吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

女性とめまい・ふらつき・転倒

2019-06-12

鹿児島市は6月に入り、梅雨にはいりました。

めまいは気象病の一つでもあり、最近は女性のめまい・ふらつき・耳閉感を訴える方が多くなりました。当院の待合室は、風邪や中耳炎の子さんを連れたお母さんと共に、めまい・ふらつき・耳閉感長引く咳女性外来のようになっています。

 

エストロゲンの変化と性差医療の普及

女性は、思春期、成熟期、更年期(45~55歳)、老年期の人生の過程があり、エストロゲンの変化が生活に大きく影響を与えます。思春期は、エストゲンが急に増加し、日本人の平均閉経50.5歳で、40代半ばごろから急にエストロゲン低下します。60歳を過ぎると、女性のエストロゲンは男性より低下していきます。

エストロゲンには、心筋血管保護、骨量維持、糖脂質代謝、脳細胞の保護など重要な役割を持っています。

急なホルモンの変化も女性の体調に影響しています。

日本ではここ20年間に性差医療が普及してきました。初めて2001年に鹿児島大学に女性外来ができ、心疾患領域から、乳腺、泌尿器など急速に広がりを見せています。

性差医療情報ネットワークのサイト

 

28年度の国民生活基礎調査(厚労省)の自覚症状の報告貧血や全身状態を把握するため

耳鼻咽喉科領域では、耳鳴りと難聴は男女ほぼ同率ですが、めまいは女性が男性の約2.5倍高くみられます。男女ともめまい症状は、加齢変化のため、70代で増加しています。めまいについて、女性は、10歳代から増加し30~50歳代が多く70歳から再度増加してきます。

加齢女性ホルモン(エストロゲン)の影響および社会・心理的背景の関与が考えられます。

 

福岡県の久山町研究では、中枢性めまいの原因になる脳梗塞は男性が女性の270歳以上になると性差が縮小します。60歳代までの女性のめまいは、中枢性以外のめまいが多く、内耳性、自律神経性、貧血、立ちくらみ、肩こり関連めまい、片頭痛関連めまい、心因性めまいなど多彩な原因が考えられます。男性のめまいと70歳以上の女性のめまいは、中枢性の脳からのめまいの可能性が高くなります。

 

👉 思春期と立ちくらみ

一般的には、女性が男性より1.5~2倍多く認めます。受診する科でバイアス(偏り)がるため、当院では男性中学生が多い印象です。起立性調節障害としての詳細は日本心身医学会HPサイトで確認して下さい。

思春期のふらつき・立ちくらみの対応で、漢方療法や生活習慣の改善について、

よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛当院コラム)を参照して下さい。

 

👉 更年期症状とめまい

更年期症状は

血管運動神経症状冷えのぼせ、発汗、動悸

不眠、不安、イライラ、抑うつ気分、情緒不安定

腰痛、関節痛、しびれ、むくみ

めまい浮遊感、肩こり、頭痛、疲労感 などの

自律神経、精神、運動器、皮膚、泌尿生殖器、消化器領域に及ぶ多彩な症状を認めます。

更年期のめまい症状には、血圧変動と自律神経の関与が報告されています。更年期症状には、ホルモンの低下だけでなく、環境の変化による心理社会的変化が複雑に関与して表現されると考えられています。

治療:

ルモン補充療法

漢方療法:

当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など証を見極めた治療

向精神薬療法

不安・不眠・抑うつに対して、SSRIなど使用、心療内科と相談

環境の変化による心理社会的変化を考慮した、心因・家庭・職場の問題を確認しながら傾聴

 

ホルモン補充療法(HRT)は

血管運動神経症状(冷えのぼせ、発汗、動悸)の第一選となります。

この治療は血栓・乳がんのリスクもあるため次のサイトで確認して下さい。

ホルモン補充療法の実際(日本産婦人科医会)

更年期障害の基本事項(日本産婦人科学会)

更年期障害の簡単チェックは次のサイトでチェックを

SMI(簡略更年期指数)

 

副作用が少ない漢方療法は、更年期の不定愁訴に汎用されています。漢方漢方療法は、HRTと同等の効果がある報告あります。HRTは、めまいへの効果は乏しいといわれています。漢方療法は、特に、めまい、心悸亢進、咽頭症状に効果が高いと報告されているようです。

 

 

👉 耳鼻咽喉科でのめまい関連疾患と性差

施設により、めまいの原因疾患の統計はかなり違います。

徳島大学病耳鼻咽喉科の統計(2005年)では

末梢前庭性(内耳)65%

BPPV(良性発作性頭位めまい症) 32%

メニエール病 12%

突発性めまい、前庭神経炎、突発性難聴など21%

原因不明めまい症 21%

中枢性めまい 7%

血圧異常 4%

心因性 1%

院長紹介

 

開業の一般耳鼻咽喉科クリニックでは、

大学耳鼻咽喉科よりBPPVがもっと多く、メニエール病と中枢性は少ないと思われます

開業医では、ふらつき・立ちくらみの訴えの患者さんは多く、

原因疾患は様々で、感冒、自律神経性、起立性調節障害、心因性、筋緊張性・肩こり、片頭痛関連めまい、貧血、低血糖、食事摂取不良、脱水症、低血圧、熱中症など多彩です。高齢化に伴い、平衡機能低下や筋力低下・関節障害(フレイル・ロコモ)などの加齢によるふらつきの患者さんは増加しています。

BPPV,メニエール病、自律神経障害、片頭痛関連めまい、筋緊張性・肩こり、貧血は男性より女性に多い疾患です。メニエール病は、男女差もありますが、ストレス、睡眠不足、几帳面との関与が大きい病気です。更年期障害の方にメニエール病が多い報告があります。メニエール病の誘発因子に月経があげられ1.5倍となっています。

 

BPPV良性発作性頭位めまい症

(男性より3倍女性に多く外来で最も多い回転性めまい)

回転性めまいの内耳疾患で、めまいの1/3以上から半分程度を占めるBPPVは、中高年の女性に多い疾です。

内耳の耳石が何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで半規管を刺激してめまいが起こります。運動不足、長期臥床、外傷後に起こり易くなります。長期間寝たきりになっていると、半器官へ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症してきます。また耳石もカルシウムであるため、閉経後の女性に多い骨粗しょう症との関連も考えられています。更年期障害とBPPVが併存することも多くあります。

BPPVは、サッカーの澤穂希が罹患した病気です。外傷が原因と言われています。

 

治療:

浮遊耳石置換法自宅でのめまい体操です。発症機序から、薬で治す病気ではありません

2~3週間で自然治癒することも多い疾患です。上半身挙上枕を高くすると起こしにくくなると言われています。対症療法として嘔気、めまいに対しての薬物療法は一時的に行う程度です。更年期障害や心因性など併存疾患への薬物療法は行われます。(但し、薬物療法は担当医により対応が異なることがあります)

再発率も高いため普段から運動を心がけ、動くことを意識する必要があります。朝のラジオ体操、NHK教育テレビの体操など生活習慣の一つに取り入れてみましょう。

 NHKガッテン20191023放送サイト上半身挙上の仕方が説明されています。

BPPVの基本事項は次のサイトを見てください

メディカルノート BPPV

(新潟大学耳鼻咽喉科 堀井教授 監修)

MSDマニュアル(世界的オンライン医学サイト) BPPV

 

 NHK健康チャンネルの動画を参考にめまい体操にチャレンジしましょう。

半器官結石(右、左)BPPVのめまい体操(Epley)

BPPV全般の寝返り体操 BPPV全般のめまい体操

(特に外側半規管結石)

平衡感覚を鍛えてめまいを解消

 

動画、BPPVだけでなく、内耳性めまい(前庭神経炎、メニエール病)の急性期後のリハビリとしてのめまい体操や加齢変化による平衡機能の低下予防にも応用できます。

 

👉 フレイル・ロコモを意識した高齢女性のふらつき・転倒への対応

女性は閉経後、急速に骨粗鬆症が進行します。脊椎圧迫骨折の亀背は女性に多く、高齢になれば、転倒のリスクが急に高まります。女性は男性の約2骨粗鬆症が多く2倍弱転倒の危険性が高いと言われています。

睡眠薬や安定剤の服用者は、転倒の危険がさらに増えます。骨密度は20歳ごろがピークと言われ、若いときの過剰なダイエットや痩せすぎは、閉経後の骨粗鬆症の悪化が予測され、骨折予備軍と考えられています。

フレイルとは、海外の老年医学で使用されているです。

生活機能障害と心身の脆弱性の意味で用いられ、

期発見、早期介入で生活機能の向上を図ります

以下の3項目以上該当するとフレイル

1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します

  • 体重減少: 6か月間2~3kg以上の(意図しない体重減少
  • 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
  • 歩行速度の低下:1m/秒未満の場合
  • 握力の低下:利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満の場合
  • 身体活動量の低下:1週間に運動や農作業を何もしない

フレイルの簡易チェックは、ふくらはぎの指輪っかテストで隙間ができることで判断します

➡ ふくらはぎの指輪っかテスのサイト

原因は、筋肉量の低下(サルコペニア)と低栄養です。

ロコモティブシンドローム

2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、

運動器機能の障害で移動機能が低下をきたした状態を意味します。

以下の事項が原因となり、変形性関節症・脊椎症の進行や骨折を起こし重症化していき寝たきりの原因となります。

  • 運動不足・肥満による腰・膝への負担または痩せすぎ
  • 骨粗鬆症
  • サルコペニア(筋肉減弱)
  • 外出回数や活動量の低下
  • 無理な姿勢や使い過ぎによる障害

 ふらつき・転倒へ予防のため、耳鼻咽喉科整形外科老年内科での総合的対応が必要

めまい・平衡障害があると転倒骨折のリスクは2.9倍高まる報告があります。

老人性平衡障害とフレイル・ロコモが重なり転倒・骨折の可能性がさらに高くなります。

対策➊食事、運動、生活

ロコモ体操:兵庫県立尼崎総合医療センター(youtube)

運動はスクワット、壁で支え片足立ち、壁で支えヒールレイズ(かかと挙上)、水中歩行などのレジスタント運動を行い、食事は、バランスの良い3食を食べ、肉・魚・大豆・卵・牛乳・小魚・きのこ・鮭などタンパクやカルシウム・ビタミンDをよく食べましょう。レジスタント運動で筋肉量を維持し、骨密度の減少に効果があります。

ビタミンDを維持するには日光浴も大事です。肥満者は少しずつ減量を試みます。急な減量は、筋肉量の低下をもたらします。喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症を早めます。

対策❷小脳・前庭機能

耳鼻咽喉科・めまい平衡医学領域からは、小脳・前庭機能の平衡感覚を鍛えるめまい運動

目で指の左右追い、振り返り、継足し歩行

前述のNHK健康チャンネルの動画を可能な範囲で行うとよいでしょう。

継足し歩行は、歩行器やシルバーカーの使用を勧めます。歩行が無理なら、両足を前後一直線上にそろえ立ちます。手を壁にあて支えてかまいません。

日常生活での注意点

急な立ち上がりや急に振り向くことを避ける

階段の降りる時は手すりを使い慎重に

両手フリーで歩行、荷物は背中に背負うか手押し車に入れる

戸外では杖や手押し車を使用

室内の障害物の整理、バリアフリー、トイレや廊下を明るく

参考資料

加齢によるめまい・ふらつきは自分で治そう!五島 杏林医会誌 291~293 2018年12月

更年期女性のめまい症状に対する検討 日耳鼻 115:534-539 2012

更年期障害の診断と治療 沖縄医報 Vol42, No2 2011