吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

抗原定性検査の利用拡大:コロナ診療の現場から

2022-08-21

オミクロンBA5の感染拡大がお盆明けで進行しています。

信頼性と感度が高いリアルタイムPCRを検査機関に依頼すると、以前は半日以内に結果が出ていたのが、BA5が流行してきた7月中旬以降は報告をもらうのに1日以上かかることも稀ではありません。医療機関への負担軽減目的で、研究用ではない医療用抗原定性検査での新型コロナの自己診断、陽性者登録が各自治体ではじまりました。医療用抗原定性検査も同時にネット販売解禁が2022年8月17日に厚労省で了承されました。

 

👉 迅速抗原定性検査の有効性や使用する上での注意点、検査の限界、利用法など医療現場の立場から説明したいと思います。

 

迅速抗原定性検査の注意点

最近の医療用抗原定性検査は優秀でコストも安く、多くの患者さんで、数分で新型コロナを判断できます。薬局でも、医療用のキットが販売され、最近はネット販売も解禁されました。

皆さんには朗報ですが、医療現場では医療用検査キットが入らなくなり困っています。

しかし、検体が不十分では、検査結果は信頼できません。自分で検体採取が、きちっとできていることが重要です。

➡ 検体採取について

医療機関で行うように鼻の奥からしっとりした検体を採取することが理想です。

当院は耳鼻咽喉科なので、鼻腔内を確認して、鼻の状態を確認して、鼻汁や鼻の彎曲をチェックして、適切な検体を、できるだけ痛くないように摂取する配慮をしています。盲目的にただ綿棒を挿入するわけではありません。

➡ 自分で行う鼻前方からの採取の場合

鼻前方は乾燥していることも多く検体が不十分のことがあります。この場合、マニュアルより鼻腔内挿入時間を少し長くして下さい。鼻汁症状があれば鼻前方からでも容易に採取可能と思われます。私自身も自己採取のマニュアル通りに綿棒を使って行ってみましたが、鼻炎症状がないときは、しっとりとした検体は取れませんでした。

両鼻腔から同様の操作を行い採取する方法もありますが、不快感や鼻出血のリスクは高くなります。しっとりした検体であれば片方だけで問題ありません。医療機関では、鼻の奥から採取しますので両側を行うことはほとんどありません。

最近、医療用の唾液の抗原定性検査が今年の4月に承認されましたので、唾液の方が安定した検体が確保できると思われます。2022年8月21日現在、売り切れ状態のようです。

但し唾液の場合、幼稚園以下のお子さんは唾液採取が難しくなります。。お子さんの場合、鼻からの採取のほうがとりやすいかもしれません。日頃から鼻水を頻回に認め、泣けば鼻水も増えますので容易にとれると思いますが、固定をしっかり行わないと、鼻出血の恐れがあります。

高齢者や病気や薬の影響で唾液が出にくい方も唾液からの採取は難しくなります。

➡ 研究用抗原定性検査キットについて

ここで、注意することは、以前から出回っている評価不十分な唾液・鼻腔の研究用の検査キットが、ネットや薬局、ストアーで出回っていますので、医療用か研究用か、十分判断して購入しましょう。

コロナ患者の自己診察、陽性登録が各自治体で始まってきました。使用できるのは、研究用ではなく医療用の抗原定性検査のみです。研究用は、医療用より少し安く購入でき、医療用とわからないような説明がされていますので、よく説明書を読んで購入して下さい。

研究用の抗原定性検査でも、陽性がでて受診される方もあります。研究用は評価が不十分であることが問題です。

コロナ検査を行う郊外の一般クリニックの現場(当院)から

診療では、患者の症状、背景、咽頭などの所見を確認し、総合的にコロナの臨床診断を行います。コロナ以外の病気も想定した診断を行い対症療法などの処方も同時に行います。

当院は通常のクリニックですが、発熱外来を、入り口を別にして、別の診察室を設けて車から直接来院できるような体制で行っています。一般の患者さんと、接触することはありません。当院は、コロナ患者さんへの点滴加療は行っていません。往診も行っていません。

病状や家族背景から自宅療養が難しい方は、HERsys 登録後、保健所に連絡の上の対応となります。基礎疾患をお持ちの方は、かかりつけの担当医に相談の上対応を検討してしてもらいます。

➡ 症状がある方は、

迅速抗原定性検査を使用して、鼻の奥から綿棒で採取を行います。しっとりした綿棒の検体をもとにした抗原定性検査結果を参考に、発病初日から、臨床および身体所見も参考に、その場で新型コロナの迅速臨床診断を行います。

➡ 症状がない方は、

症状ない方への診断目的の抗原定性検査の適応はありません。

濃厚接触の方であればPCRなどの精密検査での対応が必要になりますが、症状が出現してからの受診をお願いしています。感染していれば、多くは接触後1~3日以内に症状が出現してきます。濃厚接触解除目的の検査や隔離解除時の検査は、当院ではおこなっていません。

➡ 隔離解除について

陽性者の隔離解除の原則は、解熱剤使用せず解熱して呼吸器症状が改善傾向であれば、発症翌日からの10日まで隔離、その後解除、無症状の検査陽性者は検査日翌日から7日まで隔離、その後解除となります(2022年8月21日)。

抗原定性検査は、濃厚接触者の早期解除のため2日、3日目(5日→3日までに変更可能)やエッセシャルワーカー継続従事の目的のため使用されます。

解除時、解熱すれば症状があっても検査の必要性はありません。会社や学校、幼稚園、保育園希望のコロナの検査は、当院では行っていません。

 

迅速抗原定性検査が陰性の時

典型的な症状の発症でも初日は、抗原定性検査陰性になることもあります。この場合は、抗原定量検査やPCRなどの核酸増幅法の追加検査を行いますが、PCR、抗原定量検査でも陰性のことも頻回にあります。

前日陰性でも翌日抗原定性検査を再検すれば、典型的な症状のコロナの方であれば、多くの場合陽性になります。

但し、抗原定性検査のラインの発色が薄い場合は、慎重な判断が求められます。陰性の時は、他の病気(インフル、RSV、溶連菌、アデノなど)も想定して検査、採血などを進めることもあります

精密検査の抗原定量検査やPCRなどの核酸増幅法が必要な場合は

無症状や症状が軽い方は、抗原定性検査では、診断が難しいことを経験しますので、この場合は精密検査の抗原定量検査、PCRなどの核酸増幅法が必要になります。

抗原定性検査のラインの発色が薄く判断を迷うときは、精密検査を追加します。

稀な抗原定性検査の偽陽性を疑う時も精密検査の適応になります。

発病初日は、抗原定性検査陰性になることもあり、この場合は精密検査を追加検査する必要性が出てきます。

👉 最後に、隔離解除後の症状持続について

新型コロナ隔離解除後、問題ない方も多いのですが、咳、痰が絡む感じやのどの違和感が持続する方は多く認めます。喘息やアレルギー体質をお持ちの方は、鼻炎、咳や喘鳴が持続しています。ブレインフォグの症状は無くても、倦怠感や息切れ感が持続する方もみられます。オミクロン以前の株のように多くはありませんが嗅覚・味覚異常の訴えの方もあります。

後遺症の判断は、2か月以降となりますので、通常の風邪をこじらせると、コロナ後と同様の症状が1~2か月持続することは、今までの疾患でも経験してきたことです。3週間以上続く咳・痰を感染後咳嗽と呼んでいます。このような症状は1~2か月の間に自然軽快していきます。少しずつ改善することが、ほとんどですので、睡眠をよくとり、3食バランスを考えて食べ、無理をせず気長に改善する過程を待ちましょう。ネット情報ばかり見ていると不安なことの方が脳にインプットされ、回復にマイナスに作用しますので、公園の散歩や、無理しない程度で有酸素運動を行い気持ちのリフレッシュも考えましょう