吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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あなたの喘息は何タイプ?成人編

2020-11-20

長引く咳は、医療機関受診動機として最も頻度が高く、近年は、アレルギーや生活習慣に関連した咳が増加しています。3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。最近は、咳喘息の認識が高くなり、少し咳が長引いているだけで、喘息吸入治療薬がすぐに処方される傾向にあります。処方前の検討が十分でなく発症3週未満にステロイド吸入の治療をすると、咳喘息以外の病気にも効果があるため、咳喘息の診断を難しくすることが懸念されています。

喘息を疑う病歴・家族歴・検査結果、強制呼気喘鳴の聴取や気管支拡張薬吸入の効果があれば喘息または咳喘息の可能性が高くなります。喘息の有病率は、成人は5%程度、小児ではもっと多く男児は女児の1.5倍、成人は女性のほうが男性より少し多く認めます。

喘息とは何か?

医学的に喘息とは気道の慢性炎症が存在して、気道狭窄症状が良くなったり悪くなったりすること( 気道可逆性)で、ゼーゼー・息切れ・咳・息苦しさなどの症状が変化する反復する自覚症状)病気です。夜間や早朝に増悪する傾向があります。症状が感冒,運動,ダニなどアレルゲン曝露,天候の変化,笑い,大気汚染,硫黄など強い臭気 などで誘発されることが多く認めます(非特異的気道過敏性)。

喘息とは、上記➊ ❷ ❸を特徴とします。

喘息は症状群!!

喘息の病像はバラエテイーに富んでいて、一つの病気と言うより症候群としてとらえ、喘息を類似した気道・肺の病気の集まりと考えます。

症状や病態生理の特徴から分類すると(フェノタイプ:病型分類)、病因の解明、見通しの予測、焦点を絞った適切な治療を行いやすくなります。今後は、単なる重症度から治療方針を決めるのではなく、このフェノタイプ分類に基づいて適正な治療が進められるようになると期待されています。最近は、治療効果が上がる分子レベルに基づく分類(エンドタイプ)の研究が進められ、分子生物学的製剤(高価な注射薬)が難治性喘息に対して、適応が増加してきています。

医学的な喘息のフェノタイプ・エンドタイプ分類は難しい!!

喘息のフェノタイプ分類は ①タイプ2免疫反応型 ②非タイプ2免疫反応型に分け、

好酸球性炎症型抗原特異性IgE型気道過敏・気道リモデリング型好中球性炎症型などに分類されます。自然免疫・獲得免疫、IL5,IL4,IL13、IL8などのサイトカインおよび各種メディエーターを組み合わせ、分子レベルの複数のエンドタイプに分類されていきます。

これを患者さんに説明するには、難しい話です!!

 

👉👉 今回は、日常の診療の中で、わかりやすい喘息のタイプ分類の解説と、それぞれの疾患などで、どうしたらよいかの説明です。

自分がどのタイプの喘息なのか、どの疾患または何の薬と関連して悪化しているか考えてみましょう!!

ダニ対策などの環境整備、控える薬物、生活食事習慣の改善、ステロイド吸入以外の薬・治療法の選択の参考になります。

 

疾患との関連は?

アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎:

喘息の悪化は、鼻炎も同時に治療することが重要です喘息患者でのアレルギー性鼻炎の合併は80%前後、喘息の悪化にも影響します。アレルギー性鼻炎には鼻噴霧ステロイド薬抗ロイコトリエン薬を併用すると喘息症状の改善効果が高くなります

鼻と秋の喘息(当院院長コラム)を参照して下さい。

通常の副鼻腔炎:風邪のあとこじらせると、粘性又は膿性の鼻汁・後鼻漏・鼻閉・咳・痰・頭痛などの症状があれば急性副鼻腔炎をおこしています。喘息や咳が長引き治らなくなりますので、副鼻腔炎の治療も重要です。必要な方は抗生剤を併用します。鼻洗も効果的です。

匂いの障害・好酸球性副鼻腔炎(新型)

匂いの障害や鼻ポリープが特徴の最近急増している副鼻腔炎が好酸球性副鼻腔炎です。

副鼻腔炎のコントロールが悪いと喘息が悪化しますので、副鼻腔炎をしっかり治すことが重要ですが、好酸球性副鼻腔炎はステロイドホルモン服用以外の効果は乏しく難治性です。白血球の一種でアレルギーの病気で増加する好酸球が副鼻腔粘膜に増加してきます。従来の慢性鼻副鼻腔炎より難治で、手術を行っても再発が多くみられます喘息合併例で、エアロゾルなどの粒子径が小さい吸入ステロイド使用の場合、口から吐き出さず、鼻の奥の後鼻腔から出す方法で効果があることもあります(鼻呼気法)。

治療は、ステロイド内服や抗ロイコトリエン薬および手術治療、術後再発のポリープを伴う重症例には生物学的製剤(デユピルマブ):重症アトピー性皮膚炎や重症喘息にも保険適応あり、高価な注射薬です)が2020年から保険適応となりました。重症例は指定難病として認定されることがあります。難治性の好酸球性中耳炎、気管支喘息、アスピリン喘息などが、多くの症例で合併します。

あなたの副鼻腔炎は何タイプ?(当院院長コラム

 

胃食道逆流症(GERD)

喘息患者ではGERDの保有率は高く(45~71%:一般日本人は6.6~37.6%)、胸やけや呑酸、げっぷなど逆流症状があり、夜の呼吸器症状がある患者はPPI(プロトンポンプ阻害薬)の服用(8週間)を行うと効果を認めます。GERDの症状がない方への投与は効果を認めません。就寝前3時間程度は水以外の飲食を控え、脂もの、刺激物、コーヒー、飲酒なども控えます。。

GERD喘息悪化の因子の一つです。GERD合併喘息では、経口ステロイドの投与回数が多く、不安やうつ状態を伴い夜間発作症状が強く出てきます。またコントロール不良の喘息患者のうち24%サイレントGERDが存在する報告があります。

GERDが関与する喘息の特徴

非アトピー性

主に夜間に発作が増悪

食後症状が悪化

喘息治療に抵抗性

胃酸分泌を抑制することにより症状が改善

胃酸の逆流と耳・鼻・のど・呼吸器(当院院長コラム

 

肥満

肥満は喘息の難治化因子です、内臓脂肪が関与します。

非アトピー型で好酸球が増加せず、直接的なアレルギーが介在しない機序が考えられ、喘息の一般治療薬のステロイド吸入療法の効果が低いと言われています

肥満対策・ダイエットが重要す。

肥満喘息発症メカニズム

最近、脂肪細胞は、生理活性物質の分泌臓器と考えられるようになってきています。

脂肪細胞から、喘息の悪化をもたらす気道過敏性の亢進や気道の慢性炎症を悪化させる生理活性物質(レプチン、TNF-α、PAI-1)が放出されます。

肥満による肺機能低下

運動不足による気道過敏性の亢進(運動は気道過敏性へ効果の報告あり)

肥満や睡眠時無呼吸症による胃食道逆流症の合併

肥満と喘息;ダイエットで喘息が治る?(当院院長コラム

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喘息合併COPDACO)は高齢者喘息に多くみとめます。ACOは男性が少し女性より少し多く副流煙は喫煙の半分程度の影響があると考えられています。60歳台40%、70歳台50%、80歳台60%と加齢で増加していきます。過去の喫煙や副流煙歴も影響します。ACOは通常の高齢者喘息よりコントロールが不良となります。40歳以上で、咳・痰持続、労作時の息切れがあり、①喫煙歴(副流煙も含む)や長期間大気汚染に暴露歴があればCOPDを疑います。②胸部CTでは気腫性変化を示す低吸収領域や、③肺拡散能障害を認めます。①~③のうち1項目あればCOPDの可能性が高くなります。

 

閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)

OSASは睡眠中に繰り返し呼吸が止まり、夜間に低酸素血症が反復します。喘息発作は夜間就寝中に起こり易く、喘息にOSASが加われば夜間の低酸素血症は増強し不整脈や高血圧を悪化させます。適切なOSASの治療(CPAP療法、鼻の治療、歯科マウスピース)すれば低酸素血症や呼吸器症状の改善が期待できます。

 

薬物で喘息悪化!!

解熱鎮痛剤との関連(アスピリン喘息

小児にはほとんどなく、成人喘息の5~10%。男性も認めますが成人女性に多く、嗅覚障害・好酸球性副鼻腔炎と合併することがあります。アスピリン喘息を診断する特異的な検査はありません。本人はわからず服用して初めて病院受診後に気づくことがよくあります。咳・呼吸器症状の反復と嗅覚障害があれば要注意です。痛み止めを服用すると喘息発作が、急速に進行して救急車を呼ぶこともあります。解熱鎮痛剤・湿布薬の使用が制限されます。使えるのはソランタール、少量のアセトアミノフェンなど限定されますので前もって発熱・痛みのときの対応を、担当医に尋ねておきましょう。歯科や整形外科では消炎鎮痛剤が出されることが多く、前もって申告する必要があります。

βブロッカー降圧薬と緑内障点眼薬

緑内障の目薬と心不全に使用されることが多い降圧薬に注意します。気管支粘膜にはβ2受容体 心臓にはβ1受容体が存在します。

降圧薬

β1選択制が高いβ1ブロッカ―降圧薬を選びます。

β1選択制のテノーミン(アテノロール)、メインテート(ビソプロロール)などが慎重投与となります。

αβブロッカーであるアーチスト(カルベジロール)は禁忌です。高血圧と喘息がある方は注意して下さい。

緑内障薬

チモプトール点眼、ミケラン点眼などのβブロッカー点眼薬とその配合剤は控えます。

誰も目薬で喘息が悪化するとは思いもつきません。

アトピーとの関連は?

IgE型(アトピー型:外因型)ダニ 花粉(スギ、ヒノキ、イネ、ブタクサなど)ペット(犬、猫など) カビ(アスペルギルス、アルテルナリアなど)昆虫(ゴキブリ、ガなど)

湿度が高い日本では、年間を通してダニが最も重要です。若年者の80~90%はアトピー型喘息です。ダニ関連アトピー型喘息とアレルギー性鼻炎はダニの増加に伴い悪化します。ダニ対策の環境整備は重要です長期的にはダニなどの免疫療法(舌下・皮下)による喘息・アレルギー性鼻炎の体質改善・新規感作予防が行われます。夏に繁殖したダニが秋に死んで、家に中にたまった死骸や糞が体に入り症状が出てきます。糞はダニの数十分の一の大きさ(0.01mm)で、気管支の中に入りやすくなり喘息を起こしてきます

カビ・ペット・昆虫など多数を認める場合は、難治化することが多くなります。

実践ダニ対策当院院長コラム

舌下免疫療法:ダニ・スギ(当院院長コラム)

花粉症に新たな治療薬(ゾレア)(当院院長コラム

非IgE型(非アトピー型:内因型)

成人になると、ダニなど外因と関連がないおとなの喘息が増加してきます。免疫療法の効果はありません。

 高齢化医療へ取り組み

年齢・性差での特徴は?

乳幼児 喘鳴(ぜんめい)として経過をみることから開始します。

お子さんの喘鳴は何タイプ?(当院院長コラム)を参照して下さい。

学童思春期 ダニなど関与のアトピー型喘息が80~90%

年単位の長期的には、ダニ・スギなどの免疫療法が効果を認めます。アレルギー性鼻炎・喘息の体質改善や新たな外因アレルギーによる疾患予防(アレルギー性鼻炎があり免疫療法で将来の喘息の発症予防)にも効果が期待されています。

成人 好酸球性気道炎症を中心とした非アトピー型(内因性)の喘息が増加します。

肥満・タバコ・大気汚染、従来の好中球性副鼻腔炎との合併との関連で好中球性喘息が増加してきます。好中球性は吸入ステロイドの効果が乏しいこともあり、抗生剤マクロライドの使用や肥満者の減量、禁煙を行います。

高齢者 喘息死は70年前の1/10に減少していますが、高齢者が喘息死の多くを占めています。COPD、 GERD、心疾患、嚥下機能低下などに配慮して対応が必要です。

女性:妊娠の有無、月経周期との関連、肥満(BMI30<)との関連を確認します。

月経前喘息:月経3~4日前に起こる症状を呼びます。女性喘息患者の3~4割で認める報告があります。月経前の気管支粘膜浮腫や性ホルモンとの関連などが考えられています。

妊娠と喘息:喘息のある妊婦の1/3は喘息が悪化すると言われています。吸入ステロイドを継続します。

 

好酸球の上昇の有無で治療を判断!!

好酸球性気道炎症を示す2型炎症マーカーの評価を行います。

検査:末梢血好酸球数、血清総IgE, 呼気NO

好酸球性では、ステロイド吸入、抗ロイコトリエン薬を主体に治療開始。匂いの障害や好酸球性副鼻腔炎・アスピリン喘息の確認を行います。難治例では、副作用が問題となる経口ステロイドが連用されるため、最近は生物学的製剤の適応を検討します(呼吸器内科専門医へ)。この治療でステロイドの減量や離脱を期待します。

好中球性は、吸入ステロイドの効果が乏しいこともあるため、マクロライド抗生剤など使用、肥満あれば減量、禁煙指導、副鼻腔気管支症候群あれば副鼻腔炎の治療(耳鼻咽喉科受診)を行います。

咳喘息とは!!

3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。

ゼーゼーを伴わない咳(聴診では正常)が2か月以上持続

(3週以上でも診断可能;3週未満の咳では診断しない

気管支拡張薬で一時的効果あり

季節性があり夜間・早朝に多い

血液や喀痰の好酸球上昇、呼気NO高値(27以上)、気道過敏性亢進あり

経過中30~40%は典型的喘息に移行します。吸入ステロイドの治療(最低1年)を行い、再燃時は早期受診が必要です。治療開始後、症状がすぐに改善する場合、いつまで治療続けるかエビデンスはありません。

 

運動誘発喘息とは!!

十分な準備運動、通常の喘息のコントロールと抗ロイコトリエン薬が効果を発揮します。気道粘膜の脱水と冷却、気道上皮損傷による気道過敏性の亢進が出現します。

運動・アスリートと喘息・鼻炎(当院院長コラム)を参照して下さい。

 

カビや血管炎との鑑別は?

EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

ABPM(アレルギー性気管支肺真菌症:アスペルギルスが多い、成人喘息の約2%))

問診

固形状の粘液栓を咳に伴いだしたことがあるか?(ABPM)

手足のしびれの自覚は無いか?(EGPA)

検査

胸部CT

EGPAでは、MPO-ANCA、末梢血好酸球数1000/μL<、CRP高値

ABPMでは、末梢血好酸球数500/μL< 血清総IgE1000IU/mL<、真菌特異性IgE,アスペルギルス沈降抗体など確認します。

 

~~重症喘息について~~

必須検査は血液検査、胸部CT,スパイロメトリー、鼻汁・鼻閉・後鼻漏・嗅覚障害例は顔面CTおよび耳鼻咽喉科受診をします。頻度は喘息患者の5~10%で、呼吸器専門医での診断・治療が必要です。

実際は、喘息の診断が正しくされていない場合や服薬遵守や吸入手技が悪いことで難治化していることがあるため、医師、薬剤師、看護師は服薬遵守・吸入手技・環境要因(ペットなど)を再確認し患者さんへの教育が必要です。

難治化因子の併存症(感染症、肥満、胃食道逆流症、好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎や通常の副鼻腔炎、COPD,閉塞性睡眠時無呼吸症、薬剤性、アスピリン喘息、パニック発作および過換気症候群、)の確認を再度行います。

鑑別する病気としては専門医療機関にてABPM(アレルギー性気管支肺真菌症),EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症),声帯機能障害(心因の関与もあり)、非結核性抗酸菌症,気管支結核・腫瘍、心不全が無いのか確認します。このようなステップを踏むと重症喘息の割合が、5~10%から数%まで減少すると考えられます。

本当の重症喘息には生物学的製剤を検討します。

アトピー型喘息(IgE30~1500IU/ml)オマリズマブ(重症スギ花粉症にも適応あり)

好酸球性気道炎症 IL-5関連:メポリズマブ ベンナリズマブ IL-4,13関連 デユピルマブ

 

参考資料:

難治性ぜんそく診断と治療の手引き2019(成人)アレルギー 8-12、Vol69 2020

咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019