自宅でできる窒息対策:交通事故より多い窒息死
『窒息死の増加』
ここ数年の死亡原因の推移(厚労省人口動態統計)を見ると、エアバックによる普及などで交通事故による死亡者数が年々減少し、高齢化にともない、2006年には交通事故死より窒息死がおおくなり、最近では、窒息で亡くなる人は年間約1万人近くになり、交通事故による死者の2倍近くになります。その窒息死のほとんどは、高齢者です。
加齢とともに、物を飲み込む力が弱くなり、誰でも窒息の危険性が高まります。
特に、脳卒中、パーキンソンなどの神経疾患、うつや精神疾患、歯を失い口腔内トラブルは窒息を起こしやすくします。
餅、こんにゃくだけでなく、ご飯、パン、肉、芋、果物などどんな食品でも窒息の原因になりうると考えておくことが大切です。
飲み込む力が弱くなると、高齢者では、誤飲性肺炎も起こしやすくなりますので、
当院ホームページ自宅でできる誤飲性肺炎予防も参照して下さい。
『救命のカギ:現場での速やかな異物除去』
高齢者の窒息の多くは、食事中自宅で起こります。
➡窒息で救急搬送された患者さん155人の調査:
Igarashi Y.et al. Am J Emerg Med 2017
【回復率】窒息前の健康状態に戻る率
◆現場に居合わせた人の異物処置 73.7%
◆現場で救急隊員の異物処置 31.8%
◆医療機関到着後の異物処置 9.6%
窒息発生後、いかに早く異物を除去できるかが、その後の回復に大きく影響します。
異物除去できず、救命できても重い後遺症が残ることが多くあります。
その場で対応しないと、回復はほとんど望めないことになります。
👉 自宅でできる異物除去法
周囲の協力要請と119番通報
➡ 意識がある場合(すぐに異物除去)
咳ができる場合、
鼻から息を吸い、強い咳を促します。
背中を軽くたたき前屈みで行うとうまくいくこともあります。
IMG吸引ノズル(イマムラ):2000円台で市販されています。電気掃除機に装着して使用します。
この電気掃除機を使って吸い取る方法を開発した相生消防本部と兵 庫県立姫路循環器病センターは
「老人ホームや病院、老人、子供のい る家庭などで常備薬と同じように備えてもらえれば、万一の時の救命に なる」と説明
咳が出来ないとき
以下のことをすぐに行います。動画で確認して下さい。
*親指と人差し指で喉をつかむしぐさ(チョークサイン)
*窒息の有無を尋ねうなずき、話が出来ない
〇高齢者 小児
腹部突き上げ法(youtube)(妊婦・乳児にはしません)
要領:
傷病者の背後に回り、小児にはひざまずき、傷病者の胴に両腕を回します。
片方の手で拳を作り、臍のやや上に押しあてもう一方の手で握ります。
背部殴打法(腹部突き上げ、背部殴打、胸骨圧迫の一連)youtube
背部殴打法は側臥位(横向きで横たわり)でも行います。
小児背部殴打・腹部突き上げ法(youtube)
〇妊婦さん
胸部突き上げ法(you tube English)肥満者にも適応あり
カナダ赤十字の動画で、1:25あたりから説明されます。
臍の上ではなく、胸骨の中央に拳を置きます。
〇乳児
乳児背部殴打・胸部突き上げ法 (youtube)
➡ 意識が無い場合
すぐに心肺蘇生、胸骨圧迫法を行います。
人工呼吸の前に、口の中を確認して除去を試みます。
当院ホームページ
自宅でできる心肺蘇生を見てください。
👉 高齢者の窒息を予防するポイント
嚥下障害の可能性がある高齢者と食事をするとき
●必ず誰かが見守る
●食べ物は細かく刻む(適度に水分を含む食品が食べやすい)
●少量ずつ口に入れる
●ゆっくり食べる
●話をしながら、TVをみながら食べない、食事に集中
参考図書
今日の健康2018年9月 一次救命処置AHAガイドライン2015準拠;シナジー