吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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耳掃除は必要か?外耳炎・カビ・事故

2019-06-24

 

6月に入って梅雨になり、高温多湿と紫外線が強くなると最も多くなる診療科はどこでしょうか?

それは皮膚科です。

耳鼻咽喉科でも、耳の皮膚疾患であ外耳炎、外耳湿疹、外耳道真菌症(カビ)の患者さんが多くなりました。例年涼しくなる10月頃までこの傾向が続きます。このような病気になり易い方は日頃から耳掃除をまめに行っている方です。

耳の衛生を保つためや気持ち良いからやっている耳掃除が、耳垢栓塞の原因となること、外耳炎、外耳湿疹、外耳のかびを生じさせてしまうことをご存知でしょうか?耳掃除による事故も多く、救急車を呼ぶこともあるようです。

👉今回、耳掃除に対しての正しい考えや弊害を学んで,必要性を考えてみましょう!!

 

耳垢には外耳での重要な役割があり、

外耳道には自浄作用と

その皮膚には保護作用があります

耳あかの役割

その酸性やタンパク分解酵素で抗菌作用を有する
脂肪が含まれ外耳道を保護しています。
外耳道への昆虫の侵入を防いでくれます。

外耳道の自浄作用

耳あかの正体は、古くなった表面皮膚の剥脱、ほこり、汗腺の一種で耳垢腺や皮脂腺の分泌物があわさったものです。耳垢腺や皮脂腺は外耳の外側1/3(軟骨部外耳道)に存在し、その奥(内側2/3骨部外耳道)にはありません。耳の穴の皮膚は常に新陳代謝を繰り返し、少しずつ外側へ向かい、顔やあごの動きや咀嚼・あくびに合わせ耳垢も自然に外に排出されます。鼓膜と外耳道の表皮の移動速度は、1日に約1mmと言われています。

外耳道は3cmほどあり、耳垢は外から耳垢腺・皮脂腺がある1cmまでしかできず、それ以上奥にあるものは綿棒などで押し込んだものが殆どです。つまり耳あかは外耳道のなかで必要なもので、通常は自然排泄し除去する必要はありません

外耳皮膚の保護作用

皮膚の表皮はケラチンというタンパク質が主体となって、角質層を形成して外部から物理的・化学的な作用に対する保護作用をしています。皮膚の表面は酸性を示す皮脂膜が形成されていて、このため細菌の繁殖が抑制され、その毒性が減弱されています。耳・外耳をいじり過ぎると、皮膚が傷つけられ皮膚のバリア機能が低下して、痒み、痛み、浸出液の原因となり、細菌や真菌の感染を助長します。

酸性である耳垢は、細菌や真菌の発育を抑制しています。除去すると保護作用が低下して、耳いじりによる浸出液や高温多湿で湿気が増えると、外耳道入り口から耳介の表皮の浸出液は培地となり、皮膚の㏗は5から7へとアルカリ化に伴い組織内への細菌の侵入を容易になってきます。

 

耳掃除による事故

国民生活センターから平成28年に

油断しないで!耳掃除サイト

で発表されていますので確認して下さい。具体的事例が多く記載されていますので見てみましょう。身近なことだと理解できます。

 耳かき棒と綿棒も同等に事故が生じています

アドバイスとして以下のことが記載されています。

耳掃除をするときは

周囲の状況(子供やペット)に注意し、安定した姿勢・場所で行いましょう。また、耳かき棒や綿棒を奥に入れ過ぎないようにしましょう

耳かき棒や綿棒を乳幼児の手が届く場所に放置しないようにしましょう

子どもに耳掃除をするときは、動いたらけがをするおそれがあることを理解させましょう。動いてしまう可能性があるときは、無理に耳掃除を行わない方が良いでしょう

耳掃除中のけがにより後遺症が残ることもあります。けがをした場合は直ちに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

耳の中に綿棒の綿体や耳かき棒の一部が残って取り出せなくなった場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

東京消防庁 耳かき中の事故に注意サイト

☞ 平成21年から5年間に380件に耳かき関連救急搬送があり、その中で0~4歳のお子さんが150名と約半分に相当する報告があります。

 

米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から出た耳垢栓塞診療手順ガイドラインサイト

(2017年 生後6ヶ月以上の方に適応)

ネットのコメントの中で、日本の耳鼻咽喉科医師を含めた多くの医療関係者が参考にしている指針です。

重要な部分を抜粋しました。

Your body makes earwax to protect your ear canal skin and kill germs.

Know that earwax is normal.

Earwax that does not cause symptoms or block the ear canal should be left alone.

Among those who may be helped are the elderly, people with hearing aid, and those with a history of too much earwax.

Most people do not need a regular schedule for preventing earwax buildup.

There is no standard course of action for preventing earwax buildup.

Most people do not have to do anything unless too much earwax develops.

Do not over-clean your ears.

Too much cleaning may bother your ear canal, cause infection, and may even increase the chances of earwax impaction.

Cotton swab can remove some wax, but they often just push the wax deeper into the ear and may worsen an impaction or injure the ear canal.

要点は上記以外の内容も追加記載

耳垢は、正常なもの(不要な老廃物ではない)で外耳道の保護や抗菌作用を有する。

症状を起こさない耳垢はこのまま放置してよい。

耳閉感、難聴、耳漏、耳痛、痒み、臭い、耳鳴り、咳などあれば専門医で治療。外耳道の上皮の動きと、咀嚼やあくびの際の顎の動きなどによって、耳垢は開口部に向かって徐々に移動していきます。

ほとんどの人は、耳垢予防を定期的に行う必要はない

耳垢予防の標準的なやり方は存在しない。

耳掃除はしすぎる

耳掃除のしすぎは、外耳道に負担をかけ感染を生じさせ、耳垢栓塞の原因となることもある

より奥に耳垢をおしこむと自浄作用が働かなくなり症状が出てくる。

綿棒は一部の耳垢を取り除くが、耳垢を深く押し込み耳垢栓塞を悪化させ外耳の損傷を生じさせることもある。

耳掃除が必要な人たちは、高齢者、補聴器使用者、耳垢が充満して症状があった方たちのみ

このような方たちは、年に1~2回専門医で予防的耳掃除を勧める

👉 耳垢には乾型とアメ状の湿型が存在

日本人の湿型は、報告の平均では16.3%となっています。一方、白人、黒人は湿型耳垢が多く、9割程度のようです。アメ状耳垢のほうが、乾型より耳垢は自然に排泄しにくい傾向にあります。アメ状耳垢が多い米国の指針で上記の内容ですので、乾型耳垢が多い日本人の耳掃除のし過ぎはご理解いただけるかと思います

アメ状耳垢が多い米国や欧米の家庭では、イヤーシリンジ(大型のスポイト)での耳洗で耳の衛生を保つ方法があります。日本では一般的ではありません。家庭医も同様の方法で耳垢除去を行うようです。

MSDマニュアル(世界的オンライン医学事典)耳垢除去(耳洗) 動画

 

耳掃除が起こす病気(弊害)

耳垢栓塞症

耳垢除去のつもりで綿棒など奥に入れていると、外耳道の奥に押し込み自浄作用は働かない耳垢栓塞が生じ、難聴、耳閉感が出現します。

外耳炎

日本では、夏季に急増するのが急性外耳道炎です。原因のほとんどは、耳かき棒や爪による外部刺激による感染で、外耳前方の一部が腫れたものは外耳せつと呼ばれ、耳の中にできたおできと考えてください。自然に自壊して改善に向かうこともあります。黄色ブドウ球菌が主な原因菌です。外耳の奥の骨部外耳道まで及ぶと急性びまん性外耳道炎となります。耳痛あるいは灼熱感が強く、漿液性の耳漏流出を認めます。黄色ブドウ球菌や緑膿菌が主な原因菌です。外耳炎が反復するときは、糖尿病などの基礎疾患の確認が必要です。

外耳道・耳介湿疹

やはり耳の機械的刺激が誘因として多いのですが、外耳の奥手前の湿疹で分けて考えます。

外耳の奥の湿疹は、中耳炎や鼓膜炎が背景にあり、浸出液によるカサブタや耳漏が関係します。綿棒を耳の奥に入れると刺激になり起こしてやすくなります。外耳の手前から耳介にかけての湿疹は綿棒を奥に入れなくても外耳の手前だけでの耳掃除だけでも起こしてきます。アトピー性皮膚炎、乾癬、ピアスかぶれなどの関与や、シャンプー・毛染めによる接触性皮膚炎も原因となることがあります。

特に乳幼児は皮膚が弱く、夏になるとよく汗をかきます。いつも同じ向きで寝かせていると、外耳から耳介にかけてかぶれて湿疹が悪化してきます。冷房の使用や寝かせ方の工夫が必要です。

外耳道真菌症

外耳道の中にカビ(真菌)が生える現象です。自宅でも、換気が悪く高温多湿の空間では、風呂や畳にカビが生えることはよく経験します。真菌の培養条件に適した温度は35~36℃です。ヒトの深部体温37℃台ですので外界に近く換気が悪い外耳道の中で好発します。健常な外耳道にも、常在菌として約3%真菌をみとめますが、悪さはせず繁殖に適した条件が必要です。

原因は、頻回な耳掃除で、皮膚のバリア機能の低下が生じ、かきすぎで知覚鈍麻がおこりさらに感染防御機能を低下させます。その結果、外界からの浮遊真菌が外耳の奥の炎症を起こした骨部外耳道から鼓膜に寄生します。アスペルギルスやカンジダが主な原因菌種となります。外耳道の奥を強く掻く竹製の耳かきは、真菌が付着しやすく生じやすいと言われています。外耳炎や外耳湿疹の治療で使用するステロイド軟膏や、抗生剤の点耳や内服も原因となることもあります。難治な場合は、糖尿病などの全身疾患の関与も考えます。

 

耳掃除の在り方のまとめ

耳鼻咽喉科での耳掃除が必要な方

高齢者

特に在宅や施設で活動が低下した高齢者や認知症の方は、外耳の自浄作用の低下があり蓄積しやすくなります。

補聴器使用者

自分の耳の訴えが十分にできない乳幼児・学童

風邪をひき易い乳幼児は中耳炎の確認が必要です。鼓膜の確認のため、必要な方は耳掃除を行います。耳垢が心配であれば受診し、耳垢除去が必要な時は保険適応で耳垢栓塞症として耳垢除去も認められています。

乳幼児の場合外耳道が狭く、動くため、耳垢除去は難しく、人数と労力を必要とします

、耳垢充満があった方

外耳炎や外耳道湿疹・真菌などの治療後

耳閉感、難聴、耳漏、耳痛、痒み、臭い、耳鳴りなどある方

メ状湿型耳垢で、耳閉感をくりかえす方

耳掃除の回数

日本のネットの記事では家庭では月に1~2回程度の耳掃除がよく記載されています。前述の米国のガイドラインでは通常の人の耳垢は症状が無ければ放置してよいとなっています。これは米国と日本の医療事情の違いも考慮する必要があります。

耳垢形成には、個人差が多く、乾型、湿型の違いでも異なります。年少では皮膚の新陳代謝が高く、高齢者は自浄機能低下のため耳垢が蓄積しやすくなります。自宅で対応できるのか、耳鼻科受診で除去が望ましいのか、年に何回程度か、担当医と相談して決めるのが望ましいと思われます。

家庭での道具

綿棒、先を細くした布、固くこよりにしたティッシュなど耳かき棒は耳掃除事故が心配です。綿棒も耳掃除事故の可能性がありますので、奥に入れません。ネットでは、内視鏡付き画像対応、LED付きなど売られているようです。アメ状耳垢が多い海外では、イヤーシリンジ(耳洗)が使われるようです。

道具より、まずは耳掃除の必要性と安全性を考えましょう。イヤーキャンドルは禁止です。

自宅ではどのように行うか?

外耳道の自浄作用により、外耳道の外まで運ばれてきた耳垢を取るだけにします。外耳道入口部から1cm以内の見える範囲の清掃にとどめますそれより奥にたまった耳垢は、耳鼻咽喉科で取ってもらうことを勧めます。湿型耳垢は家庭で取るのは難しいことも多く、耳鼻咽喉科での除去も考えましょう。綿棒や布等で、皮膚を擦ったりしないで、そっと拭き取る程度としましょう。乾型耳垢は、綿棒にベビーオイルやワセリンを付けるとくっつき易くなります。

綿棒を外耳の奥にいれると、耳垢栓塞を作り耳垢が外へでてこなくなります。また、外耳損傷や鼓膜外傷の事故の可能性が出てきます。耳掃除の報告では、耳かき棒と綿棒は同等の事故発生数が報告されています。

参考資料

Johns 1998 No.8外耳道をめぐって

外耳道真菌症の診断と治療 日耳鼻会報2019.5 796-798