吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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よくわかる子供の漢方:感覚過敏/夜泣き/夜驚症

2018-05-05

               福岡県糸島芥屋の海岸  2018年5月    クリックで写真が拡大

発達障害では感覚過敏を伴うことが多く、西洋医学では、カウンセリング、環境調整、薬物療法として中枢の脳に作用する薬を使います。
易刺激性・情緒不安に対して、長期に中枢神経作用薬を使用することは、親御さんにとっては抵抗があり、生活環境指導と漢方薬で少しでも改善できれば、望ましいところです。
東洋医学では、感覚過敏や乳幼児の夜泣き、学童前から多くなる夜驚症(やきょうしょう)は疳が強いお子さんと考え、中医学の五臓弁証では、肝気と心気が亢進しているととらえます
現代風に言えば、肝心が亢進すると落ち着きがなく、イライラしていて、情緒不安、睡眠障害を認めるようになります。

母子関係の重要性
母子関係は重要で、両親の子供さんへの影響は大きく、500年前の古典で明代の小児医学書(保えい撮要)では、母子同服として母もお子さんと同じような薬(抑肝散)を内服しています。昔から、母も同時に治療することがお子さんの治療で重要な意味をもっています。
お子さんと一緒に内服することで、最近イライラすることが多くないか、お母さんの普段の言動を少し考える機会にしてみてはどうでしょうか

 

 

漢方治療の考え方肝気・心気の亢進、脾気虚、体質改善
一般的には、子供は前述の肝と心の亢進認め虚弱なところは脾と呼吸器になります。
脾虚とは、腹痛、嘔吐、下痢などを反復し、食が細い、痩せているなどの所見から判断します。肝と心の亢進は、脾虚が基礎にありますので、脾気虚の治療も同時に行います。

感覚過敏やそれに伴う症状だけに目を向けず、お子さんの体質改善としてのバランスの崩れを是正するため、消化機能を高める治療も同時に行うことも必要なことがあります。
これは漢方の体質改善を意味して本治といいます。
女性は思春期が近くなると、生理と関係する症状が多くなります。
漢方では、お血・血虚ととらえ血に関する治療も追加していきます。

分析的な西洋医学だけで治療を行うと、子供の成長という全体を見る考えが欠落することがありますので、よく食べる、穏やかによく寝る、便や尿が良好か、いつもニコニコしているかなど気をつけてみていきましょう。

漢方処方薬

肝と心に対して
抑肝散 抑肝散陳皮半夏 甘麦大棗湯 帰脾湯 加味帰脾湯 桂枝加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯 四物湯
これらの処方は、四物湯以外は補脾薬や胃腸薬が加味されています。
抑肝散 抑肝散陳皮半夏は認知症の周辺症状(家族や介護者からは問題行動)に効果を認め西洋薬と同等に使われています。

脾虚に対して
小建中湯 黄耆建中湯 桂枝加芍薬湯 補中益気湯 柴胡桂枝湯

生理が関連すれば、
当帰芍薬散、当帰建中湯など

甘麦大棗湯 小建中湯 黄耆建中湯は膠飴が含有され飲みやすく甘い薬です。

各疾患について
夜泣き
新生児期から2歳ごろまで認め、睡眠中の定期的な啼泣です。浅い睡眠のレム睡眠の時に起こります。
原因は複数あり特定することは難しいのですが、睡眠サイクルの未熟さなど考えられています。両親の生活リズムの乱れも関係しますので、改善すべき点を考えてみてください。
中には鼻閉と中耳炎などの耳鼻咽喉科の疾患が隠れています
鼻閉で母乳やミルクを飲むのが苦しい、耳に手が頻回にいくなどあれば担当医と相談して下さい。
漢方の一般的な使用法では、突発的で激しいときは、甘麦大棗湯を臨時で服用します。
常用薬として抑肝散 抑肝散陳皮半夏を使用します。下痢・軟便や便秘を反復すれば建中湯類を追加します。個人の証によって処方はかわります。

夜驚症
小児の数%にみられ、夢遊病との関連があり遺伝的背景が指摘されています。
3~6歳で発症し学童期後半が最好発期で12歳までには改善し、症状そのものは半年から1年で自然に消失する傾向になります。脳機能(特に前頭葉)が発達途中であることが関係していると考えられています。
雷など過去の怖い記憶が原因になる場合は、雷は怖い物ではないと分からせることが治療につながります。
入眠3時間ごろまでに突然大声で叫びあばれ10分程度で終息して再び寝入ります。
覚醒させることは困難で症状を覚えていません。
夜泣きと違い、深い睡眠のノンレム期の異常のためです。
てんかんとの鑑別が必要になることがあります。
似たような症状で、レム睡眠行動障害がありますが、成人以降の病気です。
前述の漢方治療の考え方に基づき、個人の証にあわせて漢方を処方していきます。

発達障害
発達障害は生まれつきの脳の機能の問題で下記が主な病態となります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)
限局性学習障害(LD)
が主な病態で、療育と環境調整が治療の主体です。
心身の状況により薬物療法となります。
ここで副作用が少ない漢方薬が考慮されます。

本人はコミュニケーションをとること自体が難しく、周囲が気になる症状を察知して
漢方薬でその症状を少しでも緩和させることが、周囲の人も含めて少しでもよい家庭や学校での状況を作り出すことが治療目標となっていきます。

 発達障害に随伴しやすい症状を理解することが重要です。

発達障害に起因する随伴症状
こだわり
感覚過敏
睡眠障害
フラッシュバック
予想と違う事態に陥ったことへの不安 など

合併しやすい身体症状
アレルギー疾患や鼻・副鼻腔炎
自律神経症状(頭痛、たちくらみ、めまいなど)
消化器症状
月経関連で悪化する症状

漢方は、発達障害そのものへの治療ではなく、周辺症状の身体症状・感覚過敏への治療で
生活の質の改善を目標に使います。

具体例:
イライラ、腹部症状が主であれば、建中湯類を使用。

鼻呼吸障害による睡眠の質の低下があれば、葛根湯関連処方や、辛夷清肺湯
荊芥連翹湯など用い、西洋薬の点鼻や抗アレルギー薬の追加処方

不眠・イライラ、小さな物音で起きるなどあれば、抑肝散、桂枝加竜骨牡蛎湯、
柴胡加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯
学童以降で抑うつ傾向あれば半夏厚朴湯追加処方

思春期前からの女子の易興奮性は月経周期と関連する場合が少なくないので、
冷え虚弱でぽっちゃり型には当帰芍薬散、腹痛強ければ当帰建中湯、体力あれば桂枝茯苓丸
イライラ肩こり便秘傾向には加味逍遥散、便秘あり体力自身あれば桃核承気湯、通導散

学童以降でフラッシュバックや頭痛、腹部症状あれば、桂枝加芍薬湯建中湯類を用い
改善なければ四物湯を追加
神田橋処方として、PTSDによるフラッシュバックやパニック障害に対して、桂枝加芍薬湯、小建中湯、桂枝加竜骨牡蛎湯四物湯(胃弱には十全大補湯)を合方する有用性が報告されています。

参考に、西洋薬による治療は以下になります。
西洋薬による治療専門医による加療)
ASD:
易刺激性には少量の抗精神病薬(リスパダール、エビリファイ)
全身性不安障害、フラッシュバックには抗うつ薬(SSRI、ルボックス、ジェソロフトなど)
こだわりには薬物療法は効果示さない。

ADHD:
感情コントロールができにくいとき、脳内神経伝達物質の不足にコンサータ、ストラテラ
易刺激性には少量の抗精神病薬(リスパダール、エビリファイ)
気分の浮き沈みはデパケン

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関連HP: 漢方処方
参考図書: 漢方診療のレッスン(金原出版)  医療用漢方製剤の用い方(南山堂)
小児科診療:特集 実践!小児漢方2018:2(診療と治療社)