鼻と子供の中耳炎
寒くなると、鼻水がでて、後鼻漏と共に、次第に咳が出てきます。
夜に眠れないようになると喘息(関連ブログ:鼻と秋の喘息)が出ていることもあります。
同時に鼻水が鼻の奥にたまり続けると、お子さんたちは中耳炎となり耳痛・発熱がでて、
機嫌が悪く寝つきが悪くなります。目ヤニも悪化することもあります。
特に、乳幼児は未熟性のため大人より顕著に、鼻からの影響が出てきます。
今週末は、全国的に冬将軍が到来し、南国鹿児島も寒波の予報が出ていますので、
当院では感冒からの鼻炎と中耳炎の患者さんの増加が予想されます。
今回、乳幼児のお子さんたちが中耳炎にかかりやすく難治化する原因を
三つあげてみました。
【子どもの中耳炎の悪化因子】
◆耳管の未熟性(耳管とは鼻の奥から中耳につながる管のことで、耳抜きをする場所です)
◆未熟な免疫
◆感染と薬剤耐性
耳管の未熟性
乳幼児の耳管は成人の1/2の短さで、また太く水平のため鼻の奥の感染が耳管を経由して中耳に感染を起こしやすくなっています。学童のころになると成人に近い耳管構造となり、中耳への感染が波及しにくくなります。
未熟な免疫
赤ちゃんは母体から胎盤を経由してもらった免疫を持って生まれますが、5~6ヶ月頃には尽きてしまい風邪を引き易くなります。かぜを予防するIgG免疫グロブリンは、2~4歳で上昇しはじめ15歳で成人並みになります。
感染と薬剤耐性
免疫が十分でない5~6ヶ月頃からサークルや集団保育に参加することが多くなり、
周囲から風邪のウイルスや細菌をもらいやすくなります。
集団保育のお子さんたちは、風邪をひく機会が多く、そのたびに抗生剤を服用する機会が
多くなり、必然的に薬剤耐性菌が子どもたちを介して広がっていきます。
【子どもの中耳炎への対策】
上記の3因子で、クリニックでできることは
◆未熟な免疫に対して免疫を活性化することです。具体的には、
*プレベナー13(肺炎球菌ワクチン)やインフルエンザワクチンなどを
しっかり受けること。
*漢方で免疫を高めます。漢方で中耳炎の難治化をふせぐ報告が出てきました。
*最近では、ワクチンでも効果なく、IgG2免疫グロブリン低下例の難治性中耳炎には
人免疫グロブリン注射も選択可能となっています。
◆感染と薬剤耐性にたいして、適切に抗菌薬の使用をすること。
*安易に通常の風邪や発熱に対して抗生剤を使わない事ですが、実際の診療では
最も難しいところです。抗菌薬の乱用は、薬剤耐性の拡大をまねきます。
中耳炎の難治化や薬剤耐性のリスクの一つに1か月以内の抗菌薬の治療の既往が
あげられています。
*鼻・副鼻腔炎の治療を行い、鼻の奥から中耳炎への感染を防ぐこと。
また鼻処置・鼻洗で鼻の奥の、特に上咽頭の原因となる細菌(悪玉菌)の減量をはかり、
いわゆる善玉菌の常在菌との共存を図ることです。