吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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肥満と喘息:ダイエットで喘息が治る?

2019-05-07

 

 肥満は万病のもと

肥満が生活習慣病、血管の病気、睡眠時無呼吸症など全身に影響を及ぼすことはご存知だと思います。その他にも関節の疾患、月経異常、不妊、癌の発症にも関連しているとことがわかってきました。脂肪細胞から分泌される生理活性物質のバランスの崩れが原因と考えられています。

肥満と癌の発症(国立がん研究センター調査)

閉経後の乳がん

大腸がん

肝がん

は肥満との関連がほぼ確実とされています。

 肥満と喘息の関連

肥満とアレルギーとの関連では、喘息に関して、肥満が女性の喘息を悪化し、中年女性では特に顕著、また肥満でアトピー性皮膚炎の重症者が多くなると報告されています。

👉 肥満・アレルギー性鼻炎・中年女性であればさらに要注意

アレルギー性鼻炎は喘息のリスクファクターですので、アレルギー性鼻炎がある肥満の中年女性は喘息が悪化しやすいと考えられます。最近では、喘息を類似した気道疾患の集合体ととらえ,観察可能な症状・兆候により分類フェノタイプ分類)されています。今後は、単なる重症度から治療方針を決めるのではなく、このフェノタイプ分類に基づいて適正な治療が進められるようになると期待されています。実際には、下記の病態が重なっていることもあります。

 

喘息フェノタイプ

好酸球増加タイプ

早期発症アレルギー性 アトピー型(IgE高値):乳幼児期から発症して、子どもさんや若い人に多く、ダニの関与が高い。 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎の合併が多い。

後期発症好酸球性 非アトピー型:成人発症 好酸球性副鼻腔炎合併 自然免疫が関与します。

アスピリン喘息 非アトピー型:成人女性に多い 嗅覚障害・好酸球性副鼻腔炎合併 ロイコトリエンが関与します。

運動誘発性:アスリート喘息、通常の喘息のコントロールと抗ロイコトリエン薬が効果を発揮します。気道粘膜の脱水と冷却、気道上皮損傷による気道過敏性の亢進が出現。

 

非好酸球性タイプ

肥満性:中年女性に多く、しばしば重症化します。主に内臓脂肪が関与し、ダイエットが重要です。

好中球性:喫煙者に多く、しばしば重症化します。大気汚染や好中球性の慢性鼻副鼻腔炎が関与が考えられ、マクロライドの効果が期待されています。

ステロイド抵抗性で、現在、生物学的製剤に適応はなく、リモデリングによる気流制限が高度な場合は気管支熱形成術が適応されます。

👉 喘息・咳喘息がある方は、自分は上記のどれに該当するか考えてみましょう。上記が重なることもあります。

 

 肥満喘息

非アトピー型で好酸球が増加せず、直接的なアレルギーが介在しない機序が考えられ、喘息の一般治療薬のステロイド吸入療法の効果が低いと言われています肥満対策が重要です。日本人の報告では、好酸球が上昇している報告もあります。

 

肥満喘息発症メカニズム

最近、脂肪細胞は、生理活性物質の分泌臓器と考えられるようになってきています。

脂肪細胞からの生理活性物質

レプチン増加やアディポネクチンの低下による気道過敏症の亢進

PAI-1増加による気道リモデリング

TNF-α増加による慢性炎症悪化と気道過敏性の亢進

等の分泌物質が関与しています。

肥満による肺機能低下

運動不足による気道過敏性の亢進(運動は気道過敏性へ効果の報告あり)

肥満や睡眠時無呼吸症による胃食道逆流症

うつ

なども関与します。

 

脂肪細胞からの生理活性物質のその他の機能

TNF-α・・血糖値を上昇 PAI-1・・血液を固まりやすくする

レプチン・・食欲抑制 アディポネクチン・・血糖値や血圧を下げる、癌細胞増殖の抑制

脂肪が過剰にたまった脂肪細胞では、アディポネクチンを減少させます

 

➡ 肥満対策

日本ではBMI25以上となっていますが、ダイエットの必要性は、内臓脂肪型肥満かどうか生活習慣病に伴う肥満かどうかを考えることが重要です。高齢者の場合のダイエットによる痩せすぎは、サルコペニア(筋肉萎縮・減少)をまねき骨折からの寝たきりなど、病気を発症しやすくなります。東アジア人は、食べ物からのエネルギーを皮下脂肪ではなく内臓脂肪としてためやすく、女性より男性のほうが内臓脂肪としてたまりやすくなります。欧米人は、皮下脂肪にたまりやすいため、欧米での肥満はBMI30以上となっています。

 

👉 以下の脂肪の種類により、健康効果が異なりますので、自分はどのタイプかを確認してみましょう。

肥満の種類

内臓脂肪型肥満喘息 高血圧 糖尿病 脂質異常症と関連

皮下脂肪型肥満:関節の疾患 睡眠時無呼吸症と関連

異所性脂肪: 脂肪肝(肝がんが進行)、脂肪筋(糖尿病へ進行)、脂肪膵(糖尿病へ進行)

 

ダイエットにより内臓脂肪と異所性脂肪から減少し、皮下脂肪の減少は1年以上かかりますので、根気よく続けます。

ダイエットの方法

肥満タイプの確認方法

おなかに軽く力を入れ、へそまわりの肉をつかめるかどうかチェックします。つかめる人は皮下脂肪型肥満

簡易的には、へ周りの腹囲 男性85cm以上 女性90cm以上の方は、内臓脂肪型肥満されていますが、ウエストでの評価は相関が低く、腹部CTでの評価が必要と言われています。

3%ダイエット:

内臓脂肪型肥満は、3~6ヶ月で体重3%減らす、皮下脂肪型肥満は、6~12か月で体重の3~5%減らす目標達成すれば、また3%ダイエットを試みます。

毎日体重測定:なぜ体重が増加したのか毎日考えます。

リバウンド対策:

筋肉は糖を取り込む作用がありエネルギーを多く消費するので、筋肉量を増やしながらできる運動を勧めます

インターバル速歩,  自転車こぎ, 水中歩行など筋肉が落ちない運動を行います。

急激な減量をしない事

極端な食事制限で大幅に体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉量が減ります。筋肉量が減ると消費エネルギー量が減り、糖質や脂質がたまりやすくなり、痩せにくくなります。

ダイエットの具体例

糖質制限ダイエット

地中海式ダイエット

時間栄養学ダイエット

お金をかけない肥満&健康対策当院コラムを参考に対策を)

肥満喘息への効果

ダイエットで肥満の改善に伴い、脂肪細胞からの悪い生理活性物質の減少、肺機能の改善、胃食道逆流症の改善などで喘息症状の改善が期待できます。

 

参考資料

アレルギー疾患のすべて;日本医師会雑誌、 今日の健康 2019-1

アレルギー 日本アレルギー学会 67(9)1248-1256,2018