めまいの原因は複雑・混在:どう対応?
6月の梅雨のシーズンになれば、なぜかめまいの患者さんが増えてきます。東洋医学では、水毒、水滞と言ってめまい・ふらつきと関連すると考えれています。
西洋医学で、水毒、水滞は内リンパ水腫に近い病態です。具体的例として、比較的に稀なメニエール病、遅発性内リンパ水腫と若い女性に多い低音障害感音性難聴です。神経痛、頭痛などのように気象病としてめまい・耳鳴りも含まれ、低気圧の接近で、副鼻腔・鼓室内圧の相対的上昇の関与が推測されています。
『めまいへの初期療法としての対症療法』
めまいの薬物治療は何十年も前から変わっていません。ぐるぐる回るめまいであれば、吐き気も強く、点滴で、吐き気止め、脱水対策を行い、内服は吐き気止めのナウゼリン、トラベルミン、漢方など処方されることがよく行われます。但し原因を考えてではなく、とりあえず症状を緩和するため、対症療法として対応されます。この中には脳からのめまいも混ざっている可能性があります。めまい・吐き気・嘔吐は自然治癒することも多くある為そのまま落ち着き、浮遊感や吐き気はしばらく持続することは、よく経験する経過です。その後、めまいが反復または持続することもありますので、原因により判断しての対応が必要になります。
原因療法の必要性 ➡ 耳鼻咽喉科・脳外科・神経内科などで精査を行い、疾患を見極めて対症療法から原因療法に変えなければいけません。
『対症療法は最小限で!!』
身近な対症療法の例として、風邪の時には、風邪薬として症状をとりあえず抑える目的で最小限処方され、1~2週間自然治癒するのを待ちます。原因療法ではありません。発熱の時は、解熱剤を使用します。しかし発熱は病原への免疫反応を高める効果があるため解熱剤で下げ過ぎると弊害の方が大きくなることがあります。風邪薬は、眠気や倦怠感、のどが渇き、痰の切れや便の出が悪くなったりすることも多くあります。高齢者が咳止めを続けると肺炎のリスクが増加します。
対症療法に依存するのはよくありません。
『複雑・混在するめまい疾患の原因療法:どう対応?』
めまいの原因は、以下に示すように、あまりにも多く見極めるのがたいへんです!!
大きく分けて、①耳から ②脳から ③身体・心身からかを考えます。
👉 疾患のリスクと疾患の頻度から、次の2点の確認をまず考えましょう。
➡5%未満の稀な脳からの危険なめまいの原因を見逃さない事。高齢者や糖尿病、高血圧、心疾患があれば病院や脳外科にて脳の画像検査が必要です。
➡頻度としてめまいの半数近くを占める良性発作性頭位めまい(BPPV)かどうかの見極めが最も重要です。耳鼻咽喉科専門医またはめまい相談医を受診することです。
👉 その他の一般的な注意点は?
➡梅雨前から夏は、熱中症の初期症状としてのめまい・ふらつきを忘れないように!!
➡高血圧薬や睡眠薬・精神薬など服用している方は、薬剤性めまい・ふらつきではないか担当医と相談しましょう。
①耳から
前庭神経炎
めまい伴う突発性難聴
外リンパろう
②耳・内耳の症状だが脳の関与
前庭発作症
小児良性発作性めまい症(幼児に多い BPPVとは違う 片頭痛と関連)
明らかな脳の関与
一過性脳虚血発作
椎骨脳底動脈循環不全
神経変性疾患
脳腫瘍
➂身体・心身から
頸性めまい
心因性めまい
薬剤性めまい
貧血
循環器疾患
サルコペニア フレイル(加齢性前庭障害と合併)
『良性発作性頭位めまい(BPPV)にはさらに細かい原因が分類されます』
最も頻度が高い良性発作性頭位めまい(BPPV)には、耳石に位置により原因が異なります。
*後半器官結石 *外側半規管結石 *外側半規管クプラ結石
原因により治療法は少しずつ異なります。前庭リハや耳石置換療法のやり方を変えて対応します。
『反復するめまいの原因は時間とともに変化していき、複雑混在するようになります』
*最初は通常のめまい疾患で発症しても、めまいは反復することが多く、めまいに対する予期不安が出現し、不眠が出現し外に出るのが怖くなり心因性めまいを併発しやすくなります。また運動不足から、BPPVも出現する可能性が高くなり、めまいの原因が複雑化してきます。
*メニエール病・めまいを伴う突発性難聴・HUNT症候群の場合、めまい以外に難聴・耳鳴りも持続するため、精神的負担が大きく、うつ傾向も併発して心療内科受診する方もいます。
*強いめまい発作が持続する前庭神経炎は、めまい・ふらつきの持続は長期化することが多く、その後、運動不足等からくるBPPVが途中出現することがあります。
*ストレスなどが誘因となり、まじめな方に多いとされるメニエール病は働き盛りの方に多く、めまいが反復する疾患です。この疾患にもBPPVが混在することがよくあります。
*メニエール病は、更年期年齢および前後の女性に多く、女性に多い疾患である片頭痛も持っている方は片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)や更年期による自律神経によるふらつきなどが混在することもあります。
*2017年以降に国際的に統一された慢性機能性めまいのPPPDは、先行する通常のめまい疾患や、パニック発作・不安の平衡障害後、先行する疾患の病態が無くなり、3ヶ月以上ほとんど毎日持続する浮遊感・不安定感が生じる疾患です。先行するめまい疾患が混在していることもあります。先行するめまい疾患から3ヶ月以上経過して疾患が判断できるようになりますが、特異的検査がないため診断がつきにくく治療にも難渋する疾患です。
👉このようにめまい疾患は、反復するにつれ数週間~数ヶ月と時間経過ともに別のめまい疾患が併発し混在することが多くなります。
『複雑・混在するめまい疾患に対応するため、めまい相談医の役割』
日本めまい平衡医学会では2011年にめまい相談医制度を発足しています。
めまい臨床の専門的知識と高度の診療技術をもつ会員を対象に講習会と試験を受け合格者を認定する制度です。(鹿児島県では、現在6名:2023年6月6日)複雑極まりないめまい疾患に対応するには、『耳』『脳』『身体・心身』なのか判断できる総合的な臨床能力が必要になります。脳・身体・心身からの可能性の場合、該当する専門医や総合病院への紹介が必要になります。