自宅でできる耳鳴り対策
👉 持続的な耳鳴りがしたらどうしたらよいか
耳垢栓塞症 中耳炎 突発性難聴 メニエール病、耳管機能障害など治療可能な耳鳴りを確認するため耳鼻咽喉科を受診しましょう。
詳細は当院HP耳垢・耳鳴り・難聴・補聴器外来を参考にしてください。
顎関節症、肩こり、頚椎症、心因性などに関連する難聴を認めない耳鳴りも存在します。ほとんどの耳鳴りは難聴と関連して起きています。
一次的な耳鳴りは健常者でも起きますので、長期に持続する加齢変化による難聴や慢性感音性難聴による耳鳴りが治療対象となります。
軽度の難聴や高音域のみの難聴は専門の耳鼻咽喉科での聴力検査を行わないと本人の自覚だけや健診などの簡易聴力検査ではわからないことが殆どです。持続する左右差が大きい難聴を伴う耳鳴り、拍動性耳鳴り、神経症状を伴う耳鳴りは、動脈瘤、硬膜動静脈ろう、聴神経腫瘍、脳疾患の除外のため脳外科や神経内科受診を勧めることもあります。
👉 難治な耳鳴りとサプリなどの耳鳴り治療情報の氾濫
耳鳴りで医療機関受診しても
『年のせい』『一生つきあっていくしかない』など言われたり、精神薬や睡眠薬、ビタミン薬、血流改善薬など処方されて満足いく効果が期待できないことが多くありました。現代医学では、残念ながら耳鳴を消失させる薬はありません。しかし、難治な耳鳴りに対して、日常では、新聞・テレビ・ネットではサプリ(栄養補助食品)の効果を宣伝した情報が氾濫しています。個人の感想として、『これを服用したら耳鳴りが消失した』など紹介されています。具体的には、蜂の子、イチョウ葉、EPA/DHA、黒酢、ニンニク、ヒマワリの種、漢方では当帰芍薬散、六味丸、八味丸などよく目にします。
上記のサプリや漢方生薬(ハーブ)について、米国の権威ある米国耳鼻咽喉科学会の耳鳴りのガイドラインでは推奨されていません。
サプリ大国のアメリカの専門機関:
米国耳鼻咽喉科学会の耳鳴りガイドライン(2014)では、
推奨されないもの
◆色々なサプリ:
イチョウ葉、亜鉛、ビタミン、ニンニク、メラトニン、中国・韓国の生薬(日本の漢方に相当)など
◆鍼
◆薬物療法:
抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、
鼓室内薬物注入(ステロイド、リドカイン)
◆経頭蓋磁気刺激(脳卒中後遺症、うつ病などへ使用)
推奨されるもの
◆カウンセリング(患者教育)
◆補聴器
◆認知行動療法
(自分の行動や考え方の問題点を認識し改善していく心理行動療法)
*環境音(換気扇、扇風機など)、
*意識しない程度の音楽、ヒーリングサウンド
*補聴器から出る心地よい音を利用した治療
☞ TRT:耳鳴順応療法と呼ばれます
(ジャストレボフ博士提唱)
ガイドラインでは、薬物や何かを服用することが第一の治療にはなっていません。
最近は、カウンセリングと音響療法による耳鳴り治療が、主流になりつつあります。従来の薬物(西洋薬・漢方)療法を否定するわけではなく、一部の方には効果を認めますので薬物療法と併用して行うことが多くなっています。
耳鳴りのカウンセリングと音響療法は、耳鳴りを気にならなくする治療で、消失させる治療ではありません。
👉 自宅でできる耳鳴り対策で、まず行うことは
➡ 不快に感じる耳鳴りかの確認
静かなところでは、若い人や健常者も耳鳴りを感じます。
静寂は脳にストレスを与えることも分かっています。
耳鳴りは誰にでもあり、普通は意識下にあり気にならないだけです。
難聴やストレス、不安などがきっかけで耳鳴りが気になり生活に障害を与えるようになります。
まず、自分の耳鳴りで不快に感じるのかを考え、耳鳴りで何が困るのかを自問自答して下さい。
耳鳴りそのものでなく、耳鳴りに関連した問題点を挙げてみましょう。
病気への不安、抑うつ、耳鳴りで聞こえない、イライラする、眠れない、集中力低下など色々あると思います。
耳鳴りによる生活障害度が軽いか重いかで、治療の必要性が決まります。
耳鳴りはあるけれど、生活に困らなければそのまま様子を見ていただくことも多くあります。
◆治療対象は耳鳴りによる障害であり、
その障害を改善させると耳鳴りが意識下となり自然に気にならなくなることを理解してもらうことから始まります。
◆もしあなたが、ある薬を飲めば耳鳴りがすぐに消失する薬を求めて、多くのサプリ服用や民間療法、ドクターショッピングを繰り返しているのであれば、その考えを改めて下さい。
常に耳鳴りを意識の上で考えることになり、脳の過剰反応(耳鳴り)がおさまりません。
耳鳴りによる生活障害度が重い方は、耳鳴りとうつ病が共存している確率が高くなります。
●悲しみや気分の落ち込みがないか?
●今まで楽しめていた趣味や息抜きが今でも楽しめるか?
両方あれば、うつ病の可能性が高くなり、心療内科的アプローチが必要なこともあります。
*世界的に汎用される耳鳴障害度問診票(THI)で自分はどの位置にあるか確認してみてください。
THIスコア:
0~16正常 18~36軽症 38~56中等症 58~76重症 78~100 最重症
臨床で使用するときは
THIスコア:0~16 軽症 18~56 中等症 58~100 重症として簡便にして用います。
軽症から中等症にはうつ傾向はほとんどなく、重症の約半数にうつ傾向が認める報告があります。
➡ 相手(耳鳴り)を知ること
『耳鳴りのメカニズム』
音は脳で聞いていることを理解して下さい。
耳は脳に音を伝える役割を持っているだけです。
難聴による聴覚神経(多くは耳に奥の蝸牛)の障害があると、脳に音の電気信号が届きにくくなります。
音の電気信号の入力低下がおこると、聞きなれない音を脳は危険信号ととらえ、聴覚中枢の一部の活性が上昇して気づかない程度の耳鳴りが強くなり耳鳴りを自覚するようになります。
👉 耳鳴りの発生への治療と音響療法
◆難聴で不足している周波数の音を脳に届けることで、脳の聴覚中枢の興奮がおさまり、長期的には耳鳴りが改善する可能性が期待できます。難聴を自覚している方は、補聴器が最も適した道具であり治療法となります。カウンセリングと補聴器から出る心地よい音を利用した治療(TRT:耳鳴順応療法)を耳鼻咽喉科専門医・補聴器相談医では行います。
●高度難聴でノイズが聞き取れない方
●耳鳴りの消失を強く希望する方(TRTは耳なりを気にならなくする治療で、消失させる治療ではありません)
●うつなど精神疾患の要素が強い方(心身症としての治療を優先)
上記のような方にはTRTが施行困難な場合があります。
すぐに自宅でできる音響療法は、
意識しない程度の環境音(換気扇、扇風機など)や心地よい意識しない程度で耳鳴りの8割程度の音楽や小さな音量でラジオを聴くことで、補聴器と同様の効果が期待できます。若い方は、音量を低くしスマホの落ち着いた音楽を聴くことも方法です。日常生活の中では静寂にせず、特に静かになる就寝前にこのような音響療法を積極的に行うとよいでしょう。
普段から人と会話を楽しみ、静寂を作らないことが大事です。
静かな音を聞くことが重要で、大きな音や騒音を持続して聞くことはいけません。騒音性難聴や若い方はスマホ難聴となり、若者は将来の耳鳴り予備軍となります。
ガッテンNHK:耳鳴りから注意を外す!!サイト 2020年4月1日放送も参考にしてください。
環境自然音や滝の音、ラジオの音は少し遠くの足元で壁向きにするとよいようです。波の音のように大きさに変化がある音は好ましくないようです。
耳鳴りが発生しても意識下にあれば、耳鳴りによる生活の障害はほとんど感じません。ストレス・人間関係など精神的要素は、脳の中で、記憶・本能・情動を司る大脳辺縁系と関連して、不眠・緊張・動悸・冷や汗などの自律神経症状となって表れます。
耳鳴りの発生回路と大脳辺縁系の苦痛を感じる脳との回路がネットワークを生じると耳鳴りが悪化して、耳鳴りが意識され、耳鳴りによる生活障害の悪化を招きます。
この苦痛ネットワークへの治療が、もう一つの耳鳴りの治療となります。
*カウンセリング
*認知行動療法(心理療法)
*薬物療法
を行います。
心理・生活障害が重度であれば、心療内科受診も考えます。
自宅でできることは、
ストレスをためない、良質な睡眠をとる、趣味をもち、いつも笑いがある生活を送ることです。
◆不快に感じる耳鳴りか自分で考え、耳鳴りによる生活の障害を知り、まずは生活の障害の改善を始め、生活障害が軽ければ様子を見る
◆耳鳴りを正しく知ること
◆ストレスをためない
◆静寂を作らない
◆騒音下の環境を作らない
◆趣味・社会活動など集中できるものを持ち、耳鳴りを意識しない時間を多く持つこと
◆耳鳴りを治療しようと意識せず、焦らず時間はかかっても、気づけば耳鳴りが気にならなくなるのを待つ
関連HP:認知症と耳鼻咽喉科&補聴器
参考図書:慶応大学耳鼻咽喉科関連図書(新田、小川)