吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

運動・アスリートと喘息・鼻炎

2019-09-16

運動会は、以前は秋がほとんどでしたが、残暑、熱中症、台風による季節的な理由や秋には行事が多く、現在は小中学の運動会が5~6月または9~10月に多く開催されています。当院の周囲の学校では9月中旬以降に運動会が多いようです。最近、気候の変化に伴い運動会の練習など咳がとまらない、呼吸苦・ゼーゼー・だるいなどの訴えのお子さんたちが多くなりました

👉 今回は運動誘発喘息、運動誘発鼻炎、競技会に参加するアスリートたちが注意すべきことなどのお話です。

 

運動誘発喘息(EIA:exercise induced asthma)

運動により一時的に咳・喘鳴や呼吸困難が起こる現象を運動誘発喘息(EIA)と言います。喘息でない者にも起こりえるため、運動後に気管支が収縮する現象として運動誘発気管支攣縮(EIB: exercise induced bronchoconstriction)と呼ぶこともあります。運動による気道粘膜の脱水と冷却、過剰な換気量や大気汚染物質などによる気道過敏性の亢進が考えられています。EIBの頻度は10%程度ともいわれていて、体調や環境によって誰にでも起こる病態と言えます。

発作は

冷たく乾燥した環境でマラソンなどの持続的な運動を続けた場合に起こりやすく、運動を始めて数分で起きて、運動を終了すれば治療をしなくても20~30分で回復します。中には運動を中止しても回復せず、重症の発作をおこしてしまうこともあります。

予防

10~20分のしっかりとしたウオーミングアップEIAは十分な準備運動で起こさなくなる期間(不応期:準備運動後の1~4時間)の存在が知られていて、目的とする運動のEIAを軽くすることが出来ます。

普段から、喘息のコントロールをしっかり行い気道過敏症を抑制することです。コントロールが出来ていればEIAを起こしにくくなります。

薬剤による予防;

運動15分前短期作用吸入β2刺激薬(SABA:メプチン、サルタノールなど)の吸入、SABAの連用は気道過敏性の亢進をもたらすため短期使用にする。

DSCG(インタール)の運動15分前の吸入

普段から自宅で、ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカストなど)の服用定期吸入ステロイドで日常からコントロール学校で運動前の吸入薬を使うことは難しいことが多く、これが最も学校活動では望ましい対応と思われます。

普段からの適切な運動,運動の継続でEIAが起こしにくくなります;水泳が起こしにくい運動と言われますが、なんでもよいので運動習慣を持つことが重要です。1日20分以上の早歩きでかまいません。マラソン、サッカー、ラグビーなどは、冬に外で走る運動量が多いスポーツに起こしやすくなります。徐々に強度が上がる運動はおこしにくいと言われています。スキューバーダイビングは、タンク内の乾燥冷気や海水由来の高浸透圧の海水を吸引することで気管支攣縮が起こしやすく生命の危険につながる恐れがあります。トップアスリートでは、競泳はアスリート喘息の有病率(約20%)が高いと報告されていて、塩素による気道上皮障害や長い持続的運動の関与が推測されます。

マスク;湿度と温度の保持および水分喪失の防止

運動中は鼻呼吸を行い、寒いときは室内で行います。

EIAが起こったとき

運動をやめ鼻で息を吸いと腹式呼吸をします、水があれば飲むと加湿効果に役立ちます。治療しなくても20~30分で改善するのが通常です。改善なければSABA:メプチン、サルタノールなどの吸入を行い医療機関へ

運動誘発喘息:腹式呼吸;環境再生保全機構サイト

などで普段から腹式呼吸を練習しましょう。

ピークフローモニタリングによる早期発見

喘息の患者さんが自宅で毎日測定することで自分の喘息の状態を客観的に把握することが出来ます。特にお子さんの場合は自分のことがうまく言えず無理をして体育の授業や課外運動活動に参加していることもあります。簡易型ピークフローメーターは安価(2000~4000円程度)で購入可能です。朝、夕2回測定して日誌に記録します。喘息の方は症状が良くなると、本来必要なのに、定期吸入薬は使わなくなることが多く、データが悪ければ早めにステロイドの吸入を再開または増量を行います。症状があれば短期作用吸入β2刺激薬(SABA)の屯用での吸入を行い、吸入前後で測定して改善悪ければ病院受診も考えます。

ピークフローモニタリングの使い方;環境再生保全機構サイト

ピークフローメーターの実際;ミニライト使用例youtube

鑑別すべき病気喘息の治療をしても改善しない時

運動誘発性過換気症候群

喘息の検査や喉頭ファイバーによるVCD(vocal cord dysfunction)などの検査では異常なく、ランニングなどの運動負荷を行い、呼吸苦・過換気・テタニー(手足のしびれ、筋肉けいれん)の症状が出現時に、聴診で喘鳴無く呼気二酸化炭素の低下、動脈血液ガス検査などで診断を行います。心理的ストレスが原因となることが多く、抗不安薬、病態説明、腹式呼吸、認知行動療法、リラクゼーションなど心身医学的治療を行います。ペーパーバッグ呼吸法は、現在は行いません。

運動誘発性喉頭閉塞症(EILO:exercise-induced laryngeal obstruction)

激しい運動で生じるVCD(声帯機能不全)、本来開大すべき吸気中に声帯が内転し呼吸困難を来し、運動が最も激しいときに発症して、運動終了後、次第に改善します。突然の呼吸困難と胸痛・咽頭痛からパニックや過換気を合併しやいと言われています。日本ではまだ認知度が低い疾患です。北欧の健康若者の有病率は5.7%~7.5%、アスリートでは35.2%といわれています。

診断:喘鳴は吸気時に頸部主体に認め運動終了後1~5分で改善。安静時の喉頭には異状は認めず、運動負荷中の持続的喉頭内視鏡検査にて声帯の観察を行い診断します。

治療リラックスした正しい呼吸法(腹式呼吸)の習得、エルゴメーターで運動負荷をかけて、持続的喉頭内視鏡を用いて運動負荷中の声帯を観察して、リアルタイムで視覚的フィードバックを行い呼吸法の修正を行います、現時点では、日本で視覚的フィードバックを行うところを探すのは難しいと思われます。

 

運動誘発鼻炎

運動誘発喘息の予防に、湿度と温度の保持および水分喪失の防止が重要で、鼻で息を吸うことは必須となります。水泳では、瞬時に息継ぎが求められ、口吸気鼻呼気で行います。アレルギー性鼻炎や喘息があっても、運動直後は鼻腔粘膜の収縮がおこり鼻閉は改善しますが、健常者と比較して10~20分後には逆に鼻粘膜が腫脹して鼻閉が悪化してきます。アレルギー性鼻炎や喘息の患者の20~40%程度に生じる報告があります。マラソン、サッカーなどの鼻呼吸や水泳の鼻呼気の障害となります。運動選手がブリーズライト(鼻翼拡張テープ)をつけている方がいます。鼻翼の構造的因子の改善には効果があると思われますが、鼻粘膜腫脹への効果は補助的役割しか及ぼさないでしょう。運動誘発性鼻炎と運動誘発性喘息との相関は確認されていないようです。

治療:抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド

 

アスリート喘息

アスリート喘息とはアスリートにみられる前述の運動誘発喘息で述べたEIAやEIBのことを言います。アスリートが運動によって喘息様状態になることアスリート喘息と考えて下さい。最近の日本オリンピック選手の有病率は約11%とかなり多く、訴えはゼーゼーではなく、運動中の咳が多く胸部圧迫感がみられます。運動の途中から急に動けなくなるという訴えも多いようです。

検査:スパイロメトリー、気道可逆性検査、気道過敏性試験など呼吸器専門的検査を行い、TUE申請では、呼吸器専門的検査が要求されています。

治療:通常の喘息治療の1~2段階上のステップから開始してステップダウンします。

競技者はアンチドーピングの知識を持つこと

国際大会や国内選考会に出場するトップアスリートだけでなく、日本のスポーツ文化を育成するためにも、ジュニア世代から理解する必要があり、一般のスポーツ愛好家も含めて認識することが重要となります。

ドーピングとはスポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為のことです。禁止薬物を意図的に使用することだけをドーピングと呼びがちですが、それだけではありません。意図的であるかどうかに関わらず、ルールに反する様々な競技能力を高める「方法」や、それらの行為を「隠すこと」も含めて、ドーピングと呼びます。ドーピングは、自分自身の努力や、チームメイトとの信頼、競い合う相手へのリスペクト、スポーツを応援する人々の期待などを裏切る、不誠実で利己的な行為であり、ドーピングがある限り、そもそもスポーツはスポーツとして成り立つことができません。詳細は、日本アンチドーピング機構のHPサイト)を参照して下さい。

アンチドーピングを考えた処方

自分のもらった薬に不安があれば次のサイトでドーピング薬に該当するのか確認できます。アンチドーピングについて詳しくない医師も多くいます。

自分の薬について確認する検索サイト:JADA

次はアンチドーピングの知識を持った薬剤師の紹介のサイトです。

スポーツファーマシスト検索サイト:JADA

世界アンチドーピング禁止表国際基準2019/1/1:JADA(サイト

禁止薬

ステロイド:経口、静注は禁止、セレスタミン(競技会時に禁止)点耳、点眼、点鼻、ステロイド喘息吸入は問題なし

エフェドリン含有薬:風邪薬、花粉症薬(ディレグラ)、漢方薬(競技会時に禁止)

血管収縮剤の点鼻は頻回使用で体内に吸収され問題となる場合があります。

高血圧やめまいでの利尿薬、β遮断薬:メニエール病のイソバイド、メニレットなど(常時禁止)

目薬:利尿薬、β遮断薬(常時禁止)

痛風薬:プロベネシド(常時禁止)

漢方:半夏、麻黄含有(競技会時の禁止)ホミカ

ヒゲナミン含有(非選択制β刺激薬)(常時禁止)南天、附子、細辛、呉茱萸、丁子など

トップアスリートには、漢方薬は出さない方が良い

喘息・咳止め:β2刺激薬(常時禁止)

例外ありサルブタモール:ベネトリン サルタノール、サルメテロール:アドエア、ホルモテロール:シムビコートは用量を守れば問題なしだが検査時に申告は必要。内服は禁止。メプチンエアー(プロカテロール)はTUE申請が必要になります。ホクナリン(ツロブテロール貼付剤は禁止薬です。テオフィリン、抗コリン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗アレルギー薬は問題ありません。

TUE申請

禁止薬物であってもTUE(治療使用特例)のこともあり確認・申請で対応できることがあります(書類提出に慣れた呼吸器専門医やスポーツドクターと相談が必要)。また禁止薬物国際基準は毎年変更があり必ず確認が必要です。

TUE(治療使用特例)情報サイト:JADA

参考資料:小児気管支喘息治療管理GL2017 アレルギー疾患のすべて;日本医師会 日本耳鼻咽喉科学会会報2019,4予稿集