吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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女性とめまい・ふらつき:漢方編

2019-08-17

貧血や全身状態を把握するため

女性のライフステージは、思春期、成熟期、更年期、老年期と女性ホルモンの影響をうけて年を重ねます。短期的には、月経、ホルモンの変化の影響を月単位でうけます。

女性の一生を通して男女差を意識した女性医学と外来はここ20年で広がりつつあります。

性差医療について詳しくは、当院の次のコラムを参照して下さい

『女性とめまい・ふらつき・転倒:サイト』

 

漢方の女性医学の歴史は長く、約2000年前の漢方・中医学の古典『黄帝内経』には婦人病が独立して記載されています。

現在の総合病院の報告でも、女性特有の更年期障害や様々な訴えに対して漢方が第一選択になっているようです。女性の社会進出、晩婚、ストレスの関与が考えられる女性の月経異常が、2000年から2014年にかけて約3倍に産婦人科外来で増加の報告があります。今後ますます、女性特有の訴えに対して漢方治療の役割が増えると考えられます。

 

◆女性の成長発達老化と漢方

黄帝内経より

中国の古典 黄帝内経素問での7歳ごとの身体変化

7歳:腎気活発、永久歯が生え、髪が伸びる

14歳:腎気旺盛、生殖能力が備わる

21歳:腎気が全身を巡り、歯がそろう

28歳:身体がもっとも充実

35歳:腎気が衰え始め、肌の乾燥、爪が割れやすくなり顔に皺が生じ、髪が抜け始める

42歳:皺が増え、白髪が出現

49歳:閉経

➡月経は五臓の肝の影響を強く受けます。規則的な月経で経血を輩出してお血を改善し、気の巡りをよくすると考えます。月経異常は気が巡らなくなり体のバランスを崩す原因となります

女性の7歳ごとの身体変化では腎気(生殖、骨、思考、内耳機能、水分代謝、呼吸)に強く影響うけ、肝(精神安定、蔵血、規則的月経)の働きも重要です。

 

*思春期:女性ホルモンの急激な変化により心身のバランスが崩れやすくなります。

漢方の考えでは、肝の機能が不十分で、心身の乱れを生じやすく脾虚・気虚(倦怠感や胃腸障害)と血虚・お血(貧血、生理痛など)をベースに、水滞(立ちくらみ)・気逆(イライラ)・気うつ(落ち込み)の症状を合併することも少なくありません。

この時期、めまい・ふらつきで問題になるのは貧血と起立性調節障害です。

漢方で立ちくらみ、ふらつきには苓桂朮甘湯、ふらつきと胃弱あれば半夏白朮天麻湯、月経異常を伴えば当帰芍薬散。片頭痛とめまいを伴えば苓桂朮甘湯に呉茱萸湯を、ストレス・緊張・手のひら発汗あれば四逆散を、ストレスや月経異常には加味逍遥散を、抑うつで元気なければ補中益気湯を、それぞれプラスすることを考えます。動悸強く感情コントロール不良には甘麦大棗湯を追加。

詳細は当院コラム:よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛(サイト)で確認を。

貧血のふらつきは鉄剤の服用を優先します。

 

*成熟期:ホルモン周期としては安定していて、妊娠・出産・不妊・子宮内膜症・子宮筋腫に関連した症状や、社会参加・仕事からくるストレスから心身のバランスを崩すことになります。漢方の考えでは、血虚・お血(月経異常、肌荒れなど)や気の異常に配慮した対応をします。冷えによる不妊、生理痛、月経不順をきたしやすくなります。

月経とめまい・ふらつきの関係は、月経前症候群(PMS)、月経困難症、妊娠が関係します。

詳しくは、当院コラム:女性とめまい・ふらつき・頭痛(サイト)で確認して下さい。

妊娠中のふらつきはつわりに関係して起こるこることが多く、妊娠中の安胎薬として古くから当帰芍薬散が使用されます。嘔気や嘔吐には小半夏茯苓湯、嘔気・気鬱には半夏厚朴湯、胃の調子を改善するには二陳湯が使われます。

『妊娠時控える漢方』

妊娠の時も漢方は使いやすい薬として認知されていますが、妊娠初期の過敏期はどの薬も控えた方が望ましく、大黄、牡丹皮、桃仁、紅花、牛膝、芒硝を含む桂枝茯苓丸、桃核承気湯、通導散などの強い駆お血剤は控えた方がよいといわれています。

月経困難症の下腹部痛には当帰建中湯、不正出血には、きゅう帰膠がい湯、ふらつきには貧血の改善を優先します。

PMSのふらつきには水滞の関与があり当帰芍薬散、効果無ければ苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯をプラス、PMSの精神症状に対してストレスと内に向けた怒りあれば抑肝散または抑肝散加陳皮半夏、訴えが変わり肩こりイライラや生理痛あれば加味逍遥散、感情的で傷つきやすい場合は甘麦大棗湯、実証で便秘あれば桃核承気湯など使用。

片頭痛は30代女性の5人に1人の割合で認めます。成熟期の片頭痛関連めまいも多いと推測されます。西洋薬では片頭痛の予防薬、めまいへはトラベルミン、セファドールが使われ、めまいリハを行います。めまいや頭痛に対して、漢方では、冷え性や心下の膨満があれば苓桂朮甘湯と呉茱萸湯の合方、気候と関係あれば五苓散を考えます。貧血、月経異常や肌荒れ強ければ連珠飲(苓桂朮甘湯+四物湯)も候補です。

 

*更年期:エストロゲンの低下による症状や女性特有の色々な訴えがでてきます。

漢方の考えでは、先天の本の腎気(生殖、骨、思考、内耳機能、水分代謝、呼吸)の衰え、うるおいがなくなり血虚(肌荒れ)、陰虚(水不足 ほてり)が問題となります。

五臓(肝、心、脾、肺、腎)の老化と密接に関連してきます。

中医学では陰は寒と水を意味し、陰虚とは、水が不足し火が興り、熱(虚熱)が生じ、

血虚+熱を意味します。

更年期の対しての3大処方(当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸)を中心に組み立てます。

めまい・ふらつきあれば、苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯をプラスします。自律神経症状が強ければ苓桂朮甘湯+加味逍遥散、虚弱と冷えが強ければ半夏白朮天麻湯+当帰芍薬散とします。口渇、皮膚口唇乾燥、手足のほてりあれば陰虚の進行を意味し、四物湯加減(連珠飲など)、温経湯、滋陰至宝湯、六味丸など補腎剤を検討します。訴えが変わり易い肩こりめまいには加味逍遥散、いつも訴えが同じののぼせ・めまいに女神散も考えます。倦怠感(気虚)を兼ねる場合は補中益気湯を兼用します。

 

*老年期:60歳を過ぎればエストロゲンは男性より低下します。骨量や記銘力の低下、脳血管・心疾患の罹患率に上昇、筋肉量が低下し低栄養をきたします。身体の虚弱化(フレイル)への対応が必要です。詳細は当院コラム(女性とめまい・ふらつき・転倒:サイト)で確認して下さい。

漢方的には、五臓の老化、特に腎・脾(消化機能)の衰えと密接に関係してきます。エネルギーの生成が不十分で気血両虚を生じます。冷えふらつきには真武湯、倦怠感強ければプラス人参湯(茯苓四逆湯)、下肢冷え夜間頻尿ふらつきには、胃が丈夫なら牛車腎気丸(利水あり)または八味丸。フレイル(栄養悪化、筋力低下)のふらつきには、気血両虚として十全大補湯、遠志が入った人参養栄湯を考えます。

めまい発作が強ければ苓桂朮甘湯または五苓散、その後の脾虚・気虚を補うため半夏白朮天麻湯。補腎薬を入れて牛車腎気丸プラス苓桂朮甘湯または半夏白朮天麻湯として対応することもあります。

参考資料

女性の漢方 小川 中外医学社

耳鼻咽喉科と漢方薬 ENTONI 2019年3月 全日本病院出版社

医療用漢方製剤の使い方 菊谷 南山堂

女性疾患を支える漢方薬 漢方医学2018 Vol.42 No.1 株式会社協和企画

耳鼻咽喉科編 漢方と診療 Vol.1 No.4 東洋学術出版社

中医臨床 耳鼻咽喉科疾患 2012年12月 東洋学術出版社

はじめての漢方診療 三潴 医学書院