自分で行うスギ花粉対策(黄砂・PM2.5)
2月中旬以降から3月頃までは、スギ・ヒノキ花粉症の患者さんが急に多くなります。人によっては、4~5月初旬まで持続します。どうしたら症状が出ずにすむのか、セルフケアを中心にまとめてみました。
◆一般的な自分で行う花粉予防は、ネットで検索すればたくさん出てきます。
花粉症ナビ:自分でできる花粉症対策(サイト)をまず見てください。よくまとまっています。
根本的な対応は、➊体質を変えて治すこと、❷花粉に遭遇しない事です。
体質を変えることは、今回はのべません。薬物治療は対象療法ですので、担当医と相談してください。2月頃から花粉症初期療法の服用も考えましょう。花粉症に遭遇しない事を中心に、特に気を付けていただきたい事を説明します。花粉症が出るかどうかは、個人によって違い、居住地域と生活・遊び・仕事などの行動範囲で異なります。
➡ 自称花粉症
病院で診断を受けた人は良いのですが、自称花粉症の方が多くいらっしゃいます。クリニックでも、検査希望せず、本人の花粉症の診断の申告で、治療を開始して、数年たって検査をしたら、スギ花粉症ではなかった方も時々みかけます。スギ・ヒノキ花粉症ではなく、老人性鼻炎・寒暖差による鼻炎、ダニアレルギーの季節的な悪化、イネ科花粉などスギ花粉症以外の疾患であることがあり、このような方には2月から4月の花粉症対策は必要ありません。症状があれば、薬での一時的な対症療法となります。鹿児島では少ないですが、東北以北に居住歴ある方は、ハンノキ・シラカバ花粉をスギ花粉と間違えることがあります。
報告では、自称花粉症の4~5人に1人は、本当はスギ・ヒノキ花粉症ではない方がいらっしゃるようです。
花粉飛散に一致して、鼻や眼の症状があり、採血での特異的IgE陽性または皮膚テストが陽性であれば、ほぼ間違いなくスギ・ヒノキ花粉と考えます。
➡ 避花粉地(スギヒノキ花粉が飛ばない地域)と行動指針
避花粉地は、外国、北海道、沖縄、奄美大島、八丈島、小笠原諸島、長崎県的山大島です。スギ・ヒノキ花粉シーズン中は、一度出かけてみてはいかがでしょうか。鹿児島に近い種子島は、スギ林はありますが、地形の関係からか、患者さんからの話では、症状が出にくいと聞きます。
◆2008年の花粉症有病率が高い県は 全国平均26.5%
➊山梨(44.5%)❷高知❸埼玉❹栃木❺静岡❻岐阜❼奈良❽三重・・・東京(32.1%)と続きます。関東地方が最も多く、次に関西、四国、中国地方が多くなります。
◆2008年の花粉症有病率が低い県は
➊北海道(2.2%)❷沖縄❸宮崎(8.2%)❹鹿児島(12.1%)❺岩手❻青森❼島根❽熊本(13.6%)と続きます。北部九州の有病率は中間程度です。宮崎と鹿児島は、沖縄と北海道を除いて最も少ない県の一つになります。 東北も少ない地域です。
◆2007年のスギ人工林比率が高い県は、
➊宮崎(38%)❷秋田❸徳島❹大分(30%)❺奈良❻福井❼富山❽山形と続きます。九州では宮崎、大分がスギが多い県となります。
◆2007年のスギ人工林比率が低い県は、
➊沖縄(0%)❷北海道❸香川(2%)❹大阪❺長野❻山梨(6%)❼広島❽岡山・・・・東京(11%)・・・・鹿児島(17%)と続きます。
香川は、スギ人工林比率が非常に低い県ですが、他の関西四国地区とほぼ同じように有病率(21.5%)は高く、周辺県からの風向きの影響が考えられます。県単位のスギ人工林比率と有病率は比例せず、宮崎は最もスギ人工林比率が高く(38%)、有病率は低率(8.2%)です。山梨、東京、埼玉などは、スギ人工林比率は低いが、有病率は高率です。
👉スギが多いから花粉症になり易いわけではない!!
『花粉症有病率の悪化関連因子』
排気ガス、地表面のアスファルト、気温、日照時間や降水量(花粉は夏の日射量が多く、降水量が少ないほど飛散量が多くなるといわれる)風向き、樹齢(30年以上で花粉量増加)などが有病率には関係してきます。単純に、その地域にスギが多いからスギ花粉症になり易いわけではありません。
鹿児島からは、北部九州や関東に出かける時は十分な予防が必要です。スギ人工林比率が高い大分、宮崎に出かける時も注意して下さい。
➡ 天気予報・花粉症情報をまめに確認する
花粉飛散情報の要注意日(花粉症ナビから)
1:天気が晴れまたは曇り
2:最高気温が高い
3:湿度が低い
4:やや強い南風が吹き、その後北風に変化したとき
5:前日が雨
以上から、前日または当日の未明まで雨で、その後天気が急に回復して晴れ、南風が吹いて気温が高くなる日が要注意日となります(日本気象協会作成)1日のうち飛散の多い時間帯(午後1時~3時頃 夕方午後5時~7時頃《注:地域によって差があります》)の外出もなるべく控えましょう。
👉 花粉飛散予報がシーズンになると、ネットやテレビで配信されますが、クリニックでの実際の花粉症悪化による受診患者数などから判断すると、花粉予報は、当たっていないこともあります。
上記の花粉飛散情報の要注意日を覚えて、毎日の天気予報から、自分で判断した方がよいこともあります。
下記のほぼリアルタイムで発信される花粉情報が、信頼が高いので、飛散シーズンは毎日数回、出かける場所も含めて確認しましょう。
◆九州各県は、国立福岡病院発信の花粉情報 (サイト)スギとヒノキ別々に確認できます。
➡ 外出時の注意点と眼と鼻のセルフケア
帽子・メガネ・マスク・マフラーを身につけて。コートもツルツルした素材を選びましょう。ウールは控えます。花粉症は、目と目の周囲の皮膚、そして鼻に症状が強く出ますので、眼鏡とマスクの選択が重要です。
◆めがね:
プラスチックの覆いがサイドパネルとして一体化した眼鏡が効果的です。結膜上の花粉数は、花粉症眼鏡で35%、通常眼鏡で58%に減少させます。飛散時期は、コンタクトレンズは控え、眼鏡を使用します。
➡ 市販点眼液の使用法
セルフケアとして、通常点眼液に含有されるベンザルコニウム塩化物などの防腐剤による角膜上皮障害が問題となるため、防腐剤無添加の市販の人工涙液での頻回点眼を勧めます。人工涙液点眼で洗眼効果は十分あります。冷蔵庫で冷やしてから点眼すると症状緩和効果が高まることがあります。
カップ式洗浄器具は、眼周囲の皮膚の汚れや皮膚に付着したアレルゲンをかえって眼表面に接触させることになりますので使用には注意して下さい。具体的には、市販の人工涙液の点眼(ソフトサンティア、ロートソフトワン点眼)または点眼型洗眼型ウエルウオッシュアイを、薬用点眼液の使用前に使います。花粉を洗い出した後に、市販の薬用点眼(抗ヒスタミン)を使用すれば効果が高まります。
ガーゼより鼻にフィットした不織布マスクが効果的。鼻内花粉数は、花粉症マスクで16%、通常マスクで29%に減少させます。鼻洗いも効果がありますが、鼻閉がひどい時は控えて下さい。ぬるま湯で0.9%の生理食塩水(500mlの水に4.5g程度の食塩を添加)で行ってください。
◆ワセリン(プロペト)
外国では、鼻の入り口に塗ると効果があるようです。
➡ 花粉症セルフケア3原則
➊花粉をもちこまない:眼鏡 マスク 帽子 ポリエステル系上着使用 ウールは控える。
❷花粉を排除:
手洗い、うがい、洗顔、鼻と眼の洗い、帰ればシャワーまたは入浴をして洗髪もします。洗顔と洗髪は、スギ花粉皮膚炎である上・下眼瞼炎の予防にもなります。
❸花粉を室内にまき散らさない:
外に洗濯物・ふとんを干さないで部屋干しまたは乾燥機使用、どうしても外に干したければ朝早めに行います。窓を閉める、空気清浄器を使用。
初期療法開始時期
抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬は、花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で服用。鼻噴霧ステロイドも初期療法として、シーズン中の鼻と眼症状ともに効果認めます。
➡ 忘れてはいけない黄砂飛来とPM2.5 (特に九州北部と西日本)アレルギーの方だけでなく健康者にも目の痒み・咳・くしゃみ・喉の違和感などを生じさせます。
スギ・ヒノキ花粉症と同時期に問題となる黄砂・PM2.5情報にも気を配り、花粉症と同様のセルフケアが必要になります。PM2.5は粒子が小さく、通常のマスクでの防御は限られますので、外出を控える事が大事です。黄砂・PM2.5は花粉症の増悪因子と考えられています。下記のHPで2~5月は確認してみましょう。
*気象庁PM2.5分布 鹿児島(サイト)
*九州大学 黄砂とPM2.5 黄砂とPM2.5を同時に確認(サイト)
*気象庁黄砂分布 大気と地表別々表示 動画表示あります。(サイト)
中国大陸内陸部の砂漠で風によって上空に巻き上げられた土壌・鉱物粒子が東アジア広範囲に飛来して、大気中に浮遊あるいは降下する現象。日本では4月をピークに2~5月に観測日数の9割が観察されます。スギ・ヒノキ花粉飛散と同時期のため、黄砂粒子は,アレルギー反応を誘発し、花粉症と喘息の増悪に関与する可能性が指摘されています。黄砂はその他にも、皮膚炎、急性心筋梗塞、脳梗塞への影響が報告されています。
◆PM2.5:
微小粒子状物質(PM2.5)2.5µm以下の粒子で、スギ花粉の大きさは30µm程度に比べると、PM2.5は非常に小さいため肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系(肺がん、喘息など)や循環器系へ影響を与えます。花粉の粒子は大きいため、鼻など上気道で、主に症状が出現します。中国大陸の都市部からの飛来と自国の自動車・工場・タバコ・火山灰なども関与します
『PM2.5の生成について』
➊物の燃焼による直接排泄(焼却炉、喫煙、火山、自動車など)されるもの
❷環境大気中の化学反応により生成されるもの
があります。
『花粉症との関係』
PM2.5の一部であるディーゼル排気粒子が、鼻アレルギーおよびアレルギー結膜炎を悪化させる報告があります。
『黄砂との関係』
日本へ飛来する黄砂粒子は4µm程度が主で、2.5µm以下の粒子も含まれているため、PM2.5濃度も上昇することがあります。西日本を中心に、我が国へ流入してくる可能性があります。
『PM2.5の人への健康障害のメカニズム』
➊DNA損傷 ❷酸化ストレスの亢進 ❸炎症性サイトカインの産生亢進
が考えられています。
PM2.5日平均濃度が10µm/m³上昇するごとに循環器系死亡1.2%~2.7%増加、呼吸系死亡0.8~2.7%増加することが認められています。
👉 PM2.5の基準値として以下の基準がありますので、活動の基準にしてください。
1日平均値
70µm/m³以上:不要不急の外出、屋外での長時間の激しい運動を控える。
35µm/m³以下:健康を保護する上で望ましい基準
参考資料 環境による健康リスク;日本医師会 花粉症の都道府県別有病率HP 厚生労働省;花粉症特集HP
kyowa kirin 花粉症ナビHP 環境省;PM2.5に関する情報HP