で誘発されるめまいや浮動感(回転性めまいが多いが、一部に浮動感あり

少なくとも5回のめまい発作で、5分~72時間持続

めまい発作の少なくとも50%に1つ以上の片頭痛兆候(頭痛、光・音過敏、前兆)がある

めまい発作時は、高度難聴はなく、耳鳴・耳閉感のあることは多い

生活で注意点と対策(成人)

強い光、騒音、人混みを避ける

寝過ぎ寝不足を避け、休日も普段通り

ストレス回避

ワイン、チーズ、アルコール、チョコは避ける

赤系サングラスを選ぶ

片頭痛発作時は、静かな暗い場所で安静または睡眠、冷たいタオルで痛む箇所を冷やします。

お子さんの場合家族特に母親の片頭痛歴や乗り物酔いのしやすさ片頭痛の診断の助けになります。治療は成人と同様の薬が使えないことが多くあります。

 

小児周期性症候群(小児に特有な片頭痛

国際頭痛分類第2版では,小児に特有な片頭痛として 小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)が加えられています.小児周期性症候群には下記のものが含まれます.頭痛がなくとも,周期的に吐いたり,腹痛やめまいを起こす場合も片頭痛の仲間に入れられています.

周期性嘔吐症(CV) 海外・国内共に報告が多い

過去1年に3回以上のエピソード、発作時以外は健康 嘔吐は1時間から数日持続。ストレス、感染、疲労、食事(チーズ・チョコなど)、生理などが誘因となります。夜間・早朝に発症、片頭痛の治療薬が効果を認めることが多くあります。小児5歳、成人35歳が発症の平均値で、成人にも発症します。軽症は2~5年で自然軽快します。

腹部片頭痛(AM) 海外有病率1~4% 日本での報告少ない

CVと違い嘔吐は少なく、腹痛が主の症状です。発症は3~15歳で8歳が平均値です。大部分の小児は、将来片頭痛に移行します。1~72時間持続する腹痛(臍周囲、正中部または局在に乏しい)。発作時は悪心・嘔吐・食欲不振・顔面蒼白などあり。

小児良性発作性めまい(BPV) 海外学童の有病率2.6% 日本での報告少ない、詳細は前述。

 

起立性調節障害(OD)による立ちくらみ・ふらつき・頭痛

子供のめまいは起立性調節障害によって起きることもあります。この障害は自律神経の異常や水分の摂取不足などによって起き、めまい以外に朝起きにくくなったり、吐き気や倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などを感じることがあります。10〜16歳頃に発症しやすく、小学生では約5%、中学生では約10%以上の子供が発症しています。起立性調節障害の症状は、思春期には健常な子どもでも自覚することがしばしばあります。すべてを疾患として扱う必要はありませんが、生活に支障をきたしている場合は疾患として扱い、診察を受ける必要があります。

起立直後性低血圧:起立直後に強い血圧低下および血圧回復の遅延を認める。ODの20%程度あり最も多く認めます。起立直後のめまい・ふらつき・立ちくらみ・頭痛が主な症状。

体位性頻脈症候群:起立直後性低血圧の次に多い病態です。起立性低血圧をきたさずに頻脈だけが生ずることになります。頭痛・倦怠感が強くなるタイプです。起立3分以後 心拍数増加≧35/分または、心拍数≧115/分。

遷延性起立性低血圧:起立3~10分経過して収縮期血圧15%以上または20mmHg以上低下。

神経調節性失神:起立中突然の意識低下

起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神の詳細な診断には、ヘッドアップティルト試験が必要です。

鹿児島医療センター循環器内科ヘッドアップティルト試験サイト

ヘッドアップティルト試験youtube動画で詳細な解説あり

ODについては、次のサイトで確認して下さい。

起立性調節障害(日本小児心身医学会:サイト

よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛当院コラムサイト

 

耳からのめまい体調不良ではできないことがあり

良性発作性頭位性めまい:成人では最も多い耳からのめまいです。小児では耳石の変性は少なく稀、外傷が関連することがあります。

メニエール病とは、めまいと吐き気の発作が繰り返し起こる病気で、耳鳴りや難聴を伴うことも多くあります。30〜50歳頃にかかりやすいとされていますが、子供でも小学生ごろから発症することがありますが稀です。

前庭神経炎:突然めまい症状が出現しめまいは数ヶ月に及ぶこともあります。耳鳴り難聴はありません。男性にやや多く,発症年齢は50 歳代に多い。上気道感染の先行する症例が多く、前庭神経節に潜伏感染している単純ヘルペスウイルス1型の再活性化により前庭神経炎が発症するとの説も提唱されていますが、抗ウイルス薬は前庭神経炎に対して効果がありません。海外の子供のめまいの報告では、BPV,VM,頭部外傷の次、4番目の多さとなっています。日本では子供の発症は稀です。

 

貧血によるふらつき貧血や全身状態を把握するため

乳幼児期:出生時に蓄えていた鉄は6ヶ月頃までに低くなり、鉄分の補給が必要離乳食を開始し、鉄分を補給します。特に未熟児で生まれると鉄分の蓄えが少ないため、貧血はより強く出ます。離乳食がうまく進まなかったり、食べている食品中に含まれる鉄の量が少なかったりすると、鉄分の摂取が不足します。また、急激な発育・成長によって、今まで以上に鉄分が必要となることで鉄分が不足することがあります。加えて、過度の牛乳摂取による貧血が生じることもあります。

思春期体の急激な成長によって多くの鉄分が必要となりますが、このときの鉄分は通常の食事では賄いきれない場合が少なくありません。女子では生理によって血液が失われるため貧血を起こすことがあります。特に女子では過度のダイエットによる鉄分の摂取不足も貧血の原因になります。このほか、激しい運動によるスポーツ貧血(緩衝材入りの靴を履き予防)が起こることもあります。

参考資料

小児めまいの取り扱い:堀井 新 小児耳 2016; 37(3): 300‐304

小児のめまい:五島 史行 小児耳 2011; 32(3): 305‐309

子供のめまい:OD 田中 秀高 Equilibrium Res Vol.71(2) 53~60,2012

子供のめまい:五島 史行 脳と発達 2017;49 237‐42

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