吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

院長の健康情報コラム

鼻と子供の中耳炎

2017-11-15

中耳炎寒くなると、鼻水がでて、後鼻漏と共に、次第に咳が出てきます。
夜に眠れないようになると喘息(関連ブログ:鼻と秋の喘息)が出ていることもあります。

同時に鼻水が鼻の奥にたまり続けると、お子さんたちは中耳炎となり耳痛・発熱がでて、
機嫌が悪く寝つきが悪くなります。目ヤニも悪化することもあります。

特に、乳幼児は未熟性のため大人より顕著に、鼻からの影響が出てきます。

冬将軍

今週末は、全国的に冬将軍が到来し、南国鹿児島も寒波の予報が出ていますので、
当院では感冒からの鼻炎と中耳炎の患者さんの増加が予想されます。

今回、乳幼児のお子さんたちが中耳炎にかかりやすく難治化する原因
三つあげてみました。

 

 

子どもの中耳炎の悪化因子
耳管の未熟性(耳管とは鼻の奥から中耳につながる管のことで、耳抜きをする場所です)
未熟な免疫
感染と薬剤耐性

耳管の未熟性
乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。学童のころになると成人に近い耳管構造となり、中耳への感染が波及しにくくなります。

未熟な免疫
赤ちゃんは母体から胎盤を経由してもらった免疫を持って生まれますが、5~6ヶ月頃には尽きてしまい風邪を引き易くなります。かぜを予防するIgG免疫グロブリンは、2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人並みになります。

感染と薬剤耐性
免疫が十分でない5~6ヶ月頃からサークルや集団保育に参加することが多くなり、
周囲から風邪のウイルスや細菌をもらいやすくなります。

集団保育のお子さんたちは、風邪をひく機会が多く、そのたびに抗生剤を服用する機会が
多くなり、必然的に薬剤耐性菌が子どもたちを介して広がっていきます

子どもの中耳炎への対策
上記の3因子で、クリニックでできることは

未熟な免疫に対して免疫を活性化することです。具体的には、
プレベナー13(肺炎球菌ワクチン)やインフルエンザワクチンなどを
しっかり受けること。
漢方で免疫を高めます。漢方で中耳炎の難治化をふせぐ報告が出てきました。
最近では、ワクチンでも効果なく、IgG2免疫グロブリン低下例の難治性中耳炎には
人免疫グロブリン注射も選択可能となっています。

感染と薬剤耐性にたいして適切に抗菌薬の使用をすること。
安易に通常の風邪や発熱に対して抗生剤を使わない事ですが、実際の診療では
最も難しいところです。抗菌薬の乱用は、薬剤耐性の拡大をまねきます。
中耳炎の難治化や薬剤耐性のリスクの一つに1か月以内の抗菌薬の治療の既往
あげられています。
鼻・副鼻腔炎の治療を行い、鼻の奥から中耳炎への感染を防ぐこと
また鼻処置・鼻洗で鼻の奥の、特に上咽頭の原因となる細菌(悪玉菌)の減量をはかり、
いわゆる善玉菌の常在菌との共存を図ることです。

関連ブログ鼻と秋の喘息 寒暖差アレルギー も参考にしてください。

スマホと診療活用

2017-11-09

イチョウ 葉 吉野公園楓 吉野公園イチョウ並木 吉野公園

紅葉 吉野公園 2017年11月5日

秋も深まり、吉野・川上地区では少しずつ紅葉が見ごろとなってきています。
吉野公園の散策路には楓やイチョウの紅葉がみられるようになりました。

さて、若者のスマホ保有は90%以上となり、小学生高学年は60%、
シニア世代でも50%に達してきました。

👉 今回は皆さんに最も身近な、医療でのスマホ利用の一アイデアを話したいと思います

 

既に診察では、蕁麻疹や皮疹の写真を持参される患者が増えてきています。
2015年に厚労省からの通達がでて、遠隔診療が少しずつ始まってきているところですが通常診療には、まだほど遠い状況です。

しかし、そう遠くないうちに、スマホなどを利用して、糖尿病や高血圧の慢性疾患や、
へき地診療、在宅医療では、今後普及していくと思われます

当院は、遠隔医療になじまない急性疾患や局所診断・処置・治療が必要な患者さんが多く、
まだ積極的な取り組みはしていません。

診察に役立つスマホの身近な利用の仕方

皮膚科領域では蕁麻疹や皮疹の撮影

蕁麻疹は診察時には消失していることが多いため利用価値があります。

小児の夜間の咳の状態の録画

百日咳の特徴的な咳(レプリーゼ):

短い連続した咳が「コンコンコン」と5~10回発作的に続く「スタカット」、
その後「ヒィー」と息を吸い込む「ウープ」と呼ばれる発作を繰り返します。
この繰り返しを「レプリーゼ」と呼んでいます。
このレプリーゼは夜間に増悪することが特徴です。
夜間に悪化するので自宅でのスマホ動画撮影が有効と思われます。

成人の百日咳の咳は、このような特徴的な咳は認めないことが多いのですが、
咳は夜間に増悪します。

小児の睡眠時無呼吸症の録画

幼児の睡眠時無呼吸症の検査は難しく、当院では睡眠中のスマホなどによる
ビデオ撮影を勧めています。

具体的なやり方は、当HP:疾患について:睡眠時無呼吸症を参考にしてください。

痰や便の性状など、持参するのが難しい物もスマホ写真が役に立ちます。

薬手帳を忘れる方は多く、スマホで多数の薬を記載した紙を撮影すれば
クリニックに行くときや、本人の急変時にも持病を推測することが可能となり、
迅速な対応につながります。

このほかにも皆さまのアイデアで利用価値がひろがります。
個人情報に配慮した対応はいつも心掛けましょう

秋の花粉とキウイ&スパイスアレルギー

2017-11-05

ぶどう みかん キウイキウイ みかん 黒器

食べたものが原因で食物アレルギーが起こると考えるのが一般的と思われます。最近では、成人の食物アレルギーでは、食べなくても起こる食物アレルギーが多くなっています花粉・食物アレルギー症候群Pollen-food-allergy syndrome:PFASと言います。口腔内に限局したアレルギーを生じるので口腔アレルギー症候群とも呼ばれます。

👉 まず花粉-食物アレルギー症候群について勉強してみましょう。

口腔アレルギー症候群とは、果物や生野菜を摂取後15分以内に口腔内違和感、口唇腫れ、口周囲蕁麻疹などを呈するアレルギー症状のことです。
通常、アナフィラキシーは起こしません。
稀に喘息、アナフィラキシーまで至る場合があります。

特定の果物・野菜に交叉反応性を示す花粉に対する花粉症を持った
成人に発症します。このような病態を花粉・食物アレルギー症候群とも呼ばれます。
最近、花粉症の低年齢化とともに学童からおこすことも多くなっています。

 

発症機序(少し理解するのが難しくなります)

次の二つの機序が重要です。

食べたものや刺されたものが原因でおこるアレルギー

食物アレルギーではありませんが、蜂アレルギーは、まず、蜂に刺され感作(感作抗原)が起こり、次に同じもの(誘発抗原)が蜂から体内にはいると激しい反応を起こします。

食物アレルギーエビイクラ、ソバ、ピーナッツなどのアレルギーも同様に、原因物質(感作抗原)で感作され、同じ原因物質(誘発抗原)が体内にはいると激しい反応を生じます。

感作抗原と誘発抗原は同じです、このような食物アレルギーの場合、クラス1食物アレルギーと呼びます。

 

食べてなくても起こる食物アレルギー(PFAS)

花粉・食物アレルギー症候群は、感作抗原誘発抗原が違います両方に類似の構造を持つタンパク質を含むため生じます

花粉・食物アレルギー症候群は、鼻や気道に原因になるタンパクを含む花粉が付着し感作が起こり、類似のタンパクを持つ食べ物を食べると口腔内を主に反応を起こします

これをクラス2食物アレルギーと呼んでいます。花粉と食べ物は別物です。

通常、加熱や消化酵素に弱い特徴のため、口腔内に限局した症状となります。

花粉-食物アレルギー症候群頻度
メロン、パイナップル、キウイ、モモ、リンゴの順で果物に多くスギ花粉関連のトマトは8番目、モモ・リンゴは、シラカバ(北海道)やハンノキ(その他の日本)と関係します。

主な秋の花粉ヨモギブタクサです

ヨモギと交叉反応を示す野菜・果物
セリ科(セロリ、パセリ、ニンジン)ウルシ科(マンゴー)スパイス、キウイ、ピーナッツ、リンゴ、
ヨモギの場合花粉・食物アレルギー症候群は約40%合併します。

ブタクサと交叉反応を示す野菜・果物
ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニ、カンタロープ)、バナナ

キウイは11~12月が旬、ヨモギと関連します。

キウイはニュージーランドからくると思っている方もいらっしゃると思いますが、
日本産が多く出回っています。愛媛、福岡、和歌山が日本のベスト3の生産地です。
世界では1位中国、2位イタリア、3位がニュージーランドで、収穫時期が違うため
ニュージーランドのイメージが強くなっています。
日本は世界の9番目で、ニュージーランドの約十分の一程度の収穫量です。

キウイは、ヨモギ:秋の花粉の他に、シラカンバ(北海道)・ハンノキ・
イネ科(オオアワガエリ:兎の餌になるチモシーのこと:初夏)・ラテックスと関係します。

メロンブタクサと関連します。ほかには、カモガヤ、ラテックスと関連します。

スパイスアレルギー

スパイスは野菜・果物でないため、注意が必要です。
秋の花粉のヨモギや北海道の春の花粉のシラカバ花粉症と関連します。

日本には少ないのですが、中央ヨーロッパに多くヨモギ花粉症にセロリアレルギーの
合併が多く認められ、セロリ・ニンジンやスパイスとの関連も認めます。
小児に少なく、女性に多く認めます。
セロリは生と調理後も反応が少なくありません。
セロリ・ニンジン・ヨモギ・スパイス症候群

北欧や北海道では(セロリ・ニンジン・シラカバ・スパイス症候群)として
スパイスアレルギーに関与します。重症化しやすく、アナフィラキシーに進展することがあります。

カレーピラフ接種後のジョギング中にアナフィラキシー出現など報告があります。

その他:PFASの中でアナフィラキシーに進展しやすい健康食品があります:豆乳です。日本ではハンノキ・シラカバ花粉の患者さんがソイラテ・豆乳を飲んでアナフィラキシーを起こした報告があります。

加工度が高い、納豆、みそ、醤油では起こりません。豆乳は液体のため吸収が早く起こしやすい面があります。

(関連ブログ)
秋の花粉症とセイタカアワダチソウ 2017-10-21
・コスモスと秋の花粉 2017-10-27

2018年花粉症予想(スギヒノキ)

日の出と良質な睡眠

2017-11-01

日の出 桜島
桜島と夜明け 吉野公園 2017年10月8日

日から11月、鹿児島市の本日の日の出は6:34 日の入りは17:29
朝起きるのがつらい時期になりました。
睡眠のタイミングの障害で、朝に起きることができない状態を睡眠相後退症候群といいます。

睡眠と体内時計は関連が深く、体内時計の乱れは、不眠・寝不足・昼の傾眠と関係しています。

当院の耳鳴り、難聴、めまいの患者さんの中には、背後に不眠・寝不足に悩んでいる方が多くいらっしゃいます。
特に、耳鳴りやふらつき・めまいとは関係が強く、睡眠の生活指導や加療が、通常の治療より効果を発揮することもよくあります。

体内時計とは、約24時間周期で変動する生理現象であり、外界からの朝日などで
修正されます。2017年のノーベル医学生理学賞は体内時計の解明に与えられました。
体内時計は25時間に近く、多い分を、朝日でリセットします。

体内時計の乱れがあると、不眠の他に、自律神経症状、引きこもり、うつ、不登校、癌との関連が考えられています

夜勤業務が多く、不規則な勤務になるスチュワーデス、看護師、介護士などシフトワーカーと癌の罹患率の優位な上昇の報告があります。
現在の政府主導の働き方改革には、労働の効率化、残業の上限、介護や育児との両立、高齢者の就業などが主で、

社会に必要な夜間業務従事者の労働環境の改善についての議論が無いのは残念なところです。

朝日でリセットして、良質な睡眠を確保するため、朝の日の出を見に出かけましょう。
吉野公園の展望台からの桜島と日の出は素晴らしいものです

 

おたふくと難聴

2017-10-30

当院の方針

👉 おたふく風邪で難聴になると知らない方が多くいらっしゃいます。

おたふく難聴は治療法がなく、後遺症として、ほとんど聞こえない高度難聴が残りますワクチンによる予防が唯一の対応策です。

 

日本耳鼻咽喉科学会で、2015~2016年に大規模全国調査が行われ、2年間で少なくとも348人が難聴になり、300人近い方に、後遺症が残っていることが2017年9月に公表されました。

約80%以上は、ほとんど聞こえない高度以上の難聴で、両側難聴は16人で、その12人は補聴器や人工内耳の装用が必要でした。幼児・学童が最も多く、次に30歳台で多くなります。現在日本は先進国で唯一ムンプスワクチンが定期接種化されていない国であるため、予防接種率が30-40%と低迷しており、これが流行性耳下腺炎の園や学校での大流行の原因となっています。自然罹患による高いムンプス難聴 率の事実と、ムンプス難聴が予防接種により予防できることがあまり知られていないことも予防接種率が低迷している原因の一つと考えられます。

1993年にMMRワクチンの副作用が問題になり、定期接種が中止になり、おたふくかぜワクチンは単独の任意接種となっています。最近はワクチンも改良され、副作用も以前よりごくまれになっています。お子さんの場合は1歳に1回目、4-6歳の2回目の接種で予防できると考えられています。成人の場合は、既にかかっていても抗体が十分でない方も多く抗体検査後の接種が望まれます。抗体がまったく無い場合1~2か月あけて2回接種となります。

ムンプス ワクチンの早期定期接種化が望まれます

 

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