プールに入ってよいですか?耳・鼻の病気
習い事ランキングの一番は、スイミングのようです。
今年は、涼しい梅雨と梅雨明けが遅れる中、学校のプール授業が行われました。
鹿児島では、大雨警報のため行事の中止や学校の休校もあり、
本格的な夏のプールや海水浴は夏休みに入ってからになりそうです。
風邪をひきやすく、耳・鼻の問題が多いお子さんがいるご家庭では、プールや水遊びを行ってよいのか心配になります。
耳・鼻の病気で通院中のお子さんの場合、
担当医師によって、プールの可否に対して対応が違うこともあります。
岐阜県医師会:プール水泳許可基準が
目安になりますので参考にしてください。
耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、心電図異常について記載されています。
『耳鼻咽喉科医は一律に事務的に水泳を禁止するのでなく、その時点での生徒や児童の症状を把握し、
教育的観点からできるだけ許可するように指導することが適切である』
とコメントされています。
岐阜県医師会の指針、他の耳鼻咽喉科医などHP、一般医療情報などからまとめると
以下のようになると思います。
耳鼻咽喉科領域では
◆急性の発熱、疼痛時などの急性炎症の時は禁止。
◆外耳炎:
急性期(耳漏、耳痛、強い搔痒感)は禁止、
耳の中を触らない事。
普段からの耳いじりのし過ぎが原因となります。
◆中耳炎:
急性期と耳漏が多量の場合は禁止
穿孔や鼓膜チューブ挿入の場合は
耳栓・水泳帽を使用し、潜水や飛び込みは控える。
急性中耳炎(耳痛と発熱などあり)では
最低1~2週間禁止。
膿性鼻漏を認めるときは再発のリスクが高いと認識することです。
滲出性中耳炎は、プールは可能。
滲出性中耳炎の鼓膜チューブ挿入の場合の別の考え
2015年滲出性中耳炎ガイドラインでは、
付記として湖・海での水泳や潜水をしなければ耳栓なしでプール可能、耳漏・耳痛反復すれば耳栓使用となっています。鼓膜チューブの内径は小さく耳栓なしでも表面張力で中耳まで水が入り難いと考えられています。これは、岐阜県医師会の指針と異なっています。
滲出性中耳炎鼓膜チューブ留置中の場合、上記二つの意見があり担当医と相談しましょう。
◆鼻・副鼻腔炎
急性副鼻腔炎:疼痛や発熱時は禁止
多量な鼻汁や鼻出血が頻回な時も禁止
多量な鼻汁はプールの水の汚染になります。
鼻汁が減少し、水泳の前に鼻をかみプール可能。
◆アレルギー性鼻炎:
プールの消毒用塩素や浸透圧の影響で悪化の場合がありますが禁止ではありません。
症状に応じて、
鼻かみや必要な方は薬の服用・点鼻でコントロールしてプール可能。
◆実際の現場では、
*鼓膜切開や鼓膜チューブ留置直後の対応。
*鼻が悪いお子さん(鼻炎や鼻・副鼻腔炎)が、
反復する急性中耳炎や滲出性中耳炎を起こしやすくなる事実。
*限られた期間で行う学校プールの可否の判断を迷う時は、
お子さんのプールへの意欲や、ご両親の考え方。
などを考慮する必要性があります。
プールの判断は単純ではなく、担当医と相談して決めることになります。
👉 以下のことを理解してもらえば
プールや水遊びの判断がしやすくなります。
➊ 外耳炎と中耳炎は原因が異なります。
外耳炎は、普段からの耳掃除や耳いじりのし過ぎで、外耳道の防御機能が低下しているところに、高温多湿やプールなどの水が外耳内に入ることがきっかけで起こしてきます。耳いじりをし過ぎなければ、予防可能となります。
次の当院院長コラムを参考にしてください。
☞ 耳掃除は必要か?外耳炎・カビ・事故(当院コラム)
❷
中耳炎は鼻炎や鼻・副鼻腔炎の炎症や菌・ウイルスが耳管を介して中耳内へ波及したり耳管機能不全で中耳内の浸出液の排出が悪くなることで生じます。
鼻の奥にある中耳とつながった、耳抜きを行う耳管機能の役割が重要です。
乳幼児までは、この耳管構造の未熟性のため中耳炎を起こしやすくなります。
また風邪を予防する免疫グロブリン(IgG)は2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人同様になるため、2~3歳ごろまでは頻回にかぜをひき急性中耳炎を反復します。おむつが取れる3歳ごろまでは、中耳炎の発症の点ではプールは望ましくありません。
最近は、プール用おむつをして、親子のスキンシップを目的としたベビースイミングもあるようですので、上記のことを参考に担当医と相談しましょう。
中耳炎の予防は風邪をひかない、鼻炎を悪くしない事です。
☞ 鼻と子供の中耳炎(当院コラム)も参考にしてください。
❸ プールや川・海の水質の問題
最近は、自宅で鼻洗を行う方も増えています。
この鼻洗水が望ましい水と考えて下さい。
望ましい鼻洗水は、
*人肌に温めたもの
*生体の浸透圧に調節したもの
を使用します。
塩分能度は、海水:約3% 身体:0.9% 淡水:0%
となり海水と川やプールでは浸透圧による影響がでてきます。
鼻の粘膜の防御機能である粘液繊毛機能は、体温に近い温度で活発となり低いと機能が低下します。
川の水は冷たく、海水も冷たいことがあります。
学校の屋外プールでも23℃以上ですので、水温による影響が出ます。
プールの水は、細菌やウイルスの消毒目的に
淡水に消毒用塩素が水道水より多く使用され、pHが調節されています。
消毒用塩素の濃度が濃くなると鼻への影響が出てきます。
海水・川・プールの水は、水温と浸透圧の点で
理想の鼻洗水とはかけ離れたものになっていますので、
鼻や外耳に影響を与えます。
海水や川では、汚染の問題や雑菌が多数入っています。
参考図書
JOHNS 2010 Sep. Vol.26 No9 お母さんへの回答マニュアル