吉耳鼻咽喉科アレルギー科 -鹿児島市 川上町

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よくわかる子供の漢方:起立性調節障害;ふらつき・頭痛・腹痛

2018-07-08

 


Genn, puppy has grown big , 3 month  to 7 month lower photo, the dog at puberty.

 動物の世界では人間も哺乳類の仲間です。犬や猫など身近な哺乳類から学ぶことも多くあります。

犬の成長との比較の中で、お子さんの成長を考えていきましょう。

 

犬の身体と精神の成長

犬の成長ははやく、中~大型犬では、1~1.5歳で大きさは成犬となります。

生後6ヶ月以降は青年期となり、生後6ヶ月頃から1~1.5歳の成犬になるまでは、骨や筋肉の発達に伴い股関節など成長に伴う病気がでてきます。この時期の激しい運動は体にダメージを与えることもあります。

 

精神面では生後1~3ヶ月第一の社会化期人間の6ヶ月~幼児期に相当)と呼ばれ、恐怖心が無く、好奇心が旺盛な時期です。外界からの刺激を受けて社会に適応していく大事な時期でもあります。母親や子犬たちから犬同士のコミュニケーションや社会性を学ぶ重要な時期となります。早くから兄弟と別れさせられた子犬たちは、大事な知識や社会性、加減して噛むことなど学べず、今後人間と暮らしていくうえで、問題行動を起こすことになります。4ヶ月を過ぎると、好奇心より警戒心が少しずつ強くなってきます。

 

生後6~12ヵ月は、体の成長に伴い運動能力も発達し、第二の社会化期(人間の学童後半~思春期に相当)となり、周囲の環境に適応していくことを学んでいくことになります。初めての出来事に対する警戒心や恐怖心を覚え、ストレス耐性を学び、性格形成がなされていきます。良い性格形成のため、色々な犬との交流、赤ちゃんから老人までの人の交流、人間社会での車、信号機、自転車、色々な環境音に少しずつ慣らしていくことが重要です。常日頃から、耳の後ろから背中にかけ優しくなでてあげるスキンシップも穏やかな犬に育てる要素となります。

 

 

 

 

 

お子さんの成長(感染症から自律神経症状へ)

幼児から学童・思春期になるにつれて、急に体も大きくなり、よく風邪をひいていたお子さんたちは半成人のころまでには、感染症による病気にかからなくなってきます。代わりに、成長にともない、骨や筋肉と内臓のバランスに伴う症状が出現するようになります

乳幼児までの近所の同年代の子供たち、兄弟や親子が中心の人間関係から、学童・思春期にかけ、交流が急に広がっていきます。それに伴い、学級やクラブ活動での多くの友人や上下関係、異性への意識など心身面の影響が多くみられるようになります。具体的には、腹部片頭痛、成長痛・関節痛、臍疝痛・夜尿症・心身症・不登校や自律神経症状を伴う起立神経調節障害など心と体の成長との関係の中から生じる症状が多くなります

 

成長過程での漢方的病態

小児は常に発達しているので、動的なものとしてとらえます。生命力や自然治癒力にあふれているので、本来の良さを上手に引き出してあげましょう

漢方はその一つの手段となるはずです。

幼児までは、消化器が弱い脾虚や感染症にかかりやすい扁桃・呼吸器(肺)型の疾患が問題となります。学童から思春期にかけて、漢方的病態も変化していきます。肝・心型の不安・ストレスに関連した心身症や気・血・水の病理の』『に関連する漢方的病態を認めることが多くなり、頭痛、立ちくらみ、めまい、気分不良、自律神経症状となって表れます。

近年、小児心身症は、糖質の取り過ぎ、野菜や海藻に含まれるビタミンやミネラルの不足との関連が指摘されていて、医食同源として食養生をわすれてはいけません

 

起立性調節障害(OD

10~16歳に多くみられ、学童・生徒のODの発生頻度は5~10%と最も多い疾患の一つです。自律神経失調症の一つで、起立時や少し遅れての低血圧、立ちくらみ(重症では失神)、めまい、動悸などに加え、自律神経の不安定に由来する様々な症状が生じる疾患です。男性より女性に多く家族内発生は80%にみられます。朝起きが悪く登校前に頭痛、立ちくらみ、めまい、腹痛などのため不登校の原因にもなっています。午前中の活動性が低く夕方にかけて目がさえ、スマホやゲーム依存となることもあり、夜遅くまで寝付けず、その結果、朝に、起れず悪循環となっていきます。

 

自宅でできる対策:

朝日を浴び、タンパク、野菜を含めた朝食をしっかりとる、水分を十分とる(1日1.5~2L)などの生活習慣の改善や食事療法をまず行っていきます。1日30分程度の散歩を行い、第二の心臓と言われるふくらはぎを鍛えます。起床時はゆっくり起き上がり、立ち上がる前に足を動かしたり、両手を引きあったりして脳貧血を起こしにくくして立ち上がります着圧ソックススの使用も検討します。

西洋薬では昇圧剤のミドドリン塩酸塩(メトリジン)メチル硫酸アメジニウム(リズミック)などの昇圧剤を使用していきますが、十分な効果が得られているわけではありません。心療内科でのカウンセリングも必要になるときもあります。ODは怠けではなく病気であることを周りに理解してもらい、患者本人も自信をもって生活を行いましょう。

 

漢方では水滞と脾・気虚として対応します。

多彩な自律神経の不安定に由来する症状を認め、以下の三つ分類すると分かりやすくなります。以下の方剤で、苓桂朮甘湯、建中湯類以外は、飲みやすいとは言えません。

めまい・ふらつき

 

循環虚弱型めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、吐き気):

苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、真武湯、五苓散、当帰芍薬散、小半夏加茯苓湯

片頭痛の関与あれば、呉茱萸湯、五苓散、葛根湯、桂枝人参湯

 

胃腸虚弱型腹痛、食欲低下、倦怠感):

小建中湯、黄耆建中湯、六君子湯、補中益気湯

 

精神身体型不安、腹痛、頭痛、不眠):

柴胡桂枝湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、四逆散、加味逍遥散、香蘇散、半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、帰脾湯

循環虚弱タイプ

朝に立ちくらみ、頭痛、めまい、食欲低下があり、昼から元気が出るタイプを山本巌漢方では、フクロウ型と呼んで苓桂朮甘湯を用います。脳血流亢進させ心悸亢進を抑制する桂枝・甘草と抗不安効果の茯苓と利水剤を含有した方剤です。動悸が強ければ、甘麦大棗湯を合方します。思春期以降の女性で、生理不順やストレス強ければ加味逍遥散, 男女関係なく緊張強く手に発汗あれば四逆散、抑うつで元気なければ補中益気湯を合方します。

片頭痛の合併も認め片頭痛家系のお子さんの場合、腹部症状が前面に出ることが多くあります。このとき、心下の冷えが強い時、まずい呉茱萸湯肩こり・頭痛あれば葛根湯雨による悪化には五苓散胃弱と冷えのお子さんは飲みやすい桂枝人参湯を使用することもあります。

胃弱で頭痛、またはふらふらめまいには半夏白朮天麻湯これは片頭痛にも効果あります、手足の冷えや低血圧のめまいには真武湯水逆の嘔吐や口渇・吐き気五苓散嘔気が強ければ小半夏加茯苓湯を使用します。思春期女性の生理不順とめまいには当帰芍薬散を使用します。

胃腸虚弱タイプ

食欲不振が主であれば六君子湯倦怠感が強ければ補中益気湯腹部緊張感があり腹痛と食欲不振、便秘などがあれば建中湯類腹痛強い時は屯用で芍薬甘草湯を用います。

精神身体タイプ

ストレスが強く不安・腹痛には柴胡桂枝湯不安・イライラ・背中のはりには抑肝散、それ以外に胃弱・ふらつき・頭痛などあれば抑肝散加陳皮半夏を使用します。

中学生以降でストレスや緊張がつよければ四逆散女性でストレスや生理と関係あれば加味逍遥散、不安強くや胃弱あれば香蘇散を合方していきます。

不眠・不安の虚弱者桂枝加竜骨牡蛎湯不安が強ければ帰脾湯を合方、ストレスと胸脇苦満あれば、証に合わせ柴胡桂枝乾姜湯または柴胡加竜骨牡蛎湯を用いることもあります。

 

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参考図書

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小児科診療 2018;2 実践!小児漢方 診断と治療社

漢方の考え方、使い方 中外医学者