吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

子供のかぜウイルスと季節性:その対策

2019-07-06

今年は、夏かぜの手足口病が例年以上に流行しています。子どもさんは、大人より風邪を引き易く、子どもさんから両親や祖父母までうつることはよく経験します。小児科外来受診の約7割が感染症で、その半数以上が呼吸器感染症です。かぜの90%は、ウイルスによる感染で、3日前後で改善しはじめ7~10日で改善し自然治癒する疾患です。咳だけは、1週間までにピークを迎え、2~3週間かかることもあります。

日本人の成人の年間かぜの回数は、年間男性2回 女性2.5回程度のようです4日以上持続する発熱や、一度解熱して5~7日で再度発熱するときは、細菌感染(中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、扁桃炎など)の併発を疑います。

ウイルス性感冒のウイルス数は200種類以上あり、インフルエンザ、ヘルペス以外、薬はありません。抗生物質は細菌を退治する薬のため、ほとんどがウイルス感染のかぜを治す薬はありません。西洋薬では、対症療法の薬のみです!!漢方薬を考慮することもあります。症状に対してつらいときは西洋薬を服用して、免疫を落とさないようにしながら自然治癒を待ちます。漢方薬では、自然治癒力をサポートします。

ウイルスではない細菌性感染では、溶連菌感染の扁桃炎、重い中耳炎、細菌性肺炎には抗生剤をしっかり内服することは重要です。安易な抗生剤の使用は腹痛、下痢、アレルギー症状を発症させ、腸内・口腔などの細菌の乱れを招き、社会的に問題な薬剤耐性菌の出現を助長します

学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説:登校登園基準(2020年5月)日本小児科学会サイト

このサイト登校(園)基準、感染経路・期間・症状などまとまっていますのでその都度確認して下さい

👉 今回は、何百種類もあるウイルス性感冒の特徴を知り、普段からできることを考えてみましょう。時間が無い方は、最後の対策のまとめで確認を。

 

不安定なRNAウイルス不十分なインフルエンザワクチン効果

不安定なRNAウイル

ウイルスはDNAウイルスとRNAウイルスがあり、天然痘ウイルスなどのDNAウイルスは遺伝子が安定で、変異は遅く、ワクチンで撲滅できました。

RNAウイルスは遺伝子構造が不安定で、変異スピードは速い特徴があります。変異スピードが速いとヒトの免疫応答が追い付けなくなります。アデノウイルス以外、インフルエンザなどの風邪ウイルスのほとんどは、RNAウイルスです。インフルエンザワクチンを接種しても、罹患することが多くなる理由もRNAウイルスであることが問題の背景にあります。

不十分なインフルワクチン効果高齢者(65 歳以上)を対象に、インフルエンザワクチンの発病阻止効果は34〜55%、インフルエンザを契機 とした死亡阻止効果は82%と報告されています。現在のワクチン皮下注射では、分泌型IgAは誘導せず、血清IgG抗体を上昇させます。血清IgG抗体は、鼻・口腔・気管での侵入を防ぐ効果や交差防御効果はありませんが、生体内でのウイルス活性を弱める効果がありますので感染後の症状発現予防や重症化予防は期待できます

ワクチン製造に使用されたウイルス株と異なるウイルス株が流行すると、現在の不活化ワクチンの効果は期待できません。その年の流行インフルウイルスが製造ワクチンのウイルス株とすこし異なると、ワクチンを打っても効果があまり期待できない年があるのはそのためです。現在のインフルワクチンは重症化予防に効果が高いと考えて下さい。発病阻止効果を高めるため、経鼻弱毒生粘膜ワクチンが試みられていますが、まだ十分な効果とは言えないようです。

エンベロープ(外側を覆う膜)が無いウイルスとあるウイルスの違い

脂質・タンパク質・糖タンパク質でできたエンベロープという膜で覆われていないウイルスは、夏風邪ウイルス、プール熱、ノロ・ロタウイルス、鼻かぜ(ライノ)などです。消毒用エタノール・石鹸では効果が弱く予防しないと防ぎにくいウイルスです。

新型コロナ・インフルエンザ・ヒトメタニューモウイルス・RSVなどエンベロープを持つウイルスは、消毒用エタノール・石鹸でエンベロープを壊すと失活します。感染力は強くても消毒に弱いウイルスです

エンベロープウイルス

種類:新型コロナ・インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、麻疹・風しんウイルス、エイズウイルス、B型肝炎ウイルスなど

対策:ワクチン(インフル、水痘、麻疹、風疹、B型肝炎)石鹸で手洗い 消毒用エタノール10~20分に一回水を飲む

咽頭のインフルエンザウイルスは20分以内に体内に侵入しますので、10~20分に一回水を飲み、胃酸に弱いので死滅します。最近、粘性が強い分泌物の中では、インフルエンザウイルスも腸管内で感染力を保つことがわかってきました。腸管内で、すべてのインフルウイルスが死滅するわけではないようです。

ノンエンベロープウイルス

種類:ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスエンテロ(腸)ウイルス(エコー・ポリオ・コクサッキー、ライノウイルスの総称)ライノウイルス(100種以上血清型)A型肝炎ウイルスなど

夏風邪の代表例手足口病(コクサッキーA16,エンテロ71)ヘルパンギーナ(コクサッキーA群:2,3,4,5,6,10型)アデノウイルス:51種類以上の血清型あり

アデノウイルスは咽頭結膜炎は主に3型、流行性角結膜炎(8,19,37型)、肺炎(3,7型)、胃腸炎(30,40,41型)、出血性膀胱炎、肝炎、膵炎、乳幼児咽頭炎(1,2,5型)など多彩7型は乳幼児・老人で重篤になることあり。

 ノンエンベロープウイルスは主に夏風邪と感染性胃腸炎のウイルスと鼻かぜのライノウイルスです。

対策:手洗いが重要です。ヒトーヒト感染では、手、嘔吐物、便からです。ワクチンはロタウイルス、A型肝炎にあります。

普通せっけんと流水による手洗いで物理的除去を行います。消毒用エタノール・石鹸だけでは弱く、医療機関ではウイルステラVHサラヤ(酸性にしたエタノールでは効果あり)で対応するところもあり。プールでの感染を拡散させないように、プールの塩素濃度を適正維持。タオルを共有しない、ペーパータオルなど使用。夏風邪のエンテロウイルス(ヘルパンギーナ、手足口病)は、おしめ替えで手をよく洗います。

感染性胃腸炎の粉塵感染予防のため:嘔吐物を素早く、乾燥させないで、床を消毒(次亜塩素酸:ミルトン)して処理します。食中毒では、カキ・アサリは十分に加熱、野菜を流水で洗うなど調理に注意が必要です。逆性石鹸(オスバン)は、ウイルスには効果ありません。

 

ありふれた風邪ウイルスの特徴と季節性を学びましょう。

夏のウイルス』 夏風邪(ヘルパンギーナ、手足口)のエンテロ(腸)ウイルスは、鼻水、咳少なく、咽頭・腸で増殖し便で拡散します。

ヘルパンギーナ(咽頭炎 稀に心筋炎、髄膜炎)

足口病(咽頭炎 重症化で髄膜炎、脳炎)

プール熱のアデノウイルス3型(プール以外の感染も多く一年中発生)

流行性角結膜炎:アデノウイルス8型(はやり目:プール以外の感染も多く 一年中発生)

パラインフルエンザ3型(喘息、気管支炎:初夏)

エンテロD68ウイルス(咳 発熱 筋肉痛 喘息 重症化では麻痺:飛沫・接触感染2015年夏流行

 

秋のウイルス

ライノウイルス喘息 鼻かぜ アレルギー性鼻炎悪化)

パラインフルエンザ1、2型(クループ)

 

冬のウイルス

ンフルエンザワクチンあり

コロナウイルス(鼻かぜ 胃腸炎 重症ではSARS、MERS)鼻かぜのコロナウイルスは、ヒト・動物で感染をおこし、MERS, SARSの原因ウイルスです。ヒトのかぜの10%程度で認めます。症状は上気道症状が主で下痢もあり、糞便で感染することもあります。

ロウイルス(食中毒二枚貝 食事とヒトーヒト感染 胃腸炎 老人で重症)

ロタウイルス食事とヒトーヒト感染 胃腸炎 2~3月に多く、乳幼児で重症の可能性あり5歳まで100%感染します。 乳児にワクチンあり:任意 

 

春のウイルス

イノウイルス喘息 鼻かぜ、中耳炎、アレルギー性鼻炎悪化)ウイルス排泄は通常は10日程度

ヒトメタニューモウイルス(3~7月 主に1~3歳に多い)(咳 肺炎)小児の5~10%、成人の2~4%の呼吸器感染で認め高齢者では重症化あり反復感染で免疫獲得できるようになり、軽くて済みます。生後6ヶ月頃から10歳までにほぼ全員が感染します。熱は4~5咳は7日程度持続します。発熱4日以上は細菌感染も疑います。ウイルス排泄は1~2週間持続します。

 

1年中のウイルス

RSウイルス(鼻かぜ、中耳炎、咳 細気管支炎 肺炎:2歳までに全員感染)生後一か月では無呼吸あり、2~5か月齢で入院が多く、約7割は数日で改善することもあります。成人までに、複数回感染で軽くて済むようになっていきます。乳幼児の感染期間は3~4週間持続することあり。

ノウイルス 51種以上あり 咽頭結膜炎(プール熱)3型、 流行性角結膜炎 8,19,37、重症肺炎 7型胃腸炎31,40,41型(3歳以下)、気管支炎、出血性膀胱炎、肝炎、膵炎など多彩。プール熱は39前後の発熱と咽頭痛が3~5日持続、目の充血や目ヤニあり。流行性角結膜炎は、耳前リンパ節や結膜充血あり、感染力強くプールで感染。眼科で診断。

サポウイルス(食中毒二枚貝 胃腸炎 主に乳幼児、集団感染あり)

新型コロナ

 

ウイルス感染迅速検査の役割

かぜウイルスの中で、クリニックですぐできる迅速検査があるのは

インフルエンザ(発症2日以内保険適応)

RSウイルス(1歳未満で保険適応)

ヒトメタニューモウイルス(6歳未満 聴診で肺炎疑う例で保険適応)

アデノウイルス感染(プール熱 流行性角結膜炎 感染性胃腸炎)

ロタウイルス(2~3月で多い 乳幼児重症あり)

ノロウイルス(3歳未満、65歳以上保険適応 冬に、老人で重症あり)

上記検査で、薬があるのはインフルエンザのみです。他の疾患は、治療法が特に変わることなく対症療法だけになります。ロタウイルスは乳幼児の重症化の可能性が高く、ワクチンがあります。疾患がわかれば、病気の経過を推測した対応を行います。ウイルス感染とわかれば、初期は抗生剤を使わない対応を行い、耳・鼻・呼吸器感染で、発熱など持続すれば二次感染を疑い抗生剤の追加を検討します。ウイルス感染で重要なのは、自宅、幼稚園、保育園、学校などでの予防です。

 

対策のまとめ

学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説:登校登園基準(2020年5月)日本小児科学会 (サイト)

このサイトは登校(園)基準、感染経路・期間・症状などまとまっていますのでその都度確認して下さい

 

うがいの予防効果

風邪には、水うがいで、40%の予防効果が報告され、イソジンうがいでは、10%程度のようです。イソジンが、のど粘膜細胞や細菌叢に影響を与えることが原因と推測されています。インフルエンザは、20分以内に鼻・のどの粘膜から侵入するため、うがい効果はありませんうがいの風邪の予防効果に関しては未だに議論があります少しの水をこまめに飲み胃酸に弱いので死滅を期待します。粘度が高い分泌物中では、腸管内でも生存するようです。

マスクの効果 飛沫感染予防

マスクの性能に依存します。不織布マスクは、保温、保湿効果で増殖予防とのどの保護効果あり。くしゃみ・咳による飛散予防咳エチケット)マスクによるウイルスの侵入予防は限られます

手洗い 接触感染予防

石鹸と流水での手洗いによる物理的除去はすべてのウイルスに効果を認めます。接触感染予防の基本です。鼻かぜ(ライノウイルス)・夏風邪や感染性腸炎ウイルスには、消毒用エタノールや石鹸だけでは効果は減弱します。

部屋の換気 飛沫核(空気)感染予防

インフルエンザは、密閉、低温、乾燥の条件がそろうと、部屋にいるだけで感染します。いったん付近のものに付着した後、乾燥して水分を含まない微粒子(直径5/1000mm)の感染を飛沫核感染と言います。2µ以下の飛沫核は長時間空中をただよう事ができるため、同じ部屋に一緒にいるだけでも感染します。

部屋の換気は重要です。➡ かぜウイルスではありませんが、結核、水ぼうそう、麻疹空気感染の代表例です。

 

『 冬の嘔吐下痢(ウイルス性感染性胃腸炎)冬将軍

頻度が高く問題になるのはノロ・ロタウイルスです。

厚労省 ノロウイルスサイト

東京都福祉保健局 ノロウイルス対策:詳細サイト

厚労省 ロタウイルス:Q&Aサイトで確認しましょう。

ノロ・ロタウイルスは、経口・接触・飛沫感染で急性期は最も感染力が強く、便中に3週間以上排泄されることもある。消毒用エタノールの効果は弱く石鹸による流水に手洗いが重要です。

 粉塵感染予防

感染性胃腸炎の粉塵感染予防のため:嘔吐物を素早く、乾燥させないで、床を消毒(次亜塩素酸:ミルトン ハイター)して処理します。

👉 お子さんへの実際の対応

吐き気の症状が強いときは、吐き気止めの坐薬をいれます(抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 では、嘔吐に対する制吐薬、下痢に対する止痢薬は科学的根拠に乏しく推 奨されていません)。薬の効果が出るまで1~2時間かかりますので、飲水は我慢してもらい口をしめらせる程度にください。早く飲ませると飲んでは嘔吐を繰り返すことになります。吐き気が治まれば、スプーン1杯程度を数分おきに少量頻回に、10~15分毎与えます。経口補水液(OS-1 アクアライトORS)が望ましい。スポーツドリンクは、Naが少なく、糖質と浸透圧が高く、水中毒や下痢を助長しかねません。軽度脱水では、点滴より経口補水液が効果的で有用性が見直されています。一回量を増やして4時間程度で脱水を補います。脱水補正後は、バナナ、すりおろしリンゴ、お粥、軟らかいうどんなど食べさせましょう。それでも水分が取れない、半日おしっこが出ない、ぐったり感が強い、腹痛が強い場合は医療機関を受診しましょう。小児の体重5%以上の脱水(体重減少)は点滴療法となります。

ご両親の看護が大事です

 

冬のインフルエンザ対策

広く啓発活動が、行われています。以下のHPで確認下さい。

厚労省HP (サイト)

鹿児島市インフルエンザHP (サイト)公共施設の入り口のどこにでもある消毒用エタノールで効果認めます

 

ライノウイルスと春と秋の喘息対策

ライノウイルスは、小児から大人のかぜの3~5割をしめています。33℃でしか増殖しないとされ、上気道に限定した症状(頭痛、咽頭痛、鼻水、鼻閉など)を呈し、水様鼻汁から濃い緑色鼻水に変化し、発熱は軽微で咳は2週間ほど持続します。ライノウイルスは、付着した器具で、数時間程度生存できるようですので、接触感染が主です。消毒用エタノールの効果は弱く、石鹸による流水による手洗いが重要です。100種以上あるのでワクチンは期待できません。

学童における喘息発作の80%以上、成人の約半数が気道ウイルス感染に起因する報告があります。

ライノウイルスは春と秋に多くなり、喘息や鼻炎の悪化をもたらします。喘息の悪化と最も関連するウイルスと考えられています。春と秋は喘息やアレルギー性鼻炎をお持ちの方は前もって気道過敏性を安定させるためステロイドの吸入や点鼻、抗ロイコトリエン薬などを用います

 

子供の夏風邪対策:主に1~6歳 成人にも感染

以下の手足口病・ヘルパンギーナはエンテロ()ウイルスのため、ウイルスは、咳・鼻汁から1~2週間便から数週~数ヶ月排泄します。アデノウイルスの排泄は、初期数日が最も多く、その後数ヶ月排泄が続くことがあります。(接触、飛沫、プール感染、糞口感染

夏風邪の症状の特徴、咽頭痛、発熱はあるが、咳・鼻汁はほとんどないことと、一ヶ月以上の排泄と糞口感染です

手足口病は、感染力が強く、38以下の発熱、下痢もあり、1週間で自然治癒。手・足の裏、口、肘、膝、おしりの水泡皮疹。まれに脳炎、髄膜炎を合併。

ヘルパンギーナは、咽頭奥の水泡、咽頭痛と発熱3日で解熱し1週間で回復、稀に心筋炎、髄膜炎を合併することがあります。

プール熱アデノウイルス主に3型 39℃前後の発熱が3日~5日、腹痛、下痢あり、1週間で回復、目が充血

流行性角結膜炎アデノウイルス主に8型(プール感染あり) 耳前リンパ節や結膜充血あり、眼科で診断します。感染力は強い。

手足口病とヘルパンギーナはエンテロウイルスで、腸管で増殖。アデノウイルスと同様に、ノンエンベロープウイルスのため消毒用エタノールでは弱く普通せっけんと流水による手洗いで物理的除去が重要です。ウイルスの排泄が長く、おしめ替えでうつりますので、手洗いを行いましょうタオルを共有しない、ペーパータオルなど使用。

参考資料

こどもの感染症の診かた MEIJI