吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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汗とアトピー、そして漢方

2018-08-15

It is hot summer day. Dogs do sweat only in their  foot pads and some in their nose, but not in the same way as we human do.  Dog’s mechanism of cooling down is panting with the tongue out.

汗はかきたくない人、汗をかいてすっきりしたい人、汗が多くてこまっている人、人それぞれ汗に対する感じ方があります。
今年の夏は異常な暑さのなかで、毎日、汗だくの方が多く、熱中症の話題がつきません。

☞ 今回は、汗の重要性と、最近の汗とアトピーの考え方、そして東洋医学ではどうかについての話です。

汗とアトピーの結論

アトピー皮膚炎(AD)の患者は汗をかくとかゆくなるため、長い間、汗をかかないような指導が行われてきました。最近では、発汗量の測定法が発展するにつれ、汗をかかないとADとなることがわかってきました。

汗とADとの関係の結論は、汗はかけたほうがよく、汗をかくことを避ける必要はありません。
汗をかいた後は、皮膚表面に長時間残らないよう洗い流す、拭き取るなど対策が必要。
汗はしっかりかいて、ふきとることです。

人類と汗
人類は発汗による体温調整法で、文明を発展させてきました体温調整のために、環境の変化で素早く発汗できるエクリン汗腺を全身に持っているのは人間のみです。イヌ科と猫は肉球と鼻先のみエクリン汗腺あり、毛づくろいの唾液の気化熱を利用して体温調整します。犬なら新鮮な空気を吸い舌を出しあえいで唾液を蒸発させ、象、兎は長い耳を風にさらして、また象は鼻で身体に水をかけ体温調整をしています。馬は特殊で、運動や興奮で発汗するアポクリン汗腺で体温調整しています。馬は人間の2倍の汗をかき、運動時はもっとかきます、エクリン汗腺は足の裏にあります。

人間のアポクリン汗腺は、匂い、腋臭、フェロモンと関係しています。
耳垢のジュクジュクはアポクリン汗腺によるものです。
エクリン汗腺の汗はサラサラで臭いはほとんどしません。

動物に較べ、人間は中枢神経をになう脳が発達しています。脳は熱に弱く、脳が発達するためには、体内で栄養源の摂取に伴う熱産生を調節する必要性がありました。
発汗による気化熱・蒸散を利用した熱産生システムを構築することは、脳の発達に重要な要素となっています。

人間はマラソンのような長距離走を行えるのも発汗能力の高さによります。アフリカの狩猟民族はこれを利用し、獲物の大型獣が体温上昇で走れなくなるまで追いかけて狩ります。先史時代のヒトも同様の狩りを行っていたと考えられています。

赤ちゃんと汗(エアコン使い過ぎによる能動汗腺の低下)
人間の汗腺数は、一人当たり200-500万個といわれていますが、出生後の環境(熱帯、温帯、寒冷地)によって、実際に働く汗腺(能動汗腺)の数は違ってきます。
赤ちゃんは、生まれてすぐは汗をかかず、成熟児では2週間以内に発汗が見られるようになります。満2歳ころには、おとなとほとんど同じ数の能動汗腺が働くようになります。
満2-3歳までの環境で汗をかく能力がある程度決まってしまうわけです。

夏には赤ちゃん時代から、1日に2時間程度汗をかく機会がないと能動汗腺が充分に発達しないと言われています。夏以外の季節では、子どもはおとなの2倍近く汗をかきます。
夏に、赤ちゃんをエアコンの中ばかりで育てるのではなく、戸外でも室内でも、しっかり汗をかく環境と時間が必要です。1日2時間くらいは汗をかかせて、汗をかいた後はシャワーや行水をさせて汗をとり、それから涼しいエアコン環境ですごさせます。

汗をかきにくい大人にしないように赤ちゃんの時から注意して下さい。

赤ちゃんの寝汗について、おとなは環境温度が29度C以下だとかくことが少ないのですが、子どもはもっと低い温度でも寝汗をかきます。
子どもは四季を通じて、眠りついて1時間-1時間半くらいの間に寝汗をかくのが普通です。

 

熱中症と汗
エアコン利用、帽子、涼しい服装、水分や塩分をまめにとることだけでなく、汗が出ないなど体温を外に放出する仕組みがうまく機能しないと熱中症となります。
体温調整に重要な体表面の気化熱について、体重70kgの人が1度下げるには、100ccの汗をかきすべて蒸発しなければなりません

 

 

汗のメリット

皮膚のバリア機能維持
汗は、角質の水分の保持を行いアレルゲンの侵入を防ぎ、皮膚のバリア機能を維持に効果を認めます。
皮膚のバリア機能の維持には、洗浄力が強いボディーソープより、弱い固形石鹸で脂質を守ります。こすり過ぎないこと、長湯を控えることも大事です。

皮膚の温度調整
汗の蒸散による気化熱により、皮膚表面や体内の温度を低下させ、痒みを抑える効果。
乏汗と自律神経失調症では、皮膚乾燥と皮膚の熱感を認めます。

抗菌成分の供給
汗含有の抗菌ペプチドや免疫グロブリンが肌を守ります。

汗の低下がADを悪化

なぜ発汗低下がおこるのか?

ADでは、表面皮膚への汗の排出は低下するが、汗を作る能力は決して低下しているわけではありません。今までは、炎症の結果として汗菅の閉塞が原因と考えられてきましたが、汗菅の閉塞はADでは起きていないことが、わかってきました。
最近では、汗菅のタイトジャンクションの脆弱性のため、皮膚直下の真皮への汗の漏れが、絶えず日常的に生じていると考えられてきています(2018:Shiohara T, Shimoda など)。

汗のディメリット
余剰な汗を長時間皮膚表面に放置すると汗孔の閉塞と汗疹が形成されます。つまり皮膚炎と乏汗の原因となり、皮膚乾燥と熱感を助長させます。

不感蒸泄の汗と違い運動後の汗は、pHが少したかく皮膚には少し刺激となる心配があります。

AD患者での、過剰な汗の対策

汗をかけばシャワー浴
おしぼりで吸い取る
可能なら汗でぬれた衣類を着替える
下着もナイロン・ポリエステルなどの化学繊維でなく吸湿・通気性がよい木綿が推奨されます。

汗をかかせるためには
夏にいつもクーラーの中にいると、汗をかきにくい体質となるため、朝夕の涼しいときに、軽く汗をかく程度の運動を行いましょう。熱中症を予防するためにも4~5月頃からはじめるとよいでしょう。

通常から、スポーツの習慣(有酸素運動)を持ちましょう。
シャワーだけでなく適度な入浴(半身浴など)をしましょう。
必要以上に、冷房や除湿の環境で過ごすことは避けましょう
こうすることで、ベタベタしにくい臭みが少ないいわゆる良い汗かき易くなります

以前までのADに対しての汗をかかない生活活動(シャワーのみ、常時エアコン環境など)をやめることです。

基礎発汗を高める最近の研究では、ヘパリン類似物質含有保湿クリームの通常量の3倍程度塗布が効果を認めるようです。これにより角質成分の増加をもたらし、アレルゲンの侵入を防ぐことも可能と報告があります(2017:Shiohara T, Shimoda など)。

ステロイド軟膏の単独での長期塗布は、基礎発汗を低下させる一因となります。

漢方では
汗が出なくてかゆい場合は、桂枝麻黄各半湯を用いることもあります。
風邪の時、漢方では、汗がでず発熱・悪寒などあれば、発汗療法として、葛根湯麻黄湯など桂枝麻黄含有方剤を用いて治療します。
桂枝麻黄各半湯桂枝湯麻黄湯を半々入れて作ったものです。
少し汗があり、でたりないときに用います。

話が飛びますが、逆の病態多汗症漢方では、

暑がり寒がり、水太りには防已黄耆湯

皮膚表面の発汗・免疫調整役の衛気が不足すると寝汗が生じます。
皮膚乾燥も混じる、寝汗じとじと肌は桂枝加黄耆湯、寝汗あり元気がない方には補中益気湯、寝汗、虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、黄耆建中湯
上記の方剤には体表の水のうっ滞を治し、免疫調整を行う黄耆が含有されています。

強い口渇、多尿多汗、舌が赤いには白虎加人参湯裏熱)、
夏バテ、口渇、尿が少ない方には五苓散水毒)、
のぼせ発汗、下肢の冷えには気逆として、桂枝甘草含有の苓桂朮甘湯苓桂味甘湯気逆)、

過緊張で手汗が多い場合は、四逆散を用い、ストレスで胸脇が痛むものは香蘇散を加味します;柴胡疎肝湯気滞

など使用いたします。

乾燥肌(血虚・陰虚)と漢方での対策

西洋医学では、乾燥肌・痒みに対してステロイド軟膏、保湿剤、掻破を防ぐため抗ヒスタミン薬を使用するのが一般的です。

漢方では漢方の考え方によるバランスをとることを重要視します。
気・血・水や寒・熱や五臓論などによる証に基づき処方を決めますので、
乾燥肌は血虚・陰虚と関連が深く、以下に説明していきます。

実際の現場で慢性の病態には血虚・陰虚+αを考え、お血・脾気虚・腎虚などの方剤を加減して処方します。悪化時の局所所見ジュクジュク化膿、水泡、発赤など観察のうえをさらに幅広く加味していきます。よくわかる子供の漢方:皮膚編参照して下さい

血虚:
皮膚表面では、加齢とともに、肌がカサカサ、爪が割れやすく、髪が抜けやすくなる漢方の血が不足した状態(ただの貧血とは異なります)を表します。表面的な症状だけでなく、不眠、集中力低下、目のかすみ、動悸、こむら返りなども血虚を意味します。
アトピー性皮膚炎老人性皮膚搔痒症の皮膚症状は血虚と考えます。

陰虚:
中医学では陰は寒と水を意味し、陰虚とは、水が不足し火が興り、熱(虚熱)が生じます。陰虚とは血虚+熱を意味します。陽不足の陰虚でも、寝汗があります。

陰虚では、血虚と同様の皮膚表面の乾燥の他に、身体が痩せ、大きい筋肉は脱落し(サルコペニア)、手足がほてり、めまい、耳鳴り、口渇、舌乾燥、兎糞便を伴います。

皮脂分泌悪く、皮膚乾燥あれば四物湯基本処方となり、色々な四物湯配合処方を用います。月経不順、内分泌・自律神経の異常にも応用します。

痒み皮膚乾燥で、老人や冷えには当帰飲子

慢性炎症と皮膚乾燥には温清飲、青年の副鼻腔炎合併には荊芥連翹湯、幼児学童の扁桃の反復感染には、柴胡清肝湯
貧血や元気がないときは十全大補湯

四物湯が入っていない桂枝加黄耆湯は、寝汗(自汗)や皮膚乾燥などの表虚・衛気不足に使用します。虚弱体質の腹壁軟弱、腹直筋の張る小児には、脾気虚の黄耆建中湯、元気がないおとなには補中益気湯を使います。

皮膚症状以外では四物湯配合処方として、
寒証の月経不順、手足のほてり、口唇乾燥には、温経湯。熱証の月経不順は温清飲
体力低下、筋肉萎縮、屈伸むずかしい関節痛には大防風湯。
冷え、血行障害、関節筋肉痛、酒飲みには疎経活血湯など多数あります。

中医学では、陰虚六味丸、滋陰降火湯など用います。

関連自院HPコラム よくわかる子供の漢方:皮膚編

参考資料
アレルギー 2018、Vol67:6,7        漢方治療 44の鉄則(メディカルユニコーン)        中医学入門   神戸中医学研究会 東洋学術出版社        漢方診療のレッスン(金原出版)
飯塚病院 漢方診療科HP        小児科医:澤田 啓司のブログ         汗;ウイキペディア