コロナワクチン関連の心筋炎:運動していいの?
9月に入り、若年者の新型コロナワクチン接種が増えてきました。若年者の接種後の副反応や接種時の血管迷走神経反射の注意が必要となります。
若年者の接種増加に伴い、稀ですが接種後から1週間程度の心筋炎(胸痛、息苦しさ、動悸など)が注目され、運動と関連するのか、特に若い方の関心が高くなっています。
中高生は体育系クラブ活動や学校での体育授業など常に運動習慣があり、接種後心筋炎の予防について、現時点で、どのように指導していくか確立された指針があるわけではありません。
👉 現時点でわかっていることとして
◆ 接種後、胸痛・息苦しさ・動悸・むくみなどがあれば、循環器専門医に相談
若い男性に多く、接種一回目より二回目に多く、接種後から数日程度でおこる、1週間程度は気を付けること。
具体的数値として
*厚労省2021年8月25日報告 ワクチン接種副反応(ファイザー)
日本:心筋炎関連症例として1.2人/100万人の発症
米国:4.1人/100万人
非常な稀な発症です。
*最近のAug 4 2021 JAMAの論文では、ワクチン接種後
心筋炎は10人/100万人 若い男性に多く2回目に多い 発症平均3.5日程度
心膜炎は18人/100万人 中高年に多く 1回、2回関係なく発症 心筋炎より遅く3週間程度で発症 両疾患ともに死亡者はいません。
接種後心筋炎の頻度が、今までの報告より実際は多いことがわかってきました。
*但し、新型コロナ発症後の心筋炎関連疾患は
男性 1048人/100万人
女性 607人/100万人
ですので、新型コロナワクチンを接種した方がはるかに心筋炎の発症を抑えることが出来ます。接種後心筋炎の大半は軽症ですんでいます。
新型コロナワクチンを受けるメリットがはるかに大きいと考えられます。
日本循環器学会の声明(2021年7月21日)
◆ 接種後運動をしていいのか?
接種当日は 激しい運動と過度の飲酒は控える。接種当日と翌日は無理をしないですむように予定をたてる(厚労省 Q&A)となっています。
厚労省では、翌日以降の運動に関する指針はありません。
2021年8月11日 日本小児循環器学会の声明で、『接種後1週間激しい運動を控えるように指導している国もあります』の記載があるのみです。
2021年7月21日の日本循環器学会の声明には、運動制限の記載はありません。
シンガポールの保健省の指針は、2021年7月に方針変更しています。
以前は運動控えるのは接種後12~24時間としていたのが、青少年と30歳以下の男性は、接種後1週間は、激しい運動を控えるとしています。運動の具体例として、ランニング、ウエイトリフティング、競技スポーツ、ボールゲームなどとなっています。シンガポールのニュースではほかに サイクリング、水泳も禁止、散歩やストレッチはOKとなっているようです。
2021年6月下旬に16歳の男子生徒が、ファイザーのワクチンを接種して6日後トレーニング中に心不全を起こして倒れたのがきっかけで指針が変更になっています。因果関係は不明です。
*シンガポール以外の諸外国では、接種翌日以降の運動制限の方針をまだ確認できません。運動制限をすれば心筋炎が防ぐことが出来る根拠はありません。稀な接種後心筋炎は運動をしてもしなくてもおこることがあります。
👉 日本での事例として
中日ドラゴンズの選手が、2021年6月28日にモデルナのワクチンを接種して7月6日に練習中に息苦しさが出現して、8月3日に死亡したことが一斉に各メディアから報じられ、若い方の接種への不安が強くなっています。この事例は接種と死亡の因果関係は不明です。
⇒2021年8月1日に心筋炎についてワクチンに添付文書に以下のことが追記されました。
『本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、 動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察 を受けるよう事前に知らせること』
⇒2021年8月11日 日本小児循環器学会の声明では
『新型コロナウイルスワクチン接種後心筋炎の特徴は、これまでの海外のおもな報告をまとめると下記のとおりです。ただし、世界的に小児のワクチン接種の数が成人と比較して少ないため、今後、新たな情報が出る可能性があります』
- ワクチン接種1回目よりも2回目に起こりやすい
- mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン接種後に多い
- 高齢者よりも思春期や若年成人に、女性よりも男性に多い
- ワクチン接種後に発症する急性心筋炎の大半は軽症
- おもな症状は、ワクチン接種後数日後におこる動悸・息切れ・胸痛など
- 心疾患のある人にワクチン接種後の心筋炎が多いというデータはない
- 心疾患のある人はワクチン接種後の心筋炎が重症化しやすいというデータはない
『現時点での当学会の基本的な考え方は、新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎は、新型コロナウイルス感染後の急性心筋炎よりも発症率が極めて低く、新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎は大半が軽症であることから、心疾患を基礎疾患にもつ患者さんにおいても新型コロナウイルスワクチン接種を基本的に推奨します。ただし、小児循環器疾患は個別性が高いため、不安があれば必ず主治医に相談してください。そして、新型コロナウイルスワクチン接種後に、動悸・息切れ・胸痛等の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。なお、接種後1週間激しい運動を控えるように指導している国もあります。学会としては、今後も情報収集に努め、最新情報は随時HPで迅速に情報提供を行なっていく予定です』
コメント(現時点での接種後の運動やトレーニングについて:私見)
*接種後当日は、激しい運動を控えること
*接種翌日と翌々日までは、若年者は中高年より副反応(発熱・痛み・倦怠感など)が強くでる可能性があり、運動・体育は控えることになると思います。
*接種後3~7日程度はいきなり激しい運動を行わず様子を見ながら少しずつ始めることが望ましいでしょう。
*運動の有無にかかわらず、胸痛・息苦しさ・動悸・むくみなど異変を感じればすぐに循環器専門医受診を勧めます。
*運動の程度・種類は、各自で判断することになります。
*運動についてのシンガポール保健省の指針は参考とします。シンガポールのニュース(2021年7月6日)
*今後、情報が蓄積されれば、学会や厚労省による指針が変わっていくと思われます。