吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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お子さんの中耳炎の疑問に答えます:パート1(家庭の医学編)

2021-01-10

中耳炎

家族からの質問編

耳に洗髪や入浴の水がいると中耳炎になりますか?

子供に中耳炎が多いのはなぜ?

子供の中耳炎は何科がみる?

最近の子供の中耳炎は軽症化しているの?

鼻吸いで中耳炎の予防ができますか?

急に耳が痛いときはどうする?

おしゃぶりで中耳炎が悪化しますか?

赤ちゃんのミルクで中耳炎が悪化するの?

赤ちゃんを飛行機にのせても大丈夫?

中耳炎になると聞こえなくなるの?

中耳炎・発熱で入浴は大丈夫?

中耳炎で保育園・幼稚園は言ってよいですか?

中耳炎でプールに入ってよいですか?

中耳炎は自然に治るの?

中耳炎で頻回な通院は必要?

 

解説

家族からの質問編

耳に洗髪や入浴の水がいると中耳炎になりますか?

中耳炎は鼻の奥の上咽頭耳管を通して感染炎症が中耳まで波及して起こしますので、耳に水が入っても鼓膜がブロックしてくれて中耳炎はおこしません。但し、鼓膜に穴があると耳に水が入れば起こすことがあります。また入浴や温泉プールで深く潜ると、耳抜き機能の耳管の圧調整がうまくいかず中耳炎をおこすことがあります。鼻の奥に炎症があると生じやすくなります。

子供に中耳炎が多いのはなぜ?

鼻と子供の中耳炎(当院コラム)を参考に!!

中耳炎は、鼻の奥の耳管を介して感染・炎症が波及して生じます。

次の三つの因子が重要です。
耳管の未熟性(耳管とは鼻の奥から中耳につながる管のこと)未熟な免疫 ③易感染と薬剤耐性

耳管の未熟性
乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。学童のころになると成人に近い耳管構造となり、中耳への感染が波及しにくくなります。

未熟な免疫
赤ちゃんは母体から胎盤を経由してもらった免疫を持って生まれますが、5~6ヶ月頃には尽きてしまい風邪を引き易くなります。かぜを予防するIgG免疫グロブリンは、2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人並みになります。

易感染と薬剤耐性
免疫が十分でない乳幼児のお子さんは、サークルや集団保育に参加することが多くなり、周囲から風邪のウイルスや細菌をもらいやすくなります。

集団保育のお子さんたちは、風邪をひく機会が多く、そのたびに抗生剤を服用する機会が多くなり、必然的に薬剤耐性菌が子どもたちを介して広がっていきます

 

最近の子供の中耳炎は軽症化しているの?

急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)を参考に!!

ここ10年次第に、急性中耳炎への鼓膜切開の回数が、減ってきています。鼓膜切開は重症中耳炎の急性期治療手段の一つです。重症中耳炎を何度も繰り返すとき鼓膜チューブ挿入術を行うことがありますが、チューブ挿入術も減少していて欧米でも同様の傾向です。最近のワクチンの普及と2010年頃発売された新規抗生剤の効果もあり、中耳炎が治りやすくなっていると思われます。昨年からの新型コロナの時代では、感染対策が行き届き風邪をひかなくなり、中耳炎そのものの減少がおこっています。

小児疾患全般でも、鹿児島県の小児入院患者数が2005年9万人から2014年6万人へ減少しています。細菌性ヒブ髄膜炎は、鹿児島で年間10~12人発症が、今はゼロとなりました。厚労省の報告でも、小児入院患者数が1999年からは2011年には65%に減少、同時期の小児人口の減少は95%程度ですので、全国的にも小児入院患者数が減少は明らかな状態です。外来患者数が減っているわけではないようですので、重症の患者さんが減って、外来で通院対応できるようになったと考えられます。呼吸器疾患では、小児喘息の患者さんの入院が、吸入ステロイドの普及で減少し、小児肺炎の入院が減っているようです。

子供の中耳炎は何科がみる?

急性中耳炎の治療の変化:治療から予防へ(当院コラム)を参考に!!

日本では、耳鼻咽喉科が診察することが多いとも思いますが、欧米では、小児科や家庭医が診察することが多く、外科的治療が必要な場合に耳鼻咽喉科へ紹介となることが多いようです。本邦では、欧米より薬剤耐性菌が多く中耳炎が難治化していることや欧米との医療体制の違いもあります。

最近では、ワクチンの普及と抗生剤の新薬の効果もあり、中耳炎の軽症化や鼓膜切開および鼓膜チューブ挿入術の減少に伴い、本邦でも、小児急性中耳炎を耳鼻咽喉科医より小児科医や救急医・家庭医がみることが多くなっています。小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版では、重度の中耳炎の鼓膜切開の適応について、耳鼻咽喉科以外の医師のことも考え鼓膜切開が可能な環境では実施を考慮とオプションとしての選択となっています。

鼻吸いで中耳炎の予防ができますか?

鼻水・鼻詰まりがあれば鼻吸いは定番になっているようです。赤ちゃんの鼻閉はおとなのように口呼吸がうまくできないため、容易に哺乳不良、不機嫌、息苦しさが出現します。鼻の奥(上咽頭)から中耳炎はおこすため、鼻汁を外にだしてあげることは、赤ちゃんの症状の改善や中耳炎へ一定の予防効果はあると思われます。 但し、効果の限界と弊害にも注意しましょう。

弊害鼻の入り口は非常にデリケートな場所で特に赤ちゃんは容易に傷つきやすくやり過ぎると粘膜炎症からカサブタがつきやすくなり逆効果となります。鼻が少し通りやすい入浴後など粘膜が湿潤している時は鼻吸いのタイミングです。赤ちゃんは成長するにつれ、押さえるのも大変で、鼻吸いによるストレスの方が大きくなり2歳以降は、鼻吸いより自分で上手に鼻をかむ練習(片方ずつゆっくり)をしましょう。鼻をかむことも成長のステップと考えて下さい。

効果の限界鼻吸いは鼻の粘膜腫脹には効果はありません。鼻水に対しても、自宅鼻吸いや先が丸い透明のオリーブ管鼻吸引でとれるのは、主に鼻の前方の鼻汁です。鼻粘膜腫脹があれば効果はわずかです。中耳炎の予防や難治性鼻閉で最も問題なのは、鼻の奥の耳管に通ずる上咽頭の炎症や鼻汁です。鼻吸いやオリーブ管鼻吸引では、上咽頭までうまく対応できません。鼻汁の粘ちょう性が強ければ吸引効果は尚更減弱します。耳鼻咽喉科での処置は上咽頭を含めた対応を行っていますのでご相談して下さい。

 

急な耳痛時はどうする?

耳痛&夜間対応(当院HP疾患)を参考に!!

お子さんの場合は中耳炎の可能性が高くなります。

長期に持続するいたみでなければ、夜間はカロナール(アセトアミノフェン)など解熱鎮痛剤で応急処置を行い、翌日の耳鼻咽喉科受診で問題ありません。小さいお子さんがいる家庭では、解熱鎮痛剤の常備は必要です。

他の原因として、外耳炎やおたふく、首のリンパ節炎、扁桃咽頭炎からの放散痛のこともあります。外耳炎の場合、耳介を引っ張って痛い、耳いじりや耳掃除後から出現することが多く、中耳炎の場合、耳閉感、難聴を伴います。嚥下に伴い痛い場合は、のどや顎からの放散痛の可能性も考えます。首をさわって痛い場合、頸部のリンパ節炎やおたふくの耳下腺炎の初期のこともあります。最近は稀ですが、耳の後ろが腫れる中耳炎の合併症の乳様突起炎は、緊急入院となります。

 

おしゃぶりで中耳炎が悪化しますか?

乳幼児におしゃぶりを止めたグループでは2~3割程度、急性中耳炎が少なかった報告があります。おしゃぶりは、鼻呼吸の習慣、精神安定など効果はあるようですが、歯並びへの悪影響、中耳炎への影響もあるため、乳歯が生えてくる時期と集団保育・サークル活動を始める1歳までにやめるほうが望ましいでしょう。

赤ちゃんのミルクで中耳炎が悪化するの?

ミルク性中耳炎といわれていますが、医学的には頭位・体位性中耳炎と考えます。言葉からは、臥位や添い寝をしてミルクを飲ませると直接鼻の奥へ逆流し耳へ波及すると考えてしまいますが、実際は、ミルクを飲み、飲んだ後の胃食道逆流が原因で鼻の奥から中耳へ波及することで中耳炎が生じると考えられています。ミルクだけでなく母乳も飲ませたら背中を軽く叩いてゲップをさせて大丈夫となって寝かせると防げます。ミルク、母乳を飲ませてすぐに横にすると、赤ちゃんの胃食道は未熟なため逆流をおこしてしまいます。赤ちゃんが、咳や泣くだけで吐くのもそのためです。ミルクが原因ではなく、飲ませてすぐに横にすることが問題です。右を下に寝かせる右中耳炎を生じやすくなります。

赤ちゃんを飛行機にのせても大丈夫?

耳抜きが問題となる成人に多い航空中耳炎を心配されると思います。乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため気圧の調整は容易にできる構造になっています。ミルクを飲んだり泣くだけで耳管が開きやすく航空中耳炎は生じにくいと考えられますその代わり、鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。鼻汁・鼻閉時は、赤ちゃんも航空中耳炎を注意しなければなりません。赤ちゃんの免疫力、飛行機内の特殊な環境、授乳回数、首の座りの問題なども考えて搭乗を考えて下さい。

 

中耳炎になると聞こえなくなるの?

成人の急性中耳炎は多くありませんが、内耳に波及したり、慢性中耳炎・好酸球性中耳炎が背景にあると回復しない感音性難聴が生じることがあります。急性中耳炎は、7~8割程度の乳児が、一度は経験するありふれた病気です。現在はすぐに治療を行うこともあり、通常の中耳炎から回復しない感音性難聴の後遺症はあまり経験しません。中耳炎が回復すれば聞こえも戻ります。

但し、一部は難治性の反復性中耳炎、慢性滲出性中耳炎、癒着性中耳炎、鼓膜穿孔を伴う慢性中耳炎、真珠性中耳炎などになり、外科的治療が必要になることもありますし、長期間難聴のため言語発達にも注意が必要となります。小児でもこのように慢性の中耳感染が反復すれば、長期的には、感音性難聴の後遺症が出現することがあります。

中耳炎は治せる難聴ですが、感音性難聴は、急性期(初期2週間程度)以外は回復困難と考えられています。乳幼児の難聴で中耳炎以外では、先天性感音性難聴(1/1000人)や回復が困難なムンプス性重症感音性難聴(予防には、おたふくワクチン2回推奨)が問題になります。

発熱と入浴について

中耳炎・発熱で入浴は大丈夫?

発熱・免疫・入浴(当院HP疾患)を参考に!!

元気があり38度未満で嘔吐下痢がなければ入浴は問題ないと思います。
湯冷めしない配慮は必要です。入浴は乳幼児の鼻閉に効果があり、のどへ加湿を行い、皮膚を清潔に保ちます。細菌に対する抵抗力を高め、新陳代謝を亢進するなどの効果が期待できます。潜ることは控えてください。

 

中耳炎で保育園・幼稚園は言ってよいですか?

全身状態が良い中耳炎の登園は問題ありません。但し、急性中耳炎は急に進行することがあります。朝、耳痛で受診し午後から急に悪化して再受診のこともありますので、発病初期は、急な進行を想定していてください。発熱なく全身状態がよくて幼稚園に行くことができても、場合によっては耳痛や発熱が急に出現して、電話で呼ばれることもあると思って下さい。

中耳炎でプールに入ってよいですか?

プールに入ってもよいですか?耳鼻の病気(当院コラム)を参考に!!

急性期と耳漏が多量の場合禁止です。急性中耳炎(耳痛と発熱などあり)では最低1~2週間禁止となります。鼻漏を認めるときは再発のリスクが高いと認識することです。鼓膜穿孔や鼓膜チューブ挿入の場合は、耳栓・水泳帽を使用し、潜水や飛び込みは控えます。滲出性中耳炎は、プールは可能ですが、担当医と相談しましょう。

 

中耳炎は自然に治るの?

小児の7割弱は、3歳までに一度は中耳炎に罹患します。その3~4割は3回以上も起こす乳幼児には、ありふれた疾患です。軽い中耳炎の場合、乳幼児の訴えはわかりにくいこともあり、病院にいかないで自然に改善していることもあると思われます。診断された軽症急性中耳炎は、痛み止めだけで抗菌剤を使用せず、数週間以内に自然に改善することもあります。難聴が主の滲出性中耳炎も数ヶ月で自然回復することもあるため、3ヶ月は、経過を見ることになっています。2歳未満、保育園・幼稚園などの集団保育、両側罹患、鼻・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の合併があれば自然治癒は低くなり、特に鼻炎症状が持続すれば中耳炎はなかなか治りません。高熱・耳痛を反復する中耳炎(反復性中耳炎)、長期難聴のため言語発達に影響する中耳炎(慢性滲出性中耳炎)、危険な中耳炎、大きくなっても改善しない慢性中耳炎など、最初から診断できることは少なく、数ヶ月~数年の経過の中で聴力・鼓膜所見を参考に判断されるものです。中耳炎は自然治癒することもある疾患ですが、難治化することも多くあるため、乳幼児の間は、長期的視点での対応が必要になります。

中耳炎で頻回な通院は必要?

担当医により対応が違うことがあります。

急性中耳炎、遷延性中耳炎の場合

急性中耳炎の耳漏が持続する場合や、中耳炎に合併する鼻閉・鼻汁がひどく睡眠障害や哺乳障害などあれば、頻回な通院による耳や鼻の処置・鼻洗が必要になることがあります。鼻副鼻腔炎は、急性中耳炎の難治化や再燃・再発の重要なリスク因子となるので、鼻処置は中耳炎の治癒促進に一定の効果はあると思われます。しかし、頻回な通院はご家族の負担も大きく、自宅での対応も考えましょう。乳児~2歳程度までは自宅での鼻吸い、すこし大きくなれば上手な鼻かみ、学童になるころは自宅鼻洗なども、治癒促進や再発予防に一定の効果があると思われます。やり過ぎると鼻粘膜損傷、鼻出血、耳痛など出現することもありますので気をつけて下さい。

難聴が主の滲出性中耳炎の場

ある程度自然治癒が期待できるため3ヶ月程度経過観察を行います。リスク因子の鼻副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎があれば同時に治療を行います。以前から耳鼻咽喉科外来で行われている頻回通院の鼻処置・ネブライザーや通気療法は、小児滲出性中耳炎に対する有効性は明らかではありませんが、無効というわけでもありません。通気療法は、自宅でオトベントによる自己通気を1日3回以上行うと有効性が認められるようです。

 

参考資料

小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年度版

小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年度版