よくわかる子供の漢方(服用法・こどもの漢方総論)
upper : a three-month-old puppy dog called Genn3ヶ月 lower: a same four-month-old dog 4ヶ月 click to enlarge the photos
◎子犬の成長とコミュニケーション
犬は人間の4倍の速さで成長と老化が進みます。生後1か月半には乳離れが始まり、生後から3か月間は、母親や子犬たちから犬同士のコミュニケーションや社会性を学ぶ重要な時期となります。早く兄弟の子供たちと別れされた子犬たちは、大事な知識や社会性、加減して噛むことなど学べず、今後人間と暮らしていくうえで、問題行動を起こすことになります。
小さく可愛かった子犬も、成長が早く1歳までには成人に近い体型となっています。
◎赤ちゃんの成長 スマホ育児について
人間の乳児期も両親や家族とのコミュニケーションが大事な時期となります。
最近では、育児で子守りの代わりにスマホを与えていると、スマホには赤ちゃんの興味をそそる要素にあふれているため、あやす必要がなくなり育児の負担が減るメリットもありますが、スマホに過剰に夢中になると依存しすぎることになり両親とのコミュニケーションが不足します。また母親もスマホに夢中になりすぎると、子守りが疎かになりコミュニケーションが不足することで、お子さんの情緒や言葉の発達の遅れが問題となっています。
◎子どもの疾患の治療 食養生と生活習慣の是正と漢方治療
病期にかかりやすい、治りにくい、情緒不安なお子さんを治療していくうえで、甘い物や冷たい物ばかり食べる過食・偏食、コミュニケーション不足、冷暖房の普及、生活リズムの乱れ、ITの普及など、現代のライフスタイルの影響を考えていくことが重要となります。薬による西洋・東洋医学の治療を行う以前に、日常生活の食養生と生活習慣の是正が抜きでは先に進みません。
自然治癒力を高めながら改善してく漢方治療は薬剤による治療と同時に貝原益軒の養生訓(健康法)でご存知のように食養生・生活習慣の改善をセットで考えていきます。
☞ 現代の子どもにとって漢方薬のメリット
●耐性菌や副作用を生じやすい抗生剤使用を最小限に抑える。
●病気になり易い虚弱児への対応が可能。
(扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、喘息、嘔吐・胃腸炎など)
●確立された西洋医学的治療との併用での相乗・相加効果。
●西洋薬で効果が得られにくい食欲不振・体重増加不良への対応可能。
●小児心身症への抗不安薬などの精神薬の導入には慎重を要するので、
依存などの副作用が少ない漢方は導入しやすい。
俗にいう『疳』が強いタイプの子で、夜泣き・神経症・感覚過敏にも効果を認める。
●アトピー性皮膚炎などへのステロイド外用療法とスキンケアへの補完療法として
心身と肌を丈夫にする。
上記のような漢方薬の有効性を認めますが、子供への使用には、服用の難しさがあります。
まず飲み方の工夫について説明します。
☞ 漢方の服用法の工夫
【乳児の場合】味覚がまだ未熟なので、すんなり飲めることもあります。
スプーンの背で粉末をすりつぶし、少量の湯で泥状にしてよく練り、清潔な手で、赤ちゃんの頬に塗りつけます。溶かしたものをスポイトで服用させてもかまいません。
赤ちゃんが、なめなめしてくれれば、多少吐き出しても体に吸収されるので大丈夫です。
すかさず、母乳やミルクを与えるとさらに良いでしょう。
【幼児の場合】自我が強くなり最も内服させるのが難しい時期です。
発熱している時は、発汗療法として葛根湯や麻黄湯を用いることが多く、服用の基本は温めて発汗を促すことです。なるべく熱い50ml程度の熱いお湯に溶かして少し冷まして食前に服用させます。食事は温かく消化の良い物を食べ発汗をさらに促します。
汗をかけば着替えて眠りましょう。脱水を防ぐため水分補給も忘れないようにします。
平熱の時は、白湯や水で服用します。
飲みやすい漢方;黄耆建中湯、小建中湯、大建中湯(これらは膠飴(麦芽糖)含有)
甘麦大棗湯、五虎湯、桔梗湯、苓桂朮甘湯などです。黄耆建中湯、小建中湯は子供のファーストチョイスの漢方で消化機能を高め虚弱体質の改善に効果があります。
このような飲み方ができないときは、下記の色々なものに混ぜて服用させてください。
◆服薬ゼリー:かき混ぜず、顆粒を包み込むだけにする。
◆アイスクリームやシャーベット:夏に最適です。夏はシャーベットや水に溶かして製氷皿で凍らしてから服用すると飲みやすくなります。冷たい物には、味覚が低下します。
◆ココア、ミロ、麦芽飲料など温かい飲み物: 麦芽飲料が相性が良く飲みやすくなります、冬は温まります。ミロは牛乳アレルギーの方は注意します。
◆チョコレートペースト、イチゴジャム、ピーナッツバター、練乳、水あめ、はちみつ(1歳以上):包み込んだり混ぜる。
◆リンゴジャム、リンゴジュース:漢方によく含有される桂枝(シナモン)と相性がよく飲みや すくなります。
◆サツマイモ:つぶしてペースト状にして混ぜる。
◆ヨーグルト:
◆ミニシュークリームの上半分を開け、漢方を入れて戻す方法もありますが手間がかかります。
混ぜ物はお子さんの好みがありますので、皆さんの良い方法を見つけてください。
緑茶、コーヒー、牛乳、ジュースなどは薬の働きに影響を与えるので避けた方が良いと
いわれますが、子供の場合は、飲まないより飲んでくれればなんでもOKです。
【学童の場合】薬の意味を理解させて、納得して飲ませることが出来る時期となります。
発熱時以外でも、温めた方が効果を発揮する漢方薬の場合は、煎じ薬のように50~100ml程度の熱いお湯に溶かしてから少し冷まして服用します。
漢方のエキス剤の溶かし方は、お湯に混ぜて電子レンジで溶かすとよく溶けます。
時間が無ければ白湯や水でかまいません。
〇〇湯の名前の漢方は湯に溶かして飲みます。エキス剤はインスタントコーヒーのようなものなので溶かして飲むことが基本です。例外的に、〇〇湯の名前の漢方でも清熱作用を期待する漢方や、嘔気の時は、水や冷たくして内服と思って下さい。詳細は担当医と相談が必要です。
嘔気の時に服用する五苓散などは、冷服(熱いお湯に溶かし、氷で冷たくして少しずつ服用)を勧めます。
理想はそうですが、服用することが大事ですので、粉末をそのまま口に含み水で服用してかまいません。
飲めないときは、幼児のところで説明したように、ココアに混ぜる、オブラートに包む、服薬ゼリーで包み込むなど工夫して下さい。
最終的には、ご両親の漢方服用への情熱が一番大事のような気もします。
メーカーによっては錠剤の漢方もありますので、担当医と相談してみましょう。
但し、錠剤の数はかなりおおくなります。
口内炎、歯肉炎、咽頭炎など直接含んで口腔粘膜に接触することで効果を発揮する、
桔梗湯、立効散、半夏瀉心湯などはオブラートに包むと効果を発揮しません。
☞ 小児疾患への漢方治療の総論
小児科疾患の特徴として、急性疾患は、発熱や脱水、慢性疾患では虚弱対応・体質改善と
心身症の解決が重要となります。
急性疾患の発熱や脱水には、麻黄剤や五苓散の適応が多く
慢性疾患では虚弱児への漢方が多くの疾患の基本となります。
漢方医学の補益剤(虚弱児への漢方)は、体力増強・胃腸機能強化・感染予防・心身一如・精神安定など種々の面で全身症状の改善に貢献しています。
漢方を使用する上で、乳児期から学童期への発達過程で虚弱児の疾患の特徴が変化し
それに応じて漢方の使い方も違ってきます。
👉 次の成長過程の3段階で考えると分かりやすくなります。
◆乳児期の滲出性体質:皮膚や気道・消化器の粘膜が過敏に反応しやすい状態、
乳児湿疹・アトピー・鼻汁・ゼーゼー・下痢をすぐに反復する時期。
◆幼児期のリンパ腺体質:扁桃・鼻咽腔・のどの感染を反復し、
耳鼻咽喉科疾患が増える時期。
◆学童期の神経炎症体質:頭痛・関節痛・起立性障害・臍疝痛・心身症など認める。
👉 虚弱児のタイプ分類では
( )の意味は、西洋医学ではなく中医学・日本漢方による考え方です。
◆消化器型(脾型・太陰病期)胃腸が弱いタイプ 漢方:建中湯類、五苓散など
◆扁桃・鼻・中耳(扁桃型・少陽病期)かぜを引き易く、鼻副鼻腔炎、中耳炎を反復するタイプ
漢方:柴胡剤など
◆呼吸器・アトピー型(肺型・少陽病期)かぜを引き易く、喘鳴を反復・アトピー体質
漢方:柴胡剤、五虎湯など
◆神経症型(肝・心型)神経過敏タイプ 漢方:抑肝散、甘麦大棗湯など
◆循環器型(心型・水滞・気逆・気滞)気分不良、頭痛、立ちくらみのタイプ
漢方:苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、半夏厚朴湯など
その他、上記併用の混合型、腎型(腎虚)などあります。
小児は、実証傾向で水分代謝や自律神経の失調をきたしやすく、感染症を反復するため、
麻黄剤、利水剤、肝の失調を改善する方剤(抑肝散など)および柴胡剤が選択されることが多くなります。
アトピー体質以外では、成人のように、お血、血虚の証は、多くはありません。
各疾患の漢方加療については今後、院長の健康情報ブログでアップしていく予定です。
関連ブログ:よくわかる風邪の漢方
関連HP: 漢方処方
参考図書:耳鼻咽喉科漢方薬処方ガイド(中山書店) 漢方診療のレッスン(金原出版)
専門医のための漢方医学テキスト(日本東洋医学会) 医療用漢方製剤の用い方(南山堂)
小児科診療2018:2(診療と治療社)