高齢者の声枯れは、肺炎の前兆?声帯萎縮
声の変化は幼少時期から変声期を経て思春期まで起こります。成人になるとしばらく一定ですが、中年以降は加齢変化から声の変化(第2の声変わり)をきたします。声のかすれ、声の張りがない、痰が絡みやすい、発声を持続することが出来ないなどのような変化は、加齢による声帯萎縮を起こしているかもしれません。
音声障害は嚥下障害とリンクしています。
声がしっかりしている人は嚥下も保たれていることが多いと考えられています。声が最初に悪くなり,そのうち嚥下障害が出現することが多く、声が出なくなってきたら要注意です。音声障害は、高齢者では咽頭・喉頭癌よりはるかに多く、65歳以上では、約3割程度の方がいると報告されていて、誤飲性肺炎のリスクとなります。
『声枯れの病気とは』
*話過ぎや風邪による声帯の炎症による声帯炎
*タバコによる慢性喉頭炎やポリープ様声帯
*習慣的に声を使う人に多い声帯結節
*片側性で血豆にもなる声帯ポリープ
*生活習慣病の胃食道逆流症と関連の喉頭肉芽腫
*喉頭癌(特に40歳以上、喫煙者)
*肺癌や動脈瘤などからの反回神経麻痺
*潤滑油としての唾液分泌低下による声がれ(口腔乾燥症)
*声帯が痩せてくる声帯萎縮(高齢者に多い)
など多数存在します。
近年、高齢化とともに特に問題なのは
👉 声帯萎縮症です!!!
加齢変化および会話が少なくなればだれでも起こる現象です。声帯萎縮は誤飲性肺炎を起こす嚥下機能障害の初期症状でもあります。
咽喉頭の加齢変化は50歳前後から起こり,最初は粘膜の繊毛機能低下や粘液産生低下により咽喉頭の乾燥や痰がらみが起こります。その後、声帯萎縮が起こると声がかすれだし、加齢変化により体のサルコペニア(筋力低下)が起こるようになると、咽喉頭全体の筋力低下,知覚低下が起こると嚥下障害を来すようになります。高齢者の誤飲性肺炎の原因となり、より状況は深刻化していきます。
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咽喉頭の乾燥(口腔乾燥症)や痰がらみは、音声障害に先行することも多くみられます。
もう一つ加齢変化で誰にでもおこる声のかすれの原因は
👉 口腔乾燥症です(60歳以上、2割)!!!
唾液量は健康な成人において1日 0.5~1.5ℓとされ個人差が大きく、高齢者の口腔乾燥は加齢により唾液分泌の予備能が低下したところにほかの因子が加わって生じると考えられています。口腔乾燥は、鼻閉による口呼吸、歯牙欠損や義歯装着による口腔閉鎖不全などでも生じます。
『ポリファーマシーについて』
高齢者は薬が多くなり、ポリファーマシー(害のある多剤服用)が気づかないうちに起こることがあります。薬剤性口腔乾燥症は,薬剤の副作用のいかんにかかわらず,服薬の種類が多くなるほど発症するとされています。
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『口腔乾燥症の症状は』
*のどのねばつき
*舌の痛み・違和感
*味覚障害
*口臭
*歯科疾患の増加
*のどの感染症・痛み反復
*咳払い
*飲み込みづらい
*声帯の潤滑油としての唾液分泌の低下・喉頭腺の減少が起こると、長くしゃべると声がかすれやすくなります。
喉頭においても 喉頭腺が加齢とともに減少することが知られています。その結果,加齢とともに声帯は乾燥しやすくなり,声が出にくくなります。
◆声がれ・口腔乾燥対策
自宅では
鼻呼吸を行う
1日水1.5Lの飲水(酒、カフェイン飲料以外で)
しゃべる(歌手は声帯の寿命が長い)特に高齢男性は朝の新聞などの朗読(10分)
30回噛む(唾液を出す)
薬は最小限にする
咳払いを控え、大声を出さない
胃酸逆流をおこさない生活・食習慣(院長コラム)を行う。
活性酸素の抑制(抗酸化サプリメント アスタキサンチンの服用)
病院では
鼻や後鼻漏・胃酸逆流の治療、禁煙外来受診
声の衛生(院長コラム)のどの炎症・感染対策
*腹式呼吸
*鼻歌(ハミング 共鳴の利用)
*ストロー発声オリジナルDr Titze 日本のアナウンサー編 YouTube動画
*VFE(声帯機能拡張訓練)
脂肪注入(効果は限定的:専門施設)、再生医療(先端医療)
以前行われたプッシングの対処的治療は、非生理的不適切発声方法として、過緊張発声を助長するため、最近では勧められていません。
最近の音声リハは、包括的に通常の発声の中で音声の回復をはかるVFEを行います。
腹式呼吸と鼻副鼻腔・口腔での共鳴を利用して、呼吸と共鳴を最適化して声帯に負担をかけない発声方法を学んでいきます。本格的な音声リハは、耳鼻咽喉科施設でも行っていません、特殊なボイスクリニックなどの限定された施設で行うのみです。音声リハのトレーニングを受けた言語聴覚士(ST)が必要ですが、日本では全STの数%程度の少なさのようです。
◆まとめ
水分をこまめにとって、上手によくしゃべることが最も大事です。
男性は女性より寡黙な方が多く、喋るように行動の変化をおこしましょう。
声枯れがあると、悪い物ではと不安になりますので、耳鼻咽喉科専門医で精査を受けましょう。