院長の健康情報コラム
自分で行うスギ花粉対策(黄砂・PM2.5)
2月中旬以降から3月頃までは、スギ・ヒノキ花粉症の患者さんが急に多くなります。人によっては、4~5月初旬まで持続します。どうしたら症状が出ずにすむのか、セルフケアを中心にまとめてみました。
根本的な対応は、➊体質を変えて治すこと、❷花粉に遭遇しない事です。
体質改善は、舌下免疫療法(スギ・ダニ)を参考に!!
薬物治療は対象療法ですので、担当医と相談してください。2月頃から花粉症初期療法の服用も考えましょう。
花粉症が出るかどうかは、個人によって違い、居住地域と生活・遊び・仕事などの行動範囲で異なります。
➡ 避花粉地(スギヒノキ花粉が飛ばない地域)と行動指針
避花粉地は、外国、北海道、沖縄、奄美大島、八丈島、小笠原諸島、長崎県的山大島です。スギ・ヒノキ花粉シーズン中は、一度出かけてみてはいかがでしょうか。鹿児島に近い種子島は、スギ林はありますが、地形の関係からか、患者さんからの話では、症状が出にくいと聞きます。
◆2008年の花粉症有病率が高い県は 全国平均26.5%
➊山梨(44.5%)❷高知❸埼玉❹栃木❺静岡❻岐阜❼奈良❽三重・・・東京(32.1%)と続きます。関東地方が最も多く、次に関西、四国、中国地方が多くなります。
◆2008年の花粉症有病率が低い県は
➊北海道(2.2%)❷沖縄❸宮崎(8.2%)❹鹿児島(12.1%)❺岩手❻青森❼島根❽熊本(13.6%)と続きます。北部九州の有病率は中間程度です。
宮崎と鹿児島は、沖縄と北海道を除いて最も少ない県の一つになります。 東北も少ない地域です。
◆2007年のスギ人工林比率が高い県は、
➊宮崎(38%)❷秋田❸徳島❹大分(30%)❺奈良❻福井❼富山❽山形と続きます。九州では宮崎、大分がスギが多い県となります。
◆2007年のスギ人工林比率が低い県は、
➊沖縄(0%)❷北海道❸香川(2%)❹大阪❺長野❻山梨(6%)❼広島❽岡山・・・・東京(11%)・・・・鹿児島(17%)と続きます。
香川は、スギ人工林比率が非常に低い県ですが、他の関西四国地区とほぼ同じように有病率(21.5%)は高く、周辺県からの風向きの影響が考えられます。県単位のスギ人工林比率と有病率は比例せず、宮崎は最もスギ人工林比率が高く(38%)、有病率は低率(8.2%)です。山梨、東京、埼玉などは、スギ人工林比率は低いが、有病率は高率です。
👉スギが多いから花粉症になり易いわけではない!!
『花粉症有病率の悪化関連因子』
排気ガス、地表面のアスファルト、気温、日照時間や降水量(花粉は夏の日射量が多く、降水量が少ないほど飛散量が多くなるといわれる)風向き、樹齢(30年以上で花粉量増加)などが有病率には関係してきます。単純に、その地域にスギが多いからスギ花粉症になり易いわけではありません。
鹿児島からは、北部九州や関東に出かける時は十分な予防が必要です。スギ人工林比率が高い大分、宮崎に出かける時も注意して下さい。
➡ 天気予報・花粉症情報をまめに確認する
花粉飛散情報の要注意日(花粉症ナビから)
1:天気が晴れまたは曇り
2:最高気温が高い
3:湿度が低い
4:やや強い南風が吹き、その後北風に変化したとき
5:前日が雨
以上から、前日または当日の未明まで雨で、その後天気が急に回復して晴れ、南風が吹いて気温が高くなる日が要注意日となります(日本気象協会作成)1日のうち飛散の多い時間帯(午後1時~3時頃 夕方午後5時~7時頃《注:地域によって差があります》)の外出もなるべく控えましょう。
👉 花粉飛散予報がシーズンになると、ネットやテレビで配信されますが、クリニックでの実際の花粉症悪化による受診患者数などから判断すると、花粉予報は、当たっていないこともあります。
上記の花粉飛散情報の要注意日を覚えて、毎日の天気予報から、自分で判断した方がよいこともあります。
下記のほぼリアルタイムで発信される花粉情報が、信頼が高いので、飛散シーズンは毎日数回、出かける場所も含めて確認しましょう。
◆九州各県は、国立福岡病院発信の花粉情報 (サイト)スギとヒノキ別々に確認できます。
➡ 外出時の注意点と眼と鼻のセルフケア
帽子・メガネ・マスク・マフラーを身につけて。コートもツルツルした素材を選びましょう。ウールは控えます。花粉症は、目と目の周囲の皮膚、そして鼻に症状が強く出ますので、眼鏡とマスクの選択が重要です。
◆めがね:
プラスチックの覆いがサイドパネルとして一体化した眼鏡が効果的です。結膜上の花粉数は、花粉症眼鏡で35%、通常眼鏡で58%に減少させます。飛散時期は、コンタクトレンズは控え、眼鏡を使用します。
➡ 市販点眼液の使用法
セルフケアとして、通常点眼液に含有されるベンザルコニウム塩化物などの防腐剤による角膜上皮障害が問題となるため、防腐剤無添加の市販の人工涙液での頻回点眼を勧めます。人工涙液点眼で洗眼効果は十分あります。冷蔵庫で冷やしてから点眼すると症状緩和効果が高まることがあります。
カップ式洗浄器具は、眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着したアレルゲンをかえって眼表面に接触させることになりますので使用には注意して下さい。具体的には、市販の人工涙液の点眼(ソフトサンティア、ロートソフトワン点眼)または点眼型洗眼型ウエルウオッシュアイを、薬用点眼液の使用前に使います。花粉を洗い出した後に、市販の薬用点眼(抗ヒスタミン)を使用すれば効果が高まります。
ガーゼより鼻にフィットした不織布マスクが効果的。鼻内花粉数は、花粉症マスクで16%、通常マスクで29%に減少させます。鼻洗いも効果がありますが、鼻閉がひどい時は控えて下さい。ぬるま湯で0.9%の生理食塩水(500mlの水に4.5g程度の食塩を添加)で行ってください。
◆ワセリン(プロペト)
外国では、鼻の入り口に塗ると効果があるようです。
➡ 花粉症セルフケア3原則
➊花粉をもちこまない:眼鏡 マスク 帽子 ポリエステル系上着使用 ウールは控える。
❷花粉を排除:
手洗い、うがい、洗顔、鼻と眼の洗い、帰ればシャワーまたは入浴をして洗髪もします。洗顔と洗髪は、スギ花粉皮膚炎である上・下眼瞼炎の予防にもなります。
❸花粉を室内にまき散らさない:
外に洗濯物・ふとんを干さないで部屋干しまたは乾燥機使用、どうしても外に干したければ朝早めに行います。窓を閉める、空気清浄器を使用。
初期療法開始時期
抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬は、花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で服用。鼻噴霧ステロイドも初期療法として、シーズン中の鼻と眼症状ともに効果認めます。
➡ 忘れてはいけない黄砂飛来とPM2.5 (特に九州北部と西日本)アレルギーの方だけでなく健康者にも目の痒み・咳・くしゃみ・喉の違和感などを生じさせます。
スギ・ヒノキ花粉症と同時期に問題となる黄砂・PM2.5情報にも気を配り、花粉症と同様のセルフケアが必要になります。PM2.5は粒子が小さく、通常のマスクでの防御は限られますので、外出を控える事が大事です。黄砂・PM2.5は花粉症の増悪因子と考えられています。下記のHPで2~5月は確認してみましょう。
*気象庁PM2.5分布 鹿児島(サイト)
*九州大学 黄砂とPM2.5 黄砂とPM2.5を同時に確認(サイト)
中国大陸内陸部の砂漠で風によって上空に巻き上げられた土壌・鉱物粒子が東アジア広範囲に飛来して、大気中に浮遊あるいは降下する現象。日本では4月をピークに2~5月に観測日数の9割が観察されます。スギ・ヒノキ花粉飛散と同時期のため、黄砂粒子は,アレルギー反応を誘発し、花粉症と喘息の増悪に関与する可能性が指摘されています。黄砂はその他にも、皮膚炎、急性心筋梗塞、脳梗塞への影響が報告されています。
◆PM2.5:
微小粒子状物質(PM2.5)2.5µm以下の粒子で、スギ花粉の大きさは30µm程度に比べると、PM2.5は非常に小さいため肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系(肺がん、喘息など)や循環器系へ影響を与えます。花粉の粒子は大きいため、鼻など上気道で、主に症状が出現します。中国大陸の都市部からの飛来と自国の自動車・工場・タバコ・火山灰なども関与します
『PM2.5の生成について』
➊物の燃焼による直接排泄(焼却炉、喫煙、火山、自動車など)されるもの
❷環境大気中の化学反応により生成されるもの
があります。
『花粉症との関係』
PM2.5の一部であるディーゼル排気粒子が、鼻アレルギーおよびアレルギー結膜炎を悪化させる報告があります。
『黄砂との関係』
日本へ飛来する黄砂粒子は4µm程度が主で、2.5µm以下の粒子も含まれているため、PM2.5濃度も上昇することがあります。西日本を中心に、我が国へ流入してくる可能性があります。
『PM2.5の人への健康障害のメカニズム』
➊DNA損傷 ❷酸化ストレスの亢進 ❸炎症性サイトカインの産生亢進
が考えられています。
PM2.5日平均濃度が10µm/m³上昇するごとに循環器系死亡1.2%~2.7%増加、呼吸系死亡0.8~2.7%増加することが認められています。
👉 PM2.5の基準値として以下の基準がありますので、活動の基準にしてください。
1日平均値
70µm/m³以上:不要不急の外出、屋外での長時間の激しい運動を控える。
35µm/m³以下:健康を保護する上で望ましい基準
自分で行う医学的ボイトレ(音声治療)
今回は、自分で行う声がれ対策(声の衛生)の続きで、『音声障害』と『音声治療』の話です。
➡ 音声治療とは
『音声治療』とは、望ましくない発声行動を変えて、声がれなどの音声障害を、時間をかけて治療していくことです。
『音声障害』は、声帯(声の乱用、誤用)、呼気(呼気不足)、聴覚(難聴)、ホルモン(変声期、性同一障害)心因に関連しておこります。
主に声帯と呼気に関連した疾患で、声の乱用や誤用が原因となる機能的異常が、音声治療の対象です。喉頭癌は対象外です。
➡ 歌がうまくなるために行う『ボイトレ』と『音声治療』の違いについて
ボイトレとは、ボイストレーニングの略で、ボイストレーナーが行います。
『音声治療』では、望ましくない発声行動により生じた声がれなどの音声障害を、医療行為として言語聴覚士などが治療していく行為です。歌がうまくなるために行うボイトレとは目的が違います。クリニック・病院の音声外来では、医師が薬物治療、手術、声の衛生生活指導を行い、医師の指示のもと共同しながら言語聴覚士が、実際の音声治療と声の衛生指導を行います,『音声治療』と『ボイトレ』は目指す目的と一部の方法は違いますが、やり方の基本は似たところが多く、音声治療は医学的なボイストレーニング『医学的ボイトレ』と考えてください。
望ましい発声行動は、こころを豊かにする
毎日のコミュニケーション、日常会話から仕事の接客、講演、そして趣味の合唱団、カラオケ、楽しみで歌うことなど、生活をしていくうえで声を使わないことは考えられません。
英語の発声にも、音声治療で必要な腹式呼吸を必要とします。
最近では、高齢者の誤飲性肺炎予防にもカラオケ、朗読を積極的にすすめます。
望ましい発声行動で話すことは、相手に好印象をあたえ、自分にとっての自信にもつながります。
イライラしたり怒っていては、腹式呼吸で共鳴が効いた落ち着いた良い声は出せません。腹式呼吸でゆっくり深呼吸すれば落ち着かせることも可能です。良い発声を行い、音楽やコミュニケーションをとおして心豊かな生活をもたらしましょう。
【音声外来について】
『音声外来』とは、
耳鼻咽喉科医師と言語聴覚士が共同して、声をよく使う職業人(教師、インストラクター、アナウンサー、歌手など)から一般の人までの声の問題を、専門に治療をおこなう所です。ネットで検索すると、東京、大阪、京都、福岡など都会には、音声外来がでてきますが、地方では、あまり見かけません。
専門の音声外来のプログラムでは、施設により異なりますが、言語聴覚士が担当して、週に1回30~60分通院して、自主訓練を行いながら音声治療を行います。数ヶ月程度通院して行うようです。報告によると、治療開始6週まではドロップアウト率は20%程度ですが、それ以上長期になると終了を待たずに、ドロップアウト率は60%程度に達するとようです。患者さんは『とりあえず音声治療を試してみよう』と考えますが、効果が実感できずにドロップアウトにつながって行くようです。
習慣化した望ましくない発声行動を、望ましい発声行動に再度習慣化することは簡単ではないと理解して下さい。
👉
当院も含めて通常の耳鼻咽喉科クリニックでは、言語聴覚士がいないため専門の音声外来と同じことは出来ません。
たとえ言語聴覚士がいても音声障害を専門とする言語聴覚士は、日本では全体の1%にも満たないようですので、しっかりとした音声外来ができるところは限られています。今回は、望ましい発声行動を導く考え方や方法論を学んでいただき、自分で行動をおこして時間をかけて、自分の間違った発声行動を変えていくきっかけにしてください。今回紹介する方法は、言語聴覚士を必要とする方法も多くありますが、自分で行える方法もありますので、自分で考え無理せずチャレンジしてみましょう。Youtubeなどの動画を参考に行うとイメージがわきやすくなります。
☞ 音声治療の包括的訓練
(望ましい発声行動を導く考え方と方法論)
発声の生理を包括的に捉えることを基本として、
➊ 呼吸(腹式呼吸で気流発声)
❷ 発声(喉頭負荷を軽減)
❸ 共鳴(鼻腔・咽頭共鳴を促進)のバランスを整え、内喉頭筋の緊張を調整することで、
声帯振動を正常化することを目的とした包括的訓練を行います。
これが、皆さんに行ってほしい訓練の考え方です。
その他に、声帯の緊張を緩めたり、声帯閉鎖を強化する症状対処的訓練がありますが、
近年では症状対処的訓練のみでの効果は乏しいことが報告されています。
本来音声は日常会話において行われるべきものであるので、症状対処的に限局して行うより包括的訓練のほうが一般的になってきています。症状対処的訓練と包括的訓練を組み合わせて行い、そして各個人の音声障害の背景を分析した声の衛生指導を行うことで発声機能の改善が期待されます。
☞ 耳鼻咽喉科医師による病態の正確な把握
(音声障害出現でまず第一に行うことです)
➊音声治療を行う上で、留意点として、声がれなどの症状に対して音声治療の適応と限界の確認、癌の可能性がないかなどの病態を正確に把握することです。
❷ 音声治療の適応があれば、何が問題かを把握して適切な治療法を選択することです。
❸ アナウンサー、歌手、音楽教師の声に対する要求はかなり高いものになりますので、
声に対する要求度に応じた目標を明確にすることです。
声を使う職業人は、専門の音声外来受診(言語聴覚士またはボイストレーナーが実際の指導を行う)が望ましいことがあります。
保険外診療のこともありますので確認して下さい。
具体的には、耳鼻咽喉科医師による以下の正確な病態把握を行います。
*タバコ・食事・生活習慣・胃食道逆流症・ストレスに問題がないか
*鼻呼吸障害・口呼吸はないか(鼻腔・上咽頭・副鼻腔の診察)
*声帯粘膜障害や喉頭の癌などの形態異常がないか(内視鏡)
*発声時の咽喉頭症状や状態はどうか(内視鏡、喉頭ストロボ)
*癌、動脈瘤、中枢疾患による声帯麻痺はないか(内視鏡、胸部・頭部などの画像診断)
*仕事(教師、インストラクターなど)・生活・環境の中で発声行動に問題がないか
*腹式呼吸は行われているか
*胸式呼吸や喉に力を入れたのど詰め発声ではないか
*高齢者では、筋力や体重減少、会話の減少、家族内孤立、独居、周りに話す人がいるか 
☞ 音声訓練の実際
腹式呼吸:声は腹式呼吸と腹圧による気流発声から始まります。
腹式呼吸は、英語の発声、発音にも通じますので、子供のころから意識させるようにして下さい。
犬のあえぐような呼吸と発声も参考になります。
腹式呼吸基本臥位youtube
松永敦耳鼻咽喉科医師による
腹式呼吸・喉下げ・ベルカント YouTube ボイトレセミナーの一部です。
松永敦耳鼻咽喉科医師による腹式と胸式呼吸・母音発声YouTube 腹式呼吸は肩をあげずに行います。
松永敦耳鼻咽喉科医師による腹式呼吸・母音発声と顎の使い方YouTube
Dr Dの英語の発声腹式呼吸YouTube
セラの英語の発声とドッグブレスYouTube
症状対処的訓練(症状に応じて、音声そのものを変える訓練です)
➊ 声帯の緊張を緩め、軟らかい声を出すために身体の自然な反応を利用する方法
対象:筋緊張性発声障害MTD(内外喉頭筋の過度な緊張が原因、のどに力が入り過ぎです)
疾患と背景:
下記の病気と関係して起こり事も多く薬物療法と組み合わせて行うこともあります。
*胃食道逆流症による喉頭肉芽腫(PPIなどの胃薬併用)
*鼻疾患による後鼻漏に刺激による声帯炎(鼻疾患の治療併用)
*不適切な発声習慣による声帯炎、声帯結節
*心理的背景の関与(心理療法の併用)
診断:
発声時の内視鏡による喉頭声帯所見で判断します。
医学的タイプでは下記の分類の報告あります。
タイプ1:声門後部の間隙 タイプ2:両仮声帯の接近
タイプ3:声門上部構造の前後方向の接近 タイプ4:声門上部構造の前後方向の閉鎖
方法:どうしたら喉の緊張が取れるか
*あくびため息法
咽頭の奥を広くして喉を下げながら息を吸い、ため息のように息を吐き、吐き出す息に声をのせながら単語から文へと発声時間を長くします。咽頭共鳴を促進します。
あくびで喉の奥を広げ、広げたイメージで普通の会話へ発展させます。赤ちゃんが大きな声で泣けるのもこの喉の使い方で行っています。
*咀嚼法
ガムなどを噛みながら発声し、声帯の緊張を緩和する方法です。慣れたら噛んでいるつもりになって軟らかい発声を目指します。
*喉頭マッサージ: 喉を高く固定して緊張した声を出している場合、外喉頭筋(胸骨甲状筋)のマッサージを行います。胸骨甲状筋が唯一のど下げる筋肉で、のどぼとけの下から胸骨に伸びる筋肉です。喉が高いと高音になり緊張した状態を作ります。胸骨甲状筋を使い喉を下げて歌うと、秋川 雅史『千の風になって』のように低い伸びのある声に変化します。あくびため息の状態に近づきます。
*ストロー発声:気流の流れを意識して、腹式呼吸でのどは意識せず発声することを学びます。この方法は、最近注目されていますので、あとで詳細に述べます。
❷ 声門閉鎖の強化 対象:声帯萎縮 高齢者で多く、声門間に隙間ができるため、かすれた力がない声になります。
最近では、下記の包括的訓練である生理的発声法の音声機能拡張訓練(VFE)で治療を行います。
日本で以前まで行われていたプッシング法は、非生理的発声で過緊張発声を助長するため、現在世界的には行われないようになってきています。
包括的訓練(前述の対処的訓練よりこちら最近は主流です)
一連のプログラムとして行う方法で、個人で行うには限界があります。
プログラムとして行うには言語聴覚士を必要とします。
腹式呼吸で気流発声➡喉頭の内外筋を調整し喉頭負荷を軽減➡鼻腔・咽頭共鳴を促進
腹圧に始まり胸腔⇒喉頭⇒共鳴腔に至る一連の気流の流れとして発声を捉えていきます。
音色は音の波形の違いで、共鳴周波数で決まります。
キーワードは共鳴と気流の流れです。以下に訓練の流れを示します。
➊ 気流:後述のストロー発声で気流の流れを意識します。
❷ 咽頭を開き口唇を狭く逆メガホンで、声帯への負担を軽減します。喉を下げるイメージで行います。
次の音声機能拡張訓練(VFE)へつなげていきます。
❸ VFE(音声機能拡張訓練)(vocal function exercise)
喉頭の筋力向上とバランスの調整を目指し、発声持続や高低、大小の発声を組み合わせた訓練を行います。
*発声持続練習
*音階上昇
*音階下降
*特定の高さでの発声持続練習
など通院と自主訓練を行います。
音声訓練を日常生活へ導く生理的発声法の訓練です。
❹ レゾナント(共鳴)法:
喉に負担をかけない効率よく響く声(レゾナントボイス)を得るために、鼻の奥や口唇周囲の振動の感覚の認識を重視して行います。
ハミングを使って鼻腔咽頭共鳴を促進させ発声法の習得を導きます。
振動のブルブルする感じのような身体内部感覚に焦点を置き、のどを逆メガホンにするイメージで行います。喉をさげて行います。
共鳴に重点を置いた訓練は、喉頭に負担をかけず、すべての機能性の喉頭疾患に効果があります。
singでハミング ハミング(動画)by IVANA
松永敦耳鼻咽喉科医師 ハミングと音程 YouTube
松永敦耳鼻咽喉科医師リラックスと共鳴YouTube 体の力を抜き共鳴腔を広げ腹式呼吸発声。
◆治療プログラムの進め方の一例
(京都大学耳鼻咽喉科 平野 滋 2015 日耳鼻 から)
声の衛生指導
筋緊張緩和のストレッチ
腹式呼吸で気流を意識
基本となるレゾナントボイスの練習
レゾナントボイスによる詠唱
徐々に大きく徐々に小さく発声(メッサディボーチェ)
レゾナントボイスによる会話へ進展
👉
包括的訓練は、言語聴覚士やボイストレーナーの指導で行う訓練が多く、自分で行うには難しく感じると思います。
前述の『ストロー発声』は、簡単で自分でも行え、音声拡張訓練への応用ができます。
【ストロー発声の詳細】
日本では、まだ普及していませんが、簡単で自分でも行えるお勧めの方法です。英国の歌手 サムスミス(Sam Smith) が声帯出血をこの方法で治療したようです。
◆ボイストレーナーko(カナダ在住)ストロー発声YouTube
歌う前のウオームアップに効果あります。
◆Vocal Straw Exercise Dr. Titze 動画(英語)youtube
2006年、Dr Titzeが提唱した訓練プログラムは,ストロー発声での音 階の上昇・下降,同じく連続した強弱をつけたストロー 発声,さらにストロー発声による歌唱からなっています。
●『BS―NHK からだの秘密;声はストレッチで若返る』放映HP(2018年6月26日)にて、ストロー発声について紹介がありました。
内容:
ストローを用い『ウー』と唇が振動するように声を出します。口の中を広げ声のストレッチ効果あります。腹式呼吸で、声の上げ下げ1日50回ストロー発声、5~10秒持続させ訓練します。番組では2週間行います。声帯結節 声帯麻痺 声帯萎縮 MTD(筋緊張性発声障害)の効果の報告ありますが、すべてに効果はなく、声帯結節の改善には1年以上必要すると報告されています。
参考資料
◆実践 音声治療マニュアル インテルナ出版 城本 修 訳 ◆音声障害診療ガイドライン2018金原出版
◆図解 やさしくわかる言語聴覚障害 ナツメ社 ◆音声障害 平野 滋 日耳鼻学会誌 118~273、 2015
◆チューブ発声法による声帯振動への影響 音声言語医学56:180~185 2015
◆音声障害のリハビリテーション 城本 修 日耳鼻 121;193~200、2018
自分で行う声がれ対策(声の衛生)
2019年、新年おめでとうございます。最近、急に寒くなり空気が乾燥し声がかれやすくなる時期です。『今回は声のケアの話』です。
一時的な声がれは、心配いりません。2週間以上持続する場合や、反復する声がれは、専門医での精査が必要です。癌が隠れていることがあります。まずは耳鼻咽喉科専門医での精査をお勧めいたします。40歳以上の喫煙習慣がある男性と中高年、高齢者の方は用心してください。
メタボや食事の生活習慣に問題がある声がれが、最近増えています、胃食道逆流症による声がれ(喉頭肉芽腫)です。声の衛生以外に食事・生活習慣の改善が急務となります。
高齢の方や声を使わない老人の声がれには、声帯萎縮が進行していて、嚥下機能低下、筋力低下(フレイル、サルコペニア)、唾液分泌低下(ドライマウス)の確認が必要です。
誤飲性肺炎のハイリスクとなりますので、声の衛生以外の対応が必要です。
当院HP;自宅でできる誤飲性肺炎予防、自宅でできるドライマウス対策も参考にしてください。
当院HP:『声がれ』治療の流れを記載しています。
加齢や生活習慣による声帯萎縮や喉頭肉芽腫の診断は耳鼻咽喉科専門医受診が必要です。
◆声帯炎: 声帯の炎症 話過ぎや風邪の時に出現
これが持続すると下記へ移行しやすくなります。
*声帯ポリープ: 片側 血豆になることもあります。
*声帯結節: 両側 声帯のたこ(ペンだこ様) 習慣的に声を使う人 教師、歌手、アナウンサー、保育士に多い
*ポリープ様声帯: 声帯全体のむくみがあり、お酒とたばこを吸う更年期以降の女性に多い
◆喉頭がん: 声がれが、2週間以上持続するときは精査が必要 特に40歳以上の喫煙習慣がある男性はハイリスクです。
*反回神経麻痺:肺がん、甲状腺がん、食道がん、動脈瘤、縦郭腫瘍などが原因で、喉頭以外から生じる反回神経麻痺による声がれもあります。
◆声帯萎縮: 加齢と会話の減少で起こります。出しやすい声で『アー』発声持続時間が男性15秒未満 女性12秒未満は疑います。65歳以上の7割程度の方がいると報告されています。
◆喉頭肉芽腫:生活習慣病として最近増加が著しい胃食道逆流症が関連して生じ、のどに負担がかかりすぎると起こしやすくなります。
~~自分で行う声の衛生(声がれ対策)➡健康な声を保つための注意事項~~
重要なことは以下の二つです。音声治療(声がれのリハビリ)を行う前段階としても重要です。
●加湿:喉を乾燥させない、声帯粘膜の保護に重要。
●喉に負担をかけない:
音声治療では、喉頭は意識しないで、肺の気流と鼻腔と咽頭共鳴の促進を意識します。
ベルヌーイ効果など声の出る仕組みとやわらかい声帯粘膜の重要性を理解すると、上記のことがもっと理解できるようになります。

声帯粘膜は乾燥に弱く、良い声帯の動き(数百回/秒)を得るには、肺からの気流と声門下加圧が重要(腹式呼吸)で、喉は力を抜き意識しないで発声することが大事です。
👉 加湿は、1体内 2局所の口腔と口頭 3環境を考えて対応します。
1体内脱水に気を付けます、脱水や夏の熱中症の時の水分補給、利尿作用があるお酒やカフェイン飲料を控える、高血圧・心不全の利尿剤による影響を最小限にします。![]()
2局所の乾燥には、水分をまめに補給、食事を30回噛み唾液を促します。
鼻呼吸(加湿、加温、粘膜免疫、除菌機能あり)を意識します。
口呼吸では、朝は口腔乾燥になります。必要な方には夜間マスクを使用します。
唾液分泌は、刺激で出やすくなるので、夜間は唾液分泌が低下します。
イライラすると交感神経が働き、口が渇き易くなりますので、穏やかに生活しましょう。
飴をなめる時は、一口水を含みます。
3秋から冬にかけて湿度が低くなり空気が乾燥し、同時に寒くなるためエアコン、石油ファンヒーターなどの暖房による影響で室内での乾燥がさらにひどくなります。加湿器を使用し、温度設定を控えめにして、濡れタオル・洗濯物を干すなど対応します。
👉 喉の負担をかける発声・環境・食事生活習慣を控える。
*大声、ささやき声を避ける、ささやき声も喉に負担となります。
*運動時の発声を控える。
スポーツの時の気合をいれるため、『サー、ヨシ、エイ』などです。
*大声を出す時は、マイクやメガホンを使用する
*かぜの時大声を出さないで声・のどを休める
*騒音化では話さない
*タバコやホコリを避ける
*早口や力んだ発声を控え、楽なリラックスした姿勢で話す。
*激しい咳や咳払いには水を飲みます、咳は喉を傷めます。
*胃食道逆流が疑われる時は、食事・生活習慣を見直します。痩せている方も、起こしますので注意しましょう。
👉 喉の衛生にとって避けた方が望ましい薬
*鼻水や風邪薬:抗ヒスタミン薬、抗コリン作用のため乾燥
*降圧剤の一部:利尿薬による乾燥
*安定剤、抗精神薬、眠剤の一部:抗コリン作用による乾燥、喉頭筋緊張の異常
*抗パーキンソン病薬の一部:抗コリン作用のため乾燥
*ぜんそく薬の吸入ステロイド:声帯粘膜の器質的変化 カビによる喉頭炎
*ステロイド内服: 音声ピッチの低下
*抗凝固薬、抗血小板薬:血液サラサラのため声帯血種
それぞれの薬の必要性については、担当医と相談してください。
参考図書
米国耳鼻咽喉科学会『声がれ』ガイドラインHP 音声障害ガイドライン2018:金原出版 図解;やさしくわかる言語聴覚障害:ナツメ社 東京医療センター;感覚器センターHP
自宅でできる窒息対策:交通事故より多い窒息死
『窒息死の増加』
ここ数年の死亡原因の推移(厚労省人口動態統計)を見ると、エアバックによる普及などで交通事故による死亡者数が年々減少し、高齢化にともない、2006年には交通事故死より窒息死がおおくなり、最近では、窒息で亡くなる人は年間約1万人近くになり、交通事故による死者の2倍近くになります。その窒息死のほとんどは、高齢者です。
加齢とともに、物を飲み込む力が弱くなり、誰でも窒息の危険性が高まります。
特に、脳卒中、パーキンソンなどの神経疾患、うつや精神疾患、歯を失い口腔内トラブルは窒息を起こしやすくします。
餅、こんにゃくだけでなく、ご飯、パン、肉、芋、果物などどんな食品でも窒息の原因になりうると考えておくことが大切です。
飲み込む力が弱くなると、高齢者では、誤飲性肺炎も起こしやすくなりますので、
当院ホームページ自宅でできる誤飲性肺炎予防も参照して下さい。
『救命のカギ:現場での速やかな異物除去』
高齢者の窒息の多くは、食事中自宅で起こります。
➡窒息で救急搬送された患者さん155人の調査:
Igarashi Y.et al. Am J Emerg Med 2017
【回復率】窒息前の健康状態に戻る率
◆現場に居合わせた人の異物処置 73.7%
◆現場で救急隊員の異物処置 31.8%
◆医療機関到着後の異物処置 9.6%
窒息発生後、いかに早く異物を除去できるかが、その後の回復に大きく影響します。
異物除去できず、救命できても重い後遺症が残ることが多くあります。
その場で対応しないと、回復はほとんど望めないことになります。
👉 自宅でできる異物除去法
周囲の協力要請と119番通報
➡ 意識がある場合(すぐに異物除去)
咳ができる場合、
鼻から息を吸い、強い咳を促します。
背中を軽くたたき前屈みで行うとうまくいくこともあります。
IMG吸引ノズル(イマムラ):2000円台で市販されています。電気掃除機に装着して使用します。
この電気掃除機を使って吸い取る方法を開発した相生消防本部と兵 庫県立姫路循環器病センターは
「老人ホームや病院、老人、子供のい る家庭などで常備薬と同じように備えてもらえれば、万一の時の救命に なる」と説明
咳が出来ないとき
以下のことをすぐに行います。動画で確認して下さい。
*親指と人差し指で喉をつかむしぐさ(チョークサイン)
*窒息の有無を尋ねうなずき、話が出来ない
〇高齢者 小児
腹部突き上げ法(youtube)(妊婦・乳児にはしません)
要領:
傷病者の背後に回り、小児にはひざまずき、傷病者の胴に両腕を回します。
片方の手で拳を作り、臍のやや上に押しあてもう一方の手で握ります。
背部殴打法(腹部突き上げ、背部殴打、胸骨圧迫の一連)youtube
背部殴打法は側臥位(横向きで横たわり)でも行います。
小児背部殴打・腹部突き上げ法(youtube)
〇妊婦さん![]()
胸部突き上げ法(you tube English)肥満者にも適応あり
カナダ赤十字の動画で、1:25あたりから説明されます。
臍の上ではなく、胸骨の中央に拳を置きます。
〇乳児
乳児背部殴打・胸部突き上げ法 (youtube)
➡ 意識が無い場合
すぐに心肺蘇生、胸骨圧迫法を行います。
人工呼吸の前に、口の中を確認して除去を試みます。
当院ホームページ
自宅でできる心肺蘇生を見てください。
👉 高齢者の窒息を予防するポイント
嚥下障害の可能性がある高齢者と食事をするとき
●必ず誰かが見守る
●食べ物は細かく刻む(適度に水分を含む食品が食べやすい)
●少量ずつ口に入れる
●ゆっくり食べる
●話をしながら、TVをみながら食べない、食事に集中
参考図書
今日の健康2018年9月 一次救命処置AHAガイドライン2015準拠;シナジー
自宅でできる耳鳴り対策
👉 持続的な耳鳴りがしたらどうしたらよいか
耳垢栓塞症 中耳炎 突発性難聴 メニエール病、耳管機能障害など治療可能な耳鳴りを確認するため耳鼻咽喉科を受診しましょう。
詳細は当院HP耳垢・耳鳴り・難聴・補聴器外来を参考にしてください。
顎関節症、肩こり、頚椎症、心因性などに関連する難聴を認めない耳鳴りも存在します。ほとんどの耳鳴りは難聴と関連して起きています。
一次的な耳鳴りは健常者でも起きますので、長期に持続する加齢変化による難聴や慢性感音性難聴による耳鳴りが治療対象となります。
軽度の難聴や高音域のみの難聴は専門の耳鼻咽喉科での聴力検査を行わないと本人の自覚だけや健診などの簡易聴力検査ではわからないことが殆どです。持続する左右差が大きい難聴を伴う耳鳴り、拍動性耳鳴り、神経症状を伴う耳鳴りは、動脈瘤、硬膜動静脈ろう、聴神経腫瘍、脳疾患の除外のため脳外科や神経内科受診を勧めることもあります。
👉 難治な耳鳴りとサプリなどの耳鳴り治療情報の氾濫
耳鳴りで医療機関受診しても
『年のせい』『一生つきあっていくしかない』など言われたり、精神薬や睡眠薬、ビタミン薬、血流改善薬など処方されて満足いく効果が期待できないことが多くありました。現代医学では、残念ながら耳鳴を消失させる薬はありません。
しかし、難治な耳鳴りに対して、日常では、新聞・テレビ・ネットではサプリ(栄養補助食品)の効果を宣伝した情報が氾濫しています。個人の感想として、『これを服用したら耳鳴りが消失した』など紹介されています。具体的には、蜂の子、イチョウ葉、EPA/DHA、黒酢、ニンニク、ヒマワリの種、漢方では当帰芍薬散、六味丸、八味丸などよく目にします。
上記のサプリや漢方生薬(ハーブ)について、米国の権威ある米国耳鼻咽喉科学会の耳鳴りのガイドラインでは推奨されていません。
サプリ大国のアメリカの専門機関:
米国耳鼻咽喉科学会の耳鳴りガイドライン(2014)では、
推奨されないもの
◆色々なサプリ:
イチョウ葉、亜鉛、ビタミン、ニンニク、メラトニン、中国・韓国の生薬(日本の漢方に相当)など
◆鍼
◆薬物療法:
抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、
鼓室内薬物注入(ステロイド、リドカイン)
◆経頭蓋磁気刺激(脳卒中後遺症、うつ病などへ使用)
推奨されるもの
◆カウンセリング(患者教育)
◆補聴器
◆認知行動療法
(自分の行動や考え方の問題点を認識し改善していく心理行動療法)
*環境音(換気扇、扇風機など)、
*意識しない程度の音楽、ヒーリングサウンド
*補聴器から出る心地よい音を利用した治療
☞ TRT:耳鳴順応療法と呼ばれます
(ジャストレボフ博士提唱)
ガイドラインでは、薬物や何かを服用することが第一の治療にはなっていません。
最近は、カウンセリングと音響療法による耳鳴り治療が、主流になりつつあります。従来の薬物(西洋薬・漢方)療法を否定するわけではなく、一部の方には効果を認めますので薬物療法と併用して行うことが多くなっています。
耳鳴りのカウンセリングと音響療法は、耳鳴りを気にならなくする治療で、消失させる治療ではありません。
👉 自宅でできる耳鳴り対策で、まず行うことは
➡ 不快に感じる耳鳴りかの確認
静かなところでは、若い人や健常者も耳鳴りを感じます。
静寂は脳にストレスを与えることも分かっています。
耳鳴りは誰にでもあり、普通は意識下にあり気にならないだけです。
難聴やストレス、不安などがきっかけで耳鳴りが気になり生活に障害を与えるようになります。
まず、自分の耳鳴りで不快に感じるのかを考え、耳鳴りで何が困るのかを自問自答して下さい。
耳鳴りそのものでなく、耳鳴りに関連した問題点を挙げてみましょう。
病気への不安、抑うつ、耳鳴りで聞こえない、イライラする、眠れない、集中力低下など色々あると思います。
耳鳴りによる生活障害度が軽いか重いかで、治療の必要性が決まります。
耳鳴りはあるけれど、生活に困らなければそのまま様子を見ていただくことも多くあります。
◆治療対象は耳鳴りによる障害であり、
その障害を改善させると耳鳴りが意識下となり自然に気にならなくなることを理解してもらうことから始まります。
◆もしあなたが、ある薬を飲めば耳鳴りがすぐに消失する薬を求めて、多くのサプリ服用や民間療法、ドクターショッピングを繰り返しているのであれば、その考えを改めて下さい。
常に耳鳴りを意識の上で考えることになり、脳の過剰反応(耳鳴り)がおさまりません。
耳鳴りによる生活障害度が重い方は、耳鳴りとうつ病が共存している確率が高くなります。
●悲しみや気分の落ち込みがないか?
●今まで楽しめていた趣味や息抜きが今でも楽しめるか?
両方あれば、うつ病の可能性が高くなり、心療内科的アプローチが必要なこともあります。
*世界的に汎用される耳鳴障害度問診票(THI)で自分はどの位置にあるか確認してみてください。
THIスコア:
0~16正常 18~36軽症 38~56中等症 58~76重症 78~100 最重症
臨床で使用するときは
THIスコア:0~16 軽症 18~56 中等症 58~100 重症として簡便にして用います。
軽症から中等症にはうつ傾向はほとんどなく、重症の約半数にうつ傾向が認める報告があります。
➡ 相手(耳鳴り)を知ること
『耳鳴りのメカニズム』
音は脳で聞いていることを理解して下さい。
耳は脳に音を伝える役割を持っているだけです。
難聴による聴覚神経(多くは耳に奥の蝸牛)の障害があると、脳に音の電気信号が届きにくくなります。
音の電気信号の入力低下がおこると、聞きなれない音を脳は危険信号ととらえ、聴覚中枢の一部の活性が上昇して気づかない程度の耳鳴りが強くなり耳鳴りを自覚するようになります。
👉 耳鳴りの発生への治療と音響療法
◆難聴で不足している周波数の音を脳に届けることで、脳の聴覚中枢の興奮がおさまり、長期的には耳鳴りが改善する可能性が期待できます。
難聴を自覚している方は、補聴器が最も適した道具であり治療法となります。カウンセリングと補聴器から出る心地よい音を利用した治療(TRT:耳鳴順応療法)を耳鼻咽喉科専門医・補聴器相談医では行います。
●高度難聴でノイズが聞き取れない方
●耳鳴りの消失を強く希望する方(TRTは耳なりを気にならなくする治療で、消失させる治療ではありません)
●うつなど精神疾患の要素が強い方(心身症としての治療を優先)
上記のような方にはTRTが施行困難な場合があります。
すぐに自宅でできる音響療法は、
意識しない程度の環境音(換気扇、扇風機など)や心地よい意識しない程度で耳鳴りの8割程度の音楽や小さな音量でラジオを聴くことで、補聴器と同様の効果が期待できます。若い方は、音量を低くしスマホの落ち着いた音楽を聴くことも方法です。日常生活の中では静寂にせず、特に静かになる就寝前にこのような音響療法を積極的に行うとよいでしょう。
普段から人と会話を楽しみ、静寂を作らないことが大事です。
静かな音を聞くことが重要で、大きな音や騒音を持続して聞くことはいけません。騒音性難聴や若い方はスマホ難聴となり、若者は将来の耳鳴り予備軍となります。
ガッテンNHK:耳鳴りから注意を外す!!サイト 2020年4月1日放送も参考にしてください。
環境自然音や滝の音、ラジオの音は少し遠くの足元で壁向きにするとよいようです。波の音のように大きさに変化がある音は好ましくないようです。
耳鳴りが発生しても意識下にあれば、耳鳴りによる生活の障害はほとんど感じません。ストレス・人間関係など精神的要素は、脳の中で、記憶・本能・情動を司る大脳辺縁系と関連して、不眠・緊張・動悸・冷や汗などの自律神経症状となって表れます。
耳鳴りの発生回路と大脳辺縁系の苦痛を感じる脳との回路がネットワークを生じると耳鳴りが悪化して、耳鳴りが意識され、耳鳴りによる生活障害の悪化を招きます。
この苦痛ネットワークへの治療が、もう一つの耳鳴りの治療となります。
*カウンセリング
*認知行動療法(心理療法)
*薬物療法
を行います。
心理・生活障害が重度であれば、心療内科受診も考えます。
自宅でできることは、
ストレスをためない、良質な睡眠をとる、趣味をもち、いつも笑いがある生活を送ることです。
◆不快に感じる耳鳴りか自分で考え、耳鳴りによる生活の障害を知り、まずは生活の障害の改善を始め、生活障害が軽ければ様子を見る
◆耳鳴りを正しく知ること
◆ストレスをためない
◆静寂を作らない
◆騒音下の環境を作らない
◆趣味・社会活動など集中できるものを持ち、耳鳴りを意識しない時間を多く持つこと
◆耳鳴りを治療しようと意識せず、焦らず時間はかかっても、気づけば耳鳴りが気にならなくなるのを待つ














