鼻・のど・呼吸器・おなか:相互関連
喘息患者でのアレルギー性鼻炎の合併は80%前後、アレルギー性鼻炎の10~20%に喘息の合併がみられ、合併率が高いだけでなく、喘息の悪化にも影響するなど関連が非常に深いものになっています。これを『one airway, one disease』と呼び、鼻などの上気道と肺の下気道をひとつの疾患群として治療する考えです。
人体の発生段階で、鼻・呼吸器の上皮、消化器・咽頭や耳管・中耳は、内胚葉に分類され、胎児の初めは咽頭・呼吸器・消化器は同じ組織に起源があります。実際の診療でも、耳鼻・咽頭・上気道に呼吸器・胃・食道の影響が関わった病気が多数あり、多彩な症状をおこしていることがわかってきました。
◆食生活の欧米化に伴い、胃食道逆流症(GERD)が増加しています。GERDの食道外症状として、上下気道において、のど・後鼻漏・咳・肺炎・声がれ・喘息の悪化への関与がみられます。
☞ 胃酸の逆流と耳・鼻・のど・呼吸器:当院コラム 20191123
◆夜間の唾液、食物や胃の内容物ののどからの逆流による誤嚥の影響で、体力や咳反射の低下とともに高齢者の死因の主要因である誤嚥性肺炎が発症する場合があり、認知症と共に高齢者の大きな問題です。高齢女性に多く、胃食道逆流症は、腰椎後弯による前屈み姿勢や、骨粗鬆症による円背、食道裂孔ヘルニアの合併が原因となり、誤嚥が問題となります。寝たきりの患者で食後2時間座位を保つと発熱の患者さんの割合が減る報告があり、胃食道逆流症と嚥下性肺炎の関連が推測されています。
☞ 自分でできる誤飲性肺炎予防:当院コラム 20180831
◆急速なIT化や核家族化、会社、学校での人間関係、介護疲れといったストレス社会のため、心の問題を背景にした訴えが、非常に増加してきています。舌痛症、ヒステリー球・咽喉頭異常感症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、非びらん性胃食道逆流症など、一人の患者さんでオーバーラップすることも多く、不安・不眠・うつも重なって認めることも多いため、漢方医学の【心身一如】の考えも取り入れ、心と口・のど・胃腸を総合的に治療するお話です。
☞ ストレスとお口・のど・おなか&漢方:当院コラム 20191221
『喘息と肥満・胃酸の関与』
◆生活習慣病対策は、国を挙げて行われていますが、喘息にも関係することがわかってきました。次のサイトで肥満・胃食道逆流症と喘息の関係と対策を詳細に説明。
☞ 肥満と喘息:ダイエットで喘息が治る? 20190507
『One airway, one disease:アレルギー鼻と喘息』
◆鼻アレルギー、好酸球性副鼻腔炎の悪化は喘息を悪化させます。鼻風邪のライノウイルス感染は、喘息の増悪因子となります。鼻・副鼻腔炎は、後鼻漏・口呼吸から、咳や喘息に関与します。鼻のコントロールは喘息症状を改善させるのに重要な要素です。秋の喘息は、ダニの影響とライノウイルス感染に注意します。
☞ 鼻と秋の喘息(当院コラム)20171025
『鼻副鼻腔・後鼻漏・胃酸と長引く咳・喘息』
◆近年はアレルギーの増加、欧米化による生活習慣病の増加に関連する長引く咳が増加しています。以前は長引く咳の原因は、結核や副鼻腔気管支症候群など菌が関連した疾患でした。近年はアレルギー性鼻炎と咳喘息・喘息・アトピー咳嗽の増加、胃食道逆流症による長引く咳、子供の後鼻漏による治りにくい咳など、1~2か月以上持続する咳は、風邪の咳ではなく、アレルギーを背景に鼻・のど・胃酸・呼吸器の関連した咳を考えます。
☞ 増え続ける咳の患者さんたち:当院コラム 20180112