おとなと学童のワクチン外来
当院では、大人・学童を主に、下記のワクチンを行います。
接種10日前までに予約をお願いします。
◆小児定期接種(公費):MR(風疹麻疹混合)(5~6歳)、日本脳炎追加接種2期(9~12歳)日本脳炎特例接種(13~20歳未満)、二種混合(DT)(11~12歳)おこないます。
◆国制度による妊娠を希望する者とその配偶者などの同居者は成人無料風疹抗体検査および低下の方への風疹予防接種への補助(接種1件3500円)おこないます。
風疹、麻疹、MRワクチンは供給不足状態です。
◆1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性約1610万人が対象(39~56歳 2019年1月時点)
2019年1月から3年間無料風疹抗体検査と無料風疹予防接種開始
◆高齢者65歳以上インフルエンザワクチン助成、高齢者65歳以上(5年毎)肺炎球菌ワクチン助成おこないます。
◆おたふく(任意)とインフルエンザワクチン(任意)は、1歳以降を対象におこないます。
渡航前ワクチンは、鹿児島済生会病院にご相談して下さい。
輸入ワクチンは、扱っていません。
ワクチンについて知りたい方は、『VPD:vaccine preventable disease』を検索して下さい。保護者、一般の人にとってわかりやすく、医療関係者も参考にする、小児科医が立ち上げたHPです。
おとなのワクチンについて、『おとなのVPD』をみて学習して下さい。
👉 当院での対応ワクチン
インフルエンザ、肺炎球菌(23価、13価プレベナー)、おたふく、日本脳炎、百日咳(3種混合)、二種混合(DT)、水ぼうそう、帯状疱疹、風疹、麻疹、MR(麻疹・風疹)、破傷風、A型・B型肝炎、髄膜炎菌
➡ ワクチン価格表(1回接種費用 自費)
ワクチン | 価格(円) | 回数 | 有効期間 | 当院での対象年齢 |
インフルエンザ | 1回目3000 2回目2500 | 1~2回 10中旬~1月初旬 | 5か月 | 1歳~ 65歳以上助成 |
肺炎球菌ニューモバックスNP | 7500 | 1回 | 5年 | 原則65歳~年齢により助成 |
肺炎球菌プレベナー13 | 10500 | 1回 ニューモバックスNPと組み合わせ | 5年 | 65歳~ |
おたふく | 5500 | 1~2回 | 20年 | 1歳~ 5,6歳任意 成人学童抗体検査対象 |
水ぼうそう | 7500 | 1~2回 | 20年 | 5歳~ 成人学童抗体検査対象 |
帯状疱疹 | 7500 | 1回 | 5年 | 50歳~(2016年~) |
風疹 | 5500 | 1~2回 | 20年 | 5,6歳定期 成人抗体検査対象 成人一部の方助成 |
麻疹 | 5500 | 1~2回 | 20年 | 5,6歳定期 成人抗体検査対象 |
MR(風疹・麻疹) | 9000定期無料 | 1~2回 | 20年 | 5,6歳定期 成人一部の方助成 成人抗体検査対象 |
破傷風 | 3500 | 3回(追加は1回) | 10年 | 10歳~ |
百日咳トリビック3種混合DPT | 5000 | 1回(追加接種) | 10年 | 5,6歳任意 11,12歳任意 |
B型肝炎 ビームゲン | 5500 | 3回 | 10~20年 | 5歳~ 成人学童抗体検査対象 |
A型肝炎 エイムゲン | 8000 | 3回 | 5~10年 | 5歳~ 成人学童抗体検査対象 |
髄膜炎菌 メナクトラ | 21000 | 1回 | 5年 | 5歳~ |
日本脳炎シェービックV | 任意7000 定期無料 | 4回 | 9~12歳追加定期 特例 | |
二種混合DTビック | 任意4500 定期無料 | 1回 | 11~12歳定期 |
➡ ワクチン接種関連検査費用(接種に必要な抗体検査 自費)
疾患 | 検査 | 価格(円) | |
風疹 | HI(LA) | 3500 | 一部の方無料 |
風疹 | EIA(IgG) | 4500 | 一部の方無料 |
麻疹 | IgG | 4500 | |
おたふく | IgG | 4500 | |
水ぼうそう | IgG | 4500 | |
B型肝炎 | HBs抗体 | 3500 | 陽性者は接種不要 |
B型肝炎 | HBs抗原 | 3500 | 陽性者は接種効果なし |
A型肝炎 | IgG | 4000 |
31年3月31日まで風疹の抗体検査は、鹿児島県民で下記の方には無料となります。
◆妊娠を希望する者
◆妊娠を希望する者の配偶者などの同居者
◆抗体価が低い妊婦の配偶者などの同居者
*上記抗体検査で抗体価が十分でない場合、鹿児島市に住民登録があれば、妊娠を希望する女性と妊婦の同居者は、ワクチン(風疹、MR)費用の一部の助成があります。
◆1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性約1610万人が対象(39~56歳 2019年1月時点)
2019年1月から3年間、無料風疹抗体検査と無料風疹予防接種開始
👉 接種すべきワクチンの要点
◆インフルエンザワクチンは、当院HPお知らせ『インフルエンザ&ワクチン情報』を参照して下さい。
◆ 麻疹:
歴史:1978年定期接種(1回)、1990年2回接種開始、1993年4月MMRによる無菌性髄膜炎発症でMMRは中止。
1994年集団接種から個別接種(勧奨接種)へ変更となり接種率低下する。2006年4月からMRワクチン開始
ワクチン未接種でかかったことがない人がウイルスに感染するとほぼ確実に発症します。合併症を起こしやすく気管支炎、肺炎、脳炎などが約30%の人におこり、肺炎や脳炎で亡くなる人もいます。
海外からの輸入症例がほとんどで、20~30代までの大人が流行の中心となっています。1976年以前生まれの40代以上で麻疹にかかる人は少なく、自然感染している人が多いと思われます。
◆ 風疹:
歴史:1977年8月~1994年 中学生女子のみ定期接種。1979年から男子の接種開始、1995年4月から1歳~7歳の男女、 2006年からMRワクチン2回定期接種。
妊娠初期に感染すると、おなかの赤ちゃんの眼や耳や心臓などに先天性の障害がおこります(先天性風しん症候群)。1歳前までに亡くなることも少なくありません。
そのため、社会全体での予防が重要です。
東京都感染情報センターのデータでは、今年2018年の夏から急に感染者が増加していて
以前ワクチン接種する機会が無かったまたは少なかった、20代から50代にかけて男性に多く発症しています。
女性は妊娠前に2回必ず行いましょう。男性も2回接種が求められます。
◆ 帯状疱疹・水ぼうそう
帯状疱疹は、加齢や疲労で免疫力が低下すると、小さいときに水ぼうそうに感染し、神経節に潜伏していた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性して、痛み発疹、顔面神経麻痺、めまい、難聴が出現し、その後起こる神経痛は、痛みが数ヶ月から数年、一生持続することもあり大変つらいものです。
2014年10月からの小児の水ぼうそうワクチンの定期接種により、水ぼうそうの患者が減少し、社会での免疫刺激がなくなるため、大人の帯状疱疹が増加しています。
2016年から、小児の水ぼうそうワクチンを予防する目的で50歳以上の成人に使用できるようになっています。
近いうちに、効果が高い不活化帯状疱疹ワクチンのシングリックスが利用できるようになる予定。
小児期の水痘ワクチン接種が、後の帯状疱疹発生頻度を低下させるという報告も出てきています。高齢者に対する帯状疱疹ワクチンだけでなく、小児期の水痘ワクチン接種が帯状疱疹発生頻度の低下につながる可能性もあります。
◆ おたふく
世界の多くの国では、おたふくかぜワクチンを定期で2回幼少時に受けているので、流行はあまりありません。
日本では、自己負担で1回接種が多く流行をふせげていません。
一生治らないムンプス難聴(1人/1000人)や無菌性髄膜炎・脳炎や精巣炎・卵巣炎・膵炎などの重い合併症を起こすこともあります。
幼児・学童が最も多く、次に30歳台で多くなります。
当院HPコラム『おたふくと難聴』も参照して下さい。
◆ 肺炎球菌ワクチン
日本人のシニア世代の、死因の3位は肺炎です。
肺炎球菌は、鼻や喉の奥にいる常在菌で、子供からもらうこともあります。
高齢者、乳幼児、持病を持っている人で、免疫が低下すると様々な部位に発症し重症化します。肺炎、中耳炎、敗血症、髄膜炎など生じます。
成人肺炎球菌ワクチン(23価多糖体ニューモバックスNP)は、一部の方には公費助成があります。23価多糖体ニューモバックスNPに13価結合型プレベナー13を、間隔をあけて併用すると効果が高まります。23価多糖体ニューモバックスNP接種後1か月でピークとなり5年後80%程度に低下します。
小児は2013年から1歳までに肺炎球菌ワクチンとヒブは定期接種となりました。
➡ 23価多糖体ニューモバックスNPは、5年以上の間をあけて、再度追加接種を行います。
*65歳以上では、効果を高めるため
23価多糖体ニューモバックスNP+13価結合型プレベナー13併用します。
➡ 23価多糖体ニューモバックスNP接種後、1年以上あけて、
13価結合型プレベナー13の追加接種
➡ 13価結合型プレベナー13接種後6ヶ月~1年以上あけて、4年以内に
23価多糖体ニューモバックスNPを追加接種
◆ 百日咳
歴史:
百日咳ワクチンの歴史は長く、1949年から開始、1968年以降定期接種、
1975年副作用のため中止、1981年副作用少ないDTap開始、
2012年 現在の4種混合ワクチン定期で対応
百日咳ワクチン接種前の新生児や乳児が感染すると重症化して命にかかわります。
3か月以下の乳児が感染すると、せき込むというより、呼吸を止めてしまい、脳に酸素が届かなくなることがあり、死亡や後遺症を残すことがあります。
ワクチン効果は10年のため、11~12歳には、小学校高学年や中学生になると百日せきにかかりやすくなっています。海外では、抗体価が低下する就学前と二種混合(DT)ワクチンの接種時期(11,12歳)に、百日咳予防のため三種混合ワクチンの追加接種をするスケジュールに変更になっています。
日本では、2018年1月に三種混合ワクチンが再発売となりましたが、二種混合ワクチンの三種混合ワクチンへの変更ができていません。ここにもワクチンギャップが存在し、日本ではまだ多くの人が百日せき発症の危険にさらされています。
現役ミドル世代やシニア世代は、百日せきにかかったことがあっても、免疫力は時間の経過とともに低下しています。もう一度ワクチン接種で免疫力を高めましょう。
2007年以降の百日咳感染の報告の40~60%は20歳以上です。
特に、お孫さんが生まれる前には接種を済ませておきましょう。
10歳以降の追加接種として、30年1月にトリビック(3種混合)が販売されています。米国の追加接種はTdap(Boostrix)で、日本では輸入ワクチンになります。
◆ 破傷風
深い傷だけでなく、ガーデニングなどでできる小さな傷でもおこることがあります。
破傷風菌に感染する機会が増えています。
破傷風は1968年から定期接種となったため、50代以上ではほとんどワクチンを受けていません。そのため年間100名以上がかかっています。50歳以上の人は、破傷風ワクチンで予防しましょう。40代以下は、10年に1回の追加接種をお勧めします。
百日せきやジフテリアの免疫力も同時に上げられる三種混合ワクチンもおすすめです。
災害地のボランティア活動に参加する場合は、あらかじめ破傷風ワクチンを接種しておきましょう。現在は4種混合ワクチンで、1歳までに接種を済ませます。
◆ B型肝炎
思春期以降の感染では、急性肝炎をおこし、50人に1人は重篤な劇症肝炎をおこします。慢性肝炎になると、肝硬変や肝臓がんを発症しやすくなります。
3歳以下の子どもが感染すると、キャリアから慢性肝炎になりやすいため、2016年から0歳児がワクチンを定期接種となっています。
近年、思春期以降の感染でもキャリアになりやすい欧米型のB型肝炎が増えています。
B型肝炎は、患者の体液ならなんでもうつります。
血液はもちろん、体液、例えば唾液や汗、涙でも感染することがわかってきました。
特に、思春期以降は性感染としての対策が重要となってきます。
◆ A型肝炎
ウイルスは便から排出され、ウイルスを持っている料理人の手から食べ物についたり、自然にA型肝炎ウイルスが集まった貝を生で食べたりして、うつります。十分に加熱した食べ物からはうつりません。日本で報告されている患者さんの数は少ないのですが、実際はもっと多いと推定されています。
約1か月の潜伏期間の後に、発熱や倦怠感と黄疸(おうだん)があらわれて発症します。劇症肝炎といって命にかかわることもあります。衛生状態が良くなったので、自然感染の機会が激減し、60歳代以下の日本人のほとんどは免疫を持っていません。
中・低開発国ではA型肝炎は常に流行していますが、欧米豪州などでも流行することがあります。海外旅行や長期滞在時には、大人と子ども共に接種が強くすすめられます。
◆ 髄膜炎菌ワクチン
髄膜炎菌感染症は、患者や保菌者から飛沫感染により髄膜炎菌が体内に入り、菌血症や敗血症、細菌性髄膜炎などを引き起こします。特徴的なのは、病状の急激な進行です。日本での死亡率は15%と高く、劇症型では50%に達すると報告されています。聴力障害、知能障害、麻痺、てんかんなどの神経学的後遺症を残すことも多く、壊死などのために四肢の切断が必要なこともあります。
髄膜炎菌感染症にかかりやすい年代は、乳幼児と10代後半と高齢者です。学校やクラブ活動での流行もあり、特に学生寮や運動部などの集団生活で感染のリスクが高まることが知られています。米国では、11~12歳初回と16~18歳追加接種が推奨されています。
ぜひ、ワクチンで予防することをお勧めします。
2011年には宮崎県の高校野球部寮内で集団感染があり、1人死亡
2013年三重県内全寮制高校 髄膜炎1人
2015年山口世界スカウトジャンボリー参加外国人が、髄膜炎4人発症
2017年防衛大学校学生寮で、髄膜炎で1人死亡 同じ寮内保菌者多数
2017年鹿児島県自衛隊19歳寮生が1人発症
2018年鹿児島市高校寮生1人発症
死亡者の多くは25歳以下の成人や幼小児です。
◆日本脳炎
日本脳炎ウイルスに感染した豚の血液を吸った蚊を介して日本脳炎ウイルスが人の体の中に入る、かかってしまうと重大なVPDです。名前は日本脳炎ですが、日本からフィリピン、インドあたりまで、東南アジアで流行している病気です。現在国内での患者数は年間10名以下です。年齢的には50歳以上が多いのですが、この約5年間で6名の子どもの発症がありました。地域分布では圧倒的に西日本が多くなっていますが、地球温暖化のために今後北へ広がると予想されています。北海道の子どもも国内外で移動することがありますので、接種がすすめられています。日本脳炎のウイルスは豚の血液の中で増殖するので、養豚場の多い地域は注意が必要だといわれています。
かかっても多くの人は症状が出ません。数は少ないですが脳炎がおこると、けいれんや意識障害がおこります。そして障害が残るか、死亡する確率が高まります。夏に多いウイルス性髄膜炎(普通はほとんど重症になりません)で、日本脳炎ウイルスによるものも報告されています。
日本脳炎ウイルスに感染すると約100~1,000人に1人が脳炎を発症し、そのうち15%ほどが死亡するといわれています。
日本脳炎ワクチン(定期接種、不活化ワクチン)で予防します。
第1期は生後6か月から接種できますが、多くの地域では3歳からの接種となっています。 第2期は9歳から12歳に1回接種します。
現在は、特例措置が取られ、接種見合わせの間の不足回数分を定期接種として受けられます。1995年(平成7年)4月2日生まれ~2007(平成19年)4月1日生まれの方は、特例措置が適用されます。お子さんの日本脳炎ワクチンの接種回数を母子健康手帳で確認しておきましょう。
◆ジフテリア
ジフテリア菌がのどなどについておこる重いVPDです。この菌は、ジフテリア毒素を大量に出して、神経や心臓の筋肉を侵します。現在は、ワクチンのおかげと抗菌薬が有効で耐性菌が少ないため、ほとんど患者はいません。しかし、ワクチンを止めざるを得なかった旧ソ連などでは流行がおこり、多数の犠牲者が出ました。
のどについたジフテリア菌が増えて炎症がおこります。発熱は微熱のことも。のどの奥が白く見えることもあります。のどの炎症が強まって、空気の通り道がふさがり(クループ)、そのために死亡することもあります。そして神経のまひがおこったり、心臓の筋肉に障害がおこったりして死亡するケースが現代の欧米でもみられます。
空気の通り道が完全に詰まると、死亡します。また、心臓の筋肉が侵されるので、絶対安静が必要です。安静にしていても、心臓が急に止まって死亡することもあります。
四種混合(DPT-IPV)ワクチン(定期接種・不活化ワクチン)で予防します。赤ちゃんの百日咳が流行していますので、生後3か月から4週間隔で3回受けると予防効果が高くなります。生後3か月でB型肝炎、ヒブ、小児用肺炎球菌などと同時接種で受け、BCGワクチンの接種の前に四種混合ワクチンを3回受けておくことをおすすめします。
11歳になったら、ジフテリアと破傷風の二種混合(DT)ワクチンを受けましょう。
※四種混合(DPT-IPV)ワクチンは2012年11月に導入。