若い人にも稀ではない耳閉感:低音障害感音難聴
難聴と言えば高齢の方の加齢変化と思われる方が多いでしょう。
実は、乳幼児から高齢者まで耳閉感・難聴の病気は誰もが罹患する可能性があります。
若い人でも稀ではありません。
難聴には治る可能性が高い病気と、治すのが難しい病気が存在します。
【伝音性難聴】
治る可能性が高い難聴の疾患は外耳と中耳に病変がある伝音性難聴です。
*耳垢栓塞
*中耳炎
*鼓膜損傷・穿孔
*耳管機能障害(耳抜き不良など)
などが該当します。
【急性感音難聴】
内耳と聴神経・脳に原因がある場合、感音難聴と総称され治すのが難しい病気です。
*突発性難聴
*急性低音障害型感音難聴(今回のテーマ)
*メニエール病
*音響外傷
*ムンプス難聴(おたふくと難聴:当院コラム)
*外リンパろう(診断が難しい)
*聴神経腫瘍(MRI必要)
*特発性両側性感音難聴
*若年発症型両側性感音難聴(難病指定:遺伝子の確認)
など多数存在し、突発性難聴、音響外傷、急性低音障害型感音難聴の急性期では回復の可能性があることもあります。外リンパろう、聴神経腫瘍では手術が適応となる場合もあり、難聴が進行して回復しないときは補聴器を検討します。
【慢性感音難聴】には、
騒音性難聴、老人性難聴、先天性難聴があり薬で治すのが困難な疾患です。
補聴器、人工内耳などの適応を考えます。騒音性難聴やスマホ難聴は予防が肝心です。
☞☞ 若い人にも稀ではない耳閉感・難聴は、
耳閉感・難聴で、外来受診が多い疾患は、上記の耳垢・中耳炎などの伝音性難聴と
感音難聴では、若い20~40歳代にかけて多い急性低音障害型感音難聴です。
若年女性に多い病気です(女性は男性の2~3倍)。
『今回は、外来で多い急性低音障害型感音難聴の話です』
発症頻度は人口10万人あたり40~60人と急性感音難聴を来す疾患の中で最も多いと考えられています。30代での発症が多く女性は男性の2~3倍です。
軽い場合は2~3日で改善することもあり病院受診しないこともあるため、実際はもっと多い印象です。
突発性難聴は40~70代で増加します。難聴を伴うメニエール病は30~50代に多く最近は高齢発症が増加していますので、若い人に多い急性感音難聴は急性低音障害型感音難聴が大半です。
◆症状:
低音域の難聴を特徴として、自覚症状は耳閉感が最も多く、耳鳴、難聴、自分の声が響くなどの症状を認め、通常めまいは認めませんが、軽いめまい感を訴える場合もあります。
原因は不明ですが、近年内リンパ水腫の関与が指摘されています。通常は一側性ですが両側のこともあります。
◆難聴の特徴として:
*短期的には予後良好例が多い
*長期的には反復、再発例が多い
*長期間経過していても回復する例がある
*自然治癒する例も少なくない
◆メニエール病・突発性難聴との鑑別:
病態としてメニエール病と同じ内リンパ水腫が想定され、その一部はメニエール病に移行します。急性低音障害型感音難聴の反復例は、めまいを伴わない蝸牛型メニエール病に該当します。めまいや眼振が確認されればメニエール病を疑います。急性低音障害型感音難聴は、軽いめまい感を訴える場合もあります
初期の低音障害型の突発性難聴との鑑別は、経過の中で中高音の聴力の変化で判断します。
◆治療:
ステロイド剤、浸透圧利尿剤(イソソルビド)、ATP、漢方(五苓散、当帰芍薬散・・)など使用します。
メニエール病はストレスとの関与が強く、急性低音障害型感音難聴も同様にストレス、不眠、疲労、自律神経や気象と関連することもあります。
台風と気象病(当院コラム)も参考にしてください。
参考資料
急性感音難聴 診療の手引き2018年版 日本聴覚医学会