院長の健康情報コラム
若い人にも稀ではない耳閉感:低音障害感音難聴
難聴と言えば高齢の方の加齢変化と思われる方が多いでしょう。
実は、乳幼児から高齢者まで耳閉感・難聴の病気は誰もが罹患する可能性があります。
若い人でも稀ではありません。
難聴には治る可能性が高い病気と、治すのが難しい病気が存在します。
【伝音性難聴】
治る可能性が高い難聴の疾患は外耳と中耳に病変がある伝音性難聴です。
*耳垢栓塞
*中耳炎
*鼓膜損傷・穿孔
*耳管機能障害(耳抜き不良など)
などが該当します。
【急性感音難聴】
内耳と聴神経・脳に原因がある場合、感音難聴と総称され治すのが難しい病気です。
*突発性難聴
*急性低音障害型感音難聴(今回のテーマ)
*メニエール病
*音響外傷
*ムンプス難聴(おたふくと難聴:当院コラム)
*外リンパろう(診断が難しい)
*聴神経腫瘍(MRI必要)
*特発性両側性感音難聴
*若年発症型両側性感音難聴(難病指定:遺伝子の確認)
など多数存在し、突発性難聴、音響外傷、急性低音障害型感音難聴の急性期では回復の可能性があることもあります。外リンパろう、聴神経腫瘍では手術が適応となる場合もあり、難聴が進行して回復しないときは補聴器を検討します。
【慢性感音難聴】には、
騒音性難聴、老人性難聴、先天性難聴があり薬で治すのが困難な疾患です。
補聴器、人工内耳などの適応を考えます。騒音性難聴やスマホ難聴は予防が肝心です。
☞☞ 若い人にも稀ではない耳閉感・難聴は、
耳閉感・難聴で、外来受診が多い疾患は、上記の耳垢・中耳炎などの伝音性難聴と
感音難聴では、若い20~40歳代にかけて多い急性低音障害型感音難聴です。
若年女性に多い病気です(女性は男性の2~3倍)。
『今回は、外来で多い急性低音障害型感音難聴の話です』
発症頻度は人口10万人あたり40~60人と急性感音難聴を来す疾患の中で最も多いと考えられています。30代での発症が多く女性は男性の2~3倍です。
軽い場合は2~3日で改善することもあり病院受診しないこともあるため、実際はもっと多い印象です。
突発性難聴は40~70代で増加します。難聴を伴うメニエール病は30~50代に多く最近は高齢発症が増加していますので、若い人に多い急性感音難聴は急性低音障害型感音難聴が大半です。
◆症状:
低音域の難聴を特徴として、自覚症状は耳閉感が最も多く、耳鳴、難聴、自分の声が響くなどの症状を認め、通常めまいは認めませんが、軽いめまい感を訴える場合もあります。
原因は不明ですが、近年内リンパ水腫の関与が指摘されています。通常は一側性ですが両側のこともあります。
◆難聴の特徴として:
*短期的には予後良好例が多い
*長期的には反復、再発例が多い
*長期間経過していても回復する例がある
*自然治癒する例も少なくない
◆メニエール病・突発性難聴との鑑別:
病態としてメニエール病と同じ内リンパ水腫が想定され、その一部はメニエール病に移行します。急性低音障害型感音難聴の反復例は、めまいを伴わない蝸牛型メニエール病に該当します。めまいや眼振が確認されればメニエール病を疑います。急性低音障害型感音難聴は、軽いめまい感を訴える場合もあります
初期の低音障害型の突発性難聴との鑑別は、経過の中で中高音の聴力の変化で判断します。
◆治療:
ステロイド剤、浸透圧利尿剤(イソソルビド)、ATP、漢方(五苓散、当帰芍薬散・・)など使用します。
メニエール病はストレスとの関与が強く、急性低音障害型感音難聴も同様にストレス、不眠、疲労、自律神経や気象と関連することもあります。
台風と気象病(当院コラム)も参考にしてください。
参考資料
急性感音難聴 診療の手引き2018年版 日本聴覚医学会
診断が難しい高齢者めまい
日本の不慮の事故の報告で多いのは、若者・中年では交通事故、高齢者では窒息、転倒・転落、溺死が問題になります。溺死の多くは浴槽内への転倒・転落で起きていることから転倒・転落の割合はもっと多くなります。高齢者の寝たきりの原因で多い大腿骨近位部骨折の74%は転倒が原因です。6月20日のニュースでは、長野で75歳の高齢者が自転車で転倒して、その後自宅で、外傷性くも膜下出血で亡くなっています。
20歳(100%)と比較すると70歳で筋持久力低下(30%)と平衡性の低下(20%)となります。小脳の退行変性は40歳台から始まり加齢ともに加速し高齢者の平衡機能低下へ大きな影響力を持ちます。高齢者のめまいの年間有病率は若年者の約3倍です。中枢神経、末梢受容器(内耳)の加齢による機能低下および筋力低下は誰にでもおこる現象です。
老人性平衡障害への有効な薬物療法や手術治療は存在しません。
有望なのは中枢前庭代償を促進させるリハビリと筋力増強のためのリハビリです。加齢変化のため前庭代償の発現が不十分となりリハビリの効果が十分に得られないこともあります。前庭リハビリは耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医(サイト:全国673名、鹿児島では6名認定)に相談しましょう。
めまいの訴えに対して漫然と抗めまい薬が処方されていることがありますが、基礎疾患が多い高齢者ではポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)となり薬害を起こすことも懸念されています。減薬の意識も大事です。
👉 診断が難しい高齢者めまい
若い人は、良性発作性頭位性めまいを主に内耳からのめまいが多く、ほかには片頭痛・肩こり・貧血・自律神経症状・生理・心因性などを考えた対応が多くなります。
高齢者では、若い人のめまい疾患の他に、基礎疾患が多く、下記のような多くのふらつきの・めまいの原因となる脳心・内科領域疾患および薬剤性、運動器・筋力の低下による老年症候群を考えた対応が必要になり診断が難しくなります。
内耳疾患も感知する感覚が衰え若い人のような回転性ではなく浮動性の訴えが多くなり診断を難しくします。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなる両側前庭機能障害を示す加齢性平衡障害も出現してきます。
『内科領域』
薬歴や病歴からめまい・ふらつきに関係する疾患や薬物を丁寧に確認して対応していきます。
➡ 様々なめまい・ふらつきに関与する多くの疾患
*脳卒中 :危険なめまいです。
*椎骨脳底動脈循環不全
*頸椎性
*くも膜下出血:4%はめまいで発症します。
*心疾患
*不整脈:労作時のめまい、動悸の有無の確認します。
*高血圧・動脈硬化
*脱水:梅雨から夏にかけては熱中症に注意
*食事摂取・栄養不良:嚥下機能障害・嗅覚障害が隠れていることあります。
*糖尿病:自律神経障害、起立性低血圧など出現することあります。
*起立性低血圧:入浴時や食後低血圧など、下半身から上半身への血液還流改善のため下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉:第二の心臓)を鍛えます。脳循環自己調節機能や自律神経調節中枢の機能低下が原因。
*認知症(レビー小体など)
*パーキンソン病
*アルコール中毒
*薬剤性:薬物投与より減らすことを意識して対応 ポリファーマシー(5剤以上で転倒リスク増加)と言います。
減薬についてはかかりつけ医と相談しての対応が必要です。
『老年症候群』
次の四つが重要です。
*フレイル(健常から要介護の中間段階:加齢による衰え全般)
*運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア
*骨粗鬆症
*加齢性平衡障害(下記の内耳からのめまいで詳細記載)
*運動器機能低下・筋量低下のサルコペニア
今までの対策
【動的持久的運動】(有酸素運動:脂肪と糖を消費、心拍予備能60%を超えない程度が望ましい)
動的有酸素運動は血圧変動の程度が少なく、代謝・循環系の改善効果から今まで静的筋トレより適応な運動として勧められてきました。
最近は筋力維持、強化という点から、高齢者にも適切な強度の筋抵抗性運動(静的運動:スローな運動)であれば、動的運動と平行して指導することが求められています。
心拍予備能60%を超える運動は、血圧や血糖をあげるホルモンが上昇します。乳酸が蓄積して、二酸化炭素が過剰排泄となります。静的運動は血圧をあげますので息を止めないで行います。
これからは、有酸素運動に平行して
【静的運動(スローな運動)】
欠点は血圧をあげますので、レジスタンス運動時に力発揮が強まるときには、息を吐き、弱まるときには息を吸うことが基本です。
具体的には
スロースクワット(腰痛、糖尿病対策にも効果)
NHKガッテンピントレ糖尿病対策(スロースクワット:サイト)
スロー腹筋
スロー片足引き上げ
スロー腕立て伏せ など
メリットとして
ゆっくりであっても筋肉が動き続けていると乳酸が分泌します。
乳酸が成長ホルモンの分泌を促します。成長ホルモンが筋肉肥大、骨や腱の代謝を促進し、また体脂肪の分解も促進します。
*骨粗鬆症
骨を強くし転倒を予防する運動
骨粗鬆症と運動 NHK(サイト)
背筋運動
片足立ち
スクワット など行います。
運動は背筋運動、スクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行います。食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・納豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンD・ビタミンKをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。
➡日常生活での注意点
*急な立ち上がりや急に振り向くことを避ける
*階段の降りる時は手すりを使い慎重に
*両手フリーで歩行、荷物は背中に背負うか手押し車に入れる
*戸外では杖や手押し車を使用
*室内の障害物の整理、バリアフリー、トイレや廊下を明るく
高齢者の急性期は、脳血管障害によるめまいに注意した対応が必要です!!
頭部CTでは急性の脳出血は有無を知ることは出来ても、急性期(6時間以内)の脳梗塞は、MRIが必要です。超急性期は偽陰性(当初の検査は正常)となる事もあり経過観察が重要で経過中の他の神経症状の出現に注意します。
*加齢性平衡障害
いままで高齢者で原因不明のふらつき・めまいに対して診断していた概念ですが、2019年に国際基準ができました。軽度の両側前庭機能障害が出現します。
通常歩行では加齢性平衡障害の両側前庭機能障害者と健常者では差はみられず、歩行速度が速くなるほど歩行中枢が中心になり不安定歩行が出やすくなります。ゆっくり歩行は、視覚など感覚情報を利用して対応しています。暗所や起伏のあるところで転倒しやすくなります。
➡2019年に国際学会のバラニー学会で診断基準が示されたばかりです。
A: 3ヶ月以上持続する前庭症状(めまい・ふらつき)少なくとも以下の二つを認める
- 姿勢のバランスあるいは不安定感
- 歩行障害
- 慢性の浮遊感
- 繰り返す転倒
B: 軽度の両側前庭機能低下の指標、以下の検査の少なくとも一つを満たす
- vHIT検査前庭動眼反射の利得が両側0.6~0.83(保険適応ではない)
- 振子様回転検査による前庭動眼反射の利得測定
- 冷温交互の温度眼振検査の最大緩徐相速度の測定
C: 60歳以上
D: 他の疾患で説明できない
加齢性平衡障害を通常のクリニックで、このB基準に沿って診断することは容易ではありません。
加齢性平衡障害を診断しても、確立した治療法や予防法があるわけでなく今後の研究課題となっています。各施設での診断の統計は標準化されます。
☞ 実地診療では、従来通りの前庭リハビリ、サルコペニア対策(ウーキング、下肢の筋トレ)が重要と思われます。
前庭リハビリは耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医(全国673名、鹿児島では6名認定:サイト)にご相談下さい。
めまい・ふらつきでお悩みの方へ(当院:疾患案内)
*BPPV(良性発作性頭位性めまい)高齢でも最も多い内耳からの眩暈です。60歳以上では20~40歳の7倍高い発症率です。頭部外傷、メニエール病、前庭神経炎などの二次性に発症しやすく、骨粗鬆症との関連、全身疾患との合併が指摘されています。変形性頚椎症や腰痛の合併も多く検査や耳石置換療法が出来ないこともあります。高齢者ではBPPVを感知する感覚が衰えているため発見が遅れることがあります。
*メニエール病:中年で発症することが多い疾患ですが、最近、元気な高齢者が多くなり以前より高齢者で増加しています。若い人のように回転性ではなく、持続的浮遊感の訴えが多くなります。BPPVの併存のこともあり頭部挙上での就寝も考えます。
*前庭神経炎:30~60歳に好発
『心因性めまい』
長い人生の中、心身の不調、身近な人との離別・死別、生活環境の変化に対応できないなどの理由から、ストレスを感じる高齢者が増えています。ストレスは、心因性のめまいの引き金になりあらゆる病気に進展します。。
*不安症・うつ病・精神疾患に合併するめまい
*当初は内耳のめまいが、反復するうち心因性めまいへ変化することも多くあります
*若いときに前庭神経炎やめまいを伴う突発性難聴に罹患して70歳過ぎて脱代償(加齢で小脳のコントロールが低下)してめまいが出現するようになり、それに不安・抑うつなどの心因が合併して難治化している場合もあります。この場合、前庭リハビリを主に薬物療法を考えます。
参考資料
高齢者のめまいを治す:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2020:5
診断がつきにくいめまい症:PPPD
英国の有症率報告では、高い順に疼痛、疲労感、めまいとなっています。日本の28年度国民生活基礎調査では、めまいの有訴率は女性:30% 男性:13% 70歳以上では女性4~5割、男性3割程度とめまいで悩んでいる方が多いのがわかります。めまいの病気の中でも原因不明の『めまい症』と診断されているものが20~25%存在しています。
慢性めまい疾患は、脳腫瘍や脳血管病変以外画像診断では診断がつかず、中耳炎のように鼓膜をみればわかるわけでなく、採血検査でも原因がわかりません。心因性、血圧などの循環動態、自律神経の関与も多く、丁寧な問診と繰り返しの聴検・めまい検査などおこない,慎重に診断を進めていきます。中には月~年単位で長期に経過をみて診断されることもあります。めまい疾患は複雑に絡み合い心因性めまい・内耳性めまい・めまい関連片頭痛・肩こりのふらつきなど重なっていることも多く余計に診断を難しくしています。
👉 今回は、2017年以降めまいの疾患概念として国際的にも統一されてきた慢性めまい疾患の一つのPPPDという病気の話です。
今まで原因不明のめまい症(20~25%)とされていた疾患の中にかなり含まれていると考えられています。PPPDの情報発信している新潟大学耳鼻咽喉科では、慢性めまいの23%はPPPDと診断されています。
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
『PPPDが、診断がつきにくい理由?』
◆世界的めまい学会のバラニー学会で診断基準がまとめられたのが最近の2017年のため耳鼻咽喉科医も含め医師に広く認知されていないため。
◆症状が3か月以上持続する機能性めまい疾患のため、3か月以上経過を見る必要があり、すぐに判断することが出来ないため。
その上、聴検・めまい検査・画像検査・採血などで特異的所見が無い。
◆PPPDは耳・脳・不安症・うつ病とは独立した疾患で、症状以外明らかな異常がない疾患。
◆症状と経過のみで診断をつけることが必要になるため。
診断基準は以下の5つの項目すべてを満たすことが必要。
A: 浮遊感,不安定感,非回転性めまいのうち一つ以上が,3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する。
*症状は長い時間(時間単位)持続するが,症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。
* 症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。
B: 持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが,以下の3つの因子で増悪する。
*立位姿勢
*特定の方向や頭位に限らない,能動的あるいは受動的な動き
*動いているもの,あるいは複雑な視覚パターンを見たとき
C:この疾患は,#(補)めまい,浮遊感,不安定感,あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患,他の神経学的・ 内科的疾患,心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。
* 急性または発作性の病態が先行する場合は,その先行病態が消失するにつれて,症状は基準Aのパ ターンに定着する。しかし,症状は,初めは間欠的に生じ,持続性の経過へと固定していくことが ある.
* 慢性の病態が先行する場合は,症状は緩徐に進行し,悪化することがある.
D: 症状は,顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている.
E: 症状は,他の疾患や障害ではうまく説明できない.
#(補足)PPPDは先行疾患があり、その病態が無くってからめまい・ふらつきパターンに移行します、PPPDを発症させる頻度が高い先行する急性発作性病態は
*末梢や中枢性の前庭疾患(25~30%)
*前庭性片頭痛(15~20%)
*浮動感を示すパニック発作や不安(30%)
*脳震盪やむち打ち(10~15%)
*自律神経障害(7%)
などです。薬剤や不整脈によるめまい・浮遊感は3%以下とPPPDになりにくい。
➡めまいの原因で分類すると、各科の報告で異なります、概ね
➊耳から(30~50%)❷中枢(脳)から(10~20%)❸精神障害(10~20%)❹原因不明(10~20%) 他の原因が20~40%になるようです。
以下のように、PPPDは障害部位がはっきりせず、精神疾患ではない機能性めまいになります。
『非器質性めまいの国際分類』
※不安症に関連するめまい
※うつ病に関連するめまい
※転倒恐怖症
※めまいに関連する病気不安症
※前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
ポイント:
👉 平衡感覚は、①視覚 ②耳(前庭)③体(足などからの体性深部感覚)の三つの信号を小脳で統合してバランスをとっています。PPPDは目と体からの入力バランスの崩れと考えられています。慢性のPPPDは、急性期の前庭機能の影響は3ヶ月で回復(前庭代償の完成)しますので3か月以上経過をみて判断します。
前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患ですが、心因性めまいや器質的前庭疾患が合併している場合もあります。
前庭めまい疾患で最も多い良性発作性頭位めまいは朝に起きやすいが、PPPDは昼夕方に症状が悪化しやすくなります。PPPD単独では、回転性めまいは認めません。PPPDは自然寛解が難しく症状の増悪軽快を長期に繰り返します。
治療:次の三つが重要です。
◆前庭リハビリ
◆抗うつ薬(SSRI)
◆認知行動療法
ですが、確立された治療法はありません。
◆前庭リハビリは、PPPD患者の内部感覚へ刺激を与えめまいへの順化を促します。
効果を得るには月単位(最低数ヶ月)で考えます。症状は一進一退することも多いことを理解して下さい。リハでめまいを誘発させ悪化させることもあります。
日本の医療制度では整形外科や脳疾患後のリハビリのように、保険診療になっていません。外来整形やリハビリ病院のようにST、PT、技師のようなパラメディカルスタッフの協力を得て治療することは出来ません。
耳鼻咽喉科では、医師の自助努力で、自宅でできるように指導を行い対応しています。定期通院でモチベーションを維持します。
◆抗うつ薬は、観察研究で有効性が報告されていますが、吐き気、傾眠、めまい、ふらつきの問題や、やめる時も離脱症に注意が必要になります。アクチベーション症候群を生じることもあります。アクチベーション症候群とは、投与初期の2週間以内や増量期に起こりやすい不安、焦燥、不安、衝動性などの症状です。
PPPDはめまいに対する過敏性が形成されているため慎重に服用を考えます。PPPDの前身の慢性めまい疾患への効果は50~70%程度、うつ病の投与量の半分程度で効果を認めることが多いようです。2~3ヶ月で効果がみられ少なくとも1年継続が推奨されています。精神疾患の有無に関係なく効果を認めるため、中枢セロトニン神経系への作用が関与していると考えられています。現在、慢性疼痛にたいして鎮痛作用を目的とした抗うつ薬投与が行われている考え方と同様と推測されています。
◆認知行動療法とは、ストレスな状況にいたる否定的な考え方(認知)に働きバランスよい適応的な考えをつくり、気持ちを楽にする精神療法です。
我々は、ダイエットを行う時、毎日体重を測定してなぜ体重が増えたかを考え悪い行動や食習慣を是正していくと思います。これと同じことを、こころの問題について行い、誤った考え方や物事のとらえ方を自分で気づき歪んだ認知を適応的な考えに変更して、気持ちを楽にする方法です。
めまいに対しての簡易的認知アプローチとして、めまい日誌を作成して、誘発因子として、睡眠不足、疲れ、気圧の変化、人混み、スマホ・PCの視覚刺激、ストレス、生理との関連、肩こり、場所の変化など見極め、本人に誘因を自分で認識してもらい対応していきます。
めまいを目標に治療するのではなく、めまいで何が困っているかを考え二次的な問題点から治療対象としていきます。めまいで、不安・不眠があれば、不眠の治療から、めまいで外に出れないのであれば、少しずつ外出、買い物に行けるよな行動を考えていきます。

ひとつの方法として、毎日のめまい・ふらつきのため、不安を感じている方は多く毎日の腹式呼吸の習慣を身に着け心の安定をはかります。最初は2秒で鼻から吸い、4秒で口からはく、5秒で吸い10秒ではくまで、少しずつ長くしていきます。
~~本格的認知行動療法について:精神科~~
世界的に見ると,認知行動療法は精神療法の世界標準となっていますが、日本においては,普及が十分に進んでいません。
うつ病、強迫性障害、パニック障害、PTSD、社会不安障害、神経性過食症は、認知行動療法の保険適応となっていますが、取り決めが多く保険点数が低いこともあり実施施設は少ないようです。自費診療で行うところもあるようです。通常は、精神科・メンタルクリニックが行います。この治療のメリットは再発率が低く、精神薬のような副作用がないことです。
PPPDへの認知行動療法は短期的には効果をみとめるようですが、長期的にはこれからの検討課題となっています。
患者さんに、この病気の病態生理を理解してもらい認知行動療法の必要性を理解してもらうことから始まります。患者さん自身が自己観察を行い、めまいに対する過剰な恐怖など自覚することから始まるようです。精神科の近藤医師は、第3世代認知行動療法の一つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピーのPPPDへの効果を報告しています。3世代認知行動療法とは、瞑想を利用したマインドフルネスを利用してネガティブな考えをつかまえ受容し対応していくやり方のようです。前庭リハと併用して行います。認知行動療法は、精神科医が誰でもできるわけではないようで一定の研修と臨床経験を必要とするようです。
通常の内科や耳鼻咽喉科の外来で行えるものではありません。
まとめ:
この疾患PPPDは、何科に行けば治るというものではなく、めまいに精通した耳鼻咽喉科医・神経内科や認知行動療法に精通した精神科・心療内科医がPPPDの疾患を良く理解して対応することが重要になると思われます。臨床心理士や理学療法士の協力を得ながら行うことが望ましいのですが、日本の保険医療制度では難しいのが現状です。日本めまい平衡医学会の『めまい相談医』から探されるのも方法です。
老年症候群、心因性めまい、薬剤性めまい、椎骨脳底動脈循環不全、外リンパろう、脳脊髄液減少症、上半規管裂隙症候群など慢性化しやすいめまい・ふらつきの原因をしっかり鑑別して行うことが前提です。
参考資料
*慢性めまい治療における認知行動療法と 前庭リハビリテーションの役割:近藤 真前 Jpn J Psychosom Med 58:517-523, 2018
*姿勢誘発めまい(PPPD)の診断基準:堀井 新 Equilibrium Res Vol.76(4) 316~322,2017
*めまいリハビリ 五島 史行 金原出版
睡眠時無呼吸症と間違いやすい睡眠障害
日本には睡眠に問題を抱えている人が多くいます。約5人に1人の方が悩んでいるのが『不眠症』です。睡眠に問題がある場合、『不眠』『過眠』『睡眠中のいびき無呼吸や感覚・運動異常』『朝寝坊・早朝覚醒・昼夜逆転など覚醒時間帯の問題』など考えて対応が必要です。不眠に加え食欲・意欲・興味の低下などがあれば『うつ病』を疑います。
当院では睡眠時無呼吸症の患者さんを診察することが多いのですが、睡眠障害を背景にしたふらつき・めまい・耳鳴りやのど・舌の異常感の患者さんもよく診察しています。思春期のお子さんの場合、朝に起きることができない、ふらつく、学校にいけないなどの相談もあります。必要な方は精神科・心療内科・神経内科・睡眠医療専門病院への紹介も考え、睡眠障害のスクリーニングも必要な方は行っています。
➡睡眠時無呼吸症の症状は、日中傾眠・睡眠中のいびき無呼吸の他に、多彩な症状のため、うつ病、更年期障害、不眠症、頭痛持ち、前立腺肥大、発達障害、自律神経失調などとも間違えられることがあります。
『睡眠時無呼吸症で生じるが、あまり知られていない症状』
▢ 起床時の頭痛 ▢ 夜間頻尿 ▢ 元気がない
▢ うつ傾向 ▢ 集中力がでない
▢ 朝の目覚めがわるい ▢ 寝汗
▢ 多動(小児)▢ おねしょ(小児)
▢ 学習障害(小児)▢ 発育障害(小児)
など多彩です。
👉 日中傾眠が生じる睡眠時無呼吸症の症状と間違えやすい睡眠障害の病気を整理しました。皆さんの睡眠障害はどれになるか考えてみて下さい!!
◆睡眠不足症候群(最も多い睡眠障害)
日本人の睡眠時間は世界的にみても最も少ない国の一つで、50年前に比較して睡眠時間は1時間少なくなっています。
実際は、成人7~8時間 中高校生8~9時間 小学生9~10時間、幼稚園児10~11時間は必要とします。成人7時間、学生8時間以下は睡眠不足と考えられます。
10年後の死亡率の観点から、成人は約7時間が望ましいと考えられています。
しかし高齢者では、睡眠効率が悪くなり6時間程度で普通になります。高齢者では薬の影響や身体・心の疾患(夜間頻尿、疼痛、痒み、口渇、喘息や咳、逆流性食道炎、うつ病、認知症など)での不眠が生じやすくなります。
日本の統計では、現在中高大学生の就寝時間は0時頃のことが多く、学校に行くには6~7時に起床が必要なためほとんどの中高大学生は睡眠不足となります。
社会人の方も睡眠は5~6時間で大丈夫と考えている方も多いので、自分では気づかない慢性的睡眠不足・睡眠負債を抱えて生活していることになります。睡眠負債は、がん、生活習慣病、うつ、認知症などの発症リスクを高めます。経済的損失も社会的問題となります。寝て朝食をしっかりとらないと活動の質は高まりません。
日中の眠気でお困りの方は人口の1割程度いると考えられ、その大半が睡眠不足によるものです。平日の睡眠と休日の睡眠が、2時間以上の差があれば慢性的睡眠不足を考えます。週の後半に段々眠くなるようであれば睡眠不足が考えられます。
治療はまずは寝ることから始まります。
◆睡眠呼吸障害(比較的多い生活習慣と関連する病気)
睡眠時無呼吸症:男4~5% 女1% 50歳を過ぎると男女差はなくなってきます。不眠の方は将来、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に3~4倍なり易いと考えられています。閉塞性睡眠時無呼吸症の中等症〜重症になると、7〜8年後には20%〜30%の人が心筋梗塞や脳梗塞などで死亡すると報告されています。閉塞性睡眠時無呼吸症がほとんどで、中枢性の場合は少なく心不全の関与が指摘されていて特徴的いびきは確認できません。
精密検査目的で睡眠医療専門施設紹介することがあります。
当院コラム 睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?
当院コラム 睡眠時無呼吸症のマスク
全般的には、当院HP 睡眠時無呼吸症(OSAS)
◆概日リズム睡眠障害(ITの進歩や文明生活に伴い増加した病気)
*睡眠相後退症候群 罹患率0.13%程度 思春期は多く7%と増加します。不登校・会社遅刻となり社会的問題となります。
初期の症状は、学校・職場の居眠り、過食、イライラ、不注意などですが多彩です。
体内時計の調節異常のため、明け方まで入眠できず、悪化すると一旦入眠すると午後まで覚醒できないことがあります。単純に早く眠ることが出来ないだけで、覚醒が望ましい時間帯ではなく遅くなり難治な疾患です。精神障害、他の睡眠障害、自閉生活を生じやすくなります。薬剤による過鎮静などで二次的に同様の状態が引き起こされることもあります。半数でうつ病など心理的問題を抱えていると報告されています。
対応:
難治例は小児神経・精神科または睡眠専門医に紹介します。
うつ、双極障害、発達障害、ストレス反応の身体化など関与していることがあります。
➡軽度では、一例として望ましい睡眠時刻になるまで、毎日15分ずつ寝起きする時間を早くなるように調節します。朝は毎日朝日を浴びてバランスが良い朝食を取り、体内時計を少しずつ前進することから始めます。そこで睡眠日誌や睡眠アプリを活用します。
思春期のお子さんの7~16%程度は3時間程度睡眠相が後退していることがあるようです。
根気よく行う必要があります。
➡慢性的睡眠不足(7~10%程度)も関与していることもあり、毎日最低8時間就寝をまずは2週間持続してどういう変化が起きるか確認しましょう。
➡就寝前のスマホ・ブルーライトは止め、電球色にして強い光にあたらないようにします。
メラトニン関連の薬を使用することもあります。
当院コラム 食事と良質な睡眠
当院コラム 日の出と良質な睡眠
当院コラム よくわかる子供の漢方:起立性調節障害、ふらつき
なども参考にしてください。
*睡眠覚醒前進症候群 多くはありませんが老人にみられます。夜、覚醒時に明るい光を浴びないようにします。
*交代勤務睡眠障害者
一般 に、昼夜を逆転した場合、様々なリズム現象が、逆転された 昼夜の周期に同期するために要する時間は、ほぼ1週間 かかると考えられています、中年期以降では、睡眠・ 覚醒リズムの同調には、若年者と比べより長い時間が必要であることも判明しています。 35歳を過ぎた頃から、夜勤や徹夜が辛くなるのは、このためです。確率された治療法はありません。睡眠薬を安易に服用するようになります。
*認知症による不規則型睡眠覚醒パターンは社会的に問題となっています。
◆不眠症(皆んさんご存知の疾患)
重症は精神科紹介。
睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療ガイドライン2014年(サイト)
医師が、適正に睡眠薬を出せるように2014年にガイドラインが出来ました。
興味ある方は読んでみましょう。
睡眠薬乱用や依存が社会問題化しています。
今まで睡眠薬の投薬期間や休薬指針が明確でありませんでした。このガイドラインを参考に睡眠薬の使用を考え直します。
*まず薬を使わない睡眠衛生から行います。
*初期治療は単剤から行います。
*不眠が回復(不眠なく昼間も調子よい)したら止め時を考え、少しずつ減量して休薬をトライします。
*維持療法は治療のゴールを設定します、今までは漫然と長期服用が多くみられました。
成人の30%以上が、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡困難などいずれかの不眠症状をもっています。20代ごろから加齢とともに増加して中高年で急激に増加します。男性より女性に多いと言われています。高齢者の二次的不眠の原因:夜間頻尿、頭痛、消化管疾患、気管支炎と気管支喘息、心血管障害、慢性の疼痛性、痒みの疾患、うつ病、認知症などの多数認めます。
◆睡眠関連運動障害(あまり知られていないが比較的多い病気)
精神科・神経内科・睡眠医療専門施設へ紹介になることがあります。
*むずむず脚症候群 (RLS restless legs syndrome)
潜在患者を含め推定500万人 不眠症患者の1/10人
じっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢から腰・背中・手まで
「むずむずする」「じっとしていられない」「痒い」「針で刺すような」「火照るような」「蟻やミミズなどの虫が這っているような」
などの様々な異様な感覚が現われます。
患者さんはこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすらなければならない状況に追い立てられます。3分の1の患者では週に2回以上、中等症から重症の症状が起こります。特に夕方から夜間にかけて症状が増強し入眠障害をおこしたりして昼間の疲労感を引き起こし日常生活に大きな影響を及ぼします。下記の周期性四肢運動障害と合併することも多くみられます。
正確な原因はわかっていませんが、鉄不足、ドーパミンの機能低下が考えられています。
妊婦(1/5人)・透析・胃切除・鉄欠乏性貧血(フェリンチン50ng/ml以下・氷食・匙状爪)に多く、パーキンソン病、関節リウマチ、線維筋痛症、吐き気止め・統合失調の薬・抗うつ薬(SSRI)、中枢性抗ヒスタミン薬で起こることがあります。
対策:カフェイン、アルコール控えます。薬はフェロミア クロナゼパム少量 ドーパミン作用薬 レグナイトなど考慮します。
*周期性四肢運動障害
高齢者に多いが睡眠時無呼吸症と同様、若・中年に較べ高齢者では健康への影響は小さいと考えられています。夜間に下肢や上肢にミオクローヌス様の不随意運動が繰り返し出現するため不眠もしくは日中の過眠が生じます。運動症状を自覚していない患者が多く、ムズムズ脚症候群に合併することもあります。
*REM睡眠行動障害:
レム睡眠行動異常(REM sleep behavior disorder :RBD)とは、通常の行動や認知に問題はないが、レム睡眠の時期になるたびに体が動き出してしまう睡眠障害の1つ。突発性の睡眠障害で50~60代以上に多く見られます。レム睡眠時には脳は覚醒時に近い活動をして筋緊張は抑制されています。レム睡眠行動障害は何らかの原因で筋緊張の抑制が障害されるために夢で見たことをそのまま行動に移してしまいます。 粗大な四肢や体幹の運動、寝言(叫ぶ、泣く、笑う)や攻撃的運動、立ち上がって動き回るなどの異常行動がみられる20~30分が経過しレム睡眠が終わると再び通常の睡眠に戻ります。
原因:基礎疾患として、脳幹部の脳腫瘍、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レビー小体認知症などいくつかの原因が考えられていますが、約半数は基礎疾患を持たず、原因不明です。
診断:重要なのは寝言や睡眠時の異常行動が本人の見ていた夢と一致することです。
治療:クロナゼパム(第一)やパロキセチン、メラトニンなど
◆過眠症(比較的稀な病気)
睡眠医療専門施設、精神科、神経内科へ紹介します。
MSLT(反復睡眠潜時検査)が必要ですが、できる施設は日本睡眠医療学会認定医療機関など少数です。
*ナルコレプシー:居眠り病と呼ばれます。脳の覚醒を維持する機能が弱く、REM睡眠機能調整障害です。 カタプレキシー(笑い情動脱力発作) 睡眠麻痺(金縛り) 入眠時幻覚などの症状を認め、Ⅰ型(脱力発作あり)2型は脱力発作なしの2タイプがあります。世界の有病率は1/2000人、日本では1/600人と外国より多い疾患です。日本は世界一短時間睡眠国のため睡眠不足の誤診が混入しているのではと考えられています。
車の運転事故の可能性があるため改善するまで運転を控える必要が出てきます。
対応:十分な睡眠をとる、薬はリタリン、モディオダールなどで登録医制度あり。
*特発性過眠症:持続性あるいは反復性の日中の過度の眠気の発作を主症状とする睡眠障害の一種である。特発性過眠症の原因は判明していません。比較的稀な疾患であり、罹患率はナルコレプシーの1/10程度と推定されています。朝の寝覚めが悪く、頭が重い、頭が痛い、たちくらみ、めまいがするなどの症状が多く報告されています。
◆月経随伴睡眠障害
まだ詳細がわかっていない領域です。月経前や月経時に過眠になり易くなる報告されています。月経周期後半の黄体期に入眠潜時が延長し、睡眠の効率が 悪化し、質的低下がみられることを報告されています。
◆精神生理性不眠症
精神科紹介:眠れない日々を繰り返すうち、不眠への恐怖そのものにより不眠が増悪する悪循環に陥った状態。身体疾患、精神障害、嗜好品、生活習慣、薬剤などによる不眠と鑑別が必要。
◆ロングスリーパー 日本人の3~9%
先天的に睡眠時間が必要な方、10時間以上必要、病気ではなく体質、アインシュタインなどがそのようです。
睡眠時無呼吸症はなぜ起こる?
1時間あたりの無呼吸・低呼吸(10秒以上)が20回以上(AHI20<)に達するような中等症〜重症になると、7〜8年後には20%〜30%の人が心筋梗塞や脳梗塞などで死亡すると報告されています。CPAPマスク療法で、死亡率の改善が期待できます。
中等症AHIが20でも、3分に1回10秒以上気流停止(無呼吸・低呼吸:AHI)が生じることを想像すると、怖い話です。
AHIが20以上あれば、死亡率の改善を期待し保険適応でCPAPマスク療法が認められています。子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのは普通ですので、AHI 1 でも OSASと診断されます。
*睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療・検査につては当院HP睡眠時無呼吸症
*CPAPマスク治療についての詳細は、当院院長コラム:睡眠時無呼吸症のマスクを参照して下さい。
『睡眠時無呼吸症(OSAS)を疑う症状』
▢ 毎晩、大きないびきをかく
▢ 睡眠中呼吸が止まると言われる
▢ 昼間いつも眠い
▢ 口を開けて寝る(特に小児)
『睡眠時無呼吸症で生じるが、あまり知られていない症状』
▢ 起床時の頭痛
▢ 夜間頻尿
▢ 元気がない
▢ うつ傾向
▢ 集中力がでない
▢ 朝の目覚めがわるい
▢ 寝汗
▢ 多動(小児)
▢ おねしょ(小児)
▢ 学習障害(小児)
▢ 発育障害(小児)
睡眠時無呼吸症の症状は多彩のため、うつ病、前立腺肥大、更年期障害、不眠症、頭痛持ち、発達障害、自律神経失調などとも間違えられることがあります。
👉 なぜ睡眠時無呼吸症(OSAS)が起こるのでしょうか?
① 肥満
② 鼻閉
③ 加齢
④ エストロゲンの低下(更年期以降)
⑤ 鎮静作用の薬剤やお酒
⑥ 子供のアデノイドや扁桃肥大
⑦ 小さい顎
など睡眠時無呼吸症は様々な原因で起こってきます。
① 肥満
誰もがご存知の肥満は、成人で最も多い原因です。特に皮下脂肪が関与します。
●3%ダイエット:
内臓脂肪型肥満は、3~6ヶ月で体重3%減らす、皮下脂肪型肥満は、6~12か月で体重の3~5%減らす目標達成すれば、また3%ダイエットを試みます。
●毎日体重測定:なぜ体重が増加したのか毎日考えます。
●リバウンド対策:
*筋肉は糖を取り込む作用がありエネルギーを多く消費するので、筋肉量を増やしながらできる運動を勧めます。
インターバル速歩, 自転車こぎ, 水中歩行など筋肉が落ちない運動を行います。
*急激な減量をしない事
極端な食事制限で大幅に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉量が減ります。筋肉量が減ると消費エネルギー量が減り、糖質や脂質がたまりやすくなり、痩せにくくなります。
*糖質制限ダイエット
*地中海式ダイエット
*時間栄養学ダイエット
(お金をかけない肥満&健康対策:当院コラム)
② 鼻閉
小児の場合は鼻閉があれば、急に睡眠時無呼吸症(OSAS)が悪化します。すぐに治療が必要です。成人の場合、鼻閉そのもののOSASへの関与はありますが低く、CPAPマスク治療の弊害となりますのでCPAPマスク治療者は同時に鼻の治療を行います。
③ 加齢
加齢に伴いのど周囲筋肉がたるみOSASは悪化します。後期高齢者では中年の方のように命への危険性に関してのリスクはわかっていません。昼間の傾眠だけでなく元気がない、夜間頻尿などの症状を参考にCPAP治療を行うか判断します。OSASを認知症や老年期うつと間違えることもあります。
④ 女性のエストロゲンの低下(更年期以降)
睡眠時無呼吸症(OSAS)は性差医療です。若い方の罹患率は、女性は男性の1/5程度です。しかし更年期以降エストロゲンの低下により女性もOSASが悪化し60歳ごろから急に増加してきます。症状も典型的でなく疲れやすい、元気がない、朝の目覚めの悪さなど更年期障害や自律神経障害と勘違いするようなこともあります。女性の無呼吸は低呼吸のことが多く、夜間のいびき・無呼吸も穏やかに感じわかりにくいことがありますので注意しましょう。女性のCPAP普及率は低いのが現状ですので、60歳前後からの啓発が必要です。
⑤ 鎮静作用の薬剤やお酒
睡眠薬・精神薬服用でのど周囲の筋肉が弛緩していびき無呼吸が悪化します。お酒も同様の作用がありますので、飲み過ぎは注意が必要です。
⑥ 子供のアデノイドや扁桃肥大
アデノイドは鼻の奥の上咽頭組織で通常の診察では確認できません。
子供は、いびき・無呼吸・口呼吸だけなく、夜尿症、多動、学習障害、発育障害などにも注意して観察します。子供の場合、睡眠時無呼吸症(OSAS)が無いのが普通ですので、AHI 1<で、OSASと診断されます。
子供の場合、成人と違い肥満の関与は低く、2~3歳ごろから生理的に大きくなるアデノイドや扁桃が子供のOSASの原因です。風邪でアレルギー性鼻炎・鼻副鼻腔炎がひどくなると鼻閉が悪化して急にOSASが悪化します。すぐに耳鼻咽喉科で治療が必要です。治療しても改善が悪いときは、アデノイドや扁桃の切除術を考えなければなりません。耳鼻咽喉科では、レントゲンだけでなく電子スコープでアデノイドの大きさと表面の炎症を確認して治療をすすめます。子どもの場合、風邪をひかなくなる夏に、一時的のこともありますが改善することがあります。生理的にアデノイドは7歳以降少しずつ小さくなるので、保存的治療を頑張ってもらい手術を回避することも行います。
成人と違い、子供の場合、簡易検査の精度は低く、終夜監視睡眠無呼吸検査(精密検査)は、子供を行う検査施設は非常に少ないためビデオモニタリング(当院HP睡眠時無呼吸症を参照)や様々な症状とファイバーなどの局所所見で、子供のOSAS治療の第一選択である手術などの方針を総合的に決めることが一般的に行われます。
⑦ 小さい下顎
顎が小さく、うしろに後退した形状はOSASの原因です。現代人は、食べ物が軟らかくなり噛まなくなったため昔に較べ小顔となり下顎も小さくなったと考えられていますが、原因ははっきりしません。幼少時からの鼻閉・口呼吸も顎顔面発育に影響を与え、歯並びの悪化や顎が小さくなる原因と考えられていて将来のOSASの予備群となります。鼻閉と口呼吸の習慣を幼少時から改善させることはお子さんの将来にプラスになると思われます。
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