あなたのめまいは更年期or年のせい?BPPV
めまいは女性に多く、また加齢とともに増加します。女性は更年期障害として、めまいの訴えは6~12%程度出現する報告もあります。年をとって足腰が弱りふらつきころびやすくなり、また脳の働きの低下とともに平衡機能も衰えてつまずくことも増えます。グルグル回るようなめまいや、手足・顔の麻痺や呂律が回らないような症状と共にめまいがあればびっくりして救急車を呼ぶか、急いで病院受診を考えると思います。
軽いふらつきや立ちくらみ程度ではどうでしょうか。
病院受診はせず、疲れ、更年期、寝不足、年のせいではと自己判断していませんか? 耳からのめまいが、かなりの割合で含まれている可能性があります。
◆脳からのめまいは、意外に少ない
報告にもよりますが、脳からのめまいは、2~5%程度と考えられています。命にかかわることもあり、中枢性めまいを見逃してはいけませんので、動脈硬化・高血圧・糖尿病をお持ちの方や、中高年以降のめまいは、頭部精査を優先させる必要性があります。特に、男性中高年のめまいは注意が必要です。女性より中枢性のめまいの割合が高くなります。
回転性めまいの話題と注意点:院長コラム
めまいの原因で最も多いのは良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。確率的にはめまいの約半分と考えて下さい。
難聴・耳鳴りが出ないため、自分で耳からのめまいと判断するには難しい病気です。通常は回転性めまいですが、軽い場合や高齢者では、ふらつき程度で、自然にも軽快することも多く、更年期や年のせい疲れなどと見逃されていることもあります。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、発生機序から薬で治す病気ではありません。初期は、対症療法として点滴や内服することはあります。長期に薬を飲んで安静にすれば治る病気ではありませんが、医療機関で、長期に薬がだされ安静を指示されていることが多くあります。
◆良性発作性頭位めまい症(BPPV)について
耳鼻咽喉科が扱うめまいには、脳からではない末梢前庭性が多く、全めまいの60%を占めます。その中で最も多いのが良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。40%強はBPPVであると考えられています。65歳以上女性では60%強の割合に増加するようです。
通常は、回転性めまいの内耳疾患で、めまいの半分程度を占め、男性より3倍程度女性に多く、中高年の女性に多い疾患です。軽い方や、高齢者ではふらつきの訴えのこともあります。
内耳の耳石が何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで三半規管を刺激してめまいが起こります。運動不足、長期臥床、外傷後に起こり易くなります。寝たきり・運動不足など動かないでいると、半器官へ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症してきます。また耳石もカルシウムであるため、閉経後の女性に多い骨粗しょう症との関連も考えられています。
【診断】難聴・耳鳴り症状はなく画像検査や聴力検査・採血検査などしてもわかりません。眼振検査で誘発性の眼振・めまいで確認します。検査のタイミングが合わないまたは軽い場合は検査で所見なく、原因不明のめまい・ふらつき(めまい症)として診断されていることもあります。
【治療】
浮遊耳石置換法と自宅でのめまい体操と前庭リハです。
発症機序から、薬で治す病気ではありません。
対症療法として嘔気、めまいに対して、点滴、薬物療法は一時的に行います。治りにくい方は、薬物療法、生活指導、前庭リハを継続していきます。BPPVプラスαのめまい疾患が併存していることもありますので慎重に判断していきます。
通常は、2~3週間で自然治癒することも多い疾患ですが、再発例や難治例も多く認めます。再発率も高いため普段から運動を心がけ、動くことを意識する必要があります。難治例で、毎晩耳石が剥がれて三半規管を刺激して遷延・再発する方には、めまい体操や耳石置換法では間に合わず、上半身を少し高くしての就寝、枕を高くすると起こしにくくなると言われています。
☞ NHKガッテン20191023放送(サイト)奈良の北原医師提唱:上半身挙上の仕方が説明されています。
☞ BPPVの基本事項は次のサイトを見てください。
- メディカルノート BPPV(新潟大学耳鼻咽喉科 堀井教授 監修)
☞ NHK健康チャンネルの動画を参考にめまい体操にチャレンジしましょう。
Ⓐ 後半器官結石(右、左)BPPVのめまい体操(Epley 耳石置換療法の一つ)(動画)
Ⓑ BPPV全般の寝返り体操 BPPV全般のめまい体操(動画)(特に外側半規管結石)
Ⓒ 平衡感覚を鍛えてめまいを解消(動画)
Ⓒの動画は、BPPVだけでなく、前庭神経炎、メニエール病などの急性期後のリハビリとしてのめまいリハや加齢変化による平衡機能の低下予防にも応用できます。
☞ BPPVの難治化要因としての寝相・骨粗鬆症との関係:
難治化や再発例は、寝相が良すぎて動かずいつも同じ向きで寝る方、長期臥床後、二次性(メニエール病後、外傷後)に多いと言われています。
また骨密度が低下した方に、再発例が多い報告があり、耳石が脆弱化している耳石粗鬆症とも考えられています。今後、若いころからから骨粗鬆症への対応がBPPV発症の予防につながる可能性があります。
◆possible BPPV(BPPVの可能性として治療 検査でわかりにくい)
眼振検査で分かりにくい典型的眼振消失後の耳石異常のBPPVのことです。
2015年の BPPV の新診断基準では,繰り返す頭位性めまいを訴えるが,頭位,頭位変換眼振を観察されない,非典型眼振を認める BPPV を possible BPPV と定義されています。
臨床の現場では、検査のタイミング次第で、眼振所見を認めず、典型例以外の眼振疑いの状態はよく経験します。頸部痛・腰痛・めまい恐怖・体調不良からうまく検査ができない方も多くいらっしゃいます。Possible BPPVは、誘発性めまいを反復し、めまいリハを恐れず反復することで改善に向かう方たちを想定された呼び名です。誘発性めまいを恐れないで前庭リハを行うことが強調されます。
病院で確定診断されず、原因不明のめまいに中にpossible BPPVが潜んでいる可能性があります。耳石は2~3週間で自然代謝して消失するため、病因での検査の時に小さい耳石で検査感度以下の時は、眼振検査ではわからないことがあります。原因不明のめまいの方は、一度はBPPVを疑い積極的に前庭リハを行ってみましょう。
または奈良の北原先生が提唱しているヘッドアップ療法を行ってみてい下さい。
BPPVとヘッドアップ療法(原因不明のめまい) youtube 北原:耳鼻科めまいセンター
☞ PPPDも症状が似ていて原因不明のめまいの原因の一つに挙げられますが、PPPDは昼から悪化してきます。BPPVは朝に悪くなります。PPPDはふらつきの訴えでBPPVの典型例は、回転性めまいが主となります。
診断がつきにくいめまい症:PPPD 院長コラム
◆めまいの原因は一つではない
高齢になれなるほど併存疾患もふえてきます。併存疾患のための薬が多くなり薬剤性めまい・ふらつきが増えてきます。加齢のため動脈硬化が進行し脳虚血が起こり易く、筋力の低下が進むため立ちくらみ・ふらつきが増えます。女性は貧血・更年期障害・片頭痛関連・自律神経症状との併存が多くなります。
以下のコラムも参考にしてください。
診断が難しい高齢者めまい:院長コラム
『めまい疾患併存例』
*更年期のめまいとメニエール病
*BPPVとメニエール病
*BPPVと立ちくらみ
*メニエール病と心因性めまい
*片頭痛関連めまいとメニエール病
*加齢によるふらつきとBPPV
*薬剤性のめまいとBPPV
*薬剤性のめまいと加齢によるふらつき
*肩こりのめまいとBPPV
*椎骨脳底動脈循環不全とBPPV
など併存していることもあり見極めて対応が必要になります。
確率的に多いBPPVはいつも鑑別に上げて耳鼻咽喉科専門医やめまい相談医の受診を考えて下さい。
◆まとめ
めまいの訴えイコール
抗めまい薬(メリスロン、アデホスなど)、漢方などの長期処方や点滴加療・安静で終わりではありません。
めまい・ふらつきの原因を見極め、耳鼻咽喉科的精査以外では、必要により頭部精査・貧血・心疾患不整脈の精査および婦人科での精査など行っていきます。前庭リハや運動習慣も重要です。フレイル・筋力低下対策としての筋トレ・食事療法も行いましょう。BPPVはいつも鑑別に上げましょう。
【めまい・ふらつきの治療】
内科的治療
耳石置換療法、ヘッドアップ、前庭リハビリ
抗めまい薬、漢方処方
睡眠指導
筋トレ、運動食事療法
カウンセリング、心身症として治療
など幅広い知識のもとに対応が必要です。他科の先生方の協力を得ながら対応する必要性も出てきます。