睡眠時無呼吸症のマスク(CPAP)
世界中が新型コロナに振り回されている中、欧米でもマスクの有効性が見直され世界中でマスクの争奪戦が行われています。今回は感染対策としてのマスクの話ではなく、睡眠時無呼吸症(OSAS)の治療で行うCPAP療法のマスクについての解説です。CPAP: continuous positive airway pressure
CPAPマスク治療の進歩
1970年代は、OSASの治療として気管に穴を開ける気管切開が行われていました。その後1980年代に外科的治療はせず、鼻から空気を入れのどを広げる掃除機を改良した機械のCPAP鼻マスク治療がオーストラリアで行われ気管切開と同等の効果が得られることがわかりました。その後マスク・機械・AIの進歩に伴い機械の小型化が進みAIで自己判断するオートCPAPが現在では主流になっています。同時にマスクの改良や種類が増え、より快適な睡眠のもとにCPAP治療が進化しています。以前は使用状況のデータをSDカードに入れて通院時に患者さんに持参してもらっていましたが、ここ1~2年で、オンラインで使用状況をクリニックから確認できるようになりました。
👉 機械を横に置きマスクを着け毎晩寝るため慣れずに継続できずに途中で中断する方もいます。以前うまくできず中断した方も、今の進歩したCPAP治療ではうまくいく可能性もありますので、再度検討してみてください。
肥満者だけが起こすわけでなく、肥満なしでも、小顔、顎が小さい、二重顎の方は起こす確率が上がります。小顔指向の若者や性ホルモンが減少する更年期以降の女性も注意しましょう。
OSASに最も効果が期待できるCPAPマスク治療
●症状の改善(昼間の傾眠、夜間頻尿、朝の頭痛)
●命を守る(脳梗塞、心房細動、心筋梗塞、高血圧などの予防)
の効果が期待できます。
一日4時間以上装用できることで、心疾患への効果が期待できます。
現在のOSASの治療
現在のOSASの治療で、第一は肥満の方は減量、CPAPマスク療法は効果が最も期待できる保存的対症療法です。ほかに顎を前に出すマウスピース治療(歯科的治療)が補助的治療と考えられています。大人の咽頭・扁桃の手術治療は再発が高く、扁桃肥大が顕著でなければ、現在推奨されなくなっています。大人の鼻の手術はCPAPの導入をしやすくするために行われることがあります。小児のOSASでは手術が第一の治療です。
詳しくは当院HP睡眠時無呼吸症を参照して下さい。
👉 様々なマスクの種類:ネーザル、ピロー、フルフェイス
◆鼻マスクタイプ(ネーザル)鼻を覆うマスク
最もよく使用されているマスクのタイプで、安定感あり。頭部のヘッドギアを強く締めすぎるとマスクと鼻根部に跡が残ることがあります。
*AirFit N20(レスメド)
視界の制限をなくした小型ネーザルマスク(メガネ使用可能)です。最近、ネーザルマスクの中でも当院で最も使用されているタイプです。
AirFit N20 マスク(説明サイト Pmda)
*F&PネーザルマスクEson 2(Fisher&Paykel Healthcare)
確かな装着感とほどよい密着性を実現したマスク。
F&PネーザルマスクEson2(詳細 Fisher&Paykel Healthcare HP)
*ウイスプネーザルマスク(フィリップス):
ネーザルマスクとピローマスクのメリットを融合した新しいマスクで、前述の小型ネーザルマスクのレスメドAirFit N20と同じようなコンセプトです。
ウイスプネーザルマスク(フィリップス HP)
➡従来のネーザルマスク利点:フィット感、快適性
不利な点:接触面が大きく皮膚への刺激の可能性あり,視界を制限することがあります。
➡従来のピローマスクの利点:軽量、視界が広く接触面が小さい。
不利な点:空気の圧力に制限、鼻の入り口への直接的な不快感あり。
◆鼻内マスク(ピロー)
鼻の入り口に少しだけ差し込んで使用するマスクです。圧迫感が最もないタイプのマスクなので、マスクの締め付け感が辛い方にはおススメで、解放感がありますが、寝返りで外れやすいことがあります。使用感は慣れが必要です。鼻腔入り口の粘膜に少しあたりますので鼻前庭の炎症に注意が必要です。このタイプの選択は慎重に行います。
*P10 AirFitマスク(レスメド)
46gの軽量、高い静音性。
ピローサイズ:XS S M L
AirFit P10マスク(解説サイト Pmda)
*ミラージュスイフトFXマスク:女性向け(レスメドHP)
ヘッドギアに軟らかいシリコン素材使用して締め付けなくても顔のラインにフィットします。ヘアスタイルもくずれにくい軟らかさです。
ピローサイズ:XS S M
*ドリームWear(フィリップス):新しいデザインのピロータイプのネーザルマスク
ドリームウエアネーザルマスク(フィリップスHP)
鼻の入り口に横長の空気を通すフレームマスクを当てるタイプです。CPAPへの呼吸回路の接続ホース部が、前述の2タイプと違いマスクに接続せず、頭頂部になるため寝返りが打ちやすく、頭頂部からフレーム内に空気を通すことで、寝返りの際も呼吸回路と接続部が邪魔になりません。何もつけていないような解放感が得られメガネの装着や寝る前の読書も可能です。少しマスクがずれやすくリーク(漏れ)が多くなりがちなのが欠点です。
◆鼻口マスク(フルフェイス)
鼻と口覆うタイプのマスク、最初からこれを選択する人はいませんが、中にはフルフェイスがすごく良いという方もいますのでうまくいかない方は試す価値はあります。鼻閉などで口を開いてしまう方が使うことが多くなります。乾燥感・圧上昇・空気漏れ・睡眠中の舌を押し込んで無呼吸を引き起こしてしまう等にディメリットがあります。これを選択する前に口を閉じる習慣を身に着けることが優先されます。また鼻が悪ければ耳鼻咽喉科受診をしましょう。
*F20 AirFitマスク(レスメド)
メガネ装着可能、より多くの人にフィットすることを目指したフルフェイスマスク。
Pmda: Air Fit F20 マスク(説明サイト)
*F30 AirFit マスク 最小接触面フルフェイスマスク(レスメド)
メガネ装着可能、マスク上方を短くし、鼻の背部への接触を軽減して快適性を向上させたもの。
ニュース:Air Fit F30マスク(説明サイト)
マスク協力CPAPメーカー
TEIJIN