院長の健康情報コラム
あなたの喘息は何タイプ?成人編
長引く咳は、医療機関受診動機として最も頻度が高く、近年は、アレルギーや生活習慣に関連した咳が増加しています。3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。最近は、咳喘息の認識が高くなり、少し咳が長引いているだけで、喘息吸入治療薬がすぐに処方される傾向にあります。処方前の検討が十分でなく発症3週未満にステロイド吸入の治療をすると、咳喘息以外の病気にも効果があるため、咳喘息の診断を難しくすることが懸念されています。
喘息を疑う病歴・家族歴・検査結果、強制呼気喘鳴の聴取や気管支拡張薬吸入の効果があれば喘息または咳喘息の可能性が高くなります。喘息の有病率は、成人は5%程度、小児ではもっと多く男児は女児の1.5倍、成人は女性のほうが男性より少し多く認めます。
喘息とは何か?
医学的に喘息とは、気道の慢性炎症が存在して、気道狭窄症状が良くなったり悪くなったりすること(➊ 気道可逆性)で、ゼーゼー・息切れ・咳・息苦しさなどの症状が変化する(❷反復する自覚症状)病気です。夜間や早朝に増悪する傾向があります。症状が感冒,運動,ダニなどアレルゲン曝露,天候の変化,笑い,大気汚染,硫黄など強い臭気 などで誘発されることが多く認めます(❸非特異的気道過敏性)。
喘息とは、上記➊ ❷ ❸を特徴とします。
喘息は症状群!!
喘息の病像はバラエテイーに富んでいて、一つの病気と言うより『症候群』としてとらえ、喘息を類似した気道・肺の病気の集まりと考えます。
症状や病態生理の特徴から分類すると(フェノタイプ:病型分類)、病因の解明、見通しの予測、焦点を絞った適切な治療を行いやすくなります。今後は、単なる重症度から治療方針を決めるのではなく、このフェノタイプ分類に基づいて適正な治療が進められるようになると期待されています。最近は、治療効果が上がる分子レベルに基づく分類(エンドタイプ)の研究が進められ、分子生物学的製剤(高価な注射薬)が難治性喘息に対して、適応が増加してきています。
医学的な喘息のフェノタイプ・エンドタイプ分類は難しい!!
喘息のフェノタイプ分類は ①タイプ2免疫反応型 ②非タイプ2免疫反応型に分け、
*好酸球性炎症型*抗原特異性IgE型*気道過敏・気道リモデリング型*好中球性炎症型などに分類されます。自然免疫・獲得免疫、IL5,IL4,IL13、IL8などのサイトカインおよび各種メディエーターを組み合わせ、分子レベルの複数のエンドタイプに分類されていきます。
これを患者さんに説明するには、難しい話です!!
👉👉 今回は、日常の診療の中で、わかりやすい喘息のタイプ分類の解説と、それぞれの疾患などで、どうしたらよいかの説明です。
自分がどのタイプの喘息なのか、どの疾患または何の薬と関連して悪化しているか考えてみましょう!!
ダニ対策などの環境整備、控える薬物、生活食事習慣の改善、ステロイド吸入以外の薬・治療法の選択の参考になります。
疾患との関連は?
『喘息の悪化は、鼻炎も同時に治療することが重要です』喘息患者でのアレルギー性鼻炎の合併は80%前後、喘息の悪化にも影響します。アレルギー性鼻炎には鼻噴霧ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬を併用すると喘息症状の改善効果が高くなります。
鼻と秋の喘息(当院院長コラム)を参照して下さい。
通常の副鼻腔炎:風邪のあとこじらせると、粘性又は膿性の鼻汁・後鼻漏・鼻閉・咳・痰・頭痛などの症状があれば急性副鼻腔炎をおこしています。喘息や咳が長引き治らなくなりますので、副鼻腔炎の治療も重要です。必要な方は抗生剤を併用します。鼻洗も効果的です。
◆匂いの障害・好酸球性副鼻腔炎(新型)
匂いの障害や鼻ポリープが特徴の最近急増している副鼻腔炎が好酸球性副鼻腔炎です。
副鼻腔炎のコントロールが悪いと喘息が悪化しますので、副鼻腔炎をしっかり治すことが重要ですが、好酸球性副鼻腔炎はステロイドホルモン服用以外の効果は乏しく難治性です。白血球の一種でアレルギーの病気で増加する好酸球が副鼻腔粘膜に増加してきます。従来の慢性鼻副鼻腔炎より難治で、手術を行っても再発が多くみられます。喘息合併例で、エアロゾルなどの粒子径が小さい吸入ステロイド使用の場合、口から吐き出さず、鼻の奥の後鼻腔から出す方法で効果があることもあります(鼻呼気法)。
治療は、ステロイド内服や抗ロイコトリエン薬および手術治療、術後再発のポリープを伴う重症例には生物学的製剤(デユピルマブ):重症アトピー性皮膚炎や重症喘息にも保険適応あり、高価な注射薬です)が2020年から保険適応となりました。重症例は指定難病として認定されることがあります。難治性の好酸球性中耳炎、気管支喘息、アスピリン喘息などが、多くの症例で合併します。
あなたの副鼻腔炎は何タイプ?(当院院長コラム)
喘息患者ではGERDの保有率は高く(45~71%:一般日本人は6.6~37.6%)、胸やけや呑酸、げっぷなど逆流症状があり、夜の呼吸器症状がある患者はPPI(プロトンポンプ阻害薬)の服用(8週間)を行うと効果を認めます。GERDの症状がない方への投与は効果を認めません。就寝前3時間程度は水以外の飲食を控え、脂もの、刺激物、コーヒー、飲酒なども控えます。。
GERDは喘息悪化の因子の一つです。GERD合併喘息では、経口ステロイドの投与回数が多く、不安やうつ状態を伴い夜間発作症状が強く出てきます。またコントロール不良の喘息患者のうち24%にサイレントGERDが存在する報告があります。
『GERDが関与する喘息の特徴』
*非アトピー性
*主に夜間に発作が増悪
*食後症状が悪化
*喘息治療に抵抗性
*胃酸分泌を抑制することにより症状が改善
胃酸の逆流と耳・鼻・のど・呼吸器(当院院長コラム)
肥満は喘息の難治化因子です、内臓脂肪が関与します。
非アトピー型で好酸球が増加せず、直接的なアレルギーが介在しない機序が考えられ、喘息の一般治療薬のステロイド吸入療法の効果が低いと言われています。
肥満対策・ダイエットが重要です。
『肥満喘息発症メカニズム』
*最近、脂肪細胞は、生理活性物質の分泌臓器と考えられるようになってきています。
脂肪細胞から、喘息の悪化をもたらす気道過敏性の亢進や気道の慢性炎症を悪化させる生理活性物質(レプチン、TNF-α、PAI-1)が放出されます。
*肥満による肺機能低下
*運動不足による気道過敏性の亢進(運動は気道過敏性へ効果の報告あり)
*肥満や睡眠時無呼吸症による胃食道逆流症の合併
肥満と喘息;ダイエットで喘息が治る?(当院院長コラム)
◆慢性閉塞性肺疾患(COPD)
喘息合併COPD(ACO)は高齢者喘息に多くみとめます。ACOは男性が少し女性より少し多く副流煙は喫煙の半分程度の影響があると考えられています。60歳台40%、70歳台50%、80歳台60%と加齢で増加していきます。過去の喫煙や副流煙歴も影響します。ACOは通常の高齢者喘息よりコントロールが不良となります。40歳以上で、咳・痰持続、労作時の息切れがあり、①喫煙歴(副流煙も含む)や長期間大気汚染に暴露歴があればCOPDを疑います。②胸部CTでは気腫性変化を示す低吸収領域や、③肺拡散能障害を認めます。①~③のうち1項目あればCOPDの可能性が高くなります。
◆閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)
OSASは睡眠中に繰り返し呼吸が止まり、夜間に低酸素血症が反復します。喘息発作は夜間就寝中に起こり易く、喘息にOSASが加われば夜間の低酸素血症は増強し不整脈や高血圧を悪化させます。適切なOSASの治療(CPAP療法、鼻の治療、歯科マウスピース)すれば低酸素血症や呼吸器症状の改善が期待できます。
◆解熱鎮痛剤との関連(アスピリン喘息)
小児にはほとんどなく、成人喘息の5~10%。男性も認めますが成人女性に多く、嗅覚障害・好酸球性副鼻腔炎と合併することがあります。アスピリン喘息を診断する特異的な検査はありません。本人はわからず服用して初めて病院受診後に気づくことがよくあります。咳・呼吸器症状の反復と嗅覚障害があれば要注意です。痛み止めを服用すると喘息発作が、急速に進行して救急車を呼ぶこともあります。解熱鎮痛剤・湿布薬の使用が制限されます。使えるのはソランタール、少量のアセトアミノフェンなど限定されますので前もって発熱・痛みのときの対応を、担当医に尋ねておきましょう。歯科や整形外科では消炎鎮痛剤が出されることが多く、前もって申告する必要があります。
緑内障の目薬と心不全に使用されることが多い降圧薬に注意します。気管支粘膜にはβ2受容体 心臓にはβ1受容体が存在します。
降圧薬
β1選択制が高いβ1ブロッカ―降圧薬を選びます。
β1選択制のテノーミン(アテノロール)、メインテート(ビソプロロール)などが慎重投与となります。
αβブロッカーであるアーチスト(カルベジロール)は禁忌です。高血圧と喘息がある方は注意して下さい。
緑内障薬
チモプトール点眼、ミケラン点眼などのβブロッカー点眼薬とその配合剤は控えます。
誰も目薬で喘息が悪化するとは思いもつきません。
アトピーとの関連は?
◆IgE型(アトピー型:外因型)ダニ 花粉(スギ、ヒノキ、イネ、ブタクサなど)ペット(犬、猫など) カビ(アスペルギルス、アルテルナリアなど)昆虫(ゴキブリ、ガなど)
湿度が高い日本では、年間を通してダニが最も重要です。若年者の80~90%はアトピー型喘息です。ダニ関連アトピー型喘息とアレルギー性鼻炎はダニの増加に伴い悪化します。ダニ対策の環境整備は重要です。長期的にはダニなどの免疫療法(舌下・皮下)による喘息・アレルギー性鼻炎の体質改善・新規感作予防が行われます。夏に繁殖したダニが秋に死んで、家に中にたまった死骸や糞が体に入り症状が出てきます。糞はダニの数十分の一の大きさ(0.01mm)で、気管支の中に入りやすくなり喘息を起こしてきます。
カビ・ペット・昆虫など多数を認める場合は、難治化することが多くなります。
実践ダニ対策(当院院長コラム)
舌下免疫療法:ダニ・スギ(当院院長コラム)
花粉症に新たな治療薬(ゾレア)(当院院長コラム)
◆非IgE型(非アトピー型:内因型)
成人になると、ダニなど外因と関連がないおとなの喘息が増加してきます。免疫療法の効果はありません。
年齢・性差での特徴は?
◆乳幼児 喘鳴(ぜんめい)として経過をみることから開始します。
お子さんの喘鳴は何タイプ?(当院院長コラム)を参照して下さい。
◆学童思春期 ダニなど関与のアトピー型喘息が80~90%。
年単位の長期的には、ダニ・スギなどの免疫療法が効果を認めます。アレルギー性鼻炎・喘息の体質改善や新たな外因アレルギーによる疾患予防(アレルギー性鼻炎があり免疫療法で将来の喘息の発症予防)にも効果が期待されています。
◆成人 好酸球性気道炎症を中心とした非アトピー型(内因性)の喘息が増加します。
肥満・タバコ・大気汚染、従来の好中球性副鼻腔炎との合併との関連で好中球性喘息が増加してきます。好中球性は吸入ステロイドの効果が乏しいこともあり、抗生剤マクロライドの使用や肥満者の減量、禁煙を行います。
◆高齢者 喘息死は70年前の1/10に減少していますが、高齢者が喘息死の多くを占めています。COPD、 GERD、心疾患、嚥下機能低下などに配慮して対応が必要です。
◆女性:妊娠の有無、月経周期との関連、肥満(BMI30<)との関連を確認します。
月経前喘息:月経3~4日前に起こる症状を呼びます。女性喘息患者の3~4割で認める報告があります。月経前の気管支粘膜浮腫や性ホルモンとの関連などが考えられています。
妊娠と喘息:喘息のある妊婦の1/3は喘息が悪化すると言われています。吸入ステロイドを継続します。
好酸球の上昇の有無で治療を判断!!
好酸球性気道炎症を示す2型炎症マーカーの評価を行います。
検査:末梢血好酸球数、血清総IgE, 呼気NO
◆好酸球性では、ステロイド吸入、抗ロイコトリエン薬を主体に治療開始。匂いの障害や好酸球性副鼻腔炎・アスピリン喘息の確認を行います。難治例では、副作用が問題となる経口ステロイドが連用されるため、最近は生物学的製剤の適応を検討します(呼吸器内科専門医へ)。この治療でステロイドの減量や離脱を期待します。
◆好中球性は、吸入ステロイドの効果が乏しいこともあるため、マクロライド抗生剤など使用、肥満あれば減量、禁煙指導、副鼻腔気管支症候群あれば副鼻腔炎の治療(耳鼻咽喉科受診)を行います。
咳喘息とは!!
3週間以上持続する長引く咳の半数以上は、咳喘息が占めています。
*ゼーゼーを伴わない咳(聴診では正常)が2か月以上持続
(3週以上でも診断可能;3週未満の咳では診断しない)
*気管支拡張薬で一時的効果あり
*季節性があり夜間・早朝に多い
*血液や喀痰の好酸球上昇、呼気NO高値(27以上)、気道過敏性亢進あり
経過中30~40%は典型的喘息に移行します。吸入ステロイドの治療(最低1年)を行い、再燃時は早期受診が必要です。治療開始後、症状がすぐに改善する場合、いつまで治療続けるかエビデンスはありません。
運動誘発喘息とは!!
十分な準備運動、通常の喘息のコントロールと抗ロイコトリエン薬が効果を発揮します。気道粘膜の脱水と冷却、気道上皮損傷による気道過敏性の亢進が出現します。
運動・アスリートと喘息・鼻炎(当院院長コラム)を参照して下さい。
カビや血管炎との鑑別は?
EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
ABPM(アレルギー性気管支肺真菌症:アスペルギルスが多い、成人喘息の約2%))
【問診】
固形状の粘液栓を咳に伴いだしたことがあるか?(ABPM)
手足のしびれの自覚は無いか?(EGPA)
【検査】
胸部CT
EGPAでは、MPO-ANCA、末梢血好酸球数1000/μL<、CRP高値
ABPMでは、末梢血好酸球数500/μL< 血清総IgE1000IU/mL<、真菌特異性IgE,アスペルギルス沈降抗体など確認します。
~~重症喘息について~~
必須検査は血液検査、胸部CT,スパイロメトリー、鼻汁・鼻閉・後鼻漏・嗅覚障害例は顔面CTおよび耳鼻咽喉科受診をします。頻度は喘息患者の5~10%で、呼吸器専門医での診断・治療が必要です。
実際は、喘息の診断が正しくされていない場合や服薬遵守や吸入手技が悪いことで難治化していることがあるため、医師、薬剤師、看護師は服薬遵守・吸入手技・環境要因(ペットなど)を再確認し患者さんへの教育が必要です。
難治化因子の併存症(感染症、肥満、胃食道逆流症、好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎や通常の副鼻腔炎、COPD,閉塞性睡眠時無呼吸症、薬剤性、アスピリン喘息、パニック発作および過換気症候群、)の確認を再度行います。
鑑別する病気としては専門医療機関にてABPM(アレルギー性気管支肺真菌症),EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症),声帯機能障害(心因の関与もあり)、非結核性抗酸菌症,気管支結核・腫瘍、心不全が無いのか確認します。このようなステップを踏むと重症喘息の割合が、5~10%から数%まで減少すると考えられます。
本当の重症喘息には生物学的製剤を検討します。
アトピー型喘息(IgE30~1500IU/ml)オマリズマブ(重症スギ花粉症にも適応あり)
好酸球性気道炎症 IL-5関連:メポリズマブ ベンナリズマブ IL-4,13関連 デユピルマブ
参考資料:
難治性ぜんそく診断と治療の手引き2019(成人)アレルギー 8-12、Vol69 2020
咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019
お子さんの喘鳴(ぜんめい)は何タイプ?
お薬飲んでも長引く咳・夜間の咳で眠れないなど症状が反復し、親御さんから『喘息でしょうか?』と質問を受けることはよくあります。
お子さんは風邪をひきやすく、成長過程であり、検査の協力を得られにくいので、繰り返す喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー)という症状として経過を見ていく必要性を説明しています。
小さいお子さんの場合、喘息ではなくても風邪のウイルスや鼻・副鼻腔炎や鼻炎の後鼻漏、哺乳・食事摂取後の咳・嘔吐などから喘鳴(ぜんめい)が聴取されることはよくあります。
アトピー性皮膚炎、乾燥肌、両親の喘息の家族歴、ダニ抗体陽性や喘鳴の回数の上昇(1週間の間隔をあけて呼気性喘鳴3回以上)、β刺激薬吸入に反応良好などから、喘息の可能性が高くなっていきます。吸気性喘鳴の代表はクループです。
〇 病型分類(フェノタイプ)について
気管支喘息患者さんを、症状や病態生理の特徴から分類すると、病因の解明、見通しの予測、焦点を絞った適切な治療を行いやすくなります。
この分類をフェノタイプ(phenotype: 表現型 病型分類)と言います。
乳幼児期は検査の協力が得られず、小児期の呼吸器系は、解剖・生理で変化し、風邪をひきやすく免疫機能も大きく変化する時期のため、喘息(ぜんそく)の診断は難しく、喘息とは言わず反復する症状としての喘鳴(ぜんめい)と呼び分類した方がわかりやすくなります。
👉 今回は反復喘鳴(ゼーゼー)・喘息:乳児期・学童思春期での病型分類(フェノタイプ)の話です。
反復しない基本的に1回だけの急性喘鳴はRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどによる急性細気管支炎・肺炎・気管支炎による喘鳴の鑑別が必要です(迅速キット検査あり)、生後3ヶ月未満では無呼吸発作のこともあります。稀ですがピーナッツなどの気道異物も喘鳴の原因となります。大きく以下の二つに分けて考えます。
1)乳幼児期 反復呼気喘鳴(ぜんめい)のフェノタイプ
(乳幼児期のフェノタイプはタイプ間で移行することがあります、喘息の診断はつきにくく喘鳴:ぜんめい としてフォロー)
2)学童思春期 喘息(ぜんそく)のフェノタイプ
(成人分類に近い状態になる,検査ができる年齢のため喘息の診断がつきやすい)
(アトピー型喘息が80~90%と最も多い)
詳細は以下に
1)乳幼児期の呼気性喘鳴(ぜんめい)のフェノタイプ:
この病型分類も歴史と共に変遷しています。
2003年海外の報告の臨床経過からの分類:
① 一過性初期喘鳴群(2~3歳までに改善)
② 非アトピー型喘鳴群(学童前半までにかなり改善するも一部は学童期喘息へ移行)
③ IgE関連喘鳴/喘息群(学童後も持続し喘息へ)
2017年小児気管支喘息治療管理ガイドラインからの分類変更:
① IgE関連喘息(アレルゲン誘発性喘息・アトピー型喘息)
学童期以降のアトピー型喘息へ移行することが多いため、気流制限・リモデリング予防のため早期から治療が必要です。
【診断に有用な所見】
*両親喘息
*アトピー性皮膚炎
*ダニ等吸入アレルゲン陽性
*風邪をひいてないときの呼気性喘鳴 など
ライノウイルスやRSウイルスの気管支炎の罹患は、気道上皮障害をおこしアレルゲンの感作が生じて喘息発症のリスクが高まります。
治療:吸入ステロイド(フルタイド、アドエアー、パルミコートなど)
② 非IgE関連喘息(風邪ウイルス誘発性喘息、他の誘因タバコ、冷気など)
この一部は、学童期までにアトピー型喘息または非アトピー型喘息移行します。
治療:抗ロイコトリエン薬など
2)学童思春期 喘息(ぜんそく)のフェノタイプ
アトピー型喘息が80~90%と多いが、非アトピー型喘息もあります。
アスリートや運動部に所属する場合、運動誘発喘息が問題になります。
*鼻・副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの耳鼻咽喉科疾患が、幼児から学童・思春期では悪化因子として多く認めます。
*肥満が喘息難治化要因となります。
*体育や運動の課外活動が、運動誘発喘息の原因となりますが、認識不足のため気づいていないこともあります。
*低肺機能を伴う喘息や小児発症の重症喘息は成人でCOPDのリスクになります。
*早期発症で気流制限を伴い、ダニ以外にも様々なアレルゲンを持つアトピー型喘息は難治化します。
治療:
ダニ回避などの環境整備
フルタイド、アドエアーなどの吸入ステロイド、抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻
免疫療法:ダニ・スギの舌下免疫療法など(ダニ舌下免疫療法は喘息の保険適応はありませんが、喘息にも効果が報告されています)
運動誘発喘息は、十分な準備運動、抗ロイコトリエン薬やステロイド吸入などの喘息管理
心理的、経済的要因も悪化因子となります。
〇 最新治療 フェノタイプを参考に、重症喘息に対して生物学的製剤を使用することがあります(かなり高価な注射薬です)
*6歳以上 ゾレア(オマリズマブ)抗IgE製剤
*12歳以上 メポリズマブ 抗IL-5製剤
*12歳以上(2019年3月~)デユピルマブ IL4受容体α鎖抗体
デユピルマブは、重症好酸球性喘息にアトピー性皮膚炎、鼻茸伴う慢性副鼻腔炎などを伴う例には、今後、早めに検討してもよいと思われます。
〇 難治化の盲点として
*ステロイド吸入の仕方の誤りは多く認めます。吸入方法については医師、看護師、薬剤師など積極的に確認して下さい。
*学童から思春期にかけて親の言う通りに服薬や吸入をしなくなる場合です。
参考資料:
小児気管支喘息治療管理ガイドライン 2017
57回日本アレルギー学会専門医認定医セミナー(2020年8月)
インフル関連Q&A2020
今年の冬は、新型コロナとインフルの同時流行が予測されるため、10月1日から高齢者(65歳以上)と60~65歳未満の心臓や腎臓、呼吸器に重い持病がある人からの早めの接種が呼びかけられ、高齢の方からの問い合わせが多くなっています。強制ではありませんが、厚労省は、それ以外の人は10月後半まで待つように呼びかけています。9月17日には、日本小児科医会から優先接種順にたいする問題点が指摘されました。
子どもの場合、①一ヶ月程度あけての2回接種のスケジュールのため早めの流行時には間に合わない恐れがあります ②乳幼児の脳症など子供も高齢者と同様に重症化することもあります ③インフル流行時は、子供の集団保育や学校での流行による家族内感染から高齢者への感染が多くみられます。子供のインフル流行を抑えることは高齢者のインフル対策にも重要です。
インフルワクチン効果出現まで2週間かかります。ワクチンの効果持続期間は約5か月と言われていていますが、添付文書では3ヶ月で有効予防水準が78.8%、5か月で50.8%に減少します。流行ウイルスとワクチンの抗原性が一致すれば3ヶ月維持され、インフルの基礎免疫を持っていれば3ヶ月過ぎても維持されとなっています。基礎免疫がなければ、効果の持続期間はさらに一ヶ月短縮されます。
10月初旬の1回接種では、インフルピークの1月中旬から3月末まで効果が十分期待できない可能性もあります。その年・地域によっては、早い場合は11~12月頃から流行することもあり、通常13歳以上は1回接種のため、各自判断して接種時期を決めないといけません。
*R1年度インフルQ&A厚労省(サイト)
*インフルワクチン予防接種(吉 耳鼻咽喉科アレルギー科;サイト)
*インフルエンザ出席停止早見表(学校関係)
【 インフルエンザワクチン関連Q&A】
➊インフルワクチン接種後効果が出るまでの期間は?
❷ワクチン効果の期間は?
❸妊婦や授乳婦の方にインフルエンザワクチンは接種可能か?
❹ワクチン効果はどの程度か?
❺卵アレルギーの人は接種可能か?
❻熱性けいれんやてんかんがあれば接種できるか?
【インフルウイルス・検査・薬・対応のQ&A】
➊妊婦や授乳婦の方に抗インフルエンザ薬は使用可能か?
❷インフルエンザの検査は発症すぐにできるのか?
❸抗インフルエンザ薬の予防投与は保険が効くのか?
❹希望があればだれでも予防投与できるのか?
❺新薬ゾフルーザの処方になぜ警鐘がならされるのか?
❻抗インフルエンザ薬による異常行動はどうなっているのか?
❼うがいでインフルエンザを予防できるか?
❽マスクでインフルエンザを予防できるか?
❾手洗いでインフルエンザを予防できるか?
❿部屋の換気は重要か?
👉 インフルエンザワクチン関連Q&A 解説
➊インフルワクチン接種後効果が出るまでの期間は?
2週間必要
❷ワクチン効果は?
約5か月
添付文書の【薬効薬理】では、3ヶ月で有効予防水準が78.8%、5か月で50.8%に減少します。流行ウイルスとワクチンの抗原性が一致すれば3ヶ月維持され、インフルの基礎免疫を持っていれば3ヶ月過ぎても維持されるとなっています。基礎免疫がなければ、効果の持続期間はさらに一ヶ月短縮されます。
❸妊婦や授乳婦の方にインフルエンザワクチンは接種可能か?
妊婦全時期および授乳婦で推奨される:
妊婦にインフルエンザワクチン接種することにより生後6ヶ月児のインフルエンザ罹患率を減少させます。
チメロサール含有インフルエンザワクチンのチメロサールは極少量のため胎児への影響はないとされています。懸念されていた自閉症との関連も否定されています。
~産科診療ガイドライン2017より~
❹ワクチン効果はどの程度か?
インフルワクチン効果は、重症化予防に効果があり、ウイルス侵入防御はなく、発病阻止効果は低い:
高齢者(65 歳以上)を対象に、インフルエンザワクチンの発病阻止効果は34〜55%、インフルエンザを契機 とした死亡阻止効果は82%と報告されています。乳幼児のインフエルエンザワクチンの有効性に関しては、報告によって多少幅がありますが、概ね20~60%の発病防止効果があったと報告されています。
現在のワクチン皮下注射では、分泌型IgAは誘導せず、血清IgG抗体を上昇させます。血清IgG抗体は、分泌型IgAのような鼻・口腔・気管での侵入を防ぐ効果や交差防御効果はありませんが、生体内でのウイルス活性を弱める効果がありますので感染後の症状発現予防や重症化予防は期待できます。
ワクチン製造に使用されたウイルス株と異なるウイルス株が流行すると、現在の不活化ワクチンの効果は期待できません。その年の流行インフルウイルスが製造ワクチンのウイルス株とすこし異なると、ワクチンを打っても効果があまり期待できない年があるのはそのためです。現在のインフルワクチンは重症化予防に効果が高いと考えて下さい。
日本のインフルエンザ予防接種ガイドライン2018年版では、『卵白抗体陽性でも、卵加工食品を食べても無症状である者では、接種後の鶏卵アレルギーによる重篤な副反応の報告はない』となっています。
米国では、米国アレルギー・喘息・免疫学会(ACAAI)は2017年12月19日、『卵アレルギーのある人でもインフルエンザワクチンの接種は安全であり、医療従事者が接種前に卵アレルギーの有無を確認する必要もない』とする診療指針を発表しています。これまでは、卵アレルギーの人への接種は、専門施設で行うことが推奨されていました。
卵アレルギーによるアナフィラキシーの経験があれば慎重な対応が望まれます。
1994年の予防接種法改正前までは、けいれん後一年は、予防接種は禁止でした。
現在は、過去にけいれん既往者は、接種要注意者として接種可能となりましたが、
添付文書には接種可能者の具体的記載はありません。
◆日本小児神経学会推奨基準(熱性けいれんを既往にもつ小児に対して)
接種基準
1) 熱性けいれんと診断された場合は 最終発作から 2~3カ月の観察期間をおけば
保護者に対し 個々の予防接種の有用性 副反応(発熱の時期やその頻度 他)などについての十分な説明と 同意に加え具体的な発熱時の対策(けいれん予防を中心に)や 万一けいれんが出現したときの対策を指導する条件のもとで接種が可能である。
2) 長時間けいれん(15分以上発作が持続)の既往例は 小児科専門医あるいは,小児神経専門医が診察し その指示のもとに施行する。
➊妊婦や授乳婦の方に抗インフルエンザ薬は使用可能か?
妊婦の人に対して、インフルエンザ薬のリレンザはアメリカFDAのカテゴリーB(ヒトでの危険性の証拠はない)タミフルはカテゴリーC(危険性を否定することが出来ない)吸入薬のイナビルも使用できます。妊婦さんは、重症化しやすく治療を優先した対応が望まれます。注射のラピアクタも使用可能ですが、添付文書で動物実験での流産・早産の記述あります。授乳婦に対しても問題なく使用可能。
~産科診療ガイドライン2017より~
*妊婦&授乳と薬:飲んで大丈夫?(当院コラム:サイト)も参照して下さい。
インフルエンザの迅速検査キットは、
- イムノクロマト法(従来法)と
- 銀増幅装置を使用した超高感度イムノクロマト法(富士ドライケム)
の二種類あります。
従来法は、発症12時間前は、症状があっても陰性と判定とされてしまうことがあります(偽陰性)。発熱直後は、一晩様子をみて明日以降の検査を勧められことがあるのも偽陰性が生じる可能性があるためです。富士ドライケムは、発症6時間以内では、従来法と較べ陽性率が高いことが報告されています。6時間以降は従来法と較べ差はありません。
*富士ドライケム:技術資料(サイト)
*施行医療機関検索(サイト)
発熱後6時間以内の発症すぐの検査は、富士ドライケムの方が従来法より陽性確率は高いようです。従来法のキットは、目視の判定のため、薄く出た場合の判定に迷うことがありますが、富士ドライケムは+または-で出ますので、迷うことはありません。
但し、検査の精度はキットの性能だけに依存するのではなく、検体の取り方も重要な要素です。発症6時間以内の従来法の検査でも、臨床および局所所見が強い方は、陽性確率は高いと思われます。
❸抗インフルエンザ薬の予防投与は保険が効くのか?
自費となります。費用はそれぞれの医療機関・薬局および抗ウイルス薬の種類でも異なります。
❹希望があればだれでも予防投与できるのか?
添付文書では:
予防に用いる場合には、
『原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする』となっています。
感染者に接触後、2日以内に投与を開始します。
*高齢者(65歳以上)
*慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
*代謝性疾患患者(糖尿病等)
*腎機能障害患者
* 1歳未満の患児(低出生体重児、新生児、乳児)に対する安全性及び有効性は確立していない。
誰にでも投与すると耐性ウイルスを広げる危険性があります。
❺新薬ゾフルーザの処方になぜ警鐘がならされるのか?
2018年の抗インフルエンザ薬で最も投与されたのは新薬ゾフルーザのようです。1回の内服で治療が済むことがメリットの薬です。
➡日本感染症学会からは、12歳未満には耐性ウイルスの問題のため慎重投与が提言されています。
➡2018~2019年、ゾフルーザを処方した医師1580人のうち12.0%が,発熱などの症状が遷延した症例を経験しているようです。
~日経メディカル2019年9月3日から~
➡タミフルとゾフルーザの比較で、ゾフルーザ投与群は、二次性細菌性肺炎が多く、入院率も高率であった報告もあります。高リスク群でこの傾向が多く認めています。
~日経メディカル2019年10月4日から~
➡ゾフルーザの半減期は4日程あり、副作用が出たときは長期に体内に残るリスクがあります。
➡ゾフルーザは、タミフルが効かない場合や重症化が懸念される患者にも投与できるため、耐性ウイルスを広げないことが重要です。
❻抗インフルエンザ薬による異常行動はどうなっているのか?
抗インフルエンザウイルス薬の服用と異常行動との因果関係は不明
タミフルの10代への投与が原則中止されていましたが、2018年から投与再開の通知が、厚労省から出ています。
インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していない場合でも、同様の異常行動が現れること、 服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく、異常行動が現れること、が報告されています。以上のことから、インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動に対して注意が必要です。
インフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい。
<転落等の事故に対する防止対策の例>
(1)高層階の住居の場合
・ 玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う
(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む。)
・ ベランダに面していない部屋で寝かせる
・ 窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)
(2)一戸建ての場合(1)に加え、できる限り1階で寝かせる
~H30年度インフルQ&A厚労省から~
❼うがいでインフルエンザを予防できるか?
風邪には、水うがいで、40%の予防効果が報告され、イソジンうがいでは、10%程度のようです。イソジンが、のど粘膜細胞や細菌叢に影響を与えることが原因と推測されています。インフルエンザは、20分以内に鼻・のどの粘膜から侵入するため、うがい効果はありません。
❽マスクでインフルエンザを予防できるか?
マスクの性能に依存します。不織布マスクは、保温、保湿効果で増殖予防とのどの保護効果あり。マスクはくしゃみ・咳による飛散予防効果(咳エチケット)がありますが、マスクによるウイルスの侵入予防は限られます
❾手洗いでインフルエンザを予防できるか?
手洗いは、接触感染予防の基本です。
石鹸と流水での手洗いによる物理的除去はすべてのウイルスに効果を認めます。インフルウイルスは、消毒用エタノールで効果を認めます。
❿部屋の換気は重要か?
部屋の換気は、飛沫核(空気)感染予防の基本です。
インフルエンザは、密閉、低温、乾燥の条件がそろうと、部屋にいるだけで感染します。いったん付近のものに付着した後、乾燥して水分を含まない微粒子(直径5/1000mm)の感染を飛沫核感染と言います。2µ以下の飛沫核は長時間空中をただよう事ができるため、同じ部屋に一緒にいるだけでも感染します。部屋の換気は重要です。
新型コロナ流行以降、エアロゾル感染と換気の重要性が、皆さんの感染対策の日常に浸透しています。
頸部痛の落とし穴:甲状腺疾患
発熱・咽頭痛・頸部痛は耳鼻咽喉科外来ではよくある訴えです。
扁桃炎、咽頭喉頭炎、リンパ節炎が最も多い原因ですが、見逃していけない緊急疾患の急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、喉頭浮腫など、咽頭所見、頸部触診、声の質の変化や開口障害、吸気性喘鳴などの有無を手掛かりに診断をすすめます。
前頚部圧痛があれば甲状腺疾患をみのがしてはいけません。
風邪症状と重なることもあり、頸部触診をしっかり行い甲状腺疾患を疑い頸部エコーを行うことが重要です。
『頸部痛を示す甲状腺疾患』
*亜急性甲状腺炎:
甲状腺の頸部痛の75%(今回のテーマ)
*甲状腺のう胞内出血
*急性化膿性甲状腺炎:
90%は左側発症 先天性下咽頭梨状窩ろうが原因の細菌感染です。
*無顆粒球症:
バセドウ病に対してメルカゾール服用時、特に3ヶ月以内に生じます。
*甲状腺癌(未分化癌、悪性リンパ腫):稀
*橋本病急性増悪: 稀
『亜急性甲状腺炎』
上記の中で最も多いのが亜急性甲状腺炎です。
頸部の自発痛・圧痛(頸部痛は移動することあり)に加え38度台の発熱、甲状腺の腫脹、甲状腺中毒症状(動悸、発汗過多、息切れ、倦怠感、体重減少など)認めます。
どんな人でも発症する可能性があります。
先行する咽頭炎、風邪症状の後に発症することが多いため、ウイルス感染の関与が疑われています。バセドウ病、無痛性甲状腺炎の次に多い甲状腺中毒症状(機能亢進)を呈する疾患です。
臨床で最も重要なのが
①丁寧な頸部触診と
②同時に頸部エコーにて疑います。
甲状腺エコー検査所見:疼痛部に一致して境界不明瞭な低エコー領域を認めます。
③血液検査(WBC CRP FT4 TSH)でほぼ診断が可能です。甲状腺抗体が強陽性例は橋本病急性増悪を疑います。
治療:
運動は避けてできるだけ安静、
軽症はNSAID(イブ、ロキソニンなど)
ステロイド゙内服の効果が高く数日中には痛みが軽減します。
ステロイド減量を急ぐと再燃しますのでゆっくり行います。通常プレドニン20mg程度から開始、1~2週間で5mgづつ減量10mg以降は4週ごとに5mg減量して中止します。永続的低下症の可能性や1.1%に甲状腺乳頭癌の合併の報告もあるため症状経過以後も半年程度は経過をみます。
経過:
頸部の自発痛・圧痛(頸部痛は移動することあり)に加え38度台の発熱、甲状腺の腫脹、甲状腺中毒症状(動悸、発汗過多、息切れ、倦怠感、体重減少など)で発症します。
初期にはこのように典型的な症状を確認できず、最初は発熱、咽頭頸部痛の症状しか気づかず、感冒の診断で抗菌薬や風邪薬を処方されることはよくあります。
20歳以上がほとんどで高齢者でも出現します。甲状腺専門病院では受診までの期間の平均は19日(0~87日)ですので最初はわからないことが多くあります。
参考資料
甲状腺疾患を極める 伊藤病院 新興医学出版社
気づきにくい甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は一般外来患者の2%程度に認められ、加齢とともに増加します。診断される年齢では30~40代が多く、その多くを占める橋本病(慢性甲状腺炎)の男女比は1:5で女性に多い疾患です。橋本病は女性の10~20人に1人の頻度で認められるといわれています。
自覚症状は無いか特異的な症状は無いため甲状腺の自己抗体が陽性化した時期が明確でない場合がほとんどです。
疲れやすい、冷え性、肌荒れ、更年期障害、認知症、うつ病、便秘症、自律神経障害などとして診療を受けていることもあります。他覚的症状のむくみは進行しないとわかりにくく頸部の甲状腺腫大も痛みは無いためかなり大きくならないと気づきにくいものです。びまん性の甲状腺腫を認めないものを含めると、成人女性の8.5%、成人男性の4.2%に認められるとの報告もあります。
最近は検診のオプションで甲状腺機能採血、エコー(10分程度:被ばく無し)を行うところもありますが、通常の職員検診の項目には入っていません。
橋本病で自己抗体が陽性の場合、不妊と流産と有意な関連があることが示されています。妊娠18~20週までは、脳神経の発達に必要な甲状腺ホルモン(T4)は母体由来であるため妊婦さんが甲状腺機能低下であれば、赤ちゃんの精神遅滞や認知機能への影響が考えられます。これは海外からの報告が多く、日本では海藻を好んで食べる食文化があるため、海外と比べると少ない可能性があるとも考えらえています。
☞☞ 特に思春期以降の女性は、少しでも疑えば甲状腺機能を測定することを推奨します。
『他覚症状』
むくみ(下肢やまぶた:進行しないとでない)
甲状腺腫大(前頚部下方の腫脹:腫大がわかりにくい)
『自覚症状』
初期には症状なし
寒がり
易疲労感(疲れやすい)
皮膚の乾燥
月経異常
肩こり
筋力低下
便秘
体重増加
抑うつ
忘れっぽい
声がれ
徐脈
慢性疲労
運動不足
冷え性
肌荒れ乾燥
更年期障害
うつ病
認知症の初期
声の病気
便秘症
肩こり症
自律神経失調
◆甲状腺機能低下の妊婦さんは
*赤ちゃんの精神遅滞
*流早産、妊娠高血圧のリスク
◆不妊
◆動脈硬化
◆コレステロールの上昇
◆冠動脈疾患
【診断】
スクリーニング
甲状腺機能採血(TSH,FT4, FT3、FT4は日内変動が少ない)と
甲状腺の腫れをエコーで確認します。
精査
疑わしい疾患に応じて
甲状腺自己抗体(TgAb, TPOAb、TRAbなど)
腫瘍マーカー(サイログロブリンなど)
を追加依頼します。
低下症の場合、総コレステロール、CPK,AST,ALTが上昇することもあり。
エコー検査で
びまん性(全体に大きい)結節性(腫瘤を疑う)
に応じて対応が違います。
結節性の場合は穿刺細胞診やTSH抑制あればシンチグラムなど専門病院紹介の可能性があります。
【治療】
低下症はチラージンの服用
それぞれの病態に応じて対応
【薬物やヨウ素欠乏又は過多の影響】
ヨウ素欠乏による甲状腺機能低下はアフリカ内陸部などのヨウ素欠乏地域で認められます。日本では海産物の摂取が多く、ヨウ素摂取量はむしろ必要以上のため稀です。
ヨード摂取過多の場合も一過性甲状腺機能低下症の可能性があります。
*ヨウ素を含んだ健康食品の過剰摂取
*炭酸リチウム(躁鬱、躁病の薬)
*インターフェロン
等の薬剤のため、低下症をきたすことがあります。
【潜在性甲状腺機能低下症:微妙な低下症】
甲状腺機能は正常、TSHが基準値以上に増加しています。3~6%程度で認め、女性に多く加齢とともに増加します。
治療方針は、各個人で異なります。通常は、定期のTSHの測定で経過観察です。
*血中TSH>10µlU/mL
*赤ちゃん希望
*50歳以上の女性
*80歳未満
*甲状腺自己抗体陽性
*甲状腺低下症の症状あり
*甲状腺術後、放射線治療の既往あり
など参考に対応します。
参考資料
甲状腺疾患を極める(伊藤病院) 新興医学出版
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