自分で行う声がれ対策(声の衛生)
2019年、新年おめでとうございます。最近、急に寒くなり空気が乾燥し声がかれやすくなる時期です。『今回は声のケアの話』です。
一時的な声がれは、心配いりません。2週間以上持続する場合や、反復する声がれは、専門医での精査が必要です。癌が隠れていることがあります。まずは耳鼻咽喉科専門医での精査をお勧めいたします。40歳以上の喫煙習慣がある男性と中高年、高齢者の方は用心してください。
メタボや食事の生活習慣に問題がある声がれが、最近増えています、胃食道逆流症による声がれ(喉頭肉芽腫)です。声の衛生以外に食事・生活習慣の改善が急務となります。
高齢の方や声を使わない老人の声がれには、声帯萎縮が進行していて、嚥下機能低下、筋力低下(フレイル、サルコペニア)、唾液分泌低下(ドライマウス)の確認が必要です。
誤飲性肺炎のハイリスクとなりますので、声の衛生以外の対応が必要です。
当院HP;自宅でできる誤飲性肺炎予防、自宅でできるドライマウス対策も参考にしてください。
当院HP:『声がれ』治療の流れを記載しています。
加齢や生活習慣による声帯萎縮や喉頭肉芽腫の診断は耳鼻咽喉科専門医受診が必要です。
◆声帯炎: 声帯の炎症 話過ぎや風邪の時に出現
これが持続すると下記へ移行しやすくなります。
*声帯ポリープ: 片側 血豆になることもあります。
*声帯結節: 両側 声帯のたこ(ペンだこ様) 習慣的に声を使う人 教師、歌手、アナウンサー、保育士に多い
*ポリープ様声帯: 声帯全体のむくみがあり、お酒とたばこを吸う更年期以降の女性に多い
◆喉頭がん: 声がれが、2週間以上持続するときは精査が必要 特に40歳以上の喫煙習慣がある男性はハイリスクです。
*反回神経麻痺:肺がん、甲状腺がん、食道がん、動脈瘤、縦郭腫瘍などが原因で、喉頭以外から生じる反回神経麻痺による声がれもあります。
◆声帯萎縮: 加齢と会話の減少で起こります。出しやすい声で『アー』発声持続時間が男性15秒未満 女性12秒未満は疑います。65歳以上の7割程度の方がいると報告されています。
◆喉頭肉芽腫:生活習慣病として最近増加が著しい胃食道逆流症が関連して生じ、のどに負担がかかりすぎると起こしやすくなります。
~~自分で行う声の衛生(声がれ対策)➡健康な声を保つための注意事項~~
重要なことは以下の二つです。音声治療(声がれのリハビリ)を行う前段階としても重要です。
●加湿:喉を乾燥させない、声帯粘膜の保護に重要。
●喉に負担をかけない:
音声治療では、喉頭は意識しないで、肺の気流と鼻腔と咽頭共鳴の促進を意識します。
ベルヌーイ効果など声の出る仕組みとやわらかい声帯粘膜の重要性を理解すると、上記のことがもっと理解できるようになります。
声帯粘膜は乾燥に弱く、良い声帯の動き(数百回/秒)を得るには、肺からの気流と声門下加圧が重要(腹式呼吸)で、喉は力を抜き意識しないで発声することが大事です。
👉 加湿は、1体内 2局所の口腔と口頭 3環境を考えて対応します。
1体内脱水に気を付けます、脱水や夏の熱中症の時の水分補給、利尿作用があるお酒やカフェイン飲料を控える、高血圧・心不全の利尿剤による影響を最小限にします。
2局所の乾燥には、水分をまめに補給、食事を30回噛み唾液を促します。
鼻呼吸(加湿、加温、粘膜免疫、除菌機能あり)を意識します。
口呼吸では、朝は口腔乾燥になります。必要な方には夜間マスクを使用します。
唾液分泌は、刺激で出やすくなるので、夜間は唾液分泌が低下します。
イライラすると交感神経が働き、口が渇き易くなりますので、穏やかに生活しましょう。
飴をなめる時は、一口水を含みます。
3秋から冬にかけて湿度が低くなり空気が乾燥し、同時に寒くなるためエアコン、石油ファンヒーターなどの暖房による影響で室内での乾燥がさらにひどくなります。加湿器を使用し、温度設定を控えめにして、濡れタオル・洗濯物を干すなど対応します。
👉 喉の負担をかける発声・環境・食事生活習慣を控える。
*大声、ささやき声を避ける、ささやき声も喉に負担となります。
*運動時の発声を控える。
スポーツの時の気合をいれるため、『サー、ヨシ、エイ』などです。
*大声を出す時は、マイクやメガホンを使用する
*かぜの時大声を出さないで声・のどを休める
*騒音化では話さない
*タバコやホコリを避ける
*早口や力んだ発声を控え、楽なリラックスした姿勢で話す。
*激しい咳や咳払いには水を飲みます、咳は喉を傷めます。
*胃食道逆流が疑われる時は、食事・生活習慣を見直します。痩せている方も、起こしますので注意しましょう。
👉 喉の衛生にとって避けた方が望ましい薬
*鼻水や風邪薬:抗ヒスタミン薬、抗コリン作用のため乾燥
*降圧剤の一部:利尿薬による乾燥
*安定剤、抗精神薬、眠剤の一部:抗コリン作用による乾燥、喉頭筋緊張の異常
*抗パーキンソン病薬の一部:抗コリン作用のため乾燥
*ぜんそく薬の吸入ステロイド:声帯粘膜の器質的変化 カビによる喉頭炎
*ステロイド内服: 音声ピッチの低下
*抗凝固薬、抗血小板薬:血液サラサラのため声帯血種
それぞれの薬の必要性については、担当医と相談してください。
参考図書
米国耳鼻咽喉科学会『声がれ』ガイドラインHP 音声障害ガイドライン2018:金原出版 図解;やさしくわかる言語聴覚障害:ナツメ社 東京医療センター;感覚器センターHP