吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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妊婦&授乳と薬:飲んで大丈夫?

2019-02-26

薬は通常の人にとっても、作用があれば副作用もあるとお考えください。
妊婦・授乳婦さんは、それ以上の問題点が多くあり服用は慎重になります。

妊婦と薬のリスクと授乳の時の服用の危険度は違います
妊婦と薬の使用は慎重に対応する必要がありますが、授乳と薬では、妊婦で服用できる薬の他に、多くの薬の服用ができます。
授乳は人工乳よりメリットが多く、授乳と服用を両立できることがほとんどです

👉 まず妊娠と薬について学びましょう!!

流産と奇形の自然発生率
流産の自然発生率15%前後
奇形の自然発生率3%前後(ベースラインリスク)
奇形と流産のほとんどは自然経過の中で起こっています。

薬剤の奇形への影響0.02%程度
奇形の中で薬が原因の奇形は1~2%

薬が原因の奇形は、てんかんの患者さんが、催奇形性が明らかな抗てんかん薬などを使用したまま妊娠継続するしかない場合がほとんどです。
催奇形性のはっきりした薬以外が原因となる確率は非常に低いものと考えられています。

妊娠の時期と薬の影響は異なります

妊娠3週まで(最終月経の初日から計算します)
この時期は、薬による奇形の影響は出ません
薬による有害な影響があった場合は、着床しないか流産の結果となります。
不妊治療中であれば、担当の産婦人科医と相談して服用して下さい。

妊娠4週~15週
特に4週~7週は重要臓器ができる絶対過敏期催奇形性に対して最も過敏な時期)
8~15週は薬に対する過敏性は低下する時期です。

16週~分娩まで
催奇形性の心配はなくなりますが、胎児毒性が問題となります。
胎児毒性とは、お腹の赤ちゃんの発育や機能に悪影響が及ぶことを言います。
服用するとそのほとんどは胎盤を通過し、お腹の赤ちゃんにも届いてしまします。
妊娠初期より妊娠後期に服用すると出やすくなります。

~~催奇形性が明らかな薬妊娠4週~15週で問題)~~

高リスク(25%<)
サリドマイド、
男性ホルモン、
蛋白同化ホルモン(筋肉増強剤です;医療用ステロイドとは違います)

中リスク(10~25%)
ワーファリン、
チョコラA

低リスク(10%>)
抗てんかん薬
メトトレキセート(リウマチ)
メルカゾール(バセドウ)
リーマス(躁鬱)
抗ガン薬

アルコール:4週~7週でアルコール摂取は奇形の可能性があります。

~~胎児毒性のリスクのある主な薬と物質妊娠16週~分娩~~

タバコ➡胎児発育不全、早流産など起こします

アルコール➡胎児性アルコール症候群を起こします。 禁酒を!

カフェイン➡胎児の発達に影響します。コーヒー1日2杯まで、WHO推奨摂取量300mgまで

ヨードイソジンガーグル、のどぬーるスプレー

非ステロイド性抗炎症薬ボルタレン、ロキソニン、イブなど)➡鎮痛解熱は、アセトアミノフェンが第一選択

メルカゾールベンゾジアゼピン系抗不安・睡眠薬、降圧薬の大多数

健康志向妊婦さんの落とし穴チョコラAイソジンガーグル

チョコラAビタミンA,レチノール
妊娠初期のビタミンAの多量服用が奇形の発言率を高めることがわかっています。
摂取上限は2700µgRAE/日、推奨量は妊婦では650~780µgRAE/日、
一般的には食事からの摂取で十分と言われています。

マルチビタミンにも含有されていることがあり注意して下さい。
レバーやウナギにも多く含まれているため、妊娠15週までは控えましょう。
不足もよくありませんので、緑黄色野菜や果物に含まれるβ―カロテンから摂取するようにしましょう。
β―カロテンは、体内でビタミンAが不足した場合に、必要な分だけビタミンA変換されるため過剰摂取の心配はありません。

ヨードイソジンガーグル、のどぬーるスプレー
ヨードは甲状腺ホルモンの主原料で、日本人の成人の摂取上限量は3.0mg/日、妊婦は2.0㎎/日です。
海藻を多く摂取する日本人の食生活では、ヨードの欠乏はあまりみられません。
妊娠中の過剰摂取は、新生児の一過性甲状腺機能低下症(クレチン症)を引き起こすと言われています。
イソジンうがい薬:3うがいを1日3回すれば5.0mg/日のヨード負荷となり過剰になります
のどぬーるスプレー:1回2~3噴霧を2回~5回/日すれば、5~19mg/日のヨード負荷となり過剰です。

お勧めの栄養素は

葉酸
妊娠一ヶ月以上まえから妊娠12週までの期間は、二分脊椎などの予防のため食品(緑黄色野菜に葉酸が多い)の他に葉酸のサプリを0.4mg/日の摂取を推奨されています。

カルシウムとビタミンD
妊娠中期から後期にかけて積極的に摂取します。
胎児の骨形成に重要で、妊婦のイライラ、高血圧、腰痛予防にもなります。


妊娠中期以降、鉄の必要量は、非妊時の月経が無いときの3倍程度に増加するため食品以外にも貧血予防のため、サプリでの摂取も推奨されますが、大量摂取での肝機能障害のこともあり、1日上限40mgまでにします。

妊婦さんと風邪、花粉症、片頭痛、感染症、喘息、消化器症状、不眠、アトピー、ヘルペスでの薬の注意点

解熱鎮痛薬アセトアミノフェンを使用します。妊娠初期の発熱は、先天奇形との関連が報告されていますので、積極的に使用します。ボルタレン、ロキソニン、イブなどは胎児毒性として、動脈管収縮の報告があります。プロスタグランジン合成阻害しない塩基性のソランタールも使えます。唯一のアセトアミノフェンでの問題は、ADHD,多動、自閉症が言われていますが結論は出ていません。低用量アスピリンだけは、抗リン脂質抗体症候群、妊娠高血圧症候群の予防で使用されます。尿路結石など激しい痛みにはペンタゾシンを屯用で使います。トラマドールは使いません。

片頭痛の痛み止めもアセトアミノフェンを使います。妊娠中は片頭痛が改善するため薬を使わなくなります。予防薬のミグシス、バルプロ酸禁止、必要な場合はβ遮断薬のプロプラノロールを使います。日本頭痛学会HPサイト)から

感染症では、妊婦さんはハイリスク患者となります。セフェム系、ペニシリン系、マクロライド系、クリンダマイシンは使用可能となっています。アモキシリン・クラブラン酸(オーグメンチン、ユナシン)は予防的長期使用で胎児壊死性腸炎増加が指摘されていますので、最小限の使用にします。外来点滴はセフトリアキソンにします。風邪の時のうがいについて、水やお茶で効果がある事がわかっています。問題が多いイソジンうがいを使う必要はありません。またインフルエンザ予防にはうがいの効果は疑問視されています。手洗いが最も重要で、咳エチケットとしてマスクを使用します。漢方は比較的安全に使えます。麻黄含有の葛根湯などの長期使用は控えます。

妊婦インフルエンザ感染は、ハイリスクとなり、インフルエンザワクチンは、妊婦の全時期で、接種を推奨されています。インフルエンザ薬のリレンザはアメリカFDAのカテゴリーB(ヒトでの危険性の証拠はない)タミフルはカテゴリーC(危険性を否定することが出来ない)吸入薬のイナビルも使用できます。担当医の判断ですが、タミフルが治療と予防投与ともに使われることが多いと思います。妊婦さんは、重症化しやすく治療を優先した対応が望まれます。チメロサール含有インフルエンザワクチンのチメロサールは極少量のため胎児への影響はないとされています。懸念されていた自閉症との関連も否定されています。注射のラピアクタも使用可能ですが、添付文書で動物実験での流産・早産の記述あります。妊婦にインフルエンザワクチン接種することにより生後6ヶ月児のインフルエンザ罹患率を減少させます。

花粉症では、インタールなどの外用薬から使用します。血管収縮剤の点鼻は、子宮収縮の可能性があります。歴史が長いポララミンを屯用で使用することもあります。改善なければ、クラリチン、アレグラなど最小限で内服します。
妊娠中は妊娠性鼻炎を起こしやすくなります。

咳止めメジコンを使います。激しい咳の持続は、切迫早産の原因になりかねません。

喘息について、妊娠による喘息症状の変化は、増悪、不変、改善が1/3ずつと言われています。発作による母児の低酸素血症が問題となりますので、自己判断で中止せず、妊娠前と同様にぜんそく薬は、吸入ステロイドを主に使用します。妊娠の時期により、喘息の状態は異なり、24週~36週で最も悪化して、37週~40週で症状の改善がみられる報告もあるようです。薬できちんとコントロールすれば、妊娠中の悪化は多くないようです。

悪化時に、ステロイド薬の服用が必要なことがあります。プレドニゾロンは、胎盤で代謝され不活化するので胎児への影響は少ないと言われています。

妊娠初期のプレドニゾロンの服用で、動物実験で口蓋裂のリスク上昇の報告がありますが、人での因果関係ははっきりしません。

妊婦の流早産を予防するウメテリンは、子宮筋選択性β2刺激薬です。喘息の吸入、内服、テープや麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯、五虎湯なども喘息や風邪で服用する漢方にもβ刺激作用成分があり注意が必要です

便秘では、漢方の生薬の大黄、芒硝は控え、桂枝加芍薬湯、小建中湯などから使用します。西洋薬では、酸化マグネシウム、刺激性下剤では、ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)が推奨されています。
健康食品のアロエは避けます。羊水中へ胎便の排出を促すことがあります。

吐き気では、小半夏加茯苓湯、プリンペランを使用。

胃薬・胃潰瘍では、ガスターを使用。

不眠は睡眠指導を行い、漢方(桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遥散、酸棗仁湯、帰脾湯、抑肝散)で対応します。 妊娠後期に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の連用で新生児薬物離脱症候群(一過性傾眠、呼吸機能低下)を生じることがあります。

アトピーでのステロイド外用の軟膏・クリーム使用について、ほとんど体内に吸収されません

タクロリムス軟膏やニキビのディフェリンゲルは添付文書では、妊婦は禁止となっています。

帯状疱疹・ヘルペスでは、パラシクロビル、アシクロビル、内服・外用・点滴いずれも使用可能です。

妊婦とステロイドの使用についてまとめ

ステロイド外用軟膏および、その他の外用ステロイドの吸入、点眼、点鼻も用量の範囲では、ほとんど体内に吸収されません。特に、最近販売された点鼻の吸収はほとんどありません。

ステロイドホルモンの中で、プレドニゾロンは、胎盤で代謝され不活化するので胎児への影響は少ないと言われています。
妊娠初期のプレドニゾロンの服用で、動物実験で口蓋裂のリスク上昇の報告がありますが、人での因果関係について、はっきりしません。

妊娠時に控える漢方

妊娠の時も漢方は使いやすい薬として認知されていますが、妊娠初期の過敏期はどの薬も控えた方が望ましく、大黄、牡丹皮、桃仁、紅花、牛膝、芒硝を含む桂枝茯苓丸桃核承気湯、通導散などの強い駆お血剤は控えた方がよいといわれています。

 

授乳と薬

薬の添付文書には
母乳中へ移行する可能性があるので使用中の授乳は避けさせること
とほとんどの添付文書に記載あり、この通りに従うとほとんどの授乳婦は、薬が服用できないことになります。

実際は、服用できる薬のほうが多く、世界的に啓発活動が行われ、日本では国立成育医療センター、各県の薬剤師会が、資料を提供して皆さんや医療従事者に啓発活動を行っています

愛知県薬剤師会HPより;母乳の大切さ
赤ちゃんにとってのメリット
栄養のバランスが最適で、牛乳によるアレルギーがない
消化・吸収・排泄がよく、内臓の負担が少ない
認知機能の発達
免疫の獲得
肥満、高コレステロール血症、糖尿病、高血圧などの発症リスクの低減
お母さんにとってのメリット
乳がん、卵巣がんなどの発生を減少
骨粗鬆症、関節リウマチ、糖尿病の発生を減少
月経再開を遅らせ、貧血を予防
体重を落とし、産後の肥満を防止
社会にとってのメリット
赤ちゃんとお母さんの疾患発生率を減少することで、医療費の削減につながる

お母さんが、服用したお薬のほとんどは母乳の中に分泌されますが、その量はお母さんが服用した量の1%以下で、たいていの場合、薬を使いながら母乳育児を継続できます。

国立成育医療センターのHPでは、授乳に適さない薬として
アミオダロン(抗不整脈薬)コカイン(麻薬)ヨウ化ナトリウム(放射性ヨウ素)だけになっています。
その他に適さない薬としては、抗ガン剤、免疫抑制剤などの限られた薬になります。

服用のタイミング
服用の母乳中の薬の濃度が最高になるのは服用後2~3時間後なので、お母さんが服用直前または直後に授乳すれば、赤ちゃんへの影響を最小にすることが出来ます。

インフルエンザ薬(リレンザ、タミフル、イナビル)風邪薬、抗生剤、アレルギー薬、イブ・ロキソニンなどほとんどの薬を内服可能です。

エリスロシンは肥厚性幽門狭窄症を認めた報告があり、生後一か月は回避します。

クロラムフェニコールテトラサイクリン系は推奨されません。

授乳プレドニゾロン服用について、添付文書では授乳は避けるですが、

米国小児科学会では、通常授乳で服用可能Medicattion and Mothers’ milkでは比較的安全

大分県薬剤師会の母乳とくすりハンドブックでは、40㎎/日以上または長期服用では授乳まで4時間以上あけるとなっています。

つまりプレドニゾロン30mg/日以下であれば授乳中の服用は問題ないことになります

片頭痛トリプタン24時間あけて授乳します。

飲酒は母乳分泌を減らしますので、飲酒後2時間して授乳して下さい。

タバコは、お母さんの血中ニコチン濃度の1.5倍~3倍の濃度で母乳へ移行し、母乳分泌量を減らします。赤ちゃんの前では絶対に吸わないことです。

それぞれの薬の服用にいて役に立つホームページ
妊婦と薬 主な薬の危険度;お薬110当番
授乳と薬の適する薬;国立成育医療センターHP
大分県薬剤師会 母乳とくすりのハンドブック2010年版
愛知県薬剤師会;妊娠・授乳と薬

参考資料 上記のホームページ、 妊娠・授乳と薬の知識/村島 温子など 医学書院、大分県薬剤師会;母乳と薬ハンドブック2017年