吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

アレルギー・漢方・小児耳鼻咽喉科&感冒・せき・声がれ・咽頭痛・口呼吸・喘息・めまい・耳鳴・難聴・補聴器・嗅覚/味覚障害・睡眠時無呼吸・頸部・甲状腺・禁煙治療・高齢者の飲み込みの問題・成人用肺炎球菌・インフルエンザワクチンなど幅広く対応できる体制をとっています。

診断がつきにくいめまい症:PPPD

2020-05-28

貧血や全身状態を把握するため

英国の有症率報告では、高い順に疼痛、疲労感、めまいとなっています。日本の28年度国民生活基礎調査では、めまいの有訴率は女性:30% 男性:13% 70歳以上では女性4~5割、男性3割程度とめまいで悩んでいる方が多いのがわかります。めまいの病気の中でも原因不明のめまい症と診断されているものが20~25%存在しています。

慢性めまい疾患は、脳腫瘍や脳血管病変以外画像診断では診断がつかず、中耳炎のように鼓膜をみればわかるわけでなく、採血検査でも原因がわかりません。心因性、血圧などの循環動態、自律神経の関与も多く、丁寧な問診と繰り返しの聴検・めまい検査などおこない,慎重に診断を進めていきます中には月~年単位で長期に経過をみて診断されることもあります。めまい疾患は複雑に絡み合い心因性めまい・内耳性めまい・めまい関連片頭痛・肩こりのふらつきなど重なっていることも多く余計に診断を難しくしています。

 

👉 今回は、2017年以降めまいの疾患概念として国際的にも統一されてきた慢性めまい疾患の一つのPPPDという病気の話です。

今まで原因不明のめまい症(20~25%)とされていた疾患の中にかなり含まれていると考えられています。PPPDの情報発信している新潟大学耳鼻咽喉科では、慢性めまいの23%はPPPDと診断されています。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)

PPPD(日本めまい平衡医学会:サイト

PPPDが、診断がつきにくい理由

世界的めまい学会のバラニー学会で診断基準がまとめられたのが最近の2017年のため耳鼻咽喉科医も含め医師に広く認知されていないため。

症状が3か月以上持続する機能性めまい疾患のため、3か月以上経過を見る必要があり、すぐに判断することが出来ないため。

その上、聴検・めまい検査・画像検査・採血などで特異的所見が無い。

PPPDは耳・脳・不安症・うつ病とは独立した疾患で、症状以外明らかな異常がない疾患。

症状と経過のみで診断をつけることが必要になるため。

診断基準は以下の5つの項目すべてを満たすことが必要。

A: 浮遊感,不安定感,非回転性めまいのうち一つ以上が,3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する。

症状は長い時間(時間単位)持続するが,症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。

症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。

B: 持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが,以下の3つの因子で増悪する。

立位姿勢

特定の方向や頭位に限らない,能動的あるいは受動的な動き

動いているもの,あるいは複雑な視覚パターンを見たとき

C:この疾患は,めまい,浮遊感,不安定感,あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患,他の神経学的・ 内科的疾患,心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。

急性または発作性の病態が先行する場合は,その先行病態が消失するにつれて,症状は基準Aのパ ターンに定着する。しかし,症状は,初めは間欠的に生じ,持続性の経過へと固定していくことが ある.

慢性の病態が先行する場合は,症状は緩徐に進行し,悪化することがある.

D: 症状は,顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている.

E: 症状は,他の疾患や障害ではうまく説明できない.

 

#(補足PPPDは先行疾患があり、その病態が無くってからめまい・ふらつきパターンに移行します、PPPDを発症させる頻度が高い先行する急性発作性病態は

末梢や中枢性の前庭疾患(25~30%)

前庭性片頭痛(15~20%)

浮動感を示すパニック発作や不安(30%)

脳震盪やむち打ち(10~15%)

自律神経障害(7%)

などです。薬剤や不整脈によるめまい・浮遊感は3%以下とPPPDになりにくい。

 

めまいの原因で分類すると、各科の報告で異なります、概ね

耳から(30~50%)中枢(脳)から(10~20%)精神障害(10~20%)原因不明(10~20%) 他の原因が20~40%になるようです。

以下のように、PPPDは障害部位がはっきりせず、精神疾患ではない機能性めまいになります。

非器質性めまいの国際分類

不安症に関連するめまい

うつ病に関連するめまい

転倒恐怖症

めまいに関連する病気不安症

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患

持続性知覚性姿勢誘発めまいPPPD

 

ポイント:

👉 平衡感覚は、視覚 耳(前庭)体(足などからの体性深部感覚)の三つの信号を小脳で統合してバランスをとっています。PPPDは目と体からの入力バランスの崩れと考えられています。慢性のPPPDは、急性期の前庭機能の影響は3ヶ月で回復(前庭代償の完成)しますので3か月以上経過をみて判断します。

前庭疾患,精神疾患とは独立した非器質性めまい疾患ですが、心因性めまいや器質的前庭疾患が合併している場合もあります。

前庭めまい疾患で最も多い良性発作性頭位めまいは朝に起きやすいが、PPPDは昼夕方に症状が悪化しやすくなります。PPPD単独では、回転性めまいは認めません。PPPDは自然寛解が難しく症状の増悪軽快を長期に繰り返します。

 

治療:次の三つが重要です。

前庭リハビリ

抗うつ薬(SSRI)

認知行動療法

前庭リハビリは、PPPD患者の内部感覚へ刺激を与えめまいへの順化を促します。

効果を得るには月単位(最低数ヶ月)で考えます。症状は一進一退することも多いことを理解して下さい。

日本の医療制度では整形外科や脳疾患後のリハビリのように、保険診療になっていません。外来整形やリハビリ病院のようにST、PT、技師のようなパラメディカルスタッフの協力を得て治療することは出来ません。

耳鼻咽喉科では医師の自助努力で、自宅でできるように指導を行い対応しています。定期通院でモチベーションを維持します

抗うつ薬は、観察研究で有効性が報告されていますが、吐き気、傾眠、めまい、ふらつきの問題や、やめる時も離脱症に注意が必要になります。アクチベーション症候群を生じることもあります。アクチベーション症候群とは、投与初期の2週間以内や増量期に起こりやすい不安、焦燥、不安、衝動性などの症状です。

PPPDはめまいに対する過敏性が形成されているため慎重に服用を考えます。PPPDの前身の慢性めまい疾患への効果は50~70%程度、うつ病の投与量の半分程度で効果を認めることが多いようです。2~3ヶ月で効果がみられ少なくとも1年継続が推奨されています。精神疾患の有無に関係なく効果を認めるため、中枢セロトニン神経系への作用が関与していると考えられています。現在、慢性疼痛にたいして鎮痛作用を目的とした抗うつ薬投与が行われている考え方と同様と推測されています。

認知行動療法とは、ストレスな状況にいたる否定的な考え方(認知)に働きバランスよい適応的な考えをつくり、気持ちを楽にする精神療法です。

我々は、ダイエットを行う時、毎日体重を測定してなぜ体重が増えたかを考え悪い行動や食習慣を是正していくと思います。これと同じことを、こころの問題について行い、誤った考え方や物事のとらえ方を自分で気づき歪んだ認知を適応的な考えに変更して、気持ちを楽にする方法です。

めまいに対しての簡易的認知アプローチとしてめまい日誌を作成して、誘発因子として、睡眠不足、疲れ、気圧の変化、人混み、スマホ・PCの視覚刺激、ストレス、生理との関連、肩こり、場所の変化など見極め、本人に誘因を自分で認識してもらい対応していきます。

ひとつの方法として、毎日のめまい・ふらつきのため、不安を感じている方は多く毎日の腹式呼吸の習慣を身に着け心の安定をはかります。最初は2秒で鼻から吸い、4秒で口からはく、5秒で吸い10秒ではくまで、少しずつ長くしていきます。

~~本格的認知行動療法について:精神科~~

世界的に見ると,認知行動療法は精神療法の世界標準となっていますが、日本においては,普及が十分に進んでいません。

うつ病、強迫性障害、パニック障害、PTSD、社会不安障害、神経性過食症は、認知行動療法の保険適応となっていますが、取り決めが多く保険点数が低いこともあり実施施設は少ないようです。自費診療で行うところもあるようです。通常は、精神科・メンタルクリニックが行います。この治療のメリットは再発率が低く、精神薬のような副作用がないことです。

PPPDへの認知行動療法は短期的には効果をみとめるようですが、長期的にはこれからの検討課題となっています。

患者さんに、この病気の病態生理を理解してもらい認知行動療法の必要性を理解してもらうことから始まります。患者さん自身が自己観察を行い、めまいに対する過剰な恐怖など自覚することから始まるようです。精神科の近藤医師は、第3世代認知行動療法の一つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピーのPPPDへの効果を報告しています。3世代認知行動療法とは、瞑想を利用したマインドフルネスを利用してネガティブな考えをつかまえ受容し対応していくやり方のようです。前庭リハと併用して行います。認知行動療法は、精神科医が誰でもできるわけではないようで一定の研修と臨床経験を必要とするようです。

通常の内科や耳鼻咽喉科の外来で行えるものではありません。

 

まとめ:

この疾患PPPDは、何科に行けば治るというものではなく、めまいに精通した耳鼻咽喉科医や認知行動療法に精通した精神科・心療内科医がPPPDの疾患を良く理解して対応することが重要になると思われます。臨床心理士や理学療法士の協力を得ながら行うことが望ましいのですが、日本の保険医療制度では難しいのが現状です。

老年症候群、心因性めまい、薬剤性めまい、椎骨脳底動脈循環不全、外リンパろう、脳脊髄液減少症など慢性化しやすいめまい・ふらつきの原因をしっかり鑑別して行うことが前提です。

 

参考資料

慢性めまい治療における認知行動療法と 前庭リハビリテーションの役割:近藤 真前 Jpn J Psychosom Med 58:517-523, 2018

姿勢誘発めまい(PPPD)の診断基準:堀井 新 Equilibrium Res Vol.76(4) 316~322,2017

めまいリハビリ 五島 史行 金原出版