院長の健康情報コラム
自宅でできる誤嚥性肺炎予防
『誤嚥性肺炎とは』
日本は超高齢化社会に突入しいて、今後さらに高齢化率は上昇します。
加齢とともに嚥下機能は低下し、75歳以上の3割に誤嚥を認めたと報告があります。誤嚥とは、何らかの理由で飲食物などが、誤って喉頭と気管に行ってしまう状態を呼びます。夜間の唾液、食物や胃の内容物の逆流による誤嚥の影響で、体力や咳反射の低下とともに誤嚥性肺炎が発症する場合もあります。
日本人の全死亡原因(28年)の第3位になった肺炎の多くが、誤嚥性の関与が考えられています。
下記の症状があれば、誤嚥性肺炎を疑って下さい。
●飲み込みにくさ 飲み込み時のむせ、咳
●食後の残留感、痰、違和感
●食事時間が長くなる、食事量の減少、体重減少、咳痰の持続
●反復する肺炎
『誤嚥性肺炎の大きな原因は三つ』
➊嚥下がうまくできない事
❷口腔内細菌の増加
❸抵抗力・咳反射の低下
➊嚥下がうまくいくには
➡脳が食べ物を認識し口腔咽頭や手などへ嚥下命令をうまく伝達(神経内科、脳外科、リハビリ科)
➡口腔と舌の機能(歯科、耳鼻咽喉科)
➡咽喉頭の機能(耳鼻咽喉科)
➡食道の機能(消化器科)
➡全身の管理(内科、在宅医)
のすべての機能がうまくいって、上手に食べることが可能になり、認知症・脳卒中・パーキンソン病など中枢疾患があれば、嚥下全体の統合がうまく機能しなくなります。さらに、摂食・嚥下機能障害の対応には医師・歯科医師だけで十分とは言えず、栄養士、言語聴覚士、看護師、歯科衛生士、理学療法士、ケアマネージャーなどチーム医療として対応が必要です。
➡ドライマウス(口腔乾燥症)があれば、口腔・喉の潤滑液がなく、飲み込みが悪くなります。
ドライマウスは、当院HP(コラム)自宅でできるドライマス対策を参照して下さい。
👉誤嚥性肺炎より怖いのは、窒息です。高齢化に伴い増加しています。
【窒息:もち・こんにゃくなど】
意識が無い時は、すぐに救急車と心臓マッサージ
意識があり呼吸ができない、話せない、手で首をわしづかみ(チョークサイン)あれば
◇背部叩打法
◇ハイムリッヒ法youtube(乳児や妊婦は禁)
を直ちに行いましょう。背部叩打は、通常のむせや咳では行わず、背中をさすり本人の咳を促してください。
👉 まず食物を使わない
安全に自宅でできる口腔ケアや間接訓練から紹介します。
【口腔】
口腔ケアは、唾液分泌促し口腔内細菌を抑制して、不顕性誤嚥(症状がない知らないうちに進行する誤飲と肺炎)対策に重要です。入れ歯の調整を行い、自宅でできることは、入れ歯清掃、歯磨き、唾液分泌刺激となる唾液腺マッサージ、うがい、アイスマッサージなどあります。夜間に細菌が繁殖するため朝食前の口腔ケアが重要です。不顕性誤嚥とは、食事中以外の夜間などに起こる誤嚥のとこです。
口腔の健口体操少し長め動画で、口腔・喉頭・口唇の訓練がうまくできるように作られています。
【咽喉頭】
シャキア訓練 youtube エビデンスが高い手技です。
【鼻咽腔閉鎖】
軟口蓋の挙上(口蓋帆挙筋)を促し、後鼻咽腔の閉鎖を促進します。鼻から息を吸い、ストローで口からペットボトルの水に息を吐き、泡立てて下さい。腹式呼吸・呼吸機能・喉詰め発声の改善にも効果があります。
【喉頭・気管・呼吸器】
咳・痰をうまくだすには ハフィングyoutubeを行います。
むせている時の対応youtubeやさしく背中をなでて、大きく咳を促します。強く背中はたたきません。
*自宅でできる食事時の姿勢はyoutube、背もたれによりかからず、体をまっすぐにし、顎をひいた、やや前屈みの姿勢が理想です。
*誤飲を防ぐ飲み込み習慣 動画(サイト)東京医療センター:感覚器センター
必ず顎を引きます。ペットボトルは、顎を上げる事になりますので誤飲しやすくなります。
👉 食べ物を食べる直接方法(誤嚥のリスクがでてきます)
鼻で息を吸い、少し口に食べ物をいれ、飲み込み、そして口から息を吐きます:腹式呼吸が大事
*複数回嚥下:何度か嚥下して飲み込みます、食事を嚥下後、空嚥下を促します。
*交互嚥下:飲み込みやすい物と通常の物を交互に嚥下します。水分誤飲がない場合は最後に水やお茶を嚥下します。水は汚染につながりにくいためです。
*食事中は、時々声を出してもらい誤嚥が無いか確認します。
自宅でできることは:
☆1回で飲み込める量を、ゆっくり噛んで食べ、食べ物を口に詰め込み過ぎないことです。TVをつけながらの“ながら 食い”は止めて 食事に集中します。
☆煮たり蒸したり適度に軟らかく、べとつかず、まとまりやすく、適度に水分含み、トロミがある食品を選びます。
☆普段から会話を楽しみ、歌ったり、カラオケを勧めます。
☆会話をする機会が少ない方は、新聞の朗読、外国語の勉強、グループ活動、ボランティアなど社会参加を積極的に行いましょう。
❷口腔内細菌の対策
誤嚥した唾液や食物に細菌が少数ならば、誤嚥性肺炎は生じにくくなります。
口腔ケアでの、丁寧な歯磨きとうがいで、歯垢除去をしっかり行い、原因となる嫌気性菌の増殖を抑えます。
唾液は、抗菌作用があり、嚥下に必要な潤滑液となるため、前述の口腔乾燥症の対策を行います。
❸抵抗力・咳反射を保つには
気管や肺に細菌が入ってしまっても、感染を起こす前に排除できれば、肺炎を予防できます。
*睡眠・休息をよくとり、1日5000歩き、体力を維持します。
*過労・ストレスあれば抵抗力を弱め肺炎のリスクを高めます。
*肉、魚、卵、牛乳を積極的に食べ筋肉や免疫の衰えを防ぎましょう。
*肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンを接種し肺炎の重症化を防ぎましょう。
*喫煙者は、非喫煙者の4倍肺炎になり易く、禁煙が最も効果的な誤嚥性肺炎予防となります。
『栄養管理について』
7日以上経口摂取で安定した栄養が摂取できない場合は、経管栄養(短期は経鼻胃管、4週間以上PEG;胃ろう)を行います。 胃ろうは嚥下には有利に働きますが、重度嚥下機能患者では、胃ろうを行っても経口摂取が確立できない場合、予後は2年以内のようです。嚥下機能が低下すると、胃ろうを行っても、自身の唾液や口腔内細菌を無症状で誤嚥して肺炎を起こす可能性(不顕性誤嚥)は常にあります。経鼻胃管の場合、10Fr以下のチューブで、鼻孔と同側の食道入口部に挿入します。経鼻胃管そのものにも肺炎のリスクがあるため、食事の時だけ行う間欠的口腔食道経管栄養法もありますが、管理・技術面で難しいことがあります。静脈栄養は、腸を使わないため免疫力が低下しやすく、ビタミン不足に陥りやすくなります。2週間使わないと腸上皮が萎縮して栄養再開時の吸収がが極端に低下します。
『誤嚥性肺炎を予防するための避けるべき薬』
*抗精神病薬
*ベンゾジアゼピン系睡眠薬
*抗不安薬
上記は、中枢に働き、食べ物を認識し口腔咽頭や手などへ嚥下命令を伝達することに影響を与え、口腔乾燥や咳反射低下をもたらすことがあります。
その他には
*咳止め(咳反射低下、口腔乾燥)
*風邪薬(口腔乾燥、咳反射低下)
*利尿薬(口腔乾燥)
*抗ヒスタミン薬(口腔乾燥)
*抗コリン薬(口腔乾燥)
*抗癌薬(味覚障害を生じる)など避けるべき薬となり、
本当に必要な薬なのか、減らせる薬はないか担当医と相談することです。
『老人と胃食道逆流』
高齢者の女性に多く、胃食道逆流症は、腰椎後弯による前屈み姿勢や、骨粗鬆症による円背、食道裂孔ヘルニアの合併が原因となります。嚥下困難、嚥下時痛、誤嚥が問題となります。寝たきりの患者で食後2時間座位を保つと発熱の患者さんの割合が減る報告があり、胃食道逆流症と嚥下性肺炎の関連が推測されます。
自宅でできることは、
*食後2~3時間は横にならない、
*夕食やその後のデザートに甘い者、脂もの、刺激もの(コーヒー、酒は)控えめにします。
自宅でできるドライマウス対策
Dog saliva is highly viscous before eating. Dog saliva with antibacterial properties does not mean that dog “kisses” are clean and humans should let their guard down.
『ドライマウスとは』
唾液は1日1~1.5L毎日排出され、口腔内の重要な役割を担っています。
最近、口腔乾燥症の患者さんが増えてきています。
口腔乾燥感と唾液分泌低下は、 高齢者に多く、加齢変化で唾液分泌能は落ちていきます。
下記の症状あれば、ドライマウスを疑ってください。
ドライマウスの症状
*のどの中のねばつき
*舌の痛み
*乾いた食品が食べづらい
*飲み込みづらくなる
*虫歯や歯周病が多くなる
*口臭
*味覚低下
*咳払い
*声がれ
唾液の役割
良い点:
アミラーゼを含み消化機能の一部を担う
洗浄液として抗菌成分を含み、口腔内の細菌・ウイルス・真菌の増殖抑制
潤滑液として嚥下を助ける
虫歯予防
悪い点:
病気になると唾液は感染の媒体となり咳などでインフルエンザなどウイルス・細菌をばらまきます
唾液低下の原因と対策
●ストレス 現代社会では、常に交感神経の緊張状態で唾液低下をおこします。
⇒ 睡眠をとり、リラックスできる生活を送ることは、自分次第で自宅でできます。
●薬剤が原因 抗うつ薬 抗ヒスタミン薬 精神薬 高血圧薬の一部
⇒ 最小限の薬になるように担当医と相談
●噛む筋力の低下
人と話さない 笑いがない 軟らかいものばかり食べるなどの生活習慣があると、四肢の筋肉を使わないのと同様に、口腔や喉頭の筋力も低下します。
⇒ 社会参加を積極的に行い、新聞などの朗読、
一口30回噛むなど自宅でできます。
●病気 シェーグレン症候群や糖尿病など
⇒ 病院で長期的に加療、または軽症は経過観察や食事療法などを行います。
その他に、毎日自宅でできる歯みがきを3回しっかり行い、唾液分泌を促します。
👉うま味を用いた、唾液分泌の改善が注目を集めています。
ためしてガッテン2018年7月4日 昆布による『うま味ドリンク』でも紹介されました。
食べ物で唾液分泌を促すのはレモンなどの酸味刺激ですが、効果は短時間となります。
うま味は、酸味に比べ持続的に長時間、唾液分泌を促すことがわかりました、うま味のもつ後味が関係しています。
うま味は、口腔粘膜に広く分布する小唾液腺の分泌を促します。
◆細かく刻みを入れた昆布を、水500mlに対して30gの分量で、一晩、水に浸して昆布だしを作ります。ペットボトルに入れて冷所保存し2日以内に使い切ります。
◆小さいペットボトルや水筒に入れて持ち歩き、口の渇きを感じたときに、昆布だしうま味ドリンクで口を30秒ほどすすぎ、そのまま飲む、または吐き出します。
甲状腺の病気や心不全などで水分制限がある方は吐き出してください。
こんなものに「うまみ」が多く含まれます
うまみ物質には、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などがあります。
<グルタミン酸>
昆布、チーズ、イワシ、白菜、熟したトマト、トマトケチャップ
<イノシン酸>
カツオ節、煮干し、サバ、豚肉
<グアニル酸>
干しシイタケ
Youtubeから、
●唾液腺マッサージ YouTube
(唾液腺分泌を促す効果があります食前に勧めます)
早口の猫が説明しています。
●あいうべ体操(舌を鍛え、口呼吸を改善するといわれています)
口腔ケアチャンネルから歯科医師が説明。
よくまとまった、口のどの体操が説明されています。少し長めの動画になります。
などを自宅でできます。。
唾液腺マッサージは、高齢者の口腔ケアの一つとして行われます。
皆さん、がんばってやってみましょう。
👉 一般的な歯科衛生士による在宅高齢者の口腔ケアとは
入れ歯清掃、うがい、
丁寧な歯みがき、
スポンジブラシで刺激
唾液腺マッサージなどを行います。
その他の口腔乾燥症の治療は:
●民間外用薬など(薬局やネットで購入可能)
マウスウオッシュ、口腔保湿ジェル、口腔保湿スプレー、閉口鼻呼吸テープ
●歯科受診で、保湿用マウスピース作成
●病院の薬
*ピロカルピン塩酸塩
(シェーグレン症候群、放射線障害による口腔乾燥症)
*セビメリン塩酸塩水和物
(シェーグレン症候群による口腔乾燥症)
上記の薬は、全身に作用するため動悸、発汗など生じることがあります。
うがいで使用する場合もあります。
*人工唾液サリベート
(シェーグレン症候群、放射線障害による口腔乾燥症)
*漢方薬 麦門冬湯など
汗とアトピー、そして漢方
It is hot summer day. Dogs do sweat only in their foot pads and some in their nose, but not in the same way as we human do. Dog’s mechanism of cooling down is panting with the tongue out.
汗はかきたくない人、汗をかいてすっきりしたい人、汗が多くてこまっている人、人それぞれ汗に対する感じ方があります。
今年の夏は異常な暑さのなかで、毎日、汗だくの方が多く、熱中症の話題がつきません。
☞ 今回は、汗の重要性と、最近の汗とアトピーの考え方、そして東洋医学ではどうかについての話です。
『汗とアトピーの結論』
アトピー皮膚炎(AD)の患者は汗をかくとかゆくなるため、長い間、汗をかかないような指導が行われてきました。最近では、発汗量の測定法が発展するにつれ、汗をかかないとADとなることがわかってきました。
汗とADとの関係の結論は、汗はかけたほうがよく、汗をかくことを避ける必要はありません。
汗をかいた後は、皮膚表面に長時間残らないよう洗い流す、拭き取るなど対策が必要。
汗はしっかりかいて、ふきとることです。
◆人類と汗
人類は発汗による体温調整法で、文明を発展させてきました。体温調整のために、環境の変化で素早く発汗できるエクリン汗腺を全身に持っているのは人間のみです。イヌ科と猫は肉球と鼻先のみエクリン汗腺あり、毛づくろいの唾液の気化熱を利用して体温調整します。犬なら新鮮な空気を吸い舌を出しあえいで唾液を蒸発させ、象、兎は長い耳を風にさらして、また象は鼻で身体に水をかけ体温調整をしています。馬は特殊で、運動や興奮で発汗するアポクリン汗腺で体温調整しています。馬は人間の2倍の汗をかき、運動時はもっとかきます、エクリン汗腺は足の裏にあります。
人間のアポクリン汗腺は、匂い、腋臭、フェロモンと関係しています。
耳垢のジュクジュクはアポクリン汗腺によるものです。
エクリン汗腺の汗はサラサラで臭いはほとんどしません。
動物に較べ、人間は中枢神経をになう脳が発達しています。脳は熱に弱く、脳が発達するためには、体内で栄養源の摂取に伴う熱産生を調節する必要性がありました。
発汗による気化熱・蒸散を利用した熱産生システムを構築することは、脳の発達に重要な要素となっています。
人間はマラソンのような長距離走を行えるのも発汗能力の高さによります。アフリカの狩猟民族はこれを利用し、獲物の大型獣が体温上昇で走れなくなるまで追いかけて狩ります。先史時代のヒトも同様の狩りを行っていたと考えられています。
◆赤ちゃんと汗(エアコン使い過ぎによる能動汗腺の低下)
人間の汗腺数は、一人当たり200-500万個といわれていますが、出生後の環境(熱帯、温帯、寒冷地)によって、実際に働く汗腺(能動汗腺)の数は違ってきます。
赤ちゃんは、生まれてすぐは汗をかかず、成熟児では2週間以内に発汗が見られるようになります。満2歳ころには、おとなとほとんど同じ数の能動汗腺が働くようになります。
満2-3歳までの環境で汗をかく能力がある程度決まってしまうわけです。
夏には赤ちゃん時代から、1日に2時間程度汗をかく機会がないと能動汗腺が充分に発達しないと言われています。夏以外の季節では、子どもはおとなの2倍近く汗をかきます。
夏に、赤ちゃんをエアコンの中ばかりで育てるのではなく、戸外でも室内でも、しっかり汗をかく環境と時間が必要です。1日2時間くらいは汗をかかせて、汗をかいた後はシャワーや行水をさせて汗をとり、それから涼しいエアコン環境ですごさせます。
汗をかきにくい大人にしないように赤ちゃんの時から注意して下さい。
赤ちゃんの寝汗について、おとなは環境温度が29度C以下だとかくことが少ないのですが、子どもはもっと低い温度でも寝汗をかきます。
子どもは四季を通じて、眠りついて1時間-1時間半くらいの間に寝汗をかくのが普通です。
◆熱中症と汗
エアコン利用、帽子、涼しい服装、水分や塩分をまめにとることだけでなく、汗が出ないなど体温を外に放出する仕組みがうまく機能しないと熱中症となります。
体温調整に重要な体表面の気化熱について、体重70kgの人が1度下げるには、100ccの汗をかきすべて蒸発しなければなりません
●汗のメリット
皮膚のバリア機能維持
汗は、角質の水分の保持を行いアレルゲンの侵入を防ぎ、皮膚のバリア機能を維持に効果を認めます。
皮膚のバリア機能の維持には、洗浄力が強いボディーソープより、弱い固形石鹸で脂質を守ります。こすり過ぎないこと、長湯を控えることも大事です。
皮膚の温度調整
汗の蒸散による気化熱により、皮膚表面や体内の温度を低下させ、痒みを抑える効果。
乏汗と自律神経失調症では、皮膚乾燥と皮膚の熱感を認めます。
抗菌成分の供給
汗含有の抗菌ペプチドや免疫グロブリンが肌を守ります。
●汗の低下がADを悪化
なぜ発汗低下がおこるのか?
ADでは、表面皮膚への汗の排出は低下するが、汗を作る能力は決して低下しているわけではありません。今までは、炎症の結果として汗菅の閉塞が原因と考えられてきましたが、汗菅の閉塞はADでは起きていないことが、わかってきました。
最近では、汗菅のタイトジャンクションの脆弱性のため、皮膚直下の真皮への汗の漏れが、絶えず日常的に生じていると考えられてきています(2018:Shiohara T, Shimoda など)。
●汗のディメリット
余剰な汗を長時間皮膚表面に放置すると汗孔の閉塞と汗疹が形成されます。つまり皮膚炎と乏汗の原因となり、皮膚乾燥と熱感を助長させます。
不感蒸泄の汗と違い運動後の汗は、pHが少したかく皮膚には少し刺激となる心配があります。
汗をかけばシャワー浴
おしぼりで吸い取る
可能なら汗でぬれた衣類を着替える
下着もナイロン・ポリエステルなどの化学繊維でなく吸湿・通気性がよい木綿が推奨されます。
●汗をかかせるためには
夏にいつもクーラーの中にいると、汗をかきにくい体質となるため、朝夕の涼しいときに、毎日朝・夕30分程散歩するなど軽く汗をかく程度の運動を行いましょう。熱中症を予防するためにも4~5月頃からはじめるとよいでしょう。
通常から、スポーツの習慣(有酸素運動)を持ちましょう。
シャワーだけでなく適度な入浴(半身浴など)をしましょう。
必要以上に、冷房や除湿の環境で過ごすことは避けましょう。
こうすることで、ベタベタしにくい臭みが少ないいわゆる『良い汗』をかき易くなります。
以前までのADに対しての汗をかかない生活活動(シャワーのみ、常時エアコン環境など)をやめることです。
基礎発汗を高める最近の研究では、ヘパリン類似物質含有保湿クリームの通常量の3倍程度塗布が効果を認めるようです。これにより角質成分の増加をもたらし、アレルゲンの侵入を防ぐことも可能と報告があります(2017:Shiohara T, Shimoda など)。
ステロイド軟膏の単独での長期塗布は、基礎発汗を低下させる一因となります。
漢方で汗をかかせるには
汗が出なくてかゆい場合は、桂枝麻黄各半湯を用いることもあります。
風邪の時、漢方では、汗がでず発熱・悪寒などあれば、発汗療法として、葛根湯や麻黄湯など桂枝と麻黄含有方剤を用いて治療します。
桂枝麻黄各半湯は桂枝湯と麻黄湯を半々入れて作ったものです。
少し汗があり、でたりないときに用います。
風邪の多汗には桂枝湯
暑がり寒がり、水太りには防已黄耆湯
皮膚表面の発汗・免疫調整役の衛気が不足すると寝汗が生じます。
皮膚乾燥も混じる、寝汗じとじと肌は桂枝加黄耆湯、寝汗あり元気がない方には補中益気湯、寝汗、虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、黄耆建中湯、
上記の方剤には体表の水のうっ滞を治し、免疫調整を行う黄耆が含有されています。補気の生薬で対応します。
寝汗は盗汗とよび、陰虚(体内の水不足)ととらえ、体の内熱(虚熱)を冷やすため汗がでる考え六味丸を用いることもあります。
西洋医学では、多い寝汗は肺結核、甲状腺機能亢進症、更年期障害、自律神経障害、心疾患など考えます。
強い口渇、多尿多汗、舌が赤いには白虎加人参湯(裏熱)、
夏バテ、口渇、尿が少ない方には五苓散(水毒)、
のぼせ発汗、下肢の冷えには気逆として、桂枝甘草含有の苓桂朮甘湯、苓桂味甘湯(気逆)、
少し虚証で、口渇、頭部に汗が多い方には、柴胡桂枝乾姜湯、
びくびくして汗が多いタイプには、柴胡加竜骨牡蛎湯や桂枝加竜骨牡蛎湯
ストレス、過緊張で手汗が多い場合は、四逆散、加味逍遥散を用い、胃腸虚弱や抑うつ傾向あれば香蘇散を加味します;柴胡疎肝湯(気滞)など使用いたします。
西洋医学では、乾燥肌・痒みに対してステロイド軟膏、保湿剤、掻破を防ぐため抗ヒスタミン薬を使用するのが一般的です。
漢方では、漢方の考え方によるバランスをとることを重要視します。
気・血・水や寒・熱や五臓論などによる証に基づき処方を決めますので、
乾燥肌は血虚・陰虚と関連が深く、以下に説明していきます。
実際の現場で慢性の病態には、血虚・陰虚+αを考え、お血・脾気虚・腎虚などの方剤を加減して処方します。悪化時の局所所見ジュクジュク、化膿、水泡、発赤など観察のうえ『+α』をさらに幅広く加味していきます。よくわかる子供の漢方:皮膚編も参照して下さい。
血虚:
皮膚表面では、加齢とともに、肌がカサカサ、爪が割れやすく、髪が抜けやすくなる漢方の血が不足した状態(ただの貧血とは異なります)を表します。表面的な症状だけでなく、不眠、集中力低下、目のかすみ、動悸、こむら返りなども血虚を意味します。
アトピー性皮膚炎や老人性皮膚搔痒症の皮膚症状は血虚と考えます。
陰虚:
中医学では陰は寒と水を意味し、陰虚とは、水が不足し火が興り、熱(虚熱)が生じます。陰虚とは『血虚+熱』を意味します。陽不足の陰虚でも、寝汗があります。
陰虚では、血虚と同様の皮膚表面の乾燥の他に、身体が痩せ、大きい筋肉は脱落し(サルコペニア)、手足がほてり、めまい、耳鳴り、口渇、舌乾燥、兎糞便を伴います。
皮脂分泌悪く、皮膚乾燥あれば四物湯が基本処方となり、色々な四物湯配合処方を用います。月経不順、内分泌・自律神経の異常にも応用します。
慢性炎症と皮膚乾燥には温清飲、青年の副鼻腔炎合併には荊芥連翹湯、幼児学童の扁桃の反復感染には、柴胡清肝湯。
貧血や元気がないときは十全大補湯。
四物湯が入っていない桂枝加黄耆湯は、寝汗(自汗)や皮膚乾燥などの表虚・衛気不足に使用します。虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、脾気虚の黄耆建中湯、元気がないおとなには補中益気湯を使います。
皮膚症状以外では四物湯配合処方として、
寒証の月経不順、手足のほてり、口唇乾燥には、温経湯。熱証の月経不順は温清飲。
体力低下、筋肉萎縮、屈伸むずかしい関節痛には大防風湯。
冷え、血行障害、関節筋肉痛、酒飲みには疎経活血湯など多数あります。
中医学では、陰虚に六味丸、滋陰降火湯など用います。
関連自院HPコラム よくわかる子供の漢方:皮膚編
参考資料
アレルギー 2018、Vol67:6,7 漢方治療 44の鉄則(メディカルユニコーン) 中医学入門 神戸中医学研究会 東洋学術出版社 漢方診療のレッスン(金原出版)
飯塚病院 漢方診療科HP 小児科医:澤田 啓司のブログ 汗;ウイキペディア
よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛
Genn, puppy has grown big , 3 month to 7 month lower photo, the dog at puberty.
☞ 動物の世界では人間も哺乳類の仲間です。犬や猫など身近な哺乳類から学ぶことも多くあります。
犬の成長との比較の中で、お子さんの成長を考えていきましょう。
【犬の身体と精神の成長】
犬の成長ははやく、中~大型犬では、1~1.5歳で大きさは成犬となります。
生後6ヶ月以降は青年期となり、生後6ヶ月頃から1~1.5歳の成犬になるまでは、骨や筋肉の発達に伴い股関節など成長に伴う病気がでてきます。この時期の激しい運動は体にダメージを与えることもあります。
精神面では、生後1~3ヶ月は第一の社会化期(人間の6ヶ月~幼児期に相当)と呼ばれ、恐怖心が無く、好奇心が旺盛な時期です。外界からの刺激を受けて社会に適応していく大事な時期でもあります。母親や子犬たちから犬同士のコミュニケーションや社会性を学ぶ重要な時期となります。早くから兄弟と別れさせられた子犬たちは、大事な知識や社会性、加減して噛むことなど学べず、今後人間と暮らしていくうえで、問題行動を起こすことになります。4ヶ月を過ぎると、好奇心より警戒心が少しずつ強くなってきます。
生後6~12ヵ月は、体の成長に伴い運動能力も発達し、第二の社会化期(人間の学童後半~思春期に相当)となり、周囲の環境に適応していくことを学んでいくことになります。初めての出来事に対する警戒心や恐怖心を覚え、ストレス耐性を学び、性格形成がなされていきます。良い性格形成のため、色々な犬との交流、赤ちゃんから老人までの人の交流、人間社会での車、信号機、自転車、色々な環境音に少しずつ慣らしていくことが重要です。常日頃から、耳の後ろから背中にかけ優しくなでてあげるスキンシップも穏やかな犬に育てる要素となります。
【お子さんの成長(感染症から自律神経症状へ)】
幼児から学童・思春期になるにつれて、急に体も大きくなり、よく風邪をひいていたお子さんたちは半成人のころまでには、感染症による病気にかからなくなってきます。代わりに、成長にともない、骨や筋肉と内臓のバランスに伴う症状が出現するようになります。
乳幼児までの近所の同年代の子供たち、兄弟や親子が中心の人間関係から、学童・思春期にかけ、交流が急に広がっていきます。それに伴い、学級やクラブ活動での多くの友人や上下関係、異性への意識など心身面の影響が多くみられるようになります。具体的には、腹部片頭痛、成長痛・関節痛、臍疝痛・夜尿症・心身症・不登校や自律神経症状を伴う起立神経調節障害など、心と体の成長との関係の中から生じる症状が多くなります。
小児は常に発達しているので、動的なものとしてとらえます。生命力や自然治癒力にあふれているので、本来の良さを上手に引き出してあげましょう。
漢方はその一つの手段となるはずです。
幼児までは、消化器が弱い脾虚や感染症にかかりやすい扁桃・呼吸器(肺)型の疾患が問題となります。学童から思春期にかけて、漢方的病態も変化していきます。肝・心型の不安・ストレスに関連した心身症や『気・血・水』の病理の『気』『水』に関連する漢方的病態を認めることが多くなり、頭痛、立ちくらみ、めまい、気分不良、自律神経症状となって表れます。
近年、小児心身症は、糖質の取り過ぎ、野菜や海藻に含まれるビタミンやミネラルの不足との関連が指摘されていて、医食同源として食養生をわすれてはいけません。
【起立性調節障害(OD)】
10~16歳に多くみられ、学童・生徒のODの発生頻度は5~10%と最も多い疾患の一つです。自律神経失調症の一つで、起立時や少し遅れての低血圧、立ちくらみ(重症では失神)、めまい、動悸などに加え、自律神経の不安定に由来する様々な症状が生じる疾患です。男性より女性に多く家族内発生は80%にみられます。朝起きが悪く登校前に頭痛、立ちくらみ、めまい、腹痛などのため不登校の原因にもなっています。午前中の活動性が低く夕方にかけて目がさえ、スマホやゲーム依存となることもあり、夜遅くまで寝付けず、その結果、朝に、起れず悪循環となっていきます。
自宅でできる対策:
朝日を浴び、タンパク、野菜を含めた朝食をしっかりとる、水分を十分とる(1日1.5~2L)などの生活習慣の改善や食事療法をまず行っていきます。1日30分程度の散歩を行い、第二の心臓と言われる『ふくらはぎ』を鍛えます。起床時はゆっくり起き上がり、立ち上がる前に足を動かしたり、両手を引きあったりして脳貧血を起こしにくくして立ち上がります。着圧ソックススの使用も検討します。
西洋薬では、昇圧剤のミドドリン塩酸塩(メトリジン)メチル硫酸アメジニウム(リズミック)などの昇圧剤を使用していきますが、十分な効果が得られているわけではありません。心療内科でのカウンセリングも必要になるときもあります。ODは怠けではなく病気であることを周りに理解してもらい、患者本人も自信をもって生活を行いましょう。
漢方では、水滞と脾・気虚として対応します。
多彩な自律神経の不安定に由来する症状を認め、以下の三つ分類すると分かりやすくなります。以下の方剤で、苓桂朮甘湯、建中湯類以外は、飲みやすいとは言えません。
◆循環虚弱型(めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、吐き気):
苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、真武湯、五苓散、当帰芍薬散、小半夏加茯苓湯
片頭痛の関与あれば、呉茱萸湯、五苓散、葛根湯、桂枝人参湯
◆胃腸虚弱型(腹痛、食欲低下、倦怠感):
小建中湯、黄耆建中湯、六君子湯、補中益気湯、
柴胡桂枝湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、四逆散、加味逍遥散、香蘇散、半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、帰脾湯
●循環虚弱タイプ
朝に立ちくらみ、頭痛、めまい、食欲低下があり、昼から元気が出るタイプを山本巌漢方では、フクロウ型と呼んで苓桂朮甘湯を用います。脳血流亢進させ心悸亢進を抑制する桂枝・甘草と抗不安効果の茯苓と利水剤を含有した方剤です。動悸が強ければ、甘麦大棗湯を合方します。思春期以降の女性で、生理不順やストレス強ければ加味逍遥散, 男女関係なく緊張強く手に発汗あれば四逆散、抑うつで元気なければ補中益気湯を合方します。
片頭痛の合併も認め、片頭痛家系のお子さんの場合、腹部症状が前面に出ることが多くあります。このとき、心下の冷えが強い時、まずい呉茱萸湯、肩こり・頭痛あれば葛根湯、雨による悪化には五苓散、胃弱と冷えのお子さんは飲みやすい桂枝人参湯を使用することもあります。
胃弱で頭痛、またはふらふらめまいには半夏白朮天麻湯これは片頭痛にも効果あります、手足の冷えや低血圧のめまいには真武湯、水逆の嘔吐や口渇・吐き気は五苓散、嘔気が強ければ小半夏加茯苓湯を使用します。思春期女性の生理不順とめまいには当帰芍薬散を使用します。
●胃腸虚弱タイプ
食欲不振が主であれば六君子湯、倦怠感が強ければ補中益気湯、腹部緊張感があり腹痛と食欲不振、便秘などがあれば建中湯類、腹痛強い時は屯用で芍薬甘草湯を用います。
●精神身体タイプ
ストレスが強く不安・腹痛には柴胡桂枝湯、不安・イライラ・背中のはりには抑肝散、それ以外に胃弱・ふらつき・頭痛などあれば抑肝散加陳皮半夏を使用します。
中学生以降でストレスや緊張がつよければ四逆散、女性でストレスや生理と関係あれば加味逍遥散、不安強くや胃弱あれば香蘇散を合方していきます。
不眠・不安の虚弱者は桂枝加竜骨牡蛎湯、不安が強ければ帰脾湯を合方、ストレスと胸脇苦満あれば、証に合わせ柴胡桂枝乾姜湯または柴胡加竜骨牡蛎湯を用いることもあります。
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参考図書
漢方123処方 臨床解説 メディカルユニコーン
小児科診療 2018;2 実践!小児漢方 診断と治療社
漢方の考え方、使い方 中外医学者
よくわかる子供の漢方:食が細い・胃腸炎・便秘
Mr. Genn became seven-month-old, he is waiting for food. The food plate is above his head.
【食養生】
薬膳とは、食材も薬も『食べ物』として区別せず(医食同源)、中医学(黄帝内経;素問)の理論をもとに体質、体調、季節などに合わせて、個人ごとに作る食事(食養生)のことです。理論を知らなくても、基本の考えは、自然界にある物を食べ、自然とのバランスをとることです。
☞ ご家庭では、下記の二つのことをまず心がけます。
◆一物全体(いちもつぜんたい):一つの物を丸ごとすべて食べることです。
お米は、白米より皮や胚のついた玄米、野菜は根や葉や皮を、小魚は骨や頭も食べます
◆身土不二(しんどふじ):その土地で育った旬のものを食べることです。
日本人が昔から行ってきた、その土地でその季節にとれた魚や野菜を食べる暮らしは、まさに身土不二です。
中医学で生命活動の源を『気』と言い、遺伝的なものは先天の気と言います。我々が日常できることは、後天の気の脾(消化機能)を整え、毎日、食べる事で補います。食べなれければ、生命活動の源が得られません。
【腸内フローラの重要性】
現代医学でも、腸は消化吸収の役割だけでなく、アレルギーなどの免疫の調整、肥満予防、ビタミン産生など腸内細菌叢(腸内フローラ)の重要性が徐々にわかってきました。
腸内フローラを整えるため、野菜、オリゴ糖、発酵食品を積極的にとり、抗生剤など細菌叢を乱す物は最小限にすることが重要です。幼少時からの抗生剤の服用はアレルギー疾患の増加をまねく報告もあります。
漢方の体内への作用は多様性があります。かぜに使用される麻黄は、アルカロイドのため、腸内の代謝を受けず吸収され、すぐに薬効を表し、桂皮の精油成分は匂いや神経を介して薬効を示します。
大半の漢方生薬は腸内細菌の資化菌の助けを借りて薬効を示すため、効果が出るまで時間を要し、腸内細菌が乱れると効果が薄れます。
食を整えることは、漢方の体質改善(本治)となり虚弱児、皮膚疾患、精神症状など様々な疾患の治療の基本になるものです。
【食が細い虚弱児に対して】
幼児の食が細く風邪を引き易い虚弱児は、漢方の良い適応となります。
その個人の証や状態に合わせ、六君子湯、補中益気湯 建中湯類などの補脾剤を用います。
感覚過敏を伴うお子さんは、甘麦大棗湯や抑肝散など心や自律神経に作用する漢方を併用することもあります。
特殊なケースとして胃食道逆流症(GERD)があります。
乳児から1歳半程度までは、胃食道逆流症に伴う食事摂取不良は見逃してはいけませんが、食の症状より、咳・痰・喘鳴など他の症状が目立つこともあります。
1~2歳以降、症状が強く体重増加が得られない場合、手術適応が優先されます。軽い場合は、授乳後30分は上半身を起こした姿勢を維持して下さい。
日本小児外科学会、MSD家庭版を参考にしましょう。
GERDに対して漢方では、元気・食欲がない場合(気虚)は、六君子湯を用います。食欲亢進作用があるグレリン分泌増加あります。虚証から用いることができ使いやすい方剤です。
のどから腹部のつかえがあり、嘔気や不安が強い場合(気虚+気滞)は、茯苓飲半夏厚朴湯を用います。中間~実証に使う茯苓飲の枳実には、胃運動促進を認めます。
【胃腸炎】
水分を欲しがるも飲むそばから嘔吐してしまう、いわゆる“水逆の嘔吐” は五苓散を使用。吐き気が強いときは、一口ずつ冷服(熱いお湯に溶かし、氷で冷たくして少しずつ服用)します。
2000年前の傷寒論の時代から、汗がでて口渇があり尿が少ないときの方剤です。
飲みにくいお子さんには、腹痛にも効果があり膠飴が含有されている小建中湯を合方すると飲みやすくなります。
嘔吐・下痢で胃部不快感強い時に、胃苓湯(五苓散+平胃散)、
腹部症状に、発熱・咳・痰など併存する時に、柴苓湯(五苓散+小柴胡湯)、
腹痛持続する時、小建中湯や桂枝加芍薬湯を服用し、腹痛が特に強ければ芍薬甘草湯 を屯用します。
吐き気あり下痢が多く持続し、胃部が痞えお腹のゴロゴロが強いときは、半夏瀉心湯を使用しますが、苦味があります。
嘔気が強ければ、なま生姜の汁入れると効果が増します(生姜瀉心湯)。
冷えて腹痛あれば、大建中湯、上腹部の腹痛は安中散を、ストレスと腹痛では、柴胡桂枝湯を使用します。
ふらつき、 下痢持続、ぐったり感あれば(少陰病の症状)、真武湯 を用います。
下痢が続き、食欲なくよだれが時にあり、上腹部症状あれば、飲みやすい人参湯を使用します。 数週間持続する下痢には啓脾湯 が効果を認めることもあります。
ミルクの場合は乳糖不耐症のこともありますので、チラクターゼの内服や、特殊なミルクに変更します。
【便秘】
乳児便秘は、母乳栄養にみられ離乳食が進むにつれ改善します。
急性便秘は、日頃便秘なく、何らかの原因で急に便秘になり浣腸や一時的な下剤で対応します。
週3日以上排便がない、または週2回以下の排便習慣を慢性便秘とし、漢方の良い適応となります。
2~3歳ごろ発症が多くなり、トイレトレーニングの失敗で、4~5歳ごろも認めます。
すぐに下剤は使用せず、食と生活習慣の改善から始めます。
適度な水分摂取、起床時の冷水、規則正しい食事と適度な運動、リンゴ・海藻など水溶性食物繊維、小児では、朝食後、定期的にトイレに座る習慣をみにつけます。
便秘の小児の多くは、排便時に何らかの苦痛を伴っていることが多く、薬を使ってでも排便はすっきりして気持ちよいものと体感させることが重要です。
西洋薬の大腸刺激性下剤(ピコスルファートナトリウム、生薬の大黄)や塩類下剤(酸化マグネシウム、生薬の芒硝)は早く効果を認めますが、止めると再発し離脱が難しいこともあります。場合によっては腹痛や量が多いと下痢が出現します。
大腸刺激性や塩類下剤の大黄・芒硝を含まない漢方薬の服用で、約半数の患者さんに効果を認める報告があり、服薬終了後も自然な排便を期待できます。
まず1~2週間ほどの内服で、効果が感じられ、うまくいけば半年ほどで自然な排便を認めるようになります。副作用はあまりみられません。
一方、漢方は、薬の量が多く、味とにおいが問題となります。
まずは、苦く即効性の大黄を含まない方剤から始めます。効果に時間がかかりますが、まずは漢方嫌いにしないように、シナモン味の甘い小建中湯を、皮膚症状あれば黄耆建中湯を服用します。
腹部が冷えて腹部膨満あれば、生姜の味がする腹部の術後に多く用いる大建中湯を用い、
腹痛伴えば小建中湯との合方を行います。
成人に多く使用する桂枝加芍薬大黄湯、大黄甘草湯は、苦味があり、大黄を含むので効きすぎて下痢や腹痛を生じることもありますので、上記で効果が無いときは検討します。
漢方で効果が期待できないときは、西洋の下剤を併用していきます。下剤単独より、漢方薬併用で下剤の量を減らすこともできます。
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