新型コロナ対策:性差・子供の視点から
3密回避、マスク・手洗いはwith コロナでは、常識となっています。
これを実際どこまでできるかが問題です!!
米国疾病管理予防センターから、無症状の感染者からの感染割合について、全感染の半分以上を占めることが示唆されました(JAMA Network Open誌2021年1月7日号に掲載)。
有症状者への対応は、施設・学校・会社では今では常識として定着して効果をあげていると思われますが、無症状者からの感染リスクを減らすには十分ではありません。
3密(密閉・密集・密接)回避、マスク・手洗いを、自宅も含め徹底するしかありません。
家でもユニバーサルマスクも考える必要があります。
重症化リスクが高い高齢者と関連する施設や感染リスクが高い病院では、偽陰性のことも考え1週間隔での定期的な無症状者へのPCR検査や、精度は落ちますがスクリーニングとして容易な抗原定性検査を行うなど戦略的対策も考えなければならないでしょう。
最後は、各自が免疫を落とさない生活食習慣を実行していくことです!!
『切り札のワクチンの課題』
切り札としては、安全で効果的なワクチンが利用可能になり広く使用されるしかないと思われます。しかし現在の日本で予定されている遺伝子ワクチンは、効果はあるようですが、冷凍管理の問題、効果の期間、安全性、今後出現する様々な変異株への効果などわからないことが多く、今後も改良の余地が多く残されています。また発症または重症化を予防できても、新型コロナは無症状からの感染も多く、ワクチンで感染力をどこまで抑制されるか不明です。
👉 今回のテーマ
女性は男性より重症化率が低く、子供はかかりにくく重症化しにくいことがわかっています。なぜなのかを考え、我々が免疫を落とさないように出来ることを学びましょう。
◆子供はなぜ軽症またはかかりにくいのか?
【子供の新型コロナの特徴】
子供は新型コロナウイルスがくっつくACE2受容体の発現レベルが低く、子供の重症化リスクは、30代を基準に10代が0.2 10歳未満は0.5と低いことがわかっています。成人より感染しにくいと考えられています。無症状感染が多く感染しても1日で熱が下がるなど通常の風邪と変わらないこともあり実態がわかりにくい状態です。お子さんの特徴として、マイコ、インフル、RSVとの混合感染も稀ではありませんので診断が難しくなります。2歳未満、悪性疾患や心疾患をお持ちのお子さん、重症化の恐れがり注意が必要です。
稀ですが、欧米では子どもの新型コロナに関連して、(不全型) 川崎病に似た全身に強い炎症を起こす病態が報告され、新型コロナウイルス感染症関連小児多系統炎症性症候群と呼ばれています。これは発熱、皮疹、結膜充血、心筋障害、腎障害などが見られる重症の病態です。アジアでの報告はほとんどありません。
第1波の時に行われた学校閉鎖は、流行阻止効果は乏しいと現在は考えられています。
【小児の感染経路】
小児の感染経路について文科省の報告(2020年12月3日)から
*家族内感染(小学73%、中学64%、高校32%)
*学校内感染(小学6%、中学10%、高校24%)
*家庭学校以外の活動(小学11%、中学8%、高校9%)
*感染経路不明(小学10%、中学18%、高校35%)
小中学生の約7割が家族内感染のため、現状では、小児の感染を考える時、ご両親や周囲の大人からの感染をまず考えます。
最近の報告では、小児は成人より新型コロナに感染しにくいと考えられています。しかし小児のウイルス排泄量は成人同様で便からも排出を多く認めます。小児の場合、症状の在り無しでウイルス量はあまりかわらないようです。 しかし、子供間の学校内感染は多くありません。
小児は、成人よりインフル、RSVなどウイルスやマイコなど呼吸器感染に罹患しやすいのが通常ですが、新型コロナでは、逆に小児に感染しにくく重症化しません。この現象は、SARSやMERSでも同様のことが起こっています。
但し、小児は感染者が少ないため、スプレッダーとして過小評価されている可能性があります。今後、感染者が増え変異株の割合が増えてくるに従い小児の感染力や社会への影響がはっきりしてくると思われます。
【最近の外国の子供と新型コロナのまとめ論文から】
「Archives of Disease in Childhood」に2020年12⽉1⽇掲載
➊ 自然免疫が強い
*免疫強化つながる生ワクチンを多く接種して経過時間が短い、何度も他の風邪ウイルスに多く罹患していて、自然免疫記憶が向上しているなど、子供は強い自然免疫反応を持っています。
*子供は抗炎症・抗酸化作用のビタミンDが多い傾向にあります。欠乏すると、新型コロナの重症化を招く報告があります。ビタミンDはインフルや風邪ウイルスの呼吸器感染抑制効果を認め、高齢になればビタミンDは低下します。
ビタミンD欠乏で 新型コロナの死亡率は約4倍高くなる報告(American Journal of Clinical Pathology誌2020年11⽉25⽇号)が最近でていますが、重症化と関係ない報告もあります。ブラジルからのビタミンDのサプリで、新型コロナの重症化は防げなかった報告もあります。
*細菌叢は、免疫の調節や炎症、疾患に対する防御において重要な役割を果たしています。子供は成人と違い、鼻の奥に細菌叢やウイルスの定着があり、細菌ウイルス間の相互作用と競争で新型コロナウイルスを排除している可能性があります。
*子供は癌治療や免疫抑制の状態にあっても、成人より新型コロナの影響を受けにくいと考えられています。
❷ 新型コロナがくっつくACE2受容体の発現が低い
*子供は、抗炎症・抗酸化作用のメラトニンが多く、メラトニンはACE2受容体の発現を低下させます。
*子供は、新型コロナウイルスがくっつくACE2受容体の発現レベルが本来低いと考えられています。
新型コロナは、呼吸器に感染するが悪化するときは血栓をつくり
血管病として重症化すると考えられています。
男女とも罹患率は変わらないようですが、60歳以上の高齢になるほど、男性は特に致死率が高まります。
この男女差について今までは
*エストロゲンで血管保護
*女性は男性よりソーシャルディスタンスなどルールを守る
*男性の方がタバコ・飲酒・偏った食事習慣の方が多い
など色々な説が考えられていました。
☞ 最近のエール大学の報告(Nature | Vol 588 | 10 December 2020)では、新型コロナでは、男性は獲得免疫を担うキラーT細胞と呼ぶ免疫細胞の活性が落ちるほど重症化しやすいことがわかりました。女性のほうが、免疫応答が活発であるようです。膠原病など自己免疫疾患は女性が男性より多いことからも納得できる内容です。今までも新型コロナ以外のSARSなど多くの感染症でも男性の方が重症化しやすいことはわっかています。
【まとめ】
*免疫を落とさない生活習慣(睡眠、運動)
*腸内細菌を整える食生活
*ビタミンDを減らさない食生活と適度な日光浴
*日内リズムを整え、メラトニンを減らさない運動、日光浴、食生活
*血管保護を考えた生活食習慣
*重症化リスク因子の肥満の改善
を行いましょう。
👉 具体的には
マスク・手洗い・3密回避(密閉・密集・密接)以外に皆さんにすぐにできることは、
*ビタミンD豊富な食材のキノコ類やサーモン・鮭など魚を食べる
サーモンは、お子さんにも人気で、回転すし店の一番人気食材です。
ビタミンDは、抗炎症・抗酸化作用、呼吸器感染抑制効果を認めます。欠乏で新型コロナによる死亡率を4倍上昇させる報告がありますが、重症化と関係ない報告もあります。ビタミンDにこだわらず、バランス良い上記食材の摂取は健康な食生活に良いと考えられます。
*自宅内だけで自粛せず密にならない公園など外に出かけ、
日光をあびてビタミンDをあげましょう。
日光浴・運動は、メラトニン上昇にも影響します。
納豆・肉・乳製品を食べトリプトファンを摂取するとメラトニンの上昇を促します。メラトニンは、抗炎症・抗酸化作用およびACE2受容体の発現を低下させます。ビタミンD、メラトニンは加齢に伴い低下していきます。
*動脈硬化を予防する黄緑色野菜・キノコ類の食物繊維を多くとり、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)が豊富な魚・クルミを食べ、塩分を控えます。免疫に重要な腸内細菌叢を整える効果もあります。
*免疫を落とさないように、良質な睡眠をとり、運動習慣を持ち、重症のリスク因子の肥満を改善しましょう。
『お勧め食材』
*サーモン・鮭など魚(ビタミンD 、アレルギー抑制・心血管系によいオメガ3脂肪酸が豊富)
*キノコ類:マイタケ、シメジ、エリンギなどのキノコ類は、ビタミンDや免疫活性のβ-グルカンも含む食物繊維豊富で、カロリーが低く、腸内細菌叢も整えます。
*オメガ3脂肪酸を多く含む食材:魚や青魚の缶詰、くるみ、